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7章 帰郷!エルフの里へ ~祝福された小さな命~

メラルダで暮らそう ~初めて迎える新居での朝2~

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久しぶりにエルに抱かれた後、少し眠ってからエルと一緒に起きて階下に行くと、すでに皆がリビングで寛いでいた。
台所で料理を作るのは遠慮したみたいで、メラルダの町でいろいろな食べ物を買ってきたらしい。

・・・起きるのが遅くなったのはこっちなのに申し訳ない・・・

「おはようございます」
「おぉ、サーヤ!エリュシオン様もおはようございます。ちょうど町に用事があって、飯は買ってきたから好きなモノを選んで食べてくれ」
「ありがとうございます、カルステッドさん」

カルステッドさんはあたしの頭をぽんっとひと撫でしてから、エルに小声で話しかけていた。
調査を依頼してたって言うからその結果かな?

リビングには、見るからにふかふかでお昼寝ができそうなアイボリーの大きいローソファとクッションがあり、すでにベルナートさんや、ミナトちゃん、カイトくんが寛いでいた。その周辺に同じタイプの1人用、2人用がありセイルやマデリーヌさんとノルンさんがそれぞれお茶を楽しんでいる。
フランさんは外で素振りをしているようで、それにリンダとアルマさんはついて行ったらしい。

「おはよう、サーヤ。すまない、お茶を用意するのに台所を少し使っていた」
「おはようございます、アレク兄様。気にしないで下さい、むしろ起きるのが遅くなってごめんなさい」
「良いんだ。今日は顔色も良いし、体調は大丈夫なのか?」
「はい、今夜はあたしがご飯作ろうかなと思うくらいは元気です!」
「ふっ、それは楽しみだな。手伝いが必要なら言ってくれ、無理だけはしないで」
「はいっ」

アレク兄様はそう言ってあたしにもお茶を入れて、食事用のテーブルへと誘導して座らせてくれた。
どうやらここがあたしの定位置のようだ。エルは上座を嫌いあたしの隣に座るから、必然的に端から2番目があたしの席になる。
座ったところであたしに気付いたミナトちゃんが駆け寄ってきて、隣に座ってきた。

「サーヤまま、おはようなの♡」
「おはよう、ミナトちゃん」
「おねーさん、今日は元気そうだね」
「サーヤ、俺も一緒にご飯食べる」

目の前には魚介類やお肉、野菜などの様々なサンドイッチを始め、鳥の丸焼きとかカラフルな野菜のサラダなどいろいろ並んでいた。タンパク質を取りたいからお肉を食べたいところだけど・・・お昼から鳥の丸焼きって、誰が買ってきたんだろう・・・
皆が好きなモノを取って食べていく中、まだそこまでの量が食べれないあたしは何を食べようか迷っていた。

「サーヤ、これなら食べれるだろう?」

アレク兄様がささみのようなお肉が入ったサラダを持ってきてくれた。
うん、これなら栄養もあるし食べれそう。

「ありがとうございます、アレク兄様」
「いや、アルマに肉をお願いしたら鳥の丸焼きを買って来てね・・・念のためこれを買っておいて良かったよ」

鳥の丸焼きはアルマさんかっ!確かに好きそうだよね!!
お肉料理はこってり系が多く、アルマさんの好みが良くわかるチョイスだった。 

食事を楽しんでいたら、カルステッドさんと話を終えたエルも隣に来て食事を始め、外で素振りをしていたフランさん達も帰ってきて、そのまま汗を流しに行った。

新居は大きめの家だと思ってたのに、これだけ大所帯になるとちょうど良いというかちょっと狭いかも?って思ってしまう。この家で生活するのは出産までかな?しばらくしたらエルフの里に行って、そのまま森の家に帰るのかな?
いつまで生活するのかわからないけど、何にしても、ここではすごく賑やかで楽しい生活になりそうだね。

これからの楽しい生活に胸を膨らませながらもぐもぐ食べてたら、エルが声をかけてきた。

「大分食欲も出てきたようだな」
「うん!このサラダなら全部食べれると思うよ」

お腹の子供には魔力だけじゃなく栄養も行くので、食べれるときはしっかり食べないといけないからね。
最近は吐き気もそんなに感じないから、本当に安定期に入ったんだろう。

もぐもぐ食べるあたしを見て安心したエルは、優しく微笑みながらさらっととんでもないことを言ってきた。

「サーヤ、今夜は俺の両親がメラルダに来るようだ」
「??!!―――っぐ、ケホッ、ケホッ・・・え、えぇぇぇ?!今夜??」

思わずむせてしまったあたしの背中をとんとんとしてくれるエル。
お願いだから、世間話をするようにさらっと重要なことを言うのはやめてくれませんかね?!

「あぁ、夕方頃親父の転移魔法でメラルダ付近に来てそのまま数日メラルダで過ごすらしい」
「ご両親はどこに泊まるの?」
「サーヤさえよければこの家に。まだ客室は空いてるからな」
「もちろん良いよ!エルの大切なご両親だもの、当たり前じゃない!!」

エルが嬉しそうに微笑んであたしの頭を撫でる。
別に褒められることじゃなく当然のことを言っただけなんだけど・・・でも嬉しい。

「それで、今夜は久しぶりにお前の手料理が食べたいんだが作れそうか?もちろん俺も手伝うし、足りないものがあればメラルダならカルステッドが買いに行くし、森の家にあるものならセイルが取りに行くと言っている」

皆の目がどことなく期待に満ちてるのがわかる。あたしのご飯を皆が楽しみにしてくれてるなんて、今までいっぱい予定を狂わせちゃった分ここは頑張るっきゃないでしょう!
エルのご両親が来るのはすごく緊張するけど、旅行中に買った食材もあるしエルのお嫁さんとして認めてもらうためにも、精いっぱいおもてなしさせてもらおうじゃないですか!!

「やるっ!あたし、頑張るよ!!」
「いや・・・頼むから無理だけはするな」


メラルダで買ったお米を始め、シュルテンやゼノ、マハト村で買った魚介類にトルク村で手に入れた醤油もあるし、今夜は皆にあたしの故郷の味を・・・和食を味わってもらおうと思います!



今夜は和食パーティーだ!!と意気込んでは見たものの、あたしは自分の体力が激減してる事や、魔力の減り方が多い事をすっかり忘れていた。

まずはお米を炊こうと研ぎ始め、ほむちゃんにお願いして炊き始めたところで少しふらついてしまった。

理由は簡単。ほむちゃんに与える魔力と胎児に与える魔力による完全な魔力不足が原因です。
少しずつ大きくなっている胎内の双子達は、とにかくどんどんあたしから魔力を持っていくので、今朝満タンになるくらいエルにもらったはずの魔力が、気が付けばブレスレットの石がオレンジになるくらい減っていた。

すぐにドクターストップならぬエルからのストップが入り、強制的に魔力を補給してもらうことになりました。

・・・おかしい、こんなはずじゃ・・・

「・・・お前はしばらく料理で火を使うのは禁止だ」

皆の前でエルに魔力をたっぷりもらったあたしは、すっかり身体の力が抜けてしまいリビングの大きいソファに寝かされている。一緒にミナトちゃんとカイトくん、そしてわんこの姿になったベルナートさんがもふもふの毛であたしを包み込み、癒してくれている。

「うぅ・・・せっかく皆にご飯いっぱい作ろうと思ったのにぃ・・・」
「サーヤまま、むりしちゃ、めっなの!」
「はぁい・・・」

いつもはあたしが撫でてあげる側だけど、今日はミナトちゃんが撫でてくれている。

ほむらもサーヤと契約してから大分力を付けたみたいだからね。それでもらう魔力も増えてしまったんだろう。悪気はないんだ、許してやってくれ」
「そんな、ほむちゃんは全然悪くないですよ。ほむちゃん、ホントに気にしないで」

ほむちゃんはフランさんに抱っこされながら少ししょんぼりしている。

「サーヤが私の加護を受け取った後なら、炎の魔法も使えるようになるしほむらへの魔力もサーヤを通して私が補うこともできるから、もう少し体調が安定したら加護をあげよう」
「ありがとうございます、フランさん」
「ふふっ、ここは本当に居心地が良いからね。それに、近くに複数のダンジョンもあるから鍛錬にも事欠かない。サーヤの周りは面白い人間が多くて本当に飽きないよ」




結局あたしが用意できたのは、炊いたお米で作ったおにぎりとシュルテンやゼノ、マハト村で買った魚やテイン、オクトパのお刺身盛り合わせだけ・・・
もちろん魚やオクトパ、テインのの毒はカイトくんにお願いして魔法で毒を消してもらいました。


今はエルとカルステッドさんが馬車でご両親を迎えに行ったので、この後ついにドキドキのご対面です。

はぁ・・・緊張してきた・・・
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