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7章 帰郷!エルフの里へ ~祝福された小さな命~

メラルダへ行こう ~妊婦さんは大変なのです~

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エルと朝から野営のテントでいちゃいちゃしたあたしは、皆にどんな顔をしていいのかわからないままとりあえず朝食の場にエルと向かった。

少し離れた先にはすでにカルステッドさん達が座っていて、スープやパン、サラダなどがすでに用意されおり、美味しそうな匂いが遠くからでもわかるほどだった。きっと栄養がとれるよう気を使ってくれてるんだろう。

リンダがあたしとエルに気づき、声をかけてくれた。

「おはよう、サーヤ!今日は体調大丈夫?」
「うん、心配かけてごめ・・・―――っぐ、ぅっぷ」

コンソメスープの良い匂いがするなぁと思いながらリンダに返答しようとしたとき、いきなり何かがこみあげてくるような吐き気がした。
あれ、さっきまで全然平気だったのに・・・

「ちょっ、サーヤ??!!」
「サーヤ!!」

リンダの心配した声や、他の人の困惑している声がなんとなく聞こえる中、しゃがみ込んで口を押えたあたしにすぐ気付いたエルが、とっさに背中をさすってくれた。

「大丈夫か?今マデリーヌを呼ぶから・・・横になった方が良いならテントに戻るがどうする?」
「(コク)」

せっかく元気になって「心配かけてごめんね」って挨拶しようと思ったのに、結局さらに心配させることになってしまった。

たぶんこれがつわりなんだろうとなんとなく頭で理解し、同時に自分が妊娠しているんだということを改めて実感した。
妊娠すると味覚が変わり、食べたい物が変わったり、ご飯の匂いを受け付けなくなっりすると聞いたことがある。

恐らくアレク兄様が作ってくれた、栄養と愛情がたっぷりのスープだったろうに、今のあたしは残念ながら食べられそうもない。アレク兄様・・・ごめんなさい。


エルにテントまで抱きかかえられ、枕を背もたれにして楽な体勢になるよう座らせてもらった。

「サーヤ、果実水だが飲めるか?」
「ん、ありがと」

冷たくて爽やかな味のする果実水を飲んで、少し楽になった。

「エル、もうちょっともらってもいい?」
「あぁ。果物なら食べられそうか?」
「うん」

エルは魔法袋から数種類の果物を出して、あたしの食べやすい大きさに切り分けてくれている。
果物を用意し終えたとき、ちょうマデリーヌさんとセイルが転移でテントに来てくれた。

「はぁ~い♡サーヤちゃん♡♡吐き気でうずくまっちゃったって聞いたけど大丈夫かしらん?」
「あ、マデリーヌさん。スープの匂いでちょっと・・・たぶんつわりが始まったんだと思います」
「そうみたいね~・・・ちょっと失礼するわねん♡」

マデリーヌさんは、以前みたいに魔力を込めたほんのり温かい手で、あたしの額や首筋、脈拍やお腹などに触れて診てくれている。瞳を閉じて集中するマデリーヌさんを見ると、とてもエルにドM発言するお姉さんには見えないくらい綺麗・・・というか神々しい。

「・・・身体は大分回復したみたいねん♡でも、回復したことによって今度は妊娠の症状が出始めてつわりもきたって感じかしらん。・・・吐き気以外でなにか気になることはありそう?」
「たぶん、さっきのスープみたいに匂いがダメになっているご飯が他にもあるかなと・・・果実水は凄く美味しく感じました」
「とりあえず数種類の果物を用意したから、どれが平気でどれがダメか教えてくれ」
「そうねん♡果物と・・・野菜も取った方が良いのだけれど無理はしない方が良いし・・・」
「そう言えば、昨日マハト村の宿屋のおばさんがくれたパン粥は?野菜もたっぷりだったし、食べられそうならボクが作り方聞いてこようか?」

エルが切ってくれた果物は、だいたい食べれるけど柑橘系が一番美味しくていくらでも食べれそうな感じだった。
パン粥は確かに美味しかったのに、匂いがそんなになかった気がする・・・確かにあれなら食べれるかも。


話し合いの結果、「作るのは俺だから」と言ってエル自らがマハト村へ赴き、おばちゃんにレシピを教えてもらいに行くことになった。

元気になったと思ったら次から次へと申し訳なくて、果物を頬張りながらしょんぼりしてしまった。

「お前が気に病むことは何もない。胎内に大事な子を抱えて一番頑張ってるのはお前の身体だ。無理しないで欲しいものや体調の変化があったら隠さずに教えて欲しい」
「・・・そんなに優しくされたら、あたし、今まで以上に何もできない子になっちゃうよ」
「ふふ♡そんなの、皆が好きでやってるんだからサーヤちゃんが気にする必要なんてないのよん♡♡」
「そうだよ☆サーヤはいつも皆にお菓子やご飯作ってくれてるじゃない♪だから今はできる人に任せて、お腹の子供第一に考えて良いんだよ☆」

・・・皆の優しさが凄く嬉しくて胸がジーンとして、涙が溢れてきた。

「・・・ごめ、ッグズ・・・皆、あり、がとっ・・・」

皆があたしを含めて、赤ちゃんが無事に生まれるよう大事に、大切に守ってくれている・・・あたしは本当に幸せ者だ。
下腹部に触れながら「大切なあたしやあなたのパパの仲間達は、あなたが生まれてくることを今からこんなにも楽しみにしてくれてるんだよ。素敵な人達でしょ?」と心の中で語りかけ、皆の優しさに今はありがたく甘えることにした。





つわりが始まったことで、ようやく妊娠したことを実感してきたあたしは、体調が悪いわけではないけどご飯の匂いを受け付けず、果物とエルがマハト村のおばちゃんに教えてもらったパン粥で野菜を少し食べれるようになった。
完全に食生活が通常と狂ってしまったあたしは、必然的に皆とご飯を一緒に食べることができないまま、メラルダまでは野営のテントかベルナートさんの特殊空間で過ごすことになった。

そして、つわりが始まったころから変わったことがもう一つある。
それは・・・―――


「エル、ブレスレットの石がもうオレンジに近くなってる」
「ん?もうそんなに減ったのか?」
「うん。・・・魔力の高い子供ってことは間違いなさそうだよね、さすがエルの子供・・・」
「お前の子供でもあるだろう?」

そう。身体はすっかり回復してつわりと戦う生活・・・といっても、匂いによる吐き気が一番辛いくらいで基本的に元気なんだけど、とにかく魔力が減って仕方がない。
でも、それによってあたしの体調が悪くなるわけじゃなく、ブレスレットの石を見たときに気づく感じだ。

「じゃあ魔力をたっぷりとやらないとな」
「・・・今は休憩中だから、そんなにたっぷりじゃなくても良いと思う・・・」
「ふっ、そんな遠慮するな」
「んんっ」

今は野営前の最後の休憩中。
馬の休憩とあたしの体調を第一に移動した結果、予定よりも少し遅れてしまったが、明日の夕方にはメラルダに着くだろうとアレク兄様が言っていた。

「・・・っはぁ、ん、ぁふ、んんっ」
「んっ、もっと魔力をやるから・・・ほら、もっと舌を出せ」
「ん、はふ、エ、ル・・・も、力抜けちゃ、んんっ」
「大丈夫だ。動けなくなっても俺が連れて行ってやる」

道中の魔力補給は、エルからのとびきり甘い魔力ととびきり甘い言葉と優しさで、具合が悪いわけじゃないのに動けなくてエルに抱きかかえられることが増え、すっかりそれが通常運行だと周りが気にしなくなってしまった。
こういった魔力補給は、ベルナートさんの特殊空間内でも普通になってしまい、ミナトちゃんからは「ふふ♡きょうも、エルぱぱと、サーヤままは、なかよしなの~♡♡」と喜ぶほどになってしまった。



・・・これでいいんだろうか?
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