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6章 帰郷!エルフの里へ ~2人の婚約者編~

マハト村で過ごそう 〜婚約者達の話し合い〜

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「うぅ・・・エルのバカぁ」
「・・・」


翌日、昼ではなく朝目覚めることができた。
目覚めることはできた。できたんだけど・・・――――――


「腰が重くて動けない~~~~~~~~~~~~~っ」
「・・・すまん」


昨日はあれからいろいろな体位で「これはやったことがあるか?気持ち良いか?」と散々攻め立てられた。
初めての体位とかもあってすごく気持ち良かったけど、あれは一度にヤルものじゃないと思うの!
結局回復魔法と癒しの水で回復しきらない腰の重みを消すために、今日も妖精の粉にお世話になってしまう。

・・・妖精さん、本当に、本当に使い方間違っててごめんなさいっ!!!

「エル、今日はあたしクラリスさんとお話するから。邪魔しないでね」
「・・・それは」
「水着は着るけど、エルのパーカーちゃんと羽織るから。・・・こんなシルシだらけの身体見せられないよ」
「当たり前だ。他の奴に水着姿など見せてたまるか」

くそぅ、シルシはやっぱりわざと付けまくったのか。
エルは今日もお菓子抜きですっ!





皆で朝食を取ったあと、クラリスさんが海水浴未経験ということで、今日は皆で海水浴を楽しむことにした。
ゼノは観光客が多くて、人に囲まれたり絡まれたりで落ち着かなかったからね。

マハト村の海岸は地元の人と思われる人がまばらにいる程度でとても空いていた。

「私が、コレを着るんですの?」
「うん!水着って言って、水に濡れても大丈夫な素材なの!」

クラリスさんに渡した水着は水色と白のドット柄のビキニだ。
首の後ろを太めの生地で結び、背中にもホックがあるタイプ。下はスカートタイプなのでとても爽やかで可愛い感じの水着である。
奴隷商でずっと肌が見える下着の様な格好だったので、抵抗なく着てくれた。

アレク兄様とアルマさんは出発前の買い出しと預けていた馬車の確認などの準備で別行動し、他の皆は前と同じで良いということで、あたしを含め、皆ゼノと同じ水着着用で海水浴を楽しもうということになった。
・・・まぁ、あたしは水着の上にエルのパーカー着てるから水着はほとんど見えないんだけどね・・・
自分のパーカーもあるのに、エルは「俺のを着ろ」と譲らなかったのでエルのパーカーを着てるけど、体格が全く違うからやっぱり大きい。

「なんか、水着は水着でエロかったけど、エリュシオン様のパーカー着てるのもなんかエロいね、サーヤ」
「えぇ?!なんでよ!!」
「なんか、「私は男がいます」みたいなアピールがすごいというか・・・ほら、赤いシルシもチラホラ見えるし」
「!!」
「あんたっ、ホントにふしだらなのも大概にしなさいな!いくら婚約者だからって節度ってものがあるでしょう?!」

リンダとクラリスさんに言われ放題である。
キスマークはエルが付けまくったのであって、あたしはお願いなんてしてないのにっ!理不尽っ!!


海岸に着くと、パラソルとビーチ用の敷物で場所取りをしていたエル達に合流した。
ゼノと違って海岸に食べ物屋さんはないので、宿の人に場所を借りて作ったお弁当とか、分けてもらった朝食の残りとかを持参している。

周りを見ると地元の人と思われる子供達数人が、海岸を走り回ったり海で泳いだりしている。
ミナトちゃんはゼノで砂のお城を作ったのが楽しかったらしく、せっせと砂を集めていて、カイトくんもそれを手伝っている。砂遊びしている天使達は今日も最高に可愛いです!

ベルナートさんはカルステッドさんと共に、沖にある島までどちらが早く到着するか競争すると言って遊泳を楽しんでいる。いつの間に仲良くなったんだ・・・
エルとセイルはミナトちゃん達のそばにいるというし、リンダは大事な食べ物の番をするといってパラソルの下で荷物番をしている。


あたしはクラリスさんを連れて、少し海岸沿いを歩いていた。
足元が海に入るだけでも気持ち良い。

「クラリスさん、海って初めて?」
「そうね、初めてだわ」
「ふふっ、気持ちいいでしょ?」
「まぁね・・・悪くないわ」

いざ話をしたいと思っても、何を話して良いかわからなくて、結局他愛のない話をしをしてしまう。

なんて話を切り出そう・・・。
「エルのことは本当にもういいの?」それとも「エルフの里ではエルってどんな感じだったの?」「どういう心境の変化があったの」とか?
うぅ・・・考えれば考えるほどわからないぃ・・・

「プッ、ふふっ、ホントにあんたってわかりやすい性格してるのね。今私にどうやって話しかけようか悩んでるんでしょ?」
「え?!なんでそれをっ・・・」
「行動や言動が不自然過ぎるし、ちらちらこっちを気にしては迷ってるし・・・気づかない方がおかしいんじゃない?」

まぢか・・・そんなにわかりやすかったのか、あたし・・・

「ま、それがあんたの良さなんじゃないの?エリュシオン様にはそれくらいが好ましいんだと思うわ」
「クラリスさん・・・」
「なによ、聞きたかったのはエリュシオン様のことでしょ?わざわざ私から話してあげるんだから感謝しなさいよ」
「うん、ありがとう」
「・・・ホントにあんたは、調子狂うわね」

2人で近くにあった岩場に座り、話し始めた。
話を聞きながら、クラリスさんが本当にエルフの里を大事に、そして誇りに持っていることが良く分かった。
そして、エルは昔から頭が良く手先も器用で、お父さんであるルーシェントさんに薬草の作り方を教わったり、狩りをするための道具、生活に必要な様々なモノ作りや、狩猟方法、魔法などいろんな人から教わり、すべてを習得していったんだとか。
そりゃ森で生活するのにも必要なもの自分で作れちゃうわけだよね。

「エルのお父さんってエルフの里でお医者さんなんだね」
「えぇ、ルーシェント様のお薬はとてもよく効くのよ!・・・少々苦い薬もあるけど」

思わずベルナートさんにあげた激マズ回復薬を思い出してしまった。
・・・アレはお父さんから教わったレシピなのか、親子だからああなったのかどっちなんだろう・・・

クラリスさんから聞くエルフの里の話は、とても仲間内の信頼関係が厚く、皆が助け合って生活している場所なんだとわかる。だからこそ、エルが外で辛い想いをしているのも何とかしたいと思ったんだね。

「私は里長の娘だし、お父様のように里の皆が困っていたら助けられるようになりたい。エリュシオン様の話を聞いたとき、お世話になっているルーシェント様の子供に“黒”がいたことも、“黒”であるが故に起こってしまった悲劇にも心が痛んだわ・・・」
「クラリスさん・・・」
「“黒”だから外の世界では生きづらい、辛い想いをしているはずだけど、エルフの里なら“黒”でも今までのように皆受け入れる、“私が彼を支えてこれから共にエルフの里に貢献していけば良い”・・・そう思って疑わなかった。外の世界で自分の居場所を見つけてるなんて思いもしなかったのよ。それに、私は生まれたのが遅かったから直接エリュシオン様に会ったこともなくて、話を聞いただけ。現実のエリュシオン様がどんな方か知らず、実際会ってもどんな方なのか見ようとしていなかった。自分では“黒”でも彼を受け入れると思ってたのに、あんたの言うとおりあたしも結局エリュシオン様を“黒”と差別してる人と変わらなかったのよ・・・」

クラリスさんはとてもまじめな人なんだろう。
責任感が強いというか、正義感が強いというか・・・

その後はお互いの身の上話になり、あたしがエルと出会った経緯やその後お城であったことも話した。
すごく驚きながらも「あんたも、本当にいろいろあったのね」と言いながら、慰めてくれた。
そして、クラリスさんはあたしに聞きたいことがあると言った後、急に顔を赤らめながらもじもじし始めた。

「あの、あんたって、エリュシオン様と・・・その、同衾しているのよね?」
「・・・どう、きん?」

どうきんって聞いたことがあるような気はするけど・・・何だっけ?

「だからっ、すでに情を交わしてるのよねってことっ!なんでそんなことまで言わせるのよ!!」
「情を交わす・・・あぁ!えっちしてるかってことですか?」
「はっきり言い直すんじゃないわよっ、このおバカっ!!」

むぅ・・・難しい言葉を使ったのはそっちじゃないか。
そっか、クラリスさんも貴族みたいに初夜で純潔を・・・みたいなこと言ってたもんね。

「クラリスさんは・・・まだ?」
「・・・っ、当たり前でしょ!結婚したら初夜で旦那様に純潔を捧げるつもりだったんだからっ!!人間だってそうなんじゃないの?」
「貴族や王族はそうみたいですよ?」
「・・・あんた、元々貴族だったって言ってたじゃない」
「いや、そうですけど・・・エルに助けられたとき、寝てる間に処女奪われてたみたいなんで・・・」
「は?」

めちゃくちゃビックリしてたクラリスさんは「何なの?何でなの??!!」とすごい勢いで聞いてきたので、あくまで治療の一環で・・・と言葉を濁してエルに抱かれていたことを暴露した。

「・・・は、あり得ない・・・気持ちが通じ合う前から何度もですって?しかも、エリュシオン様がドS・・・あ、朝まで、挿入れたままとか・・・」
「あのー・・・クラリスさーん」




ダメだ。すっかりエルの鬼畜っぷり・・・というか絶倫っぷりに委縮してる。
「私には絶対無理だわ・・・」とか聞こえるけど、普通は誰でもそう思うと思います。
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