【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

港町を満喫しよう ~リベンジ!海水浴 inカルステッドside~

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エリュシオン様が無事に記憶を取り戻した。

船に乗って間もなく我々が情報収集し始めた矢先に、旧知の仲であったという獣人の女性がかけた“忘却の呪い”という呪い。
・・・本来サーヤにかけようとしたらしいが、実際は庇ったエリュシオン様に呪いがかかった。

幸い船に乗っている最中だったのできちんと話し合って対処する時間はあったが、一番大事な女性サーヤをほぼ一番最初に忘れてしまうというのは、サーヤにとってもエリュシオン様にとっても辛いことだったろう。
現に10年前の状態のエリュシオン様と相まみえたとき、今の俺の姿に非常に戸惑っていたしな。

あなた様がしっかりしないとサーヤはもっと辛くなるのに・・・と思い、あえて慰めの言葉ではなく喝を入れたら、すぐに自分らしさを取り戻してくれた。さすが我が主である。
・・・覚えていないはずのにサーヤから離れないという執念めいたものを感じたのは俺だけではないはず。さすが我が主だが、時と場所は考えた方が良いと思う。特にミナト殿の前では。





記憶喪失への対処もなれてきた頃に到着したメラニウム王国の港町ゼノ。
呪いを解くために先に動いているアレックスとアルマは、無事にトルク村に着いたという報告を受けていたので、俺も無事にゼノに着いたことを伝達魔法で2人に伝え、早速宿の手配をすることにした。

エリュシオン様やサーヤには少しでも楽しく、そして寝心地も良い部屋に・・・と思うとだいたいその宿屋の一番良い部屋になる。幸い精霊王様達も度々出入りするし、大きい部屋で困ることはないだろうしな。
宿を取る際、ベルナート殿が例の獣人女性を連れて一緒に来た。
彼女の死=呪いの完成となるため、ベルナート殿の魔法で病の進行を止めて生きているが、それでもだいぶ体調が悪そうだ。・・・もう長くはないのだろう。
恐らく彼女を埋葬する話も出るだろうから、念のため墓地や埋葬の手続きに関して調べることにしたが、それは正解だった。


エリュシオン様が記憶を取り戻した日の夜、例の獣人女性は息を引き取った・・・―――


もちろん病に侵されていた彼女は本来もっと早くに亡くなるはずだったが、それでも人の死・・・しかもエリュシオン様にとって縁のある方ということもあり、詳細は知らないが思うところがあったんだろう。
感情を表に出すことが少ない主が涙を流していた。
俺はそんな人間らしい感情を目にして、不謹慎ながら嬉しくなり調べておいた埋葬の手続きを進めて、翌日に獣人女性をゼノにある共同墓地へと埋葬した。
・・・予定よりもちょっと・・・いやだいぶ時間がずれたことはもう気にすまい。

呪いを解く“代償”として切られたサーヤの美しいシルバーブロンド。
髪が短くても十分に可愛らしく綺麗な女性だが、ここまで短い女性はほとんどいない。
魔力にも影響していないらしく、サーヤ自身も短い髪を気にしていないようだが、やはりはたから見ると少々痛々しい。
でも、エリュシオン様のために躊躇なく差し出したサーヤには本当に感謝しかない。
本当にありがとう。お父さんこれからもサーヤのために頑張るからねっ!





ゼノに来て一番驚いたのはサーヤが“海水浴”と言っていた、この海で変わった服を着て過ごす文化だ。
海に入ることも考えられた“水着”というものは多種多様な種類があるものの、とにかく布面積が小さい。
女性なんて下着なのか?!と思うくらい肌を出している。

リンダの水着姿を見たときは、騎士として鍛え抜かれた程よい筋肉と女性らしさのバランスが良く健康的に見えたが、着替え終わったサーヤとその付き添いのリンダが男達に絡まれているのを見てどこにでもバカな奴らがいるんだなと思ったと同時に、サーヤの水着姿がヤバすぎると思った。
もともと顔もスタイルも良いと思っていたが、着ている水着は黄色とオレンジという明るく元気な色なのに、その、たわわでとても柔らかそうな胸・・・しかも、絶対エリュシオン様が付けたであろうシルシが至る所につけられており、明るく元気そうなのに身体がえろいというギャップがとにかくすごいのだ。

俺が到着する前に、エリュシオン様達がサーヤ達の元に着いたようだ。・・・後ろにぞろぞろと人を連れて。
エリュシオン様や精霊王様方は、サーヤのことになると結構過激だからなぁと思っていたら、案の定聞こえてくる物騒な会話・・・

「・・・ほぅ、俺の女に手を出そうとは、貴様らは死にたいらしいな」

やめてっ!声をかけただけで殺しちゃったら、この世界の大半の男がいなくなりますからっ!!

「エル!・・・うぅ、もっと早く気づいて欲しかった・・・」
「すまん、くだらない雌共が邪魔で遅くなった」
「くだ・・・?!いや、あの・・・くだらない雌共って、言い方・・・」
「え~、じゃぁ・・・ウザすぎる雌豚?」
「ちょっ、セイル??!!」

エリュシオン様もセイル殿も、相変わらずサーヤとそれ以外への落差が激しいようだ。
まったく、サーヤはホントに愛されて・・・

「サーヤまま、こいつら、ぷっちんすゆ?」
「おねーさん、僕がそいつら消しちゃおうか?」

ミナト殿ぉぉぉ??!!そして、カイト殿ぉぉぉぉぉぉぉ???!!!
あなた方、手を繋いで見た目は超可愛い天使2人なのに、なに一番怖いこと言っちゃってるんですかぁぁぁぁぁ????!!!!
ダメだ、ここは皆さんが手を出す前に俺がどうにかしなければ大惨事になってしまう!!!

持っている食べ物を落とさないよう気をつけながら、ようやくサーヤ達の元に辿り着いた。
やはりこのビキニパンツというものは身体にピッタリしていて動きやすいな。

「ほぅ、この辺に住む若造はずいぶんと軟弱で根性の曲がった奴らが多いようですな。・・・どれ、暇つぶしに俺がお前達を可愛がってやろうではないか。良いですよね・・・我が主」
「・・・あぁ、たっぷりと可愛がってやれ」

エリュシオン様からの許可をもらい、なんとか自分のペースに持ち込めそうで安心した。
こいつらは若手の騎士達と同じようにちょっと扱いてやるとしよう。

「俺も、ずっと部屋に籠ってたからちょっと暴れたいかも・・・あいつ、サーヤに勝手に触れたし許せない」
「駄犬。頑張ったらまた褒美をやるぞ」
「!!・・・頑張るっ、あいつら潰す!」

ちょっと待って!ベルナート殿参加しちゃうの?!
潰すって・・・まぁ、ちょっと痛い目見させるくらいなら大丈夫なのかな・・・?
同じようにベルナート殿の言葉に心配したサーヤを安心させるようにセイル殿が補足説明をしていた。

「大丈夫だよ、サーヤ。ベルナートは殺すって意味じゃなくて、きっと男としての機能を潰すって意味だと思うから☆」

待って待って!!それって全然大丈夫じゃないヤツだからっ!!!
ある意味命と同じくらい大事なモノなくなっちゃうからぁぁぁぁぁぁ!!!!


この後の俺の仕事は、この男達への制裁とベルナート殿の制裁から男達を守るという矛盾したモノになってしまった。
もうさっさと終わらせて、さっさと宿屋で休んでしまおう。

人があまりいない場所に彼らを連れて行くと、ずっと獣人女性に付きっきりでストレスを溜めまくっていたであろうベルナート殿が盛大に大暴れした。・・・意外と肉弾戦得意なんですね。
ぼーっと見てたら、彼らのうち一人が悲鳴をあげたことで我に返り、なんとか残りの彼らの“男”を守った。
・・・尊い犠牲が出てしまったのは仕方ないだろう。





夜はサーヤ達の部屋に行かず、宿のレストランでリンダと食事をしつつその日あったことを報告し合ったり、明日以降の打ち合わせをすることにした。
旅行中に女性しかついていけなさそうなところで護衛をするのがリンダの大事な仕事でもある。
サーヤと二人のときは常に周りに殺気を放てって、我が主はすごい指示を出すものだ・・・。

「リンダ、そちらは問題なかったか?」
「そうですね・・・エリュシオン様達が囲まれすぎてて驚いてたら、周りを威嚇するの忘れちゃいまして・・・その間にサーヤが声かけられちゃってあんなことになってしまいました。・・・すみません」
「それはまぁ仕方ないというか・・・しかし、エリュシオン様達の囲まれようは凄かったな」
「もう凄いなんてものじゃないですって!あれじゃ大小様々なアリの大群ですよ!!しかもサーヤの胸も超柔らかくて・・・アレは触ったら病みつきになりますね!!」

リンダ!!いろいろ言い方がおかしいっ!!!アリの大群って言い過ぎでしょ!!!
そしてサーヤの胸は見た目だけじゃなく柔らかいって・・・ちょっと女の子の発言としてはどうなの??!!
女の子らしさがどんどんなくなるリンダが、お父さんすごく心配だよっ!!!!

「・・・アルマ達、トルク村でのんびりしてますかね」
「うむ、少々気になることを聞いたんだが・・・」
「気になること、ですか?」
「あぁ、トルク村には奴隷商があるみたいで、近々奴隷市が開催されるらしい」
「奴隷商に奴隷市・・・ガルドニアからはなくなりましたけど、この国にはまだあるんですね」

奴隷商に奴隷市・・・先王のおかげでガルドニアから奴隷制度廃止し、その後のレヴィンの働きで奴隷商はかなりなくなったが、貴族や金のある者が奴隷を買うというのは昔から普通にあるものだった。
奴隷となる者は様々な事情を抱えているが、大体が金がなく親に売られた者、一族から離れて拾われた者、酷いときは攫われた者も奴隷として売られることがあると聞く。

「トルク村・・・アルマ達にあまり長居させたくない場所ですね」
「あぁ、そうだな・・・」

トルク村が関係あるかどうかは知らないが、少しだけ嫌な予感がしていた。

アルマは元々エリュシオン様が城に勤めていたころ、“暗殺者”としてエリュシオン様を殺しに来たのが出会いのきっかけだった。あっさりとアルマを捕まえたエリュシオン様は『俺の暗殺という任務に失敗したこいつには死あるのみだ。生きたいというのなら鍛えてやれ』とアルマを俺に丸投げした。

最初は警戒心が強く心を開くこともなかったが、俺の家で妻であるココットや家令達と接するうちに少しずつ警戒心を解き、特に美味しい食べ物には目がなくなっていった。・・・余程食うのに困って生きてきたんだろう。
ポツポツとアルマから昔の話を聞いたときに、元々奴隷だったことを聞き、奴隷紋も見せてもらったことがある。
自分で奴隷紋を消そうとしたため、傷だらけでとても痛々しい右手の甲にある奴隷紋。
完全に消すことができていないため、アルマはいつでも右手の甲が隠れるグローブや小手をしている。

剣の稽古を一緒にしてきたリンダとはすぐに打ち解けたアルマだが、さすがに奴隷であったことは聞いていないようだ。・・・そりゃ、知られたくはない過去だな。俺だって奴隷だったときのことまでは聞いてないし。

「あまり深入りせず、俺達が到着するまでは羽を休めているよう伝えるさ」
「そうしましょう。・・・アルマ、ちゃんと美味しいモノ食べてるかなぁ」

急かすようで申し訳ないが、明日の観光を終えてから早く合流することを提案してみよう・・・





翌日、いつものようにアレックスと定期連絡を取り現場を報告し合うが、その日の報告に俺の不安はどんどん大きくなっていった。

『アルマの様子がちょっとおかしいです。・・・見た限り普通ですが、なんとなくそう感じるというか・・・』

アレックスは人を見る洞察力や状況判断が的確で優れている。
対して、アルマは暗殺者として働いていた関係で、感情や表情を隠すことに優れている。
アレックスがアルマを知っているからこそ感じた、違和感程度の細やかな変化だと思われる。

『・・・例の奴隷市を気にしている様子はあるか?』
『あると思います。・・・昨夜宿に戻ってきたときに少し顔色が悪く見えたので何があったか聞いてみたら「昔の知り合いに会った」と言っていて・・・それ以上は聞けませんでしたが』
『・・・わかった。俺達もなるべく早くそちらに行けるようエリュシオン様に掛け合ってみよう』
『よろしくお願いします』


アレックスとの定期連絡を終えてから、内容をエリュシオン様に報告すると「明朝、移動開始できるよう馬車の手配をしろ。カイトの加護は今夜付与の儀式を済ませる」と、すぐに行動して下さった。
エリュシオン様なりにアルマを気にしてくれているんだろう。本当にサーヤに会ってから良い方向に変わられた。


そしてその翌日、アレックスとの定期連絡でこちらも出発する旨を伝えようとしたが、いつになく慌てた様子のアレックスから、心のどこかで予感していたが考えないようにしていたことが告げられた・・・―――






『アルマからの連絡が途絶えました。宿にもおらず、行方も分かりません・・・』
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