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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

港町を満喫しよう ~呪いを解くための代償~

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「おかえりサーヤ、ずいぶん早かった・・・ってカイト?!カイトだよね??久しぶり~☆」
「あ、カイたん!ひさしぶり、なの~☆」
「あ、セイル、ミナトもいる。久しぶりだね」



あの後、なんとか身支度を整えて白髪の少年を連れてセイル達と合流した。

・・・なんとあたしがイカ焼き・・・もとい、テイン焼きをあげた少年は、あたし達が探していた無属性の精霊王様であるカイトさんだった。
さっきもテイン焼きを頬張りながら普通のトーンであたしに声をかけてきた。

エルの結界魔法で確かに人は来なかったの、人は。
でもね、魔法は基本的に対人用であって精霊さんには効かないモノが多いのだ。
誰がこんなところに精霊さんが・・・しかも探してた精霊王さんがあらわれると思うの?!思うわけないじゃないか!!いくら何でも予想外すぎるでしょぉぉぉ!!!!
・・・見られた・・・水着を着ていたとはいえ、エルとえっちしてるところを見られたぁぁぁっ
もう絶対外でえっちなんてしないんだから!!エルのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


恥ずかしがっていじけているあたしをよそに、先ほどカルステッドさんからも連絡があり、宿が取れたということだったので場所を変えてからちゃんとお話するため、皆で宿屋へ移動することにした。

ミナトちゃんが久しぶりにあったというカイトさんに懐き、2人で仲良く手を繋いでいる。
そんな2人の姿が兄妹みたいで、ちょっとだけやさぐれたあたしの心がキュンキュンしてものすごく癒されたっ!超尊いっ!!



あたしに新しい癒しができました。







カルステッドさんが取ってくれたお部屋は、今回もキングサイズのふかふかベッドが素敵な豪華絢爛のスイートルームでした。
お風呂なんて薔薇風呂にできるみたいですよ!
ドラマの世界だけかと思ってた!!

もうエル=スイートルームなんですね。

人数・・・というか精霊王様が数人いるからこちらとしては広い部屋はとてもありがたいんだけどさ。

もちろんカルステッドさんやリンダやミリーさんは別の個室で、ミリーさんの部屋にはベルナートさんがいる。
今あたし達の部屋には、あたし、エル、セイル、ミナトちゃん、カイトさんの5人がいて、魔法袋に入っているお菓子でティータイムを過ごしている。

今日のおやつはナッツと胡桃入りのマフィンです。
マフィン自体に砂糖は使っておらず蜂蜜を入れてるけど、甘さが足りなかったらさらに蜂蜜をつけてもOK。
砂糖ばかりのお菓子は身体に良くないから、たまに砂糖を使ってないお菓子も必要なのだ。

天使は夢中でもきゅもきゅ食べている。
カイトさんももきゅもきゅ食べてるけど、さすがは男の子。あっという間にぺろりと平らげてしまった。

先ほど海辺で会ったときはものすごくお腹が鳴っていたし、さっきテイン焼きをあげたけどまだお腹が減ってるようなので、お肉たっぷりのキッシュもあげたらものすごく喜んでくれた。
・・・尻尾ぶんぶん振ってる子犬みたいだな。実際に尻尾はないけど。


「・・・―――で、カイトはゼノのこの海岸にずっといたの?」
「うん、ここは海が綺麗だし岩場はあまり人が来なくて落ち着くから・・・」
「確かにあたし達以外人がいなかったね」
「あぁ」
「たまにおねーさん達みたいなことをしに来てた人はいたよ」
「「!!」」

お願いです!それはもう忘れてくださいっ!!

「あー・・・うん、ボク人が来ない理由なんとなく分かった気がする・・・」

あたしとエルがいなくなった後、セイルやリンダは二手に分かれて情報収集してたみたい。
ミナトちゃんと一緒に砂の城を作っていたセイルは、声をかけてきた女性からある噂話を聞いていた。

「ここの砂浜・・・んだってさ☆」
「・・・出るって、な、何がよ・・・」
「も・ち・ろ・ん、幽霊☆」

この世界でも幽霊が出るの?!
あたしはそのたぐいの話が超苦手なので、思わずそばにいたエルの服をぎゅっと掴んでしまった。
エルはそれに気づいて、あたしの腰を抱き寄せてくれたのでちょっときゅんっとした。

「たま~に、食べ物屋さんの店の物陰にあらわれたり、岩場の方では目撃証言も多い白髪の少年の幽霊♪」
「え?・・・それって」
「あ、それ僕だ」

噂の幽霊の正体はカイトさん?!どうしてって思ってたらセイルが説明してくれた。

精霊さんは誰にでも見えるわけではなく、見える人や見えない人がいる。
精霊さんが見える人とカイトさんが話してるのを、精霊さんが見えない人が目撃してまうと、誰もいない場所に向かって会話している人がいる、見えないナニカと会話をしている・・・ということになってしまい、見えないナニカ=幽霊と言われるようになったらしい。

その噂はいろんな人が耳にしているらしいが、噂には尾ひれがつきもののため、“海でおぼれ死んだ少年の霊”とか“母親に捨てられた可哀そうな少年の霊”とか“人を海に引きずり込もうとする少年の霊”などという噂にまで発展しているらしい。

ふたを開けたらなんてことはない、カイトさんがいつものように食べ物をお店の人にもらって、岩場でのんびり過ごしているだけというとてもほのぼのとした事実だった。


「いつも食べ物をくれるお店の人がいるけど、今日は大きな船が到着して人がたくさん来たみたいで忙しそうだった。建物の影で待ってたら、おねーさんが声をかけてくれたんだ」
「あ!それであのときこっちを見てたんだ!!」
「(コクン)」

今日到着した船って間違いなくあたし達が乗ってきた船だ。それによっていつもの時間に食べ物貰えなかったなんて・・・ちょっと申し訳なくなって今度は野菜たっぷりのキッシュもあげた。
お肉だけじゃなく野菜も食べなきゃね!
カイトさんはまた尻尾をぶんぶん振って嬉しそうに食べている。
いや、尻尾はないんだけどどうしてもそう見えてしまう。


「・・・ねぇ、カイト。キミの魔法で“呪い”をなかったことにすることはできる?」
「「!!!」」

セイルが真面目な顔でカイトさんに質問した。
以前マデリーヌさんが言っていた、「カイトなら・・・―――」という言葉。

もしこれが本当ならすぐにでもエルの呪いと解きたい・・・――――――


「・・・できるよ、僕の魔法なら」


あたしもエルも思わず身を乗り出してしまったが、セイルはそんなあたし達を制し、カイトさんにさらに質問を重ねた。

「カイト、“呪い”を解くために必要な“代償”って何?」
「「??!!」」

呪いを解くために必要な“代償”・・・
やっぱりそう簡単なモノではないんだ。でも、その“代償”が用意できたらエルは・・・―――

「そうだね・・・必要な“代償”は・・・」

カイトさんはゆっくりとあたしを指さしてこう告げた。



「“代償”は・・・おねーさんの“大事なモノ”だよ」
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