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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船で過ごそう ~少しずつ変化する記憶2*~

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気怠い身体を起こそうとすると、相変わらずエルはあたしに挿入れたままみたいだ。
ここ数日本当にブレないな・・・


今朝のエルは、前みたいに初対面(?)のあたしに対して刺々しい態度がそんなになく、戸惑いの方が強そう。
あたしは昨日思いっきり泣いてちょっとスッキリしたのか、比較的記憶を失っている過去のエルを今は冷静に見ることができた。

「起きてから、サイドテーブルにセイルからの手紙と黒曜石があった。中身を確認したが、お前は本当に俺の、その・・・婚約者で間違いないのか?」
「はい・・・婚約者です、一応・・・」

セイルが一体いつココに来たのかは考えたくないけど、手紙と一緒に持ってきた黒曜石って、ベルナートさんに作ってもらった過去の映像ってことだよね?いったいどんな内容なんだろう?

「ねぇ、エル。そのセイルからの手紙見せて。あたしも読みたい」
「あぁ、これだが・・・」
「ありがとう」

手紙を読むとき、さすがにエルはあたしからモノを抜いてくれた。
でも、起き上がろうとしたら、枕を背にしたエルがあたしを後ろから抱きしめるように座る体勢を取ったので、結局密着している状態である。この包み込まれるような体勢はあたしも好きだからちょっと嬉しい。

そして、セイルの手紙を見せてもらったあたしは思わず固まってしまった。


・・・読 め な い 


「お前は・・・字がまだ読めないのを忘れていたのか?」
「うぅ・・・ごめんなさっ、って・・・えぇぇ?!なんでそれを!!」
「ふっ、どうやら部分的に覚えているところがあるみたいだな・・・わからないのにわかるとは変な感じがするが」
「そうなんだ・・・」

とりあえずエルにセイルからの手紙を読んでもらった。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
エリュシオンへ☆

おっはよ~☆気分はどう?
今ボク達は、エリュシオンの故郷であるエルフの里の向かうためメラニウム王国に船で向かってるところだよ☆
隣で眠ってるのはキミの婚約者で、ボクを含めて複数の精霊王や精霊が加護を与えている人間のサーヤ。
キミのお父さんからの手紙をきっかけに、エルフの里に婚約者を連れて挨拶に行くことになったんだって♪
昔のキミでは考えられないことだよね~
でも、事実だから。嘘だと思うならそばにある黒曜石に魔力を込めてごらん☆
証拠がそこに残ってるからね♪

後、いくら妖精の粉や回復魔法でサーヤを回復させられるにしても、そんな毎日抱き潰しちゃ可哀そうだから、たまには手加減してあげてね☆

最後に、この手紙と黒曜石は毎日ここに置いて、朝必ず確認すること。
いちいち説明するのめんどくさいからね~よろしく☆

セイル
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

手紙を読んでもらいながら、セイルらしいなと思いながらも、恥ずかしすぎてあたしは顔を覆ってしまった。

バレてるっ、毎日エルになんだかんだと抱き潰されてることやっぱりバレてるぅぅぅぅっ!!!!
しかも証拠だって言ってる黒曜石の中身がすっごく気になるけど、さらに恥ずかしいことになりそうで見たくないっ!!!

「・・・あの、エル・・・黒曜石の中身って、見た?」
「あ、あぁ・・・凄いな。お前はあんなに乱れ・・・」
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!!バカバカっ、そこじゃないでしょ!!!自分のことよ!自分のこと!!」

どの時の映像かはわからないけど、やっぱりえっちしてるときの映像なんだ!!
うぅ、“実はあの時見られてた”なんて今さら気づきたくないから、絶対見たくない・・・

「・・・にわかに信じがたいが、間違いなく俺だった・・・それに、手紙を読んだ後お前を見ていたが、見ていると触れたくなって、触れたら触れたでお前のナカに挿入りたくなって、つい・・・」

起きたとき挿入ったままだったのはそういうことですかっ!
しかも、今現在も密着してるから固くなってるモノがあるのがわかりますけどねっ!!

背後にいるエルが、後ろから抱きしめている手でそのまま胸を揉んだり、秘裂をくちゅくちゅと弄り始め、首筋や肩にキスをしたり甘噛みをする。
もちろんあたしの身体は敏感に反応して、すぐにでもエルを迎え入れる準備が整ってしまう。

「ん、はぁ・・・」
「サーヤ・・・俺もここに挿入っていいか?俺の手で乱れるお前が見たい・・・・」
「ぁ、んんっ、そう言いながら、指っ・・・もう挿入れてっ、あぁぁぁっ」
「ふっ、指だけでこれか・・・ふっ、堪らんな、挿入れるぞ」
「ぁ、やぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


結局朝から美味しくいただかれてしまうことに変わりがないなら、セイルの手紙にあたしも一言、“抱くなら優しくお願いします”と追記させてもらおう。
じゃないと陸に着いてからもこんな生活続いたら、あたしはまったく動けなくなってしまう。そんなのはイヤだ。


ようやく身支度を整えたあたしとエルの元に、タイミングを見計らったかのようにセイルとカルステッドさんとアレク兄様がご飯を持って部屋に来てくれた。
・・・もう気にしちゃいけない、気にするのはやめよう。

「さて、今日のエリュシオンは296歳ってところかな?」
「あぁ、そうだ。城で魔法省のトップをしている」

なんと!お城に勤めてた頃のエルってことは、前に着てくれた正装とかもたまにしていたんだろうか?
またあの服着て欲しいなぁ・・・

「昨日獣人女があれからいろいろ話してくれたよ。サーヤに言われてようやく自分のしでかしたことを反省したみたい。・・・一人ぼっちになった自分と同じ孤独をエリュシオンも味わえば良いって思ったんだってさ、ホントにいい迷惑だよ」
「ミリーさん・・・」
「ま、獣人女の話はどーでもいいから、呪いの話をするよ☆」
「では、まずこの地図を見てください」

アレク兄様がテーブルの上に地図を出した。この世界で言う世界地図みたいだ。
そのままアレク兄様が今現在の位置や行く場所についてわかりやすく説明してくれるらしい。

「我々は、このシュルテンから船で、ここにあるゼノに向かっています」
「昨日獣人女から“忘却の呪い”はトルク村で出会った同じ獣人仲間から聞いたって言ってたよ☆」
「トルク村は・・・ここです。ゼノから海沿いを少し西に行った場所にあります」
「えっと、フランさんと合流予定のメラルダはどの辺なんですか?」
「メラルダはトルク村をさらに西に行った・・・ここだ」
「良かった、方向が同じなんですね」
「あぁ」

ということは、解呪の方法を探しながらメラルダを目指す感じなんだろうか?

「確かに向かう方向は同じだが、着いてから情報を探すのでは明らかに遅すぎるし、我々としてもエリュシオン様に早く呪いから解放されて欲しいと思っている」
「えぇ、せっかくサーヤがエリュシオン様と結ばれるという大変名誉な関係なのに、それを邪魔するなど言語道断ですから」

んん?!アレク兄様?眼鏡をくいっと直しながら言ってることがおかしくありませんか??!!

「ということで、エリュシオンには黒曜石と手紙を毎朝読んで理解してもらえたら大丈夫だと思うし、獣人女もおとなしいから、そろそろ行動開始しても良いかなと思ってね☆」
「行動、開始?」
「えぇ、俺とアルマで先にメラニウム王国へ行き、そのままトルク村で情報収集をしてきます。行動開始すると言っても俺とアルマだけだから、サーヤはこのままエリュシオン様と共に過ごしていて大丈夫だ」
「何かあればアレックスから俺に伝達魔法で連絡をくれることになっているし、朝晩の定期連絡で現状も確認し合う予定だから問題はない」
「とりあえずゼノの位置はわかったから、ボクは2人の準備ができ次第転移で送ってくるよ☆」

・・・なんという連携プレー・・・そして頼もしい仲間なんだろう。

「エル、素敵な仲間に囲まれてて幸せだね」
「あぁ・・・そうだな。未来の俺には頼れる仲間というものがようやくできたのだな・・・」

やっぱり、今の言葉からもわかるが、エルには心許せる仲間と呼べる人がいなかったんだね。
少しでも早く呪いを解いて、本来のエルと一緒に今回の旅行を楽しみたいな・・・

「あ、エリュシオン☆例の激マズ魔力回復薬、まだ持ってるならいくつか貰える?」
「あぁ、魔法袋にまだ入っているはずだが・・・セイルが飲むのか?」
「あは☆まさか~そんなわけないじゃない♪ちょっと駄犬を調教・・・いや、躾けるためにね☆」
「・・・駄犬?お前、犬なんて飼ってたか?」
「・・・」

言葉を言いなおしてたけど、調教と躾けってそんなに変わらないからねっ!!
・・・ちょっとだけベルナートさんが心配だわ・・・
そして、すっかり駄犬とかわんこ扱いになっている・・・闇の精霊王なのに、今も一番頑張ってるのに・・・





記憶を失ってもリセットではなく部分的に覚えていることが増え始めているエルは、手紙と黒曜石のおかげで特に取り乱すこともなく、この後も船での生活を楽しめるくらいにはなった。
エルはあたしのそばを離れることがほとんどないため、いちゃいちゃするだけじゃなく、船の上でできそうな魔法の特訓もしてくれることになり、いろんな意味で大変ではあったけど充実した船上生活でした。


そして、ついに・・・――――――




「とうちゃく、なの~☆」





あたし達は、メラニウム王国の港町ゼノへ到着しました!
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