【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船で過ごそう ~わんこへのご褒美としつけ2~

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転移してきたのはエルだった!しかもめっちゃ怒ってる~~~~~っ!!!!!
しかも、ベルナートさんもエルの気迫にめっちゃ怯えてるしっ!!!!

あたしはエルに引き寄せ抱きしめられている。
服装の乱れを見たエルが舌打ちをしながらあたしに話しかけてきた。

「・・・セイルから事情は聞いた。そこの駄犬が今ミリーを死なせないためにずっと魔法を使い続けて、そろそろ魔力切れ起こすところだとな・・・」
「エル・・・」
「効率よく魔力を与えるためにサーヤが口移しでもして、駄犬が調子に乗ったのであろう」

概ね当たってるんだけど、さっきからベルナートさんのことを駄犬って・・・
いや、確かにベルナートさんに犬耳や尻尾みたいなのが見えてしょんぼりしてるように見えるけどさっ!
一応、闇の精霊王様ですからねっ!!!!

「魔力をすぐに回復させたいなら、俺特製のイイ薬を飲ませてやる、よっ」
「んぐっ、んんっ、~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」

エルは自分が持つ小瓶に入った、青汁みたいな色の液体をベルナートさんの口に突っ込み、口を押えた。
・・・ものすごく苦しそうなんだけど、大丈夫なんだろうか?




しばらく苦しんだ後、ようやくベルナートさんが復活した。

「うっぷ・・・っぐ、ぉえっ、死ぬかと、思った・・・アレ、なに・・・?」
「俺特製の魔力回復薬だ。味は最悪だがだいぶ回復したであろう?」
「うん、だいぶ回復した・・・でも、もう二度と飲みたくない・・・」

そんなに不味いんだっ!味が気になるけど飲んだらものすごく後悔すると思うから絶対飲みたくないなっ!!

「おい駄犬。こいつは俺のモノだ。今度手を出したら・・・今度は倍にして飲ませるからな」
「(コクコクコクコク)」

顔を真っ青にしながら、ベルナートさんがものすごい勢いで頷いている。
・・・これでベルナートさんに襲われることはない、のかな?

「・・・サーヤに、触れるのもダメ?」

ベルナートさんが子犬のようにきゅ~んと尻尾と耳を垂れさせた状態でエルを見上げている。
エルもなんか、ミナトちゃんの涙ほどじゃないけどちょっと絆されそうになってるみたいだ。

「・・・抱きつくくらいなら良い・・・俺がサーヤの傍にいるときだけだがな」
「!!」

抱きつくまでならエル公認になった??!!あれ?あたしの意思は??!!

ベルナートさんも許可を得たことで尻尾をぶんぶん振っている。・・・いや、実際尻尾はないんだけどそう見える。

「サーヤ、ぎゅ~~っ」
「へ?きゃぁぁっ」
「おいこらっ、俺がいるとき常に許可しているわけではない!今は離れろ!!」
「エリュシオンの嘘つき。さっきはそんなこと言わなかった」

今はエルがいるからと抱きついてきたベルナートさん。
胸元に顔を埋めてきたけど、まだシャツのボタンさっきのままなんですけどっ!!

「・・・ふふ、サーヤの胸はやっぱり柔らかくて気持ち良い」
「やっ、ベルナートさんそこで喋っちゃ・・・んんっ」
「駄犬にはもっとしつけが必要なようだな・・・特別に3本飲ませてやろう」
「やだっ、助けて、サーヤ!!」
「ちょっ、やっ、そこに顔突っ込まないで~~~~っ」

駄犬ベルナートさんにしつけをしようとするエルと、薬を飲みたくなくてあたしの胸に顔を埋めてくる大きなわんこベルナートさん、「いい加減はなれなさいっ」とぽかぽかベルナートさんを叩くあたしというとてもカオスな状況で、ここがすっかりどこであるかをあたし達は忘れていた・・・―――





「アンタ達っ、痴話げんかなら別の場所でやりなさいよっ!!!!」





そう、ここはミリーさんの部屋でした。





「いったい何なのアンタ達!!人の部屋でいきなりいちゃつき始めたかと思ったら・・・その、最後までシようとし始めるしっ・・・人が寝てると思ってなにヤってんのよ!!」
「いや、最後までなんてする気は・・・」
「サーヤ、最後までって何?」
「「アンタは(ベルナートさんは)黙ってて!!」」
「・・・はい」
「あと、アンタ!!」
「へ?あたしも??」
「アンタはエリュシオンの婚約者なんでしょ?!婚約者がいるくせにこいつといちゃいちゃしてんじゃないわよ!!」
「はいっ、すみませんでした!!」

・・・なぜかあたし達は今ミリーさんにお説教されてます。
病気って言ってたけど、結構元気あるんだね。

「・・・っぷ、くくく・・・お前ら、ミリーの説教は長いからまだまだ終わらんぞ」
「エリュシオン・・・」
「俺、もう疲れたから眠い」
「あたしも、そろそろ部屋に・・・」
「いいからアンタ達はまだそこに座ってなさいっ」
「「はいぃっ」」

ミリーさんはその後延々と怒り続け、ついには「婚約者を管理しきれていないっ」とエルにまで飛び火し、説教をされているにもかかわらず、エルはどことなく嬉しそうな、懐かしそうな顔をしていた。

だけどすぐに状況は変わる。



「ねぇ、キミ達いったい何やってるの?何で獣人女に説教されてるわけ?」



セイルがここに転移してきたことで、皆が一斉に我に返った。

ホントだ。騒いで迷惑かけたことは申し訳ないし、変なトコロお見せしてすみませんって感じだけど、元はミリーさんがエルに呪いなんてかけたからじゃないか!!

「そもそもキミ、自分の立場わかってるの?呪いがキミの死を持って完成するのを阻止するために生かしてあげてるだけで、生きてるだけで良いならもっと別の方法だってあることを理解しておいた方が良いよ」
「!!」
「今のエリュシオンは、キミのせいで最愛の婚約者だって忘れちゃってる状態なんだよ?・・・自分がどれだけのことをしたか身体に教えないとさすがにわからないかなぁ・・・」

セイルの言葉と雰囲気に、顔を真っ青にするミリーさん。
さすがにちょっと・・・本当に少しだけ可愛そうになってきてしまった。

「あの、ミリーさん」

許すつもりはないけど、エルが記憶をなくしたことで聞けなかったことも聞けたし、どの瞬間のエルも、最初は戸惑うけど結局あたしが好きなエルであることに変わりないと気付いた。

「あたしはあなたがしたことを許せるほど、懐の深い人間じゃありません。でも、記憶があったら答えてくれなかったであろうことも聞けたし、たとえ記憶を失って、あたしのことを忘れてしまっていても、今でもエルはあたしとの繋がりを忘れないでいてくれるほど強く想ってくれていることがわかったし、あたしもどんなエルでもやっぱり好きだなと改めて気づきました。感謝する気はありませんが、悪いことばかりでもありません」
「・・・」
「あなたは“忘却の呪い”によって、すべてを忘れたエルが孤独になり、結果あたし達が別れれば良いとでも思ったのかもしれないけど、こんなこと位じゃあたし達は別れたりしません。舐めないでください」
「・・・」
「あたしは死ぬまで、エルと別れるつもりはありません。どんなことがあったって、エルと一緒に乗り越えて見せます。あなたの望み通りになんかなりませんから」
「サーヤ・・・」

言いたいことは言い切った。強がりだって思われるかもしれないけど、事実でもあるからどうしても言いたかった。こんな呪いになんて負けない、負けたくない、望み通りになんてなるもんか。
泣くな、弱いところを相手に見せるな、もう少し頑張れ、自分。

拳を強く握りしめて震えていたあたしの手を、エルがそっと握ってくれた。


「話はもう終わったし、駄犬の魔力も回復したから俺達は部屋に戻る・・・ついてくるなよ」






エルはそう言って、あたしを連れて転移魔法で部屋まで戻った・・・
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