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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船で過ごそう ~わんこへのご褒美としつけ~

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あたしは今、ベルナートさんがいるミリーさんの部屋の前に向かっている。
記憶がなくてもそばを離れようとしなかったエルは、セイルがなんとか引き止めている状態だ。

記憶を失う前のエルにはちゃんとベルナートさんのこと説明したけど、あのときに約束した・・・


『もう、俺以外と口づけなどするな・・・』



・・・どうしよう。
ベルナートさんはご褒美って言ったら絶対キスしたがるよね。
キスはダメと伝えてハグのみにするか・・・大きなわんこベルナートさんは言うこと聞いてくれるんだろうか・・・


部屋の前に着くと、アルマさんがいた。

「あ、どうも」
「(ペコリ)」
「えっと、ベルナートさんは中に?」
「(コクリ)」
「中に入っても・・・?」
「(ガチャ・・・)」

寡黙だと聞いていたアルマさんは、ここまで一言も話すことなく表情もほとんど変わらず・・・というか、片目が長い前髪で隠れてるからなおさら表情もわかりづらい。
あ、でも食べるのが好きって言ってたっけ?

「アルマさん、良かったらこれどうぞ」

あたしは魔法袋からお肉たっぷりのキッシュを出した。

「今食べても良いし、後で食べても良いし・・・」
「・・・っ、貰っていいのか?!」
「え?」
「ありがとう!」

先ほど寡黙で無表情だと思っていたアルマさんは、食べ物をあげたら嬉しそうに顔を上げ、その時見えた前髪に隠された瞳は、なんと金色と赤のオッドアイだった。
嬉しそうに食べて、時折手に着いたソースを舐めているアルマさんを見ててふと思った。

猫みたい!・・・このツンデレ感、仕草、オッドアイ!今ものすごく猫を餌付けしてる気分だっ!!
あぁっ、もう食べ終わっちゃったの?なんかしょんぼりしてる??

「あの・・・もう一つどうぞ」
「!!」

今あたしには尻尾がピーンってしたのが見えた。
うん、彼はあたしの中で猫だ。また今度キッシュとかお菓子とか持ってきてあげようと心に決めた。

「じゃあ、ベルナートさんに会ってきますね」
「(コクコク、もぐもぐ)」

大きなわんこベルナートさんに会う前に、ツンデレな猫アルマさんに癒されてしまった。
うん、わんこにはご褒美もあげなきゃだけど、ちゃんとしつけもしないとね!!

そんな気持ちでミリーさんの部屋の中に入った。







ミリーさんの部屋は1人部屋で、ベッドとソファ、そして洗面所というシンプルなワンルームだ。
ベッドにはミリーさんが眠っている。そしてベルナートさんはソファに座っているみたいだけど・・・あれ?なんか具合悪そう?

近づいてみてすぐに分かったが、顔色がものすごく悪い。
え?!どうして??!!

「ベルナートさん?!大丈夫??!!」
「ん・・・サー・・・ヤ?」

手を握ると少し汗ばんでるけど、それが冷えた後なのか冷たい。
一体何があったの??!!

「ごめ・・・、今魔力が、ほとんど、なくなってきてて・・・」
「え?」
「城で、結構使ったけど・・・はぁ、その後も、大丈夫かなって、ちゃんと・・・っ、回復してなかった、から・・・」

城って・・・もしかして、アネモネさんにいろいろ指示されてたとき?
しかも、あたしもずっとベルナートさんの特殊空間にいたから、あの時だってだいぶ使ってたはずだよね?
あのあとちゃんと回復してなかったってこと??

「バカっ、どうして自分の回復をちゃんとしなかったの!」
「・・・ミナトが先って、思って・・・はぁっ・・・はぁ・・・」
「!!!」

もうっ!バカバカっ!!自分のことくらい自分で管理しなさいよっ!!!
・・・って、ミリーさんの件でこんなことになるなんて誰も思わなかったから仕方ないか。
今も結果的にあたしのために頑張ってくれてるんだもんね・・・

あたしはベルナートさんの冷たくなった手を取って、魔力を流すイメージをする。

「・・・サーヤ・・・?」
「いっぱい頑張ってくれてありがとう。だから、あたしの魔力を分けてあげるね」
「うん、ありがとう・・・サーヤの魔力、あったかい・・・」


しばらく握った手から魔力を流しているものの、少量しか流れていない気がする。
依然とベルナートさんは苦しそうだし、もっと効率よく魔力を分けれる方法って・・・


『魔力を注ぐ一番効率の良い方法は“”だ』


いやいやいやっ!!さすがにそれはダメですっ!!!!!

以前にエルが言っていたことを思い出した。
エルが瀕死だったあたしを拾って魔力を与えた方法は、いわゆるえっちすることだったけど、さすがにそれはイヤだ。だったらどうしたら・・・

「・・・やっぱり、人命救助は人工呼吸・・・なのかな」

エルとの約束があるけど、これはあくまで救助活動だ!そう言い聞かせてソファに座っているベルナートさんを踏まないよう、立ち膝で跨いで身体が正面の位置にくるように調整する。
そして、ベルナートさんの両頬をそっと掴んだ。

「ベルナートさん、これはあくまであなたを助けるためにすることだからね」

朦朧としているベルナートさんに届いているかはわからないが、自分に対してのけじめと宣言だ。

そして、そっとベルナートさんの口唇に自分の口唇を重ねた・・・―――





「ん、はぁ・・・ふっ、ぁふ、んんっ」
「ん・・・ぁむ、サーヤ、ちゅ・・・んむっ」

ただキスをするよりも、やはり口を開けた方が魔力の流れる量は多いようだ。
そのため、口を開かせようとすると、どうしても反応するベルナートさんが舌を絡めてくる。

「ん、こらっ、今は魔力あげてるだけ・・・んんっ、ぁ、舌、そんなにっ・・・んむっ、はふ」
「はぁっ、もっと・・・ん、ぁふ、ちょうだい・・・舌も、んんっ、魔力も」

少し身体に体温が戻ってきたベルナートさんは、あたしの身体をぎゅっと抱きしめて離そうとしない。

「やっ、元気になったなら、離しっ・・・んんっ、ふぁ、や、ぁむっ」
「んんっ、まだだよ・・・もっと、サーヤが欲しい、ん・・・はぁ」

だいぶ余裕が出てきたのか、ベルナートさんは片手であたしの身体を抱きしめ、もう片方の手で胸を触ってきた。

「んっ、や、バカっ・・・キス以外はだめっ、んんっ、ふぁ、やぁっ」

元気になってきたベルナートさんとは逆に、魔力を与えたことで力が抜けてきたあたしは、抵抗する力がほとんど残ってない。・・・どうしよう、このままじゃ・・・

ベルナートさんの行動はさらにエスカレートして、シャツのボタンを外して下着の上からあたしの胸にキスをし始め、さっきまで胸を揉んでいた手はスカートの下から下半身を触ろうとしていた。


「・・・っ、やっ、ヤダって言ってるでしょっ!!待てできないわんこなんて大っキライっ!!!!!」
「!!!」


あたしが叫んだと同時にシュンッと誰かが転移してきた音が聞こえた気がした。
ポロポロ泣いてるあたしにベルナートさんがおろおろしてたところで、あたしは後ろからぐいっと引っぱられた。




「・・・おい、貴様。俺のモノにナニをしている?」








あらわれたのは、ものすご~~~~~~く不機嫌なエルでした・・・――――――
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