上 下
185 / 512
5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船で過ごそう ~呪いに負けない絆3~

しおりを挟む



・・・――――――あたしは今、猛烈に怒っている。





「ふ、ふ・・・」
「ふ?」
「ふざけるな~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」
「ぅわっ、なんだ急に・・・って、はぁ??な、挿入ったまま??」


なんなの?!なんなのっ??!!またなのぉぉぉぉぉぉぉぉ????!!!!







「・・・で、今のエリュシオンの年齢は?」
「はぁ?!俺の年齢なんてほとんど気にしたことないのに、急にどうしたんだ?セイル」
「いいからいいから、そーゆーのいらないから。で、何歳?」
「はぁ・・・今は306歳だ。・・・これで満足か?」
「「・・・」」


思いっきり叫んだあと、そのままセイルを呼ぼうと思ったけど、記憶を失ったエルとえっちしてる状態だということに気づき、とりあえずエルに大まかな事情を話した。
頭では記憶が遡ってるんだから仕方ないとわかってるんだけどなんかもうやるせなくて、その上で「続き、するの?しないの?」と、半ば逆切れ状態でエルに迫るも、そこはさすがエル様、「よくわからんが、やられてばっかでいられるか」と変に負けん気を起こし、あたしは完全に魔王様に敗北しました。

結局エルに勝てないことと、昨日までの頑張りがまた無駄になってしまった悔しさと、またエルに忘れられてしまった悲しさでごっちゃになったあたしはボロボロに泣いてしまい、困ったエルはわからないなりにあたしを慰め、洗浄と回復魔法をかけ身支度も整えてくれた。
・・・なんだかんだとやることは一緒なんですね。



そして、セイルが年齢を聞いたときの話に戻るわけです。
さすがに2回目にもなると、あたしもセイルも無言になっちゃいました。
だって、これを呪いが解けるまで毎日繰り返すの?って感じだし・・・

「・・・おい、セイル。この女は何なんだ?俺の婚約者などと言っているが・・・ここにいるということはお前も知り合いなんだろう?」
「あー・・・うん、知り合いってゆーか・・・ねぇ」
「そうだね・・・あたし、一応セイルの加護もらってるよねぇ」
「はぁ?!・・・おまっ、セイル、人間があれほど嫌いだって・・・」
「人間は変わらず嫌いだよ☆この子は特別♪」
「なんだそれは・・・意味がわからん・・・」

ですよね。気持ちはわかるよ、わかるんだけど・・・

「あの・・・いい加減離れてもらっても良いですかね?」

あたしのことを散々誰だと言い、横柄な態度を取りながらも、ソファに座りあたしを後ろから抱きしめて離さない矛盾した行動をとるエル・・・これは何か?コントか何かですか??

「・・・離そうとすると身体が動かぬ。それにお前に触れていないと落ち着かない・・・なぜだ」

いやいやいや、あたしに聞かれましてもっ!!!!
エルが呪いに対して抗っている方向がなんだかおかしい気がして、嬉しい気持ちよりツッコみたい気持ちがどうしても強くなってしまう。

「ん~・・・毎日これだとさすがに疲れるよね・・・」
「うん」
「なっ、お前ら俺の扱いがおかしくないか?」
「「はぁ・・・」」

思わずため息ついちゃったら、セイルも同時に吐いていた。
珍しく同じ気持ちみたい。

「エリュシオン、これから話すことは信じられないかもしれないけど全部本当のことだから。めんどくさいから質問とか文句はナシね!いい??」
「いや、それ聞く意味ないんじゃ・・・」
「実はエリュシオンはね・・・―――」
「おいっ、聞けよっ!!」

やっぱりコントみたいです。





「―――・・・というわけで、今キミの呪いを解くために皆で頑張ってるんだ☆」
「・・・そうか・・・にわかには信じがたいな」
「ん~、めんどくさいなぁ・・・またカルステッド呼ぶ?」
「でも、20年前ってカルステッドさんとエルって知り合ってるのかな?」
「あ~・・・微妙だね」
「ね、そろそろお腹すいたでしょ?魔法袋に入れてあるお菓子出すからお茶にしよう」
「あ、いいね☆スコーンはある?」
「あるよ~」
「お前らっ!!緊張感なさすぎだろっ!!ホントに呪いなんてかかってて、そのために動いてるのか??!!」

ありゃ、さすがにエルがキレちゃった。

「あのね、エル・・・あたしね、昨日はいっぱい泣いたんだよ」
「・・・」
「だって、“愛してる”とか“嫁になれ”とかいっぱい言って、いっぱい愛してくれたのに「お前、誰?」って・・・」
「俺が・・・そんなこと・・・」
「このブレスレットも、この指輪も、この手紙も、全部エルがくれたものだよ」
「・・・」
「それに、エルがいっぱいつけたキスマークだって・・・」
「だぁぁぁっ!わかった、わかったから、それは十分見たから!!お前はもう黙れ!!!」
「むぅ・・・」
「ふふ☆エリュシオンってホントに独占欲強いんだね~♪」
「そうだよ、エルってばホントに・・・」
「だからっ、いい加減黙れ!サーヤっ!!」
「「!!」」

今、名前呼んでくれた・・・?!

「エル・・・今っ、名前・・・」
「名前?・・・こいつの名前を呼んで何がおかしい」
「ボク、この部屋に入ってから一度もサーヤの名前呼んでないよ☆・・・どうして言えたんだろうね♪」
「!!」

昨日までのエルなのか、記憶を失う前のエルなのかはわからないけど、間違いなくエルは少しずつ呪いを押しのけてるような気がして、嬉しくてエルに抱きついた。

「エ、ルっ、っぐず、エルっ・・・エル~~~~~っ」
「・・・まったく、俺の婚約者とやらはこんなに泣き虫なのか?啼くのはベッドの上で十分・・・イテっ」
「っく、時と場所を、考えて・・・っぐず、モノを言いなさいよっ!エルのばか・・・」
「ふふ☆エリュシオンも頑張ってるみたいだね♪」


その後はちょうどお昼時だったので、魔法袋に入れてある料理と、デザートとしてセイルにスコーンと、エルにプリンもあげた。
家ではすっかりお馴染みになった野菜たっぷりのキッシュも、今のエルは初めてなのでとてもビックリしていたし、記憶を失ってもプリンはやっぱり好きみたいで、食べたときに言葉に出さないで感動する姿は、あたしの知ってる可愛いエルでちょっとキュンっとしてしまった。



呪いの影響で1日ごとに記憶が10年遡ってしまうエル。
毎日リセットされてしまうようでも、少しだけほころびがあるのか、無意識にあたしの名前を憶えててくれたことが凄く嬉しい。

・・・ってことは、記憶を失ってても強い印象さえ残せれば覚えてていられるんだろうか?






エルが忘れてしまわないために、今夜は何をしてあげようか・・・

あたしはあたしなりに呪いに負けないよう頑張る決意を改めてしたのでした。



「あ、サーヤ。そろそろベルナートに“ご褒美”お願いね~☆」
「!!」






しまった。忘れてた。
ベルナートさんへのご褒美・・・どうしよう・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる
恋愛
 気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。  主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。  もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。  ※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません

青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく そしてなぜかヒロインも姿を消していく ほとんどエッチシーンばかりになるかも?

【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のお兄様IFルートになります。 侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは五歳の春。前世の記憶を思い出し、自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付いた。思い出したのは自分にべた甘な兄のお膝の上。ビアンカは躊躇なく兄に助けを求めた。そして月日は経ち。乙女ゲームは始まらず、兄に押し倒されているわけですが。実の兄じゃない?なんですかそれ!聞いてない!そんな義兄からの溺愛ストーリーです。 ※このお話単体で読めるようになっています。 ※ひたすら溺愛、基本的には甘口な内容です。

処理中です...