上 下
175 / 512
5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船に乗ろう~幸福の中に忍び寄る一つの影2~

しおりを挟む



「ふわぁ~~~、おふねさん、おっきいの~♪」
「ミナト、近くに寄りすぎると危ないからこっちにおいで☆」
「あいっ、セイたん!」


今日はいよいよ船で出発です!
天気は良好!海風も気持ち良くて出発日和です!!
予約した人達が集まる出発用の集合場所で、船の準備ができるのを待っています!!!

そして、あたしの体調はというと・・・―――


「・・・うぅ、腰がまだ痛いってゆーか重い・・・エルのばか~~~っ」
「・・・」
「サーヤ、怪我でもしたの?」
「あ、ベルナートさん!えっと、その・・・怪我ではないよ、ははは~」
「?」

意味が解っていないベルナートさんと、意味を解っていて放置してくれているカルステッドさん達。
・・・気のせいだろうか、アレク兄様がなんかイイ顔をしてこっちを見ている気がする・・・
ちなみに、セイルはミナトちゃんと今日これから乗る船を近くまで見に行っているのでこの場にいない。


エルの宣言通り、昨日・・・というか今朝まであたしとエルは必要最低限以外ベッドから出ることなく過ごした。
もちろん回復魔法をかけてもらったんだけど、さすがに倦怠感までは消えなくて動けなくはないけどものすごく重い。・・・痛くない生理痛みたいな感じとでも言うのだろうか。
言いたくて言えなかったことや、聞きたくても聞けなかったことを全部言えたのは嬉しかったけど、出発の段階でこんな状態になることをあたしは望んでないっ!!

「どうせ船の中は退屈になるんだ。多少動けなくても問題なかろう」
「それはそうかもしれないけど、船の中だっていろいろ歩きたいの!何もなくてもエルと一緒に見て回りたかったのに・・・」
「・・・すまん、回復したら付き合ってやる」
「むぅ・・・動けない間は前みたいにいろいろお世話してもらうんだからね」
「あぁ、食事も風呂もトイレもすべて俺が・・・」
「だぁぁぁぁっ!!だから口に出して言う言葉を考えなさいっ!!!」

そんな感じでもう少しで出発です!



・・・そんなあたし達の様子を見ていた一つの影があった・・・

「・・・あれって、髪色は違うけど、もしかして・・・エリュシオン?」








無事に船に乗ったあたし達は、とりあえず部屋で休憩することにした。
今回の客室も、この船の中ではスイートルームのようなとても広いお部屋でした。

・・・エルって旅行行くときは毎回こんな豪華な部屋なの??

カルステッドさん達はそれぞれ個室を取っていて、情報収集と設備の確認だと言ってすでに船内をいろいろ回っているらしい。

「気にするな、あいつらのソレは職業病みたいなモノだ」
「そうなんだ・・・」

晩ご飯は一緒に食べれるというので、それまではあたしが魔法袋に入れてきたお菓子を出して、部屋でティータイムを過ごしていた。

「今日のお菓子はドーナツです!」
「ですっ!」
「へ~、おもしろい形してるね☆・・・ん、甘くて柔らかくて美味しい♪」
「ん、美味しい」
「揚げたモノに砂糖をまぶしたのか・・・作り方も味も不思議だが美味いな」

それぞれが感想を言い合う中、エルは相変わらず研究と同じように分析して食リポをする。
あなたのソレも立派な職業病だと思うよ。

「サーヤまま、おいちいね☆」
「ふふ、たくさんあるけど、食べすぎると晩ご飯食べれなくなっちゃうから2つまでね」
「あいっ」

天使は今日も元気で良い返事です。うん、超可愛い♡



おやつを食べて、歩く程度なら問題ないくらい回復したあたしは、エルと船内を散策することにした。
食べたぶん少しでも動いておかないとね!

「ん~~っ、海がきれいだね~♪」
「そうだな。前の世界にも海はあったのだろう?」
「うん、あったよ!綺麗なところはすごく綺麗なエメラルドグリーンだったり、底が見えるくらい綺麗な青だったりしたなぁ。でも、科学が発展してたぶん汚染されたりしてるところもあったね」
「なるほどな・・・発展するには何かしらの代償が必要というわけか。どこの世界も変わらんな」

そんな何気ない話をしながら人気のないデッキで海を見ながらエルと話をしていた。
手すりに置いていた手の上に、エルの手が重なった。

「どうしたの、エ・・・んんっ」
「ん・・・はぁ、ふ」

振り返ったらエルにそのままキスをされた。
だんだん深くなるキスに力が抜けそうになると、ちゃんとエルはあたしを支えるよう抱きしめてくれる。

「んちゅ、ふ・・・もうっ、いくら人がいないからってこんなところで・・・」
「イヤ、だったか?」
「・・・イヤじゃないけど・・・バカ」

その後も、人がいないのを見計らったエルに何度も何度もキスされた。
もう、こんなんじゃ船内散策どころじゃないじゃないか・・・と思いながらもあたしはエルのキスに反応する。

「ん、はぁ・・・ダメ、これ以上は歩けなくなっちゃう・・・」
「歩けなくなったら俺が運べばいいだろ」
「もうっ、抱っこされるのだって見られたら恥ずかしいのっ!!」


そんないつものような会話をしているときだった・・・――――――



「エリュシオンは・・・もうお姉ちゃんのことを忘れちゃったの・・・?」





声のした方向を見ると、そこにはブラウンの長い髪で片目を隠した琥珀色の瞳の人(?)がいた・・・―――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません

青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく そしてなぜかヒロインも姿を消していく ほとんどエッチシーンばかりになるかも?

【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のお兄様IFルートになります。 侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは五歳の春。前世の記憶を思い出し、自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付いた。思い出したのは自分にべた甘な兄のお膝の上。ビアンカは躊躇なく兄に助けを求めた。そして月日は経ち。乙女ゲームは始まらず、兄に押し倒されているわけですが。実の兄じゃない?なんですかそれ!聞いてない!そんな義兄からの溺愛ストーリーです。 ※このお話単体で読めるようになっています。 ※ひたすら溺愛、基本的には甘口な内容です。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...