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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~

船に乗ろう~港町 シュルテンへ2~

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エルおすすめのシュルテン名物、“ルント”という魚は、とても脂がのった美味しいサーモンみたいなものだった。
前の世界であたしも大好きだったサーモン!それは何にでも合うよね!!

ルントって見た目すごくこってりなのに、意外とさっぱりしててパクパク食べてしまった。
特にあのパイ包みは最高!ちょっと細かくしてホワイトソースと一緒にパイ生地で包んで焼くのも美味しいんじゃない?
付け合わせにバジルソースみたいなのもあったから、この町で手に入るのかな?
ぜひともルントを買って帰って家でいろいろ作って食べたいっ!!

「ん~、さすが名物料理!すっごく美味しかったぁ~♪」
「おいちかったの~♪」
「ほっぺたいっぱいに頬張って食べるミナト、可愛かった。あ、まだソースついてる」
「ん、ベーたん、ありがとなの☆」
「ふふ、サーヤってばものすごくがっついてたよね~☆そんなに食べたら太るんじゃない?」
「うっ・・・」
「大丈夫だ。こいつの身体は俺が管理してるから、後でたっぷり・・・」
「だぁぁぁぁっ!エルっ、ちょっと黙ろうかっ!!!」

相変わらず真顔でさらっと恥ずかしいこと言うのはやめてもらえませんかねっ!!
今の言葉で分かっちゃったけど、今夜は激しいのね・・・やだもう意識しちゃうじゃないかっ!エルのバカっ!!
うぅ・・・できれば今は知りたくなかったよ・・・頑張るけどさ。

気持ちをなんとか切り替えて、美味しかったルントを家でも調理できるよう買って帰れないか相談してみた。

「ね、エル。ルントを買って魔法袋マジックバッグに入れておいても良い?家の料理にも使いたい」
「お前は魚料理も作れるのか?」
「さすがにさばくことはできないけど・・・前いた世界にルントに似たお魚があって、あたしも大好きだったの」
「そうか・・・ならば、好きなだけ買え。お前の料理はどれも美味いからな。なくなったらまたいつでも買いに連れて来てやる」
「やった~♪エル、ありがとう」


持ち帰り用のルントを買うために、皆で露店のある港の方へ歩いた。
市場のように魚を売っているお店や貝殻を使ったアクセサリーなど、たくさんの露店があってどこを見ていいか迷ってしまう。

「サーヤまま、あっちに、かわいいの、あるの」
「ん?・・・あ、これって髪飾りかな?」

ミナトちゃんが見つけたのは露店に並んだ真珠の髪飾りだった。
海の町だから真珠が取れるのかな?光に当たるといろんな色に変化してすごく綺麗・・・

「いらっしゃい!おぉ、可愛いお嬢さん達一つどうだい?この町でしか取れないペルレだよ!」
「ペルレ・・・」
「ふぁ~、きりぇ~ね~☆」
「・・・ふむ、このペルレはなかなか良いモノだな」
「お兄さん、このペルレの良さがわかるのかい?なかなかわかってるじゃないか♪」

あたしとミナトちゃんが露店にあった真珠・・・いや、ペルレを使った髪飾りに見惚れていると、後ろからエルが覗き込んで来てペルレの質の良さについて店主さんと話をしていた。
・・・目利きまでできるなんて、さすがエルだなぁ。

エルがミナトちゃんに髪飾りを選ばせている。
ふふ、お父さんが娘に髪飾りを買ってるみたいに見えてものすごく微笑ましい。
あ、選び終わって、買った髪飾りをそのままエルにつけてもらってる。

「サーヤ、後ろを向け」
「ん?・・・こう?」

ミナトちゃんに髪飾りを付けた後、エルはあたしに後ろを向くよう言ってきた。
言われた通り後ろを向いてたら、髪をさらっと弄られ心の準備をしていなかったあたしはそれだけでビクっと反応してしまった。

「ふっ、何を反応している。何もしないさ・・・
「!!!」

もうっ!あたしばっかりドキドキして不公平だっ!!
今夜は絶対エルもドキドキさせてやるんだからっ!!!

あたしが意気込んでいる間にエルがあたしの髪から手を離す。

「できたぞ、サーヤ」
「え?」
「わぁ~、サーヤまま、きれい、なの~♡」

店主さんがあたしに見えるように鏡を向けてくれていた。
鏡には髪飾りによって髪をまとめられたあたしが映っていた。

きっちりではなく、ゆったりと後れ毛を少し垂らしたまとめ髪は女のあたしから見てもすごく可愛い髪型だ。

「う、わぁ・・・すごい、可愛い・・・」
「うむ、似合うな」
「ふふ、エルぱぱが、なかなおりのしるしって、ゆってたの☆」
「仲直りの印って・・・」
「この指輪は別だからな。髪飾りは怒らせたお詫びだ」
「そんな・・・もう怒ってなんかないのに。・・・あたし、何も用意できてないよ」

エルにもらってからずっとつけてる左手の薬指の指輪。
この指輪だけでも満足なのに、まさか仲直りにこんな素敵なモノもらうなんて・・・
最近貰ってばかりだな、あたし。
エルに何かあげたいけど、何をあげたら良いんだろ?自分のお金だってそんなに持ってないのに・・・

「俺が渡したかっただけだ。気にするな」
「そんなっ・・・。エル、何か欲しいモノはないの?・・・できればあたしに用意できるもので」
「サーヤに用意できるもの・・・ふむ、別に欲しいものなど・・・あ!」
「なに?何かあった??」
「あぁ・・・お前にしかできないことだ」

ん?なんか、エルがちょっと意地悪な笑みを浮かべてる気がするんだけど気のせい?

エルにぐいっと引っぱられ、耳元でとんでもないことを囁かれた。

「今夜は朝まで俺に奉仕してもらおうか・・・でな」
「!!」

なっ、なっ・・・

「あぁ、今日は歩き回って疲れるだろうから、風呂で背中も流してもらおうか」
「!!!」

今日はまだ旅行の初日で、予約次第では明日船で移動かもしれないってのに、なんてもの注文してくれるんだっ!ドSっ、鬼畜っ、悪魔っ!!

あたしが真っ赤な顔で口をパクパクしながら心の中でエルを罵倒してたら、船着き場の方向からカルステッドさんとアレク兄様がこっちに向かって声をかけてきた。

「おぉ、エリュシオン様、ちょうど良いところで会えました。船の予約が終わりましたよ」
「ほぅ、もう取れたのか。いつになった?」
「ちょうどメラニウム王国へ向かう船が今日すでに出航してしまったので、一番早くても3日後でした。いろいろ手を尽くしてみたんですがすみません」
「いや、気にするな、アレックス。それくらい余裕があった方が・・・」

エルが何かを含んだ笑みであたしを見ている。

もしかしなくても「それだけ余裕があれば明日くらい潰れたって問題ないよな」ってこと??!!
満足げな顔してるけど、そんなエルの考えなんてわかりたくもなかったよっ!この鬼畜エロフ!!!

「俺達はのんびりしつつ観光を楽しむから、お前らも各々出航までゆっくり過ごせ」
「「はっ」」



・・・天はあたしを見放したんだろうか。これであたし、明日は動けないのほぼ決定じゃないですかっ!!
もうっ!もうっ!!あたし一人で寂しくベッドなんて許さないからねっ!!!あたしを置いて皆と観光に行かせてなんてあげない。
明日はエルもあたしとベッドで過ごしてもらわなきゃ許さないんだからぁぁぁぁぁ!!

そう意気込んだあたしは未だに勝ち誇った顔をしたエルをぐいっと引き寄せて、思ったことを言ってやった。

「エル、明日はベッドから離してあげないんだからねっ!あたしとずっと一緒だよ!!」

ふんっ、これで明日エルは観光に行きたくても行けな・・・――――――

「・・・ほぅ、それは都合が良い。元よりそのつもりだったからな」
「え、明日観光行けないんだよ?それで良いの?」
「観光?お前が行かないなら行く意味はない。ここには転移でいつでも来れるしな」

あ!そうか。エルは転移できるからここにいつでも来れるもんね。
・・・ん?ちょっと待て。さっき、元よりそのつもりって言った?

「明日はゆっくりたっぷり可愛がってやる・・・今日食べた分もしっかりサーヤにさせないとなぁ」
「!!!???」





あたしはとんでもない墓穴を掘ってしまったらしい。


・・・もうこのまま掘った墓穴に埋まれないかな・・・と、とても現実逃避したくなりました。
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