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4章 打倒!悪役令嬢ヒロイン

幕間 会いたくて会えなかった人2 inカルステッドside

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俺がエリュシオン様を取り巻く環境に感動しながらサーヤの料理を味わっていると、急に物騒な会話が聞こえてきた。

「ねぇ、その最後の1個だったスコーン、ボクが取ろうとしたヤツなんだけど・・・」
「・・・知らん。先に取った俺のモノだ」
「・・・キミ、人間のくせにいい度胸してるね・・・死にたいの?」
「ふん、こんなことで殺そうとするなんざ、精霊王も器の小さいヤツなんだな」

ほんわかした雰囲気の中、そこだけバチバチと火花が散っている。

ちょぉぉぉぉっ!!アルマっ!!!なに精霊王様に喧嘩売っちゃってるのぉぉぉぉぉ!!!!?????

「セイル、まだおかわりのスコーンあるから!この人達は殺っちゃダメっ!!」
「めっよ、セイたん。かわりに、あたしのすこーん、あげゆの!」
「はいはい、わかったよ☆ミナト、気持ちだけもらっておくね♪ありがとう☆」
「きょうは、たのしく、なのよ☆」

・・・ふぅ、サーヤとミナト殿のおかげでここが大惨事にならなくて済みそうだ。良かった良かった。

「アルマ、いい加減食い意地張るのやめた方が良いんじゃない?さすがに精霊王様に喧嘩売るのはどうかと思うよ」
「・・・気を付ける」

両手いっぱいに食べ物を持っているリンダには全く説得力がないと思うんだけどっ!!
でもリンダの言うこと聞いちゃうんだね、アルマ!
俺の言うことは聞いてくれないのにっ!!!


ちょっといじけかけてたら、いつの間にか席を離れて窓辺に移動していたサーヤとアレックスが改めて挨拶をしていた。他は食事をしつつも見守っている感じだ。

・・・そりゃそうだよな。この中ではサーシャの唯一の身内で従兄だ・・・。

「サーシャ・・・いや、今はサーヤと呼んだ方が良いか。初めまして・・・になるかな」
「あ、アレックスさん・・・ですよね?一応初めましてなんですけど、記憶はあるので“久しぶり”でも大丈夫ですよ、アレク兄様」
「っ!!」
「皆さんにあたしの話は伝わってると聞いたんですが、サーシャさんの記憶はお城にいるときにほとんど戻ってきました。・・・サーシャさんを最後まで信じて、唯一心配して下さって本当にありがとうございます」
「・・・っ、だがっ、俺は・・・」

サーヤが血が出そうなくらい強く握りすぎているアレックスの拳をそっと優しく包む。

サーシャさんあたしの記憶は確かに悲しいモノばかりでした。でも、時折見えたアレックスさん・・・いえ、アレク兄様との記憶は、温かくそして優しい記憶ばかりでした。早いうちから始まった厳しく辛い妃教育で挫けそうになったときも、アレク兄様が「ゆくゆく俺が王族に仕えたとき、きっと支えになるから今は頑張るんだ」と励ましてくれたり、時には綺麗な花を届けてくれたじゃないですか」
「・・・っ」
「確かにあたしはサーシャさん自身ではありません。でも、彼女の記憶や感情はきちんとあたしの中にあります。これからもアレク兄様と呼んで良いのかわかりませんが、サーシャさんあたしの中で、あなたは心の支えでした」
「・・・サーシャっ!!・・・もし嫌じゃないのなら、前と変わらず兄様と呼んで欲しい・・・」
「はいっ・・・アレク兄様・・・」

アレックスは感極まってサーヤを抱きしめ、それに応えるようにサーヤも抱きしめ返していた。

・・・うん、感動の再会だね。お父さん涙が出そうだよ。
・・・お願いですからエリュシオン様、嫉妬してるんだろうけどアレックスに向けているその殺気をどうにかしてくれませんかね。彼は従兄ですからねっ!身内で、いわば家族ですからねっ!!!


俺が一生懸命エリュシオン様をなだめていたら、ミナト殿がサーヤとアレックスの元へ駆けつけていた。

「サーヤまま、いちゃい?ないてる?こいつ、わるいやつ?」
「ミナトちゃん・・・この人はね、あたしの親戚のお兄様で、アレク兄様って言うの。悪い人じゃないよ」
「ありぇ、ぅぅ・・・ア、レ・・・むぅ。・・・にぃーに?」

ミナト殿が“アレク”と呼ぶのをあきらめた?!それで“にぃーに”ってなったの??!!
首をこてんっとしながら言う姿は、悪いおじさんがいたら絶対危ないくらい超絶可愛いですっ、次期水の精霊王様!!!
アレックスも、あまりの可愛さと破壊力に震えて悶えてるっ!!!
そして、どこから出したのかわからないけどミナト殿にお菓子あげてる??!!
ミナト殿も嬉しそうに受け取ってアレックスを抱きしめたぁぁぁ???!!!

・・・とても振り返りたくはないが、只ならぬ圧を出している隣へ恐る恐る視線を向けてみた。

ちょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!エリュシオン様っ、さっきよりも殺気がっ!!!!
なんか聞こえるけど、まさか攻撃魔法の詠唱なんか始めてませんよねっ???!!!

「エリュシオン、今日くらいは見逃してあげなよ☆」
「・・・セイル」

おぉ!!風の精霊王様、あなたは救世主ですか!!!!

「アレを殺っちゃうのはこの食事会が終わってからにしないと・・・バレちゃうよ☆」
「・・・それもそうだな」

Noooooooぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!
救世主なんかじゃなかったっ!ダメです、ヤメてっ!!俺の大切な部下を殺さないでぇぇぇぇぇ!!!!

あれ?この食事会ってお祝いなんだよね?!感動の再会含んだ穏やかな食事会なんだよね??!!


俺がこの状況に混乱しているときに、さらに事態を混乱させることが起こった。

「サーヤ、泣いてるの?悲しい?」
「ん、ベルナートさん・・・これはね、嬉しい涙だよ。悲しくないから安心してね」
「嬉しい、涙。・・・どんな味?」
「へ?・・・きゃぁっ」

ずっと静かにしていた闇の精霊王ベルナート殿が、泣いていたサーヤに近づいたかと思ったら、なっ、なっ・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇ???!!!抱きしめて・・・アレは、涙を拭いて・・・違うっ、舐めてるぅ??!!

「ゃんっ、ちょっと・・・ベルナートさんっ、離して~~~~っ」
「んっ、嬉しい涙・・・しょっぱい。やっぱり口づけの方が甘くて好き」
「バカっ、こんなところで・・・んん~~~~~~~っ」

は、え・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ????!!!!
ベルナート殿が、サーヤに・・・口づけしてるぅぅぅぅぅ???!!!

あ、すぐにエリュシオン様がサーヤを救出し、セイル殿がミナト殿をその場から遠ざけた。



・・・ナンダ、コレ・・・?



目の前で繰り広げられるアレコレが驚きとツッコみの連続すぎて、完全に俺のキャパをオーバーしたようだ。

・・・もうやだ。おうち帰りたい・・・





その後、考えることも見ることも拒否した俺は、食事会が終わるまでの記憶はほとんどない。
俺は、もし今後このような集まりがあったら空気になろう、そうしようと心に誓いました・・・――――――
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