上 下
156 / 512
4章 打倒!悪役令嬢ヒロイン

幕間 久しぶりのティータイム

しおりを挟む


アネモネさん断罪後に遅れて始まった生理もエルとの仲直りも無事に終わり、あたしも普通通り動けるまでに回復した。
精霊さんのところで回復に努めていたミナトちゃんも無事に回復して元気になったということで、今日は久々に皆揃って裏庭でティータイムです!

ベルナートさんは、ミナトちゃんとセイルと一緒に帰ったことと、森の精霊さん達が気にかけているあたしに加護を与えたということもあって、偏見なく受け入れられたみたい。
仲間や友達が増えるのは良いことだよねっ!




・・・そう思ってたんだけど・・・




「ひゃぁっ」
「んっ、サーヤ・・・久しぶり」
「や、ちょっ・・・ベルナートさん?!」

お菓子作りで台所に籠っていたあたしの背後から急にあらわれた闇の精霊王ベルナートさん。
攫われたときに、寝ぼけてエルと間違ってキスしちゃったんだけど、どうやらファーストキスだったみたいで、その時の気持ち良さが忘れられないと言って、時折背後から急に襲われる。

ちょっとっ!!ミナトちゃんみたいな可愛い女の子が好きなんじゃなかったの??!!

「ん、ミナトは変わらず好きだ。でも、サーヤは・・・なんか、食べたくなる・・・あむっ」
「きゃぅっ、や、耳っ・・・食べちゃ、やぁっ・・・んんっ、ん~~~~~~~っ」

クッキーやスコーンの生地を休憩しながら手でこねているため、両手は粉まみれ、生地まみれであたしは両手は塞がっている。そんな無防備なあたしの背後のベルナートさんはそのままあたしの顎を掴み、またキスをしてきた。

一度情が沸いてしまって躊躇すると、この調子に乗ったベルナートさんはキス以上のことをしてくるから超危険。
しかも、あたしがエルに開発されすぎたのか、ベルナートさんが手慣れてきたのかちょっぴり気持ち良さまで感じてしまうので質が悪い。

でもキス以上はダメっ!エル以外はイヤなの~~~~~~っ!!!!!!

「またお前か、ベルナート。いい加減にしろ、滅ぼされたいか」

エルが物騒なことを言いながら台所に転移して来てあたしを救出する。
もう粉がついても気にしない、後で洗うから許してという気持ちでエルにしがみつく。

「うぅ・・・エル~~~~~っ」
「わかった、消毒してやるからこっち向け」
「ふぇ?・・・んっ、ぁむっ・・・ふぁ、んんっ、」

いやいやいやっ!そうじゃない!!そうじゃないのっ!!そこまで求めてないからっ!!!!
そんなキスされたら、あたし・・・

「んんっ、バカ・・・立っていられな・・・ぁふ」
「ん、サーヤは俺が口づけをすると、いつもこんな感じになるからなぁ」

ん?なんか空気がおかしくない?エルってばなんでそんな言い方・・・

「サーヤ・・・俺との口づけ、気持ち良くない?」

・・・どうしよう、ベルナートさんが子犬のように耳を垂れさせている姿が見える気がする・・・

もしかしなくても、キスの気持ち良さを張り合ってるのかな?どう考えたっておかしいでしょっ、それ!!

しかも、(たぶん)百戦錬磨で経験豊富のハイエルフのエルVS震える子犬のような恋愛初心者(?)である闇の精霊王のベルナートさんになってるけど、普通なら闇の精霊王の方が優位じゃないの??逆だよね??!!

ってゆーか、あたしがキスしたいのはエルだけだからね!!
そこんとこ2人ともわかってる!!??



そんな変な空気が漂う台所に、いつもならさらに空気を乱すセイルがあらわれた。

「サーヤ、お菓子まだ・・・って、何してるの?キミ達・・・」

久々のティータイムということで、お菓子を楽しみにしていたセイル。約束のスコーンだって焼こうと思ってたのに、妨害する二人のせいでまだ焼きあがっていない。

「・・・あのさぁ、キミ達。今日が何の日か覚えてないの?」

ん?今日って久々にティータイムやろうって話はしたけど、なんか特別な日だったっけ?

「今日はさ、ミナトが全快してサーヤのおやつを皆で食べれる日だってものすごく楽しみにしてる日なんだよ?今ミナトが何してるかわかってる?エリュシオンの薬草農園に水をあげる手伝いをしたり、ティータイムをする裏庭を掃除したり飾りつけしたりしながら、サーヤのお菓子作りが終わるのを楽しみに待ってるんだよ?」

なんですって??!!天使が・・・天使がそんな楽しみに待ってくれてるの??!!
お掃除とかお手伝いとか・・・なんかもう良い子すぎて、健気すぎてホントに尊いっ!うちの天使っ!!

健気に準備している様子とかがものすごくそれが想像できて、今のこの状況がすっごく心苦しい・・・こんなコトしてる場合じゃなかった!!

「エル・・・回復魔法かけて」
「え・・・」
「早くっ!」
「あ、あぁ・・・」
「ベルナートさん、今後あたしが料理してる時に近づくの禁止ですからね!」
「サーヤ・・・」
「近づいたら嫌いになります!」
「う・・・嫌われたくない、わかった」





困惑しているエルと落ち込んだベルナートさんをよそに、あたしは急いでお菓子作りを再開した。
魔力も安定し、ベルナートさんの加護も増えたことで魔力量自体がさらに増えたのか、ほむちゃんにいっぱい頑張ってもらっても大丈夫なくらいになった。

「ほむちゃん、美味しいお菓子いっぱい作ろうね☆」
「きゅう~ん☆」

あたしもほむちゃんも気合十分。大分焼き加減もわかってきてくれたほむちゃんは、今回も焼き加減ピッタリにお菓子を焼き上げてくれる。

今日作ったのは、市松模様のクッキーや星やハートなど型取りしたバタークッキーと、セイルのリクエストであるスコーン、エルの大好きなプリン(エルは特別にプリンアラモードにしている)、ミナトちゃんやほむちゃんが大好きなトベーレの生クリームたっぷりのデコレーションケーキだ。
ある程度は事前に仕込みをしていたので、後は焼き菓子を焼いている間にケーキをデコレーションするだけだ。

・・・生クリームを使ったお菓子は、未だにちょっとアレを思い出して抵抗があるので、今日は特別だと自分に言い聞かせて頑張った。
エルはあれから約束を守ってあたしの調理中に台所へ来なくなったが、ベルナートさんはもちろんそんなこと知らないから普通に来ちゃった感じ。
だんだん行動がエスカレートしてるから、ホントにどうにかした方が良いんだけど、どうしたら良いものか・・・

「サーヤまま、いいにおい、すゆの!おかし、できた?」
「ミナトちゃん♡まだ全部じゃないけど出来上がったから、誰か呼んできてもらっても良い?お皿が大きいからミナトちゃんには別のお手伝いお願いしたいんだ」
「うん☆わかったの、まってて」

ててて―――っと可愛く走り去る天使。今日はいっぱい動くからと髪型をポニーテールにしてあげたんだけど、ふわふわ揺れる髪の毛がまたとっても可愛いっ!もう存在がホントに尊いっ!!

ミナトちゃんが連れてきた人に持って行ってもらう物を用意しながら、ミナトちゃんにお手伝いしてもらう分も用意し、その間にまた焼きあがったオーブンのクッキーやスコーンを手早くお皿に盛りつける。
今日の分はこれで全部なので、ほむちゃんにお疲れさまと言おうと思ったら、ほむちゃんは尻尾をピーンっと立てて何かに気づいた様子を見せると、急に台所から走り去ってしまった。

「ほむちゃん・・・?え、どうしたんだろう」

ほどなくしてミナトちゃんが誰かと手を繋いで戻ってきた。
その誰かの腕の中にはほむちゃんが抱かれている。



「・・・えっと、どちら様・・・でしょうか?」



目の前に急にあらわれたのは、褐色肌に燃えるような真っ赤な長髪を後ろで一本に縛っていて、剣士のような動きやすそうなスリットの入った服を着ているとてもナイスバディなお姉様だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy
BL
筋金入りのドルオタである僕は推しのライブを観た帰り幸せな気分でふいに覗き込んだ公園内の池の水面に人の顔を発見!びっくりして覗き込んだら池の中に引き込まれてしまったよ。もがいてもがいて何とか岸に戻るとそこは見たこともない景色。水面に映る自分の顔はさっき見た白い顔?一緒にいた侍女っぽい人の話によるとどうやらこの白い顔の人は今から輿入れするらしい…つまり…僕⁉ 不安の中、魔獣の瘴気で誰も近寄れないともいわれ恐れられている結婚相手の辺境伯邸につくとそこには現世で推してたあの人にそっくりな美丈夫が‼ え~こんなのもう推すしかないよね?推しの無い人生なんて考えられないし~? でもどうやら僕辺境伯様に嫌われているみたい…なんでぇ~? 『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』書籍化となりました。 7.10発売予定です。 お手に取って頂けたらとっても嬉しいです(。>ㅅ<)✩⡱

転生主人公な僕の推しの堅物騎士は悪役令息に恋してる

ゴルゴンゾーラ安井
BL
 前世で割と苦労した僕は、異世界トラックでBLゲーム『君の望むアルカディア』の主人公マリクとして生まれ変わった!  今世こそは悠々自適な生活を……と思いきや、生まれた男爵家は超貧乏の子だくさん。  長男気質を捨てられない僕は、推しであるウィルフレッドを諦め、王太子アーネストとの玉の輿ルートを選ぶことに。    だけど、着々とアーネストとの距離を縮める僕の前に唐突に現れたウィルフレッドは、僕にアーネストに近付くなと牽制してきた。  うまく丸め込んだ僕だったけど、ウィルフレッドが恋しているのは悪役令息レニオールだと知ってしまって……!?  僕、主人公だよね!?主人公なのに――――――!!!! ※前作『俺を散々冷遇してた婚約者の王太子が断罪寸前で溺愛してきた話、聞く?』のサブキャラ、マリクのスピンオフ作品となります。 男性妊娠世界で、R18は保険です。  

【R18】眠り姫と変態王子

ユキチ
恋愛
【本編終了(ep3まで)現在続編執筆中】 学院での授業中、魔力暴走を起こして意識を失い医務室に運ばれた侯爵令嬢セシリアは、目覚めると婚約者である王太子に看病されていた。 そして家に帰ると何故かノーパンな事に気付いた。 長年理想の王子様だと思い込んでいた婚約者の美形王子が実は変態だと気付いてしまったセシリアの受難の日々。 下ネタとギャグとちょっとファンタジー ※ヒーローは変態です。本当にごめんなさい。 主人公は侯爵令嬢ですが、ツッコミの部分では言葉使いが乱暴になる事があります。 ★=R18 ムーンライトノベルさんにも掲載しております。

シンデレラ。~あなたは、どの道を選びますか?~

月白ヤトヒコ
児童書・童話
シンデレラをゲームブック風にしてみました。 選択肢に拠って、ノーマルエンド、ハッピーエンド、バッドエンドに別れます。 また、選択肢と場面、エンディングに拠ってシンデレラの性格も変わります。 短い話なので、さほど複雑な選択肢ではないと思います。 読んでやってもいいと思った方はどうぞ~。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと
恋愛
黒く長い髪が特徴のフォルテシア=マーテルロ。 彼女は今日も兄妹・父母に虐げられています。 それは時に暴力で、 時に言葉で、 時にーー その世界には一般的ではない『黒い髪』を理由に彼女は迫害され続ける。 黒髪を除けば、可愛らしい外見、勤勉な性格、良家の血筋と、本来は逆の立場にいたはずの令嬢。 だけれど、彼女の髪は黒かった。 常闇のように、 悪魔のように、 魔女のように。 これは、ひとりの少女の物語。 革命と反逆と恋心のお話。 ーー R2 0517完結 今までありがとうございました。

あなたが幸せになれるなら婚約破棄を受け入れます

神村結美
恋愛
貴族の子息令嬢が通うエスポワール学園の入学式。 アイリス・コルベール公爵令嬢は、前世の記憶を思い出した。 そして、前世で大好きだった乙女ゲーム『マ・シェリ〜運命の出逢い〜』に登場する悪役令嬢に転生している事に気付く。 エスポワール学園の生徒会長であり、ヴィクトール国第一王子であるジェラルド・アルベール・ヴィクトールはアイリスの婚約者であり、『マ・シェリ』でのメイン攻略対象。 ゲームのシナリオでは、一年後、ジェラルドが卒業する日の夜会にて、婚約破棄を言い渡され、ジェラルドが心惹かれたヒロインであるアンナ・バジュー男爵令嬢を虐めた罪で国外追放されるーーそんな未来は嫌だっ! でも、愛するジェラルド様の幸せのためなら……

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...