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3章 いざ王都へ
幕間 王太子の憂鬱 ~ユーリウスside2~
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◇
父上が珍しく客人を城に招くと言って楽しそうにしていた。
今回くる客人は、父上がオレくらいの年齢のときにとてもお世話になった方だそうだ。
ぜひオレも挨拶したいと思い父上に願い出たが、良い顔をされなかった。
客人はエルフの方で、人が好きではないらしい。
それならば仕方がない、そう思っていた。
いつものように側近であるアルバートを連れて、王都へ視察に出かけた。
運が良ければその客人を見かけるくらいはできるか・・・と考えたが、よくよく思えば顔も知らぬ客人を俺がわかるわけもなかった。
城に来るのであればそろそろ王都入りするだろうと、何気なく関所付近を中心に視察していた、その時だった。
「・・・っ、サー・・・シャ?」
白いローブを被った女性が、一緒に旅をしている背の高い黒いローブの男性と王都の大通りを見ながら談笑していた。
男性の顔は見えないが、女性は髪色や瞳の色こそ違うがサーシャにそっくりだった。
幼いころに見せた年相応の笑顔の彼女がそこにいるような気がした。
彼女であるわけがないと思いながらも、自然と二人を追ってしまった。
生きていたらあんな感じだろうか、昔と変わらない笑顔が可愛い、その笑顔を自分に向けてもらえたら、などいろんな感情が一気に押し寄せた。
途中二人を見失ってしまったが、また見つけたときは王都にある国内外の貴族ご用達のドレスショップ『アザレア』に入っていった。
予約しているわけではないが、アネモネのウェディングドレスを依頼しているし、入る分には問題ないだろうと自分も入店する。
・・・少しでも彼女に近づくために。
店に入ると例の二人はオーナーの客らしく、店の奥に案内されていたため店内にはいなかった。
オーナーに話があると無理やりこじつけて店員が止めるのを聞かずに、なんとかオーナーと会うことはできた。
だが、まったく歓迎されなかった。
「今大事なお客様を接客中なんですけど、なぜ貴方がこんなところに予約もなく、そして店の者が止めるのも聞かずにいらしたんですか?・・・王太子様」
明らかに棘のある言い方・・・父上とも懇意にしているため強く言えないが、さすがに不敬ではないのか?
「予約はないが、ドレスは依頼しているだろう?進捗の確認と・・・知り合いに似た人物がこの店に来ていると聞いたので、会えるかと思ったのだが・・・」
理由としてはおかしくないはずだ。知り合いに似ているというのも嘘ではないしな。
「・・・それでこの強行ですか。王族ってのはずいぶんと強引な方なんですね。」
「貴様っ、王太子様に向かって無礼だぞ!」
「無礼はどちらですか!!ココで大事なお客様を接客中と申し上げましたよね?ご令嬢の採寸中でしたのよ。
・・・この意味、わかりますよね?どちらが無礼なんでしょうか、王太子様。」
採寸中・・・それは明らかにこちらの方が分が悪い。謝罪するしかないだろう。
「っ、こちらだな。・・・この度の非礼申し訳ない」
「謝罪はしかと受け取りました。
しかしながら、ご依頼のドレスはまだ採寸を終えたばかりでお見せできる進捗はございません。
今日はこれにてお引き取り下さいませ。」
「貴様っ、さっきの王太子様の言葉を聞いてなかったのか?知り合いに似た人物がいたと・・・」
「だから何なのでしょう」
「何?!」
「私は先ほども申し上げましたよね?大事なお客様の接客中だ、と。しかも採寸中です。
いかに王族ほど高貴な方であっても、国外の高貴な方々も顧客に持つ私の仕事の邪魔をするのは如何なものでしょう。
私が気に入らぬというのなら、ドレスのご依頼も別の方にして下さって結構ですのよ(むしろそうして下さい)」
不機嫌を隠そうともせず、むしろ依頼したドレスをキャンセルするのも厭わないとは・・・。
それだけこの店のドレスに自信があるということか。
・・・しかし、彼女は今どこに?連れの男性らしき人も見当たらないな。
ここで待たせてもらうか、一度引いた方が良いか考えているときに、試着スペースと思われるところで魔法が使われた気配がした。
アルバートが剣を抜き、オレを護るように警戒する。
目の前にいるこの店のオーナーはオレ達の反応と異なり、「あら?もしかして・・・ふふ、仕方ないわねぇ」など、不可解なことを言っている。
「殿下、ここで知り合いに似てるという方を待っていても、しばらく会えませんよ」
「は?どういうことだ?」
「そこの試着スペースには、殿下の言う女性と連れの男性の方が一緒に隠れておりましたが、今彼の魔法でその試着スペースに結界が張られました」
「・・・結界?なぜだ」
「ふふ、しかも丁寧に遮蔽と遮音効果のある結界みたいです。中でナニが行われても外には漏れませんわ」
「なぜ、そんな結界を張る必要がある・・・」
「あら?まだわかりません?殿下もまだ意外とお子様だったのですね~。ちなみに中にいるのは私の弟とその婚約者です。想い合っている男女が外から見えず、音も聞こえないようにスルコトと言ったら・・・」
「「!!!」」
なっ、あんな試着スペースで・・・男女の、いっ、営みを・・・だと??!!
そんな馬鹿な!いくらなんでもふしだらではないかっ!!
まだ婚約者なのであろう???
「彼らは貴族ではありませんので、貴族のように“初夜で身体を結ぶ”なんて古臭い決まりに縛られてなどおりませんわ♪我が弟ながら、意外と狼さんなところがあったのね~」
オーナーは嬉しそうにしているが、アルバートは顔を真っ赤にして口をパクパクとして何も言えず、オレもどうしていいかわからなかった。
待っていたとしても、コトが終わってからの二人と相まみえるのはとても気恥ずかしい・・・。
「殿下が会おうとされている“知り合いに似てる方”というのがどういう方か存じませんが、ゆくゆく義妹になる彼女へ何かしようものなら、弟だけでなく私も黙ってはおりませんので・・・。
では、お帰りはあちらでございます。お気をつけて~」
そう言って追い出されるようにオレとアルバートは店を後にした。
父上が珍しく客人を城に招くと言って楽しそうにしていた。
今回くる客人は、父上がオレくらいの年齢のときにとてもお世話になった方だそうだ。
ぜひオレも挨拶したいと思い父上に願い出たが、良い顔をされなかった。
客人はエルフの方で、人が好きではないらしい。
それならば仕方がない、そう思っていた。
いつものように側近であるアルバートを連れて、王都へ視察に出かけた。
運が良ければその客人を見かけるくらいはできるか・・・と考えたが、よくよく思えば顔も知らぬ客人を俺がわかるわけもなかった。
城に来るのであればそろそろ王都入りするだろうと、何気なく関所付近を中心に視察していた、その時だった。
「・・・っ、サー・・・シャ?」
白いローブを被った女性が、一緒に旅をしている背の高い黒いローブの男性と王都の大通りを見ながら談笑していた。
男性の顔は見えないが、女性は髪色や瞳の色こそ違うがサーシャにそっくりだった。
幼いころに見せた年相応の笑顔の彼女がそこにいるような気がした。
彼女であるわけがないと思いながらも、自然と二人を追ってしまった。
生きていたらあんな感じだろうか、昔と変わらない笑顔が可愛い、その笑顔を自分に向けてもらえたら、などいろんな感情が一気に押し寄せた。
途中二人を見失ってしまったが、また見つけたときは王都にある国内外の貴族ご用達のドレスショップ『アザレア』に入っていった。
予約しているわけではないが、アネモネのウェディングドレスを依頼しているし、入る分には問題ないだろうと自分も入店する。
・・・少しでも彼女に近づくために。
店に入ると例の二人はオーナーの客らしく、店の奥に案内されていたため店内にはいなかった。
オーナーに話があると無理やりこじつけて店員が止めるのを聞かずに、なんとかオーナーと会うことはできた。
だが、まったく歓迎されなかった。
「今大事なお客様を接客中なんですけど、なぜ貴方がこんなところに予約もなく、そして店の者が止めるのも聞かずにいらしたんですか?・・・王太子様」
明らかに棘のある言い方・・・父上とも懇意にしているため強く言えないが、さすがに不敬ではないのか?
「予約はないが、ドレスは依頼しているだろう?進捗の確認と・・・知り合いに似た人物がこの店に来ていると聞いたので、会えるかと思ったのだが・・・」
理由としてはおかしくないはずだ。知り合いに似ているというのも嘘ではないしな。
「・・・それでこの強行ですか。王族ってのはずいぶんと強引な方なんですね。」
「貴様っ、王太子様に向かって無礼だぞ!」
「無礼はどちらですか!!ココで大事なお客様を接客中と申し上げましたよね?ご令嬢の採寸中でしたのよ。
・・・この意味、わかりますよね?どちらが無礼なんでしょうか、王太子様。」
採寸中・・・それは明らかにこちらの方が分が悪い。謝罪するしかないだろう。
「っ、こちらだな。・・・この度の非礼申し訳ない」
「謝罪はしかと受け取りました。
しかしながら、ご依頼のドレスはまだ採寸を終えたばかりでお見せできる進捗はございません。
今日はこれにてお引き取り下さいませ。」
「貴様っ、さっきの王太子様の言葉を聞いてなかったのか?知り合いに似た人物がいたと・・・」
「だから何なのでしょう」
「何?!」
「私は先ほども申し上げましたよね?大事なお客様の接客中だ、と。しかも採寸中です。
いかに王族ほど高貴な方であっても、国外の高貴な方々も顧客に持つ私の仕事の邪魔をするのは如何なものでしょう。
私が気に入らぬというのなら、ドレスのご依頼も別の方にして下さって結構ですのよ(むしろそうして下さい)」
不機嫌を隠そうともせず、むしろ依頼したドレスをキャンセルするのも厭わないとは・・・。
それだけこの店のドレスに自信があるということか。
・・・しかし、彼女は今どこに?連れの男性らしき人も見当たらないな。
ここで待たせてもらうか、一度引いた方が良いか考えているときに、試着スペースと思われるところで魔法が使われた気配がした。
アルバートが剣を抜き、オレを護るように警戒する。
目の前にいるこの店のオーナーはオレ達の反応と異なり、「あら?もしかして・・・ふふ、仕方ないわねぇ」など、不可解なことを言っている。
「殿下、ここで知り合いに似てるという方を待っていても、しばらく会えませんよ」
「は?どういうことだ?」
「そこの試着スペースには、殿下の言う女性と連れの男性の方が一緒に隠れておりましたが、今彼の魔法でその試着スペースに結界が張られました」
「・・・結界?なぜだ」
「ふふ、しかも丁寧に遮蔽と遮音効果のある結界みたいです。中でナニが行われても外には漏れませんわ」
「なぜ、そんな結界を張る必要がある・・・」
「あら?まだわかりません?殿下もまだ意外とお子様だったのですね~。ちなみに中にいるのは私の弟とその婚約者です。想い合っている男女が外から見えず、音も聞こえないようにスルコトと言ったら・・・」
「「!!!」」
なっ、あんな試着スペースで・・・男女の、いっ、営みを・・・だと??!!
そんな馬鹿な!いくらなんでもふしだらではないかっ!!
まだ婚約者なのであろう???
「彼らは貴族ではありませんので、貴族のように“初夜で身体を結ぶ”なんて古臭い決まりに縛られてなどおりませんわ♪我が弟ながら、意外と狼さんなところがあったのね~」
オーナーは嬉しそうにしているが、アルバートは顔を真っ赤にして口をパクパクとして何も言えず、オレもどうしていいかわからなかった。
待っていたとしても、コトが終わってからの二人と相まみえるのはとても気恥ずかしい・・・。
「殿下が会おうとされている“知り合いに似てる方”というのがどういう方か存じませんが、ゆくゆく義妹になる彼女へ何かしようものなら、弟だけでなく私も黙ってはおりませんので・・・。
では、お帰りはあちらでございます。お気をつけて~」
そう言って追い出されるようにオレとアルバートは店を後にした。
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