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3章 いざ王都へ

お城へ行こう~初めての晩餐2~

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晩餐が用意された部屋には、すでにあたしとミナトちゃん以外全員が揃っていた。
レヴィンさんや、エル、セイルはわかるんだけど、ユーリ殿下もいたのはビックリだ!

「あの、遅くなってしまってすみません」
「良いんだよ、レディは支度に時間がかかるものだからね。あ、改めて紹介しよう。
 オレの息子であるユーリウスだよ。・・・ユーリ、身分は平民だが、オレの大事な客人だ。
 の挨拶をしなさい」

ほう、初対面。そう来ましたか。記憶喪失設定だものね。
確かに、あたしとしては初対面なので間違いはない。
ゲームの知識や記憶を覗いたことで知ってはいるけど、あたしとサーシャさんは元々別人だ。
未だにサーシャさんとして接するようならガツンと言ってやろうかと思ってたけど、手間が省けたかも。

「・・・。私はユーリウス=ルド=ガルドニアです。どうぞ、“ユーリ”と呼んでください」
「ご丁寧にありがとうございます、ユーリウス殿下。私はサーヤと申します」

“ユーリ”なんて愛称で呼ぶつもりはないし、フルネームを名乗る気もないが、丁重に応じた。
“仲良くなる気はない”ってアピールは伝わったかな?

時折何か言いたげなユーリウス殿下だったが、あたしは彼を許す気はない。
例えヒロインの魅了で仕方がなかったとしても、彼女が酷い目に合ったことに変わりはないのだ。
それに、今さら何を言われたって“終わったこと”だ。殿下の自己満足になんて付き合う義理はない。
・・・あたしも大分エルやセイル達に感化されてるかも。

テーブルマナーどうすればいいのかと思っていたけど、すでにそこは配慮されており、豪華な料理が盛り付けられた大皿が置かれ、各自好きな分だけ取って食べるスタイルなので、マナーは気にしなくて良いと言われた。
料理は侍女の方がさりげなくよそってくれるので、あたし達は食べるだけ。
料理もとても美味しい。さすがお城だ。
まさか、お城で大きめのテーブルを皆で囲んでワイワイするようなフランクな食事ができるなんて思わなかった。

席は王様と、その隣にユーリウス殿下。向かい側にエル、あたし、ミナトちゃん、セイルの順に座っている。
セイルは普通にパクパク食べてるし、ミナトちゃんは相変わらず口の周りにパンくずをつけながらもきゅもきゅと美味しそうに食べている。

王様やユーリウス殿下はさすが王族とあって上品に食べているが、それに負けずエルの所作もとても綺麗で見とれてしまう。今日は正装もしてるからなおさらだね。

「・・・なんだ。俺に見惚れたか」
「うん、食べ方綺麗だし、正装だし・・・エルなんだけどエルじゃないみたい」
「ふっ、なんだそれは」

そう言って、あたしの口の端についていたソースを指で拭って、その指を舐めるエル。
・・・なんでこんな一つ一つの行動がお色気たっぷりなのよっ!

「口にソースをつけて、ドレスを着ていても変わらぬな」
「うぐっ、悪かったわね」
「いや、お前はお前だ。そのままでいいさ」

あたしの頭をポンと撫でて食事に戻るエル。さっきまでのユーリウス殿下へのささくれた気持ちが一気にどうでも良くなってしまうなんて、エルの言葉はまるで魔法みたいだなと思ってしまう。
気持ちが軽くなったあたしは、ミナトちゃんの口元を拭いてあげたり、食べさせ合いをしたりいつものように食事を楽しむことにした。
楽しそうに話しながら食べたり、エルにからかわれたりしているあたしを見て、驚いたり時折苦しそうな顔をしたり、ユーリウス殿下一人だけ晩餐に馴染んでいない感じだった。
・・・だったら最初から参加しなければ良いのに・・・なんて思うあたしは冷たいんだろうか。

晩餐という名の楽しい食事を終え、今後の対策は明日話し合おうということになったので、セイルは少し眠たそうなミナトちゃんを連れて転移で森へ帰っていった。
そして、あたしとエルも部屋に戻ろうか、と一緒に部屋に向かおうとしたとき、殿下が声をかけてきた。

「・・・っふ、二人は同じ部屋に泊まるのか?!」。
「え?そうですけど」
「結婚していないのであろう?!ふしだらではないか!!」

え?恋人同士なんだし別に普通・・・あ、この国って慎ましやかで貞淑な女性が普通なんだっけ?
結婚して初夜迎えるまで一緒に寝ないとかそんな感じなのかな?
この身体もエルに抱かれるまでは処女だったみたいだし。・・・今となってはそれがありがたいけどね。

「俺達は貴族ではないし、すでに一緒に暮らし同衾している。それにこいつの身体は隅々まで知って・・・」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!ばかエルっ、ちょっと黙ってなさいっ!!!」

なんでこの俺様エルフはさらっと恥ずかしいことを暴露してくれちゃうの?!わざとなの??!!
もっと他に言い方ってもんがあるでしょうよっ!!!

あたしは気を取り直して、ユーリウス殿下に向き直る。

「・・・失礼を承知で申し上げますが、私にとって、エルは傍にいると安心できるとても大事な人です。すでに寝食を共にし、一緒にいることが幸せだと感じる人と一緒にいて何がふしだらですか?あなたの勝手な想像の方が余程ふしだらではありませんか。殿下の常識をこちらに押し付けるのはやめて下さい。」


言いたいことを言ったあたしは、ユーリウス殿下の反応を見ずエルの腕を引いて部屋へ向かって歩きだした。
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