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3章 いざ王都へ
お城へ行こう~王様とのお話2~
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◇
王様ことレヴィンさんが語ってくれた内容は、概ねマゼンダさんから聞いたのと同じ世間からみた婚約破棄と断罪イベントについての話だった。
元々王命であった婚約を、王様に確認もせず、未来の王妃らしからぬ行動をしたとして勝手に断罪、婚約破棄した王太子。
あたしが懸念したとおり、確固たる証拠なんてものはなく、被害者であるアネモネ嬢の証言と破損された教科書類や友人知人の証言と言った作ろうと思えば作れる証拠ばかりで、それだけで決めつけた王太子をレヴィンさんはかなりお叱りになったらしい。
未来の国王になる人が、きちんとした情報管理や整理、その上での適切な判断ができないなんて、国が良い方向にいくわけもないからね。
レヴィンさんもいろいろ調査したらしいけど、アネモネさんを殺害しようとサーシャさんが依頼したという賊は、証言後亡くなってしまったとのこと。自殺か他殺かも不明で、それ以上は調べられなかったらしい。
そして、本来のサーシャさんへの刑は、特に危害を加えない状態で“帰らずの森”へ追放することだった。
貴族令嬢のため、それだけでも十分厳しい刑だろうという見解である。
だけど、実際は・・・
「俺が見つけた時点で、魔力封じの腕輪を付けられていた上に、魔法攻撃による致命傷で死にかけていた。
魔物ではなく、明らかに魔導士の魔法攻撃によるものだった」
「そうみたいだね、誰がそんな酷い事を・・・」
「・・・あの、さっきユーリ殿下に会ったとき、サーシャさんの記憶や感情がいろいろ頭の中に流れてきたんですけど・・・」
あたしは、怒涛のように流れてきた内容の中から、断罪から森への追放までサーシャさん本人の視点で起こったこと、彼女の感情をすべて話した。
ただでさえ謂れのない断罪や婚約者の裏切り、実家からの絶縁でサーシャさんが絶望しているところに、さらに止めを刺すようにあらわれた婚約者を奪ったアネモネ嬢。
彼女の命令により魔導士に命じてサーシャさんを確実に亡き者にしようと攻撃させたことや、それに対する計り知れない恐怖心。それを話すだけで同調したときの恐怖心があたしを襲う。
・・・しかも、アネモネさんは間違いなくあたしと同じ転生者でゲームの知識もある。
「アネモネ嬢が・・・いや、おかしいとは思っていたんだ。だが、証拠がない・・・」
「彼女は今王太子の婚約者なんですよね?」
「あぁ、来年に結婚式を執り行う予定だ。未来の王妃として・・・」
「元々サーシャさんが婚約者だったのに、それがアネモネさんに代わって、周りは何も言わなかったんですか?」
「それが・・・周りは文句を言うどころか美談にしたりとすんなり受け入れてしまってね。
オレの方がおかしい人扱いをされてしまうんだ。」
元々王命で政略結婚として婚約者となっていたサーシャさんだ。なのに、男爵令嬢であるアネモネさんが婚約者となって、周りが反対しないわけはないと思う。ゲームでも何か特別な設定でもあったっけ?
「そういえば、さっきのボンクラ王太子だけどさ、なんか魔法にかかってるっぽかったよ☆」
「ボンクラって・・・ん?セイル、魔法ってなんの?」
「魅了☆」
「あぁ、わずかにあったな。切れかかっていたようだが」
「「!!」」
ってことは、アネモネさんは魅了とゲーム知識でユーリ殿下を落としたってこと?
ユーリ殿下は魅了が切れかかって正気に戻ってきたところにあたしを見かけて、謝罪したいとか付きまとってたわけ??
うわぁ・・・何これ。ヒロインの方が余程悪役令嬢じゃない・・・。
あんなの王妃にしたらこの国終わるんじゃないか?
「エル・・・」
「この国がどうなろうが俺の知ったことではない」
「そうだね☆人間ってホントに自分のことしか考えてないよね、特に王族や貴族って」
「・・・はは、否定はできないな。オレもそういう人間を嫌って程見てきたし」
確かに王族とか貴族とかはどうでもいい。
でも、王都にいるリンダの両親やマゼンダさん、スルト村であたしが出会った人達もこの国の人間だ。この国が終わってしまったら・・・
「だが、バカ女のせいで国が終わってしまったら、サーヤの望む今まで通りの生活すらできぬ」
「そうだね☆せっかく砂糖も常備できるようになったのに、また入手困難になっちゃったら美味しいお菓子食べられなくなっちゃう」
「やっ!おかし、また、たべたいのっ」
「じゃあ、その愚かなバカ女、殺っちゃおっか☆」
「やっちゃう~♪」
・・・理由にツッコみたいところだけど、今回ばかりは止める気はない。
もちろん、人殺しはして欲しくないので、裁くならきちんとこの国の法で裁いて欲しい。
こんな頼もしい味方がいるんだから、できないわけはないよね。
「レヴィンさん、証拠を揃えてアネモネさんをきちんとこの国の法で裁きましょう!(セイルが殺ってしまう前に)」
「あぁ、そうだな。エリュシオンや精霊様まで・・・こんな心強い味方はいないな。
・・・ありがとう、協力、感謝する」
「あたしができることは少ないですよ。エルがきっと何とかしてくれます」
エルやセイル達精霊さんがすごすぎるので、あたしの出番はほとんどないと思うんだけど・・・と思ってたら、現実はそうでもありませんでした。
王様ことレヴィンさんが語ってくれた内容は、概ねマゼンダさんから聞いたのと同じ世間からみた婚約破棄と断罪イベントについての話だった。
元々王命であった婚約を、王様に確認もせず、未来の王妃らしからぬ行動をしたとして勝手に断罪、婚約破棄した王太子。
あたしが懸念したとおり、確固たる証拠なんてものはなく、被害者であるアネモネ嬢の証言と破損された教科書類や友人知人の証言と言った作ろうと思えば作れる証拠ばかりで、それだけで決めつけた王太子をレヴィンさんはかなりお叱りになったらしい。
未来の国王になる人が、きちんとした情報管理や整理、その上での適切な判断ができないなんて、国が良い方向にいくわけもないからね。
レヴィンさんもいろいろ調査したらしいけど、アネモネさんを殺害しようとサーシャさんが依頼したという賊は、証言後亡くなってしまったとのこと。自殺か他殺かも不明で、それ以上は調べられなかったらしい。
そして、本来のサーシャさんへの刑は、特に危害を加えない状態で“帰らずの森”へ追放することだった。
貴族令嬢のため、それだけでも十分厳しい刑だろうという見解である。
だけど、実際は・・・
「俺が見つけた時点で、魔力封じの腕輪を付けられていた上に、魔法攻撃による致命傷で死にかけていた。
魔物ではなく、明らかに魔導士の魔法攻撃によるものだった」
「そうみたいだね、誰がそんな酷い事を・・・」
「・・・あの、さっきユーリ殿下に会ったとき、サーシャさんの記憶や感情がいろいろ頭の中に流れてきたんですけど・・・」
あたしは、怒涛のように流れてきた内容の中から、断罪から森への追放までサーシャさん本人の視点で起こったこと、彼女の感情をすべて話した。
ただでさえ謂れのない断罪や婚約者の裏切り、実家からの絶縁でサーシャさんが絶望しているところに、さらに止めを刺すようにあらわれた婚約者を奪ったアネモネ嬢。
彼女の命令により魔導士に命じてサーシャさんを確実に亡き者にしようと攻撃させたことや、それに対する計り知れない恐怖心。それを話すだけで同調したときの恐怖心があたしを襲う。
・・・しかも、アネモネさんは間違いなくあたしと同じ転生者でゲームの知識もある。
「アネモネ嬢が・・・いや、おかしいとは思っていたんだ。だが、証拠がない・・・」
「彼女は今王太子の婚約者なんですよね?」
「あぁ、来年に結婚式を執り行う予定だ。未来の王妃として・・・」
「元々サーシャさんが婚約者だったのに、それがアネモネさんに代わって、周りは何も言わなかったんですか?」
「それが・・・周りは文句を言うどころか美談にしたりとすんなり受け入れてしまってね。
オレの方がおかしい人扱いをされてしまうんだ。」
元々王命で政略結婚として婚約者となっていたサーシャさんだ。なのに、男爵令嬢であるアネモネさんが婚約者となって、周りが反対しないわけはないと思う。ゲームでも何か特別な設定でもあったっけ?
「そういえば、さっきのボンクラ王太子だけどさ、なんか魔法にかかってるっぽかったよ☆」
「ボンクラって・・・ん?セイル、魔法ってなんの?」
「魅了☆」
「あぁ、わずかにあったな。切れかかっていたようだが」
「「!!」」
ってことは、アネモネさんは魅了とゲーム知識でユーリ殿下を落としたってこと?
ユーリ殿下は魅了が切れかかって正気に戻ってきたところにあたしを見かけて、謝罪したいとか付きまとってたわけ??
うわぁ・・・何これ。ヒロインの方が余程悪役令嬢じゃない・・・。
あんなの王妃にしたらこの国終わるんじゃないか?
「エル・・・」
「この国がどうなろうが俺の知ったことではない」
「そうだね☆人間ってホントに自分のことしか考えてないよね、特に王族や貴族って」
「・・・はは、否定はできないな。オレもそういう人間を嫌って程見てきたし」
確かに王族とか貴族とかはどうでもいい。
でも、王都にいるリンダの両親やマゼンダさん、スルト村であたしが出会った人達もこの国の人間だ。この国が終わってしまったら・・・
「だが、バカ女のせいで国が終わってしまったら、サーヤの望む今まで通りの生活すらできぬ」
「そうだね☆せっかく砂糖も常備できるようになったのに、また入手困難になっちゃったら美味しいお菓子食べられなくなっちゃう」
「やっ!おかし、また、たべたいのっ」
「じゃあ、その愚かなバカ女、殺っちゃおっか☆」
「やっちゃう~♪」
・・・理由にツッコみたいところだけど、今回ばかりは止める気はない。
もちろん、人殺しはして欲しくないので、裁くならきちんとこの国の法で裁いて欲しい。
こんな頼もしい味方がいるんだから、できないわけはないよね。
「レヴィンさん、証拠を揃えてアネモネさんをきちんとこの国の法で裁きましょう!(セイルが殺ってしまう前に)」
「あぁ、そうだな。エリュシオンや精霊様まで・・・こんな心強い味方はいないな。
・・・ありがとう、協力、感謝する」
「あたしができることは少ないですよ。エルがきっと何とかしてくれます」
エルやセイル達精霊さんがすごすぎるので、あたしの出番はほとんどないと思うんだけど・・・と思ってたら、現実はそうでもありませんでした。
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