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2章 過去の自分と新しい出会い

巻き込まれる予兆と過去の記憶2

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この世界で目が覚めたときに見えた蒼い月。どこかで見覚えがあると思ってた。
そうだ。ココはあたしがあまりの男運の悪さに凹んでるときに親友に勧められて、まんまとのめり込んだ“蒼い月の下で貴方と~淡恋~”という乙女ゲームの世界だ。
そして、“リナリア=ロンド”はヒロイン。逆ハーENDもたしかにある。

でも、あたしは“サーシャリア=ロンド”という、リナリアの子孫で、同じ“魔力の器”であることはセイルの話からわかったが、自分がこの世界でどういう立ち位置なのかは未だによくわからない。

・・・できればモブであってほしい。そして、エルとこの森でこれからも平穏に暮らしていきたい。
願いはそれ一つだ。

とりあえずあたしは、セイルに“リナリアさんと同じ異世界からきた”ということ、この世界が"乙女ゲーム"の世界なのはわかるけど、この身体“サーシャリア=ロンド”の記憶は一切なく、立ち位置もわからない。
そして、素性がわかったとしてもロンド家に帰るつもりがないことを伝えた。

「そうだね~。ボクもそれが一番いいと思うよ☆人間の世界ってとてもめんどくさいし、視野が狭いよね。誰もリアの言う真実に耳を傾ける者はいなかったし」
「リナリアさんの、真実?」
「エリュシオンは知ってる?どうして魔力付与が禁術とされたのか・・・」
「・・・魔力を奪って人を殺めた事件をきっかけに、と噂程度には聞いているが詳細は知らん。」
「そっか☆実は、その魔力を奪って人をの、リナリアなんだよね」

なんですと?!リナリアさんが???
でも、殺めたと・・・?

「“魔力の器”であったリアは、自分の魔力量はそんなに多くなかったけど、魔力のは桁違いだった。
リアは大気や精霊、人からも魔力をもらうことができたんだ。ね。
・・・ここまで言ったらわかるでしょ?」
「っ!!・・・もしかして」
「そう。キミみたいに愛した人の魔力を大量に奪ってしまったんだよ。」
「!!」

リナリアさんが愛する人から大量に魔力を奪った・・・それって、前のあたしと一緒・・・。
じゃあ、あたしも今後同じことをしてしまう可能性があるってこと・・・?

「余計なことは考えるな」
「ひゃっ」

エルが腕にしがみ付いていたあたしを急に抱き寄せる。

「お前はこれから自分で自分を制御できるようになるんだ。俺がわざわざ教えてやるんだからできないわけないだろう。」
「エル・・・」
「それに、お前が俺にどうこうできると思うなよ?同じことが起こるわけないだろう。」

一言「大丈夫だ。安心しろ」と言ってくれれば良いのに、俺様エルフはどうも捻くれているらしい。
でも、そのエルらしさが、あたしはとても安心するし、大好きだ。

「えへへ」と照れ笑いの笑顔をエルに向けていたら、頭をポンポンってしてくれた。
あぁ、もうっ!何このツンデレ俺様エルフ!!最高かよっ!!!

「お~い。ボクの存在忘れてなぁい?やだな~すぐに二人の世界に入っちゃうんだから~」
「なんだセイル。まだいたのか。」
「まだ全部の話し終わってないもん☆まだまだいるよ~♪」
「ちっ、だったら早く話の続きをしろ」
「も~、エリュシオンってばせっかちだなぁ。そんなんだったらサーヤに嫌われちゃうよ~」

・・・この二人、仲悪すぎじゃないだろうか?大丈夫かな・・・


“蒼い月の下で貴方と~淡恋~”という乙女ゲーム(通称”淡恋”)は、たしかシリーズで続編もあった気がする。
そして、1作目の”淡恋”は基本的にリナリアが攻略対象の誰かと結ばれて終わるはずだ。

あたしは大好きだった乙女ゲームの記憶を少しでも思い出そうと、この後もセイルさんの話を食い入るように聞いていたので、エルが眉をひそめながらあたしを見ていることに気づきもしなかった・・・。
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