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3章 うれしはずかし新生活
33 攫われた二人3 inカインズside
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◇
俺が酒場に着いた時、“ジュリア”とかいう女はいなかった。
だが、最近外部からきたゴロツキをこの店でよく相手にしていると聞いた。
恐らくそいつらにミカヅキやミムルは連れ去られたんだろう。
そして、今この場にいないという事はミカヅキ達が危険な目に遭っている可能性が高いという事になる。
「そういえば、ジュリアさん。最近町はずれの貸倉庫を1つ借りたみたいです」
「貸倉庫?」
「はい。1日借りるだけでなんであんなに高いんだってボヤいてて……何のために借りたのかは聞けませんでしたけど」
「……いや、ありがとう。その情報だけで充分だ」
酒場にいた店員に聞いた貸倉庫……間違いなくミカヅキ達を連れ込むために借りたに決まっている。
軽く礼を言ってから急いで貸倉庫のある場所へと向かおうとすると、ちょうどシュリーと鉢合わせした。
「カインズ!探索魔法であっちの方向に一瞬ミカヅキらしき魔力を感じたわ!
今は微量すぎてはっきりした場所がわからないんだけれど……」
「酒場にはジュリアって女はいなかった。だが、その女が町はずれの貸倉庫を借りてるって話を聞いた。方向も同じだから間違いなくそこだろう」
「じゃあ急がないと!ミカヅキ達が危ないわ!!」
「あぁ。だからシュリー、俺を吹っ飛ばしてくれ」
「……え?」
「なるべく体力を温存したいができる限り急ぎたい。ガードするから魔法で俺を貸倉庫の方へ吹っ飛ばしてくれ」
戸惑うシュリーの気持ちはわかるが、今は手段を選んでいる暇はない。
「頼む、シュリー!ミカヅキ達が危ないんだ!!早くしろっ!!!!」
「あぁぁもうっ、わかったわよ!思いっきり吹っ飛ばしてやるから覚悟なさい!!」
「いや、別に思いきりじゃなくても……」
「《爆風裂破》!!」
シュリーのおかげで、本来全力で走っても10~15分かかる町はずれ付近まで一瞬で辿り着く事ができた。
だけど、こんな強力な魔法じゃなくてもっと吹っ飛ばすだけの風魔法はなかったのか?
とっさに腕でガードしてシールドも展開したけど、シールドをしてもガードした両腕が火傷でヒリヒリする。
(普通にモンスターを一掃できる強力な魔法を、躊躇なく人にぶっ放すなよ……俺じゃなかったら下手すりゃ死んでるぞ。まぁ、それだけ強力な魔法のおかげで一気にここまで来れたんだけどさ……)
心の中でシュリーに感謝と文句を言いつつ、爆風の勢いと魔法による加速で一気に倉庫付近の建物までやって来た。
不審者がいないか周囲を見ながら移動していると、見覚えのある小さな子供が必死に走る姿が目に入る。
「ミムルっ!!!」
着地点の建物の壁を蹴ってミムルのいる方へ方向転換する。
俺の声に気付いたミムルは立ち止まり、きょろきょろと俺を探しているようだったので、「上だ!」と伝えたのと同時に勢いよくミムルの数メートル先へ着地した。
着地による爆風で座り込んでしまったミムルに慌てて駆け寄り、怪我の有無を確認する。
汚れてはいるが目立った怪我は特になさそうだ。
「すまんミムル、大丈夫か?怪我はないか?」
「(フルフルッ)」
「そうか、良かった。ミカヅキはどこだ?お前一人か?」
涙ぐんで首を振るミムルを労わりたいが、ここにいないミカヅキの安否が気になる。
ミムルが喋れないとわかっていても、つい聞いてしまう程俺は冷静さを失っていた。
だが、さらに俺の冷静さを失わせる事が起こった。
「おね…ちゃ、……けて」
「…え?」
「ミカヅキ、おねちゃ……あっち。たす、けて」
「!!……ミムル、お前っ……」
「はや、くっ」
ミムルが喋った事が嬉しくて仕方なかったが、言葉の内容で冷静さを取り戻した。
照明弾を空へ打ってシュリーとランスに合図を送り、ミムルにはこの場で二人のどちらかが来るまで待っているよう伝えてから、俺はミカヅキのいる貸倉庫へと向かった。
(待ってろ、ミカヅキ!もうすぐ助けてやるから……どうか無事でいてくれ――――――)
ミカヅキの無事を祈りながら、俺は全力でミムルの指さした貸倉庫へと向かって走った。
◇
そろそろ教えられた貸倉庫に着く……といった所で、曲がり角で人とぶつかった。
「うわっ」
「きゃっ」
前方不注意で謝罪しようと手を差し伸べようとしたが、その姿になんとなく見覚えがあった。
「……お前……」
「!!!……カインズ、どうしてここに……」
明らかに慌てた様子と、この女の格好を見てピンときた。
―――――――こいつが男達を使ってミカヅキとミムルを攫った“ジュリア”だ。
「……――――――おい。ミカヅキはどこだ。どの倉庫にいる」
「……っ、な、何の事?アタシにはさっぱりだよ。仕事があるから早く店に……」
(ドゴォッ)
「??!!」
「良いからさっさと吐け。ミカヅキはどこだって聞いてんだよ!!!!」
「…ぁ、う……この先、の……赤い、扉……」
「ホントだろうな……嘘だったら承知しねぇぞ」
「(コクッ、コクッ)」
女の胸倉を掴んでミカヅキの居場所を聞いてから、その女を捨て置き赤い扉の倉庫へと急ぐ。
(くそっ!ミカヅキっ!!頼むっ、間に合ってくれっ!!!!!)
そして、ようやく目的の赤い扉の倉庫の前に着き、中から聞こえた叫び声を聞いた瞬間、俺は身体強化と加速の魔法を使って勢いよくドアを蹴破り中へ突入した。
俺が酒場に着いた時、“ジュリア”とかいう女はいなかった。
だが、最近外部からきたゴロツキをこの店でよく相手にしていると聞いた。
恐らくそいつらにミカヅキやミムルは連れ去られたんだろう。
そして、今この場にいないという事はミカヅキ達が危険な目に遭っている可能性が高いという事になる。
「そういえば、ジュリアさん。最近町はずれの貸倉庫を1つ借りたみたいです」
「貸倉庫?」
「はい。1日借りるだけでなんであんなに高いんだってボヤいてて……何のために借りたのかは聞けませんでしたけど」
「……いや、ありがとう。その情報だけで充分だ」
酒場にいた店員に聞いた貸倉庫……間違いなくミカヅキ達を連れ込むために借りたに決まっている。
軽く礼を言ってから急いで貸倉庫のある場所へと向かおうとすると、ちょうどシュリーと鉢合わせした。
「カインズ!探索魔法であっちの方向に一瞬ミカヅキらしき魔力を感じたわ!
今は微量すぎてはっきりした場所がわからないんだけれど……」
「酒場にはジュリアって女はいなかった。だが、その女が町はずれの貸倉庫を借りてるって話を聞いた。方向も同じだから間違いなくそこだろう」
「じゃあ急がないと!ミカヅキ達が危ないわ!!」
「あぁ。だからシュリー、俺を吹っ飛ばしてくれ」
「……え?」
「なるべく体力を温存したいができる限り急ぎたい。ガードするから魔法で俺を貸倉庫の方へ吹っ飛ばしてくれ」
戸惑うシュリーの気持ちはわかるが、今は手段を選んでいる暇はない。
「頼む、シュリー!ミカヅキ達が危ないんだ!!早くしろっ!!!!」
「あぁぁもうっ、わかったわよ!思いっきり吹っ飛ばしてやるから覚悟なさい!!」
「いや、別に思いきりじゃなくても……」
「《爆風裂破》!!」
シュリーのおかげで、本来全力で走っても10~15分かかる町はずれ付近まで一瞬で辿り着く事ができた。
だけど、こんな強力な魔法じゃなくてもっと吹っ飛ばすだけの風魔法はなかったのか?
とっさに腕でガードしてシールドも展開したけど、シールドをしてもガードした両腕が火傷でヒリヒリする。
(普通にモンスターを一掃できる強力な魔法を、躊躇なく人にぶっ放すなよ……俺じゃなかったら下手すりゃ死んでるぞ。まぁ、それだけ強力な魔法のおかげで一気にここまで来れたんだけどさ……)
心の中でシュリーに感謝と文句を言いつつ、爆風の勢いと魔法による加速で一気に倉庫付近の建物までやって来た。
不審者がいないか周囲を見ながら移動していると、見覚えのある小さな子供が必死に走る姿が目に入る。
「ミムルっ!!!」
着地点の建物の壁を蹴ってミムルのいる方へ方向転換する。
俺の声に気付いたミムルは立ち止まり、きょろきょろと俺を探しているようだったので、「上だ!」と伝えたのと同時に勢いよくミムルの数メートル先へ着地した。
着地による爆風で座り込んでしまったミムルに慌てて駆け寄り、怪我の有無を確認する。
汚れてはいるが目立った怪我は特になさそうだ。
「すまんミムル、大丈夫か?怪我はないか?」
「(フルフルッ)」
「そうか、良かった。ミカヅキはどこだ?お前一人か?」
涙ぐんで首を振るミムルを労わりたいが、ここにいないミカヅキの安否が気になる。
ミムルが喋れないとわかっていても、つい聞いてしまう程俺は冷静さを失っていた。
だが、さらに俺の冷静さを失わせる事が起こった。
「おね…ちゃ、……けて」
「…え?」
「ミカヅキ、おねちゃ……あっち。たす、けて」
「!!……ミムル、お前っ……」
「はや、くっ」
ミムルが喋った事が嬉しくて仕方なかったが、言葉の内容で冷静さを取り戻した。
照明弾を空へ打ってシュリーとランスに合図を送り、ミムルにはこの場で二人のどちらかが来るまで待っているよう伝えてから、俺はミカヅキのいる貸倉庫へと向かった。
(待ってろ、ミカヅキ!もうすぐ助けてやるから……どうか無事でいてくれ――――――)
ミカヅキの無事を祈りながら、俺は全力でミムルの指さした貸倉庫へと向かって走った。
◇
そろそろ教えられた貸倉庫に着く……といった所で、曲がり角で人とぶつかった。
「うわっ」
「きゃっ」
前方不注意で謝罪しようと手を差し伸べようとしたが、その姿になんとなく見覚えがあった。
「……お前……」
「!!!……カインズ、どうしてここに……」
明らかに慌てた様子と、この女の格好を見てピンときた。
―――――――こいつが男達を使ってミカヅキとミムルを攫った“ジュリア”だ。
「……――――――おい。ミカヅキはどこだ。どの倉庫にいる」
「……っ、な、何の事?アタシにはさっぱりだよ。仕事があるから早く店に……」
(ドゴォッ)
「??!!」
「良いからさっさと吐け。ミカヅキはどこだって聞いてんだよ!!!!」
「…ぁ、う……この先、の……赤い、扉……」
「ホントだろうな……嘘だったら承知しねぇぞ」
「(コクッ、コクッ)」
女の胸倉を掴んでミカヅキの居場所を聞いてから、その女を捨て置き赤い扉の倉庫へと急ぐ。
(くそっ!ミカヅキっ!!頼むっ、間に合ってくれっ!!!!!)
そして、ようやく目的の赤い扉の倉庫の前に着き、中から聞こえた叫び声を聞いた瞬間、俺は身体強化と加速の魔法を使って勢いよくドアを蹴破り中へ突入した。
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