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3章 うれしはずかし新生活

29 攫われた二人*

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「んっ、カインズ、さ……」
「ミカヅキ、鼻で呼吸できてないんじゃない?ほら、ちゃんと練習しないと」
「や、待って……んんっ、んむっ、ハァ…ぁ、そっちは……ひゃっ」

購入したベッドが無事にミムルちゃんの部屋に搬入されて数日、あたしとカインズさんはいつものように寝る前に恒例となった、おやすみのキスをしていた。

……だけど、最近はキスだけでは終わっていない。

ここはカインズさんの部屋のドア付近。
最初は優しくちゅっちゅと優しいキスをしていたカインズさんは、だんだん深く舌を絡めるキスをしながらあたしを壁に追い込み、いつの間にシャツのボタンを外して直接胸をもにゅもにゅと揉んでいる。

抗議しようにも、塞がれた口唇では呼吸すらも難しく、気持ち良さと呼吸困難による吐息しか出てこないし、カインズさんの手がスルっとあたしの下半身にも滑り込み、触れるか触れないかの微妙なタッチで割れ目をなぞったり、くるくると円を描くように優しく、でもいやらしくあたしの秘部を弄り、気持ち良い場所を複数まとめて刺激されているあたしには成す術もなかった。


以前“怖い”と言った理由が、カインズさんが怖いのではなく気持ち良くて自分がどうにかなってしまいそうで怖かったのだと訂正したのがそもそもの間違いだったのかもしれない……――――――――


「ミカヅキ…これは怖い?」
「ぁ、やぁ、んっ…怖っ、くはない、けど……力、抜けちゃ…、立っていられな、ぃ…」
「じゃあ、ベッドに行く?」
「!!!……ぁ、うぅ…そ、それは……」

あれ?おやすみのキスをしてただけなのに、なんでこんな事になってるの?
キスの時に呼吸が辛いって事で鼻で呼吸する練習みたいな事言ってたけど、こんなコトまでされたら呼吸どころじゃないんですけど??!!

「!!……ぁっ」
「ミカヅキ、考えごと?…もしかして、今ナカに俺の指が何本挿入ってるか考えてた?」
「や、違っ…あぁぁっ、指バラバラに動かしちゃ……んぁっ、カインズさんの、ばかぁ…いじ、わる……うぅ、ッグズ」
「あ、ごめんっ!ごめんてばミカヅキ。……ミカヅキの反応が可愛いからつい…ね」
「んっ、ふぁ…んんっ」

カインズさんとのキスは好き。
気持ち良くてふわふわした気持ちになってすぐ夢中になってしまう。

それに気づいてるのか、カインズさんは「ごめんな」とか「好きだよ」と言いながらあたしの好きな優しいキスをたくさんしてくれる。
さすがに恋愛に疎すぎて流されまくってるあたしでも、最近やっと“カインズさんが好きだ”と思い始め、挨拶代わりにされていたキスや、今みたいな行為もさほど抵抗はしていない。

だけど、エスカレートすると変な声が出ちゃったり、気持ち良いのに身体がむずむずしたり、時には気持ち良すぎて自分が自分じゃなくなってしまいそうで怖くなる。
……単純に、まだ心の準備ができていないだけなのだ。

(カインズさんにあたしの初めてをもらって欲しい…けど、まだこういうコトに慣れてないというか、なんというか……)

さすがにベッドに行ってしまうと、そのまま最後までって流れになりそうで怖気づいてしまう。

「カインズ、さん…」
「ん、どうした?ミカヅキ」

寝着を整えながら、首や鎖骨にちゅっ、ちゅっとキスをしている器用なカインズさんに声をかけると、動きを止まて優しくあたしに微笑んでくれるカインズさん。


(……好き…まだ、口に出して言う勇気はないけど、大好きです、カインズさん……)


口に出してるわけじゃないのに、ドキン、ドキン、と胸が早鐘を打つ。


(お願い。もう少しだけ…もう少しだけ待って……カインズさんが欲しがってるモノ…あげるから……)


「…あの、ミカヅキ……んっ」


(ちゃんと、あたしの処女、カインズさんにあげるから……―――――)



言葉にはしてないけど、少しでも気持ちが伝われば良いと思って、自分からカインズさんにキスをした。
でも、やっぱりその後はどうしても恥ずかしいので「おっ、おやすみなさい!!」と逃げるようにミムルちゃんの眠る部屋に戻ってしまった。



近い未来、「あたしもカインズさんが好きです」って伝えよう。
気持ちを伝えた上で、カインズさんにあたしの処女をもらってもらおう。
そして、心も身体も受け入れてもらえたら、あたしが異世界から来た事もすべて話すんだ……





カインズさんへの気持ちを自覚し、同時に一大決心をしたあたしは、これから新たに始まる幸せな生活の事ばかり考えていて、その幸せを壊そうとしている人物がいる事などきれいさっぱり忘れていたのだった。







今日は狩りで運良く魔牛を捕まえることができた。
以前家の台所で解体した時に、子犬状態だったミカヅキが気絶してしまったから、ちゃんと解体をしてもらった分いつもより早く狩りが終わったのに、帰宅時間がいつもと変わらない時間になってしまった。


思えばこの日、狩りを終えてすぐに帰宅していたらこんな事にはならなかったのかもしれない……――――――


「ミカヅキ~、ミムル~~、ただいま~♪今日は魔牛が手に入ったぞ~~♪」

玄関に入るもいつも感じる愛しい二人の気配がなく、出迎えてくれる様子もない。
おかしいと思い、リビングや台所、寝室など家中を探してみたが、やはり二人は家にいないようだ。

「ミカヅキとミムル……出かけてるのか?だとしてもこの時間は普通家にいるはず……
 あ、もしかしてシュリーの家とか?」

嫌な胸騒ぎを感じつつも、そうであってほしくないと思い他の可能性を考える。
そして、シュリーの家かもしれないと思って玄関へ向かった瞬間、ドアをノックする音と共にそこにいて欲しくなかった人物が目の前に現れた。

「は~い♪晩ご飯のおかず多く作っちゃったからお裾分けに来たわよ☆……って、あら?カインズ、どうしたの?」

そして、何気なく見たシュリーの足元に複数の足跡が残っているのを発見した時、いてもたってもいられず家を飛び出そうとした。

「ちょっとカインズ!どこに行くの?様子が変よ??」
「……―――――― れた…」
「え?」
「ミカヅキとミムルが……攫われた…」
「えぇぇぇぇぇ??!!」
「探しに行ってくる…早く、早く見つけないと……っ」
「ちょっ…探すってどこへ?!宛はあるの??そもそもどうして攫われたって……」
「床に複数の足跡がある…たぶん誰かが来て、ここで二人は……」
「!!!」


いったい誰が…?どうして二人を……??何の目的で……!!!!


「くそっ!!!!」

(ドゴッ)

「ちょっとカインズ!一度冷静になりなさい!!
 ここであなたがキレたって二人は帰ってこないのよ!!!」
「……っ!!」
「私は少し前までこの家で二人とお菓子を食べてて、ご飯の支度があるからって家に帰ったの。
 連れ去られたのはその後だから、まだそんなに時間は経っていないはずよ!
 ちょっとランスを連れて来るから、あなたはこれでも食べて少し冷静に心当たりとかを考えてて!!」
「……わかった」

シュリーは持ってきたおかずを俺に渡して、自宅にいるランスを呼びに行った。
二人とも実力は俺と同じくらいだし、シュリーには探索魔法もあるし、何より冷静で頭が切れるから二人を探す手がかりもきっと見つかるはず。



「……頼む。ミカヅキ、ミムル……どうか無事でいてくれ……」



そう願いながらシュリーの持ってきた料理を少しだけ食べ、いつでも動けるよう準備をして二人を待つ事にした。
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