21 / 46
3章 うれしはずかし新生活
19 誤解は続くよどこまでも
しおりを挟む
◇
カインズさんの知り合いを含め、周囲に多大な誤解を招いてしまったので、とりあえずまずは訂正しなければ…と口を開いてみた。
「えっと、あのっ……」
「いつぞやは毎回違う女を取っ替え引っ替えしていたお前がなぁ……俺は嬉しいよ、うんうん。」
「え…女を取っ替え引っ替え……?」
「だぁぁぁっ!!!ちょっ、おっさん!!お前、こんなところでバラさなくたって……」
「「……」」
「いやいやいやっ、昔!昔のことだから!!若気の至りってヤツ!!!
ミムル、ミカヅキ、今はホントにそーゆーの一切ないからっ!
お願いだからそんな瞳で俺を見ないでぇぇぇぇ!!!!」
イケメンのカインズさんは思った通り、たくさんの女性といろんな経験があるお方のようだ。
予想通り……とはいえ、やっぱり聞いて気持ちの良い内容ではない。
「ふ~ん……別に気にしてないですよ。あたし達には関係ないもん。ね~、ミムルちゃん」
「(コクリ)」
「ミカヅキっ、ミムル~~~~っ」
「ははっ、あのやんちゃだったカインズが尻に敷かれる光景が見れるとはなぁ!
よし嬢ちゃん達、今日はカインズのおごりだ!!
ヤツにしっかり請求してやるからいっぱい食え!!」
「そこはおごれよっ、おっさん!そもそもはあんたのせいじゃねぇか!!」
「はんっ、オレは事実を言ってるだけだ!
それにな、がっつり稼いでる奴からはしっかり請求するって決めてんだよ、オレは。
こんなしょぼくれた飯処の金すら払えない奴なんて、すぐに捨てられちまうんじゃねぇか?」
「だぁぁぁっ、わかったよ!ってか、元よりミカヅキ達の分は全部俺が払うつもりだっての!!
いいからさっさといつもの飯持ってきやがれ!不味かったら払わねぇぞ!!」
ハンスさんとの遠慮ないやり取りを見る限り、気心の知れた昔からの知り合いなんだなと伺える。
カインズさんの女性遍歴はさておき、こういった知り合いはちょっぴり羨ましい。
お店の中にちらほらいたお客さんもカインズさんの知り合いみたいで、さっきからのやりとりについてたぶん弄られてるんだろう。
カインズさんが楽しそうに別テーブルで話している間に、ハンスさんがあたしに話しかけてきた。
「ミカヅキっていったな。さっきはアイツの昔のことで気を悪くさせちまったよな、すまない。
オレはハンス。アイツが子供の頃からの付き合いだ」
「あ、いえ、こちらこそちゃんとした挨拶もせずすみません。ミカヅキと申します。
カインズさんのことは思った通り…って感じだったので気にしないで下さい。
ハンスさんや今店内にいるお客さん達は、カインズさんと昔からの知り合いなんですね」
「あぁ。あいつの両親がよくカインズを連れてこの店に来てたからなぁ……その頃からの知り合いよ」
「カインズさんの、ご両親が……」
確かに他のテーブル席の方達も常連って感じで、年配の方を中心に皆でカインズさんを可愛がってるようだ。
カインズさんの屈託のない笑顔を見る限り、このお店は思い出が多く昔馴染みの安心できる仲間がいる、かけがえのない場所なんだろう。
そして、ハンスさんがミムルちゃんに「前より大きくなったな」と優しく頭を撫でている。
ミムルちゃんにとっても、このお店は大切で安心できる場所なんだろう。
(そんな大切な場所に連れて来てもらえたのはすごく嬉しい……)
多少の誤解はあるが、それはあとあと訂正すれば良いだろう。
そう思って、とりあえずハンスさんに話しかけられるまま会話を楽しむことにした。
「そういやミカヅキ、食べ物の好き嫌いはあるか?」
「いえ、特にないです」
「じゃあ甘い物は好きか?」
「はい、大好きです!」
「カインズとはいつからの付き合いなんだ?」
「えっと、1ヶ月ほど前から……―――――って、え?」
(ガタガタッ)
「聞いたか?野郎ども」
「あぁ、ハンス。しっかりと聞いたぜ」
「ふふっ、カインズにしては長続きしてるじゃない♪本気ってことかしら?」
「や、あのっ…あたしとカインズさんは一緒に暮らしてるだけで別に……」
「おぉっ!!もう一緒に暮らしてやがるのか?!相変わらずカインズは手が早いというか何というか」
「えっと、そうではなくてですね……」
反射的に答えてしまった内容で、何やら周りでどんどん話が進んでいる。
もしかしなくても、これはさらに誤解させてしまったのでは……??
(あれ?奥のテーブルではなぜか乾杯まで始まってないか??!!)
「ねぇ、カインズさん、どうしよう…なんかお店にいる人達、ものすごくあたし達のこと誤解してませんか?」
「ん~、ミカヅキってばまだ敬語使うの?なんならこの場にいる皆の前でお仕置きしちゃおうか?」
「や、だから違いま…違うからっ!!それにこんなところでやめて下さいっ!!」
「ふふっ、ここじゃなかったら良いってこと?」
「~~~~~~~~っ」
人間の姿になってから接するカインズさんは、あたしに対してなぜかすっごく意地悪だ。
女性慣れしてるからなのか、あたしが何を言っても言い負かされたりあしらわれてしまうからすごく悔しいっ!!
(ワンコ状態だったら、間違いなく噛みついてやるのにっ!!!!)
「(ポンポン)」
「ミムルちゃん……ありがと。うん、あたしミムルちゃんがいるからいろいろ頑張れそうな気がするよ!」
「(ぎゅう)」
「もう、ミムルちゃんってば慰めてくれるの?嬉しいっ、ぎゅう~~♡」
慰めてくれるの天使のようなミムルちゃんに癒され、食事がくるまであたしはしばらく幸せを噛み締めていた。
……周りは全然違うことを考えているなんて、これっぽっちも気づかないままに。
そして、あたしがそれを知ったのはお店を出てしばらく経ってからのことだった。
カインズさんの知り合いを含め、周囲に多大な誤解を招いてしまったので、とりあえずまずは訂正しなければ…と口を開いてみた。
「えっと、あのっ……」
「いつぞやは毎回違う女を取っ替え引っ替えしていたお前がなぁ……俺は嬉しいよ、うんうん。」
「え…女を取っ替え引っ替え……?」
「だぁぁぁっ!!!ちょっ、おっさん!!お前、こんなところでバラさなくたって……」
「「……」」
「いやいやいやっ、昔!昔のことだから!!若気の至りってヤツ!!!
ミムル、ミカヅキ、今はホントにそーゆーの一切ないからっ!
お願いだからそんな瞳で俺を見ないでぇぇぇぇ!!!!」
イケメンのカインズさんは思った通り、たくさんの女性といろんな経験があるお方のようだ。
予想通り……とはいえ、やっぱり聞いて気持ちの良い内容ではない。
「ふ~ん……別に気にしてないですよ。あたし達には関係ないもん。ね~、ミムルちゃん」
「(コクリ)」
「ミカヅキっ、ミムル~~~~っ」
「ははっ、あのやんちゃだったカインズが尻に敷かれる光景が見れるとはなぁ!
よし嬢ちゃん達、今日はカインズのおごりだ!!
ヤツにしっかり請求してやるからいっぱい食え!!」
「そこはおごれよっ、おっさん!そもそもはあんたのせいじゃねぇか!!」
「はんっ、オレは事実を言ってるだけだ!
それにな、がっつり稼いでる奴からはしっかり請求するって決めてんだよ、オレは。
こんなしょぼくれた飯処の金すら払えない奴なんて、すぐに捨てられちまうんじゃねぇか?」
「だぁぁぁっ、わかったよ!ってか、元よりミカヅキ達の分は全部俺が払うつもりだっての!!
いいからさっさといつもの飯持ってきやがれ!不味かったら払わねぇぞ!!」
ハンスさんとの遠慮ないやり取りを見る限り、気心の知れた昔からの知り合いなんだなと伺える。
カインズさんの女性遍歴はさておき、こういった知り合いはちょっぴり羨ましい。
お店の中にちらほらいたお客さんもカインズさんの知り合いみたいで、さっきからのやりとりについてたぶん弄られてるんだろう。
カインズさんが楽しそうに別テーブルで話している間に、ハンスさんがあたしに話しかけてきた。
「ミカヅキっていったな。さっきはアイツの昔のことで気を悪くさせちまったよな、すまない。
オレはハンス。アイツが子供の頃からの付き合いだ」
「あ、いえ、こちらこそちゃんとした挨拶もせずすみません。ミカヅキと申します。
カインズさんのことは思った通り…って感じだったので気にしないで下さい。
ハンスさんや今店内にいるお客さん達は、カインズさんと昔からの知り合いなんですね」
「あぁ。あいつの両親がよくカインズを連れてこの店に来てたからなぁ……その頃からの知り合いよ」
「カインズさんの、ご両親が……」
確かに他のテーブル席の方達も常連って感じで、年配の方を中心に皆でカインズさんを可愛がってるようだ。
カインズさんの屈託のない笑顔を見る限り、このお店は思い出が多く昔馴染みの安心できる仲間がいる、かけがえのない場所なんだろう。
そして、ハンスさんがミムルちゃんに「前より大きくなったな」と優しく頭を撫でている。
ミムルちゃんにとっても、このお店は大切で安心できる場所なんだろう。
(そんな大切な場所に連れて来てもらえたのはすごく嬉しい……)
多少の誤解はあるが、それはあとあと訂正すれば良いだろう。
そう思って、とりあえずハンスさんに話しかけられるまま会話を楽しむことにした。
「そういやミカヅキ、食べ物の好き嫌いはあるか?」
「いえ、特にないです」
「じゃあ甘い物は好きか?」
「はい、大好きです!」
「カインズとはいつからの付き合いなんだ?」
「えっと、1ヶ月ほど前から……―――――って、え?」
(ガタガタッ)
「聞いたか?野郎ども」
「あぁ、ハンス。しっかりと聞いたぜ」
「ふふっ、カインズにしては長続きしてるじゃない♪本気ってことかしら?」
「や、あのっ…あたしとカインズさんは一緒に暮らしてるだけで別に……」
「おぉっ!!もう一緒に暮らしてやがるのか?!相変わらずカインズは手が早いというか何というか」
「えっと、そうではなくてですね……」
反射的に答えてしまった内容で、何やら周りでどんどん話が進んでいる。
もしかしなくても、これはさらに誤解させてしまったのでは……??
(あれ?奥のテーブルではなぜか乾杯まで始まってないか??!!)
「ねぇ、カインズさん、どうしよう…なんかお店にいる人達、ものすごくあたし達のこと誤解してませんか?」
「ん~、ミカヅキってばまだ敬語使うの?なんならこの場にいる皆の前でお仕置きしちゃおうか?」
「や、だから違いま…違うからっ!!それにこんなところでやめて下さいっ!!」
「ふふっ、ここじゃなかったら良いってこと?」
「~~~~~~~~っ」
人間の姿になってから接するカインズさんは、あたしに対してなぜかすっごく意地悪だ。
女性慣れしてるからなのか、あたしが何を言っても言い負かされたりあしらわれてしまうからすごく悔しいっ!!
(ワンコ状態だったら、間違いなく噛みついてやるのにっ!!!!)
「(ポンポン)」
「ミムルちゃん……ありがと。うん、あたしミムルちゃんがいるからいろいろ頑張れそうな気がするよ!」
「(ぎゅう)」
「もう、ミムルちゃんってば慰めてくれるの?嬉しいっ、ぎゅう~~♡」
慰めてくれるの天使のようなミムルちゃんに癒され、食事がくるまであたしはしばらく幸せを噛み締めていた。
……周りは全然違うことを考えているなんて、これっぽっちも気づかないままに。
そして、あたしがそれを知ったのはお店を出てしばらく経ってからのことだった。
1
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる