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3章 うれしはずかし新生活
19 誤解は続くよどこまでも
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◇
カインズさんの知り合いを含め、周囲に多大な誤解を招いてしまったので、とりあえずまずは訂正しなければ…と口を開いてみた。
「えっと、あのっ……」
「いつぞやは毎回違う女を取っ替え引っ替えしていたお前がなぁ……俺は嬉しいよ、うんうん。」
「え…女を取っ替え引っ替え……?」
「だぁぁぁっ!!!ちょっ、おっさん!!お前、こんなところでバラさなくたって……」
「「……」」
「いやいやいやっ、昔!昔のことだから!!若気の至りってヤツ!!!
ミムル、ミカヅキ、今はホントにそーゆーの一切ないからっ!
お願いだからそんな瞳で俺を見ないでぇぇぇぇ!!!!」
イケメンのカインズさんは思った通り、たくさんの女性といろんな経験があるお方のようだ。
予想通り……とはいえ、やっぱり聞いて気持ちの良い内容ではない。
「ふ~ん……別に気にしてないですよ。あたし達には関係ないもん。ね~、ミムルちゃん」
「(コクリ)」
「ミカヅキっ、ミムル~~~~っ」
「ははっ、あのやんちゃだったカインズが尻に敷かれる光景が見れるとはなぁ!
よし嬢ちゃん達、今日はカインズのおごりだ!!
ヤツにしっかり請求してやるからいっぱい食え!!」
「そこはおごれよっ、おっさん!そもそもはあんたのせいじゃねぇか!!」
「はんっ、オレは事実を言ってるだけだ!
それにな、がっつり稼いでる奴からはしっかり請求するって決めてんだよ、オレは。
こんなしょぼくれた飯処の金すら払えない奴なんて、すぐに捨てられちまうんじゃねぇか?」
「だぁぁぁっ、わかったよ!ってか、元よりミカヅキ達の分は全部俺が払うつもりだっての!!
いいからさっさといつもの飯持ってきやがれ!不味かったら払わねぇぞ!!」
ハンスさんとの遠慮ないやり取りを見る限り、気心の知れた昔からの知り合いなんだなと伺える。
カインズさんの女性遍歴はさておき、こういった知り合いはちょっぴり羨ましい。
お店の中にちらほらいたお客さんもカインズさんの知り合いみたいで、さっきからのやりとりについてたぶん弄られてるんだろう。
カインズさんが楽しそうに別テーブルで話している間に、ハンスさんがあたしに話しかけてきた。
「ミカヅキっていったな。さっきはアイツの昔のことで気を悪くさせちまったよな、すまない。
オレはハンス。アイツが子供の頃からの付き合いだ」
「あ、いえ、こちらこそちゃんとした挨拶もせずすみません。ミカヅキと申します。
カインズさんのことは思った通り…って感じだったので気にしないで下さい。
ハンスさんや今店内にいるお客さん達は、カインズさんと昔からの知り合いなんですね」
「あぁ。あいつの両親がよくカインズを連れてこの店に来てたからなぁ……その頃からの知り合いよ」
「カインズさんの、ご両親が……」
確かに他のテーブル席の方達も常連って感じで、年配の方を中心に皆でカインズさんを可愛がってるようだ。
カインズさんの屈託のない笑顔を見る限り、このお店は思い出が多く昔馴染みの安心できる仲間がいる、かけがえのない場所なんだろう。
そして、ハンスさんがミムルちゃんに「前より大きくなったな」と優しく頭を撫でている。
ミムルちゃんにとっても、このお店は大切で安心できる場所なんだろう。
(そんな大切な場所に連れて来てもらえたのはすごく嬉しい……)
多少の誤解はあるが、それはあとあと訂正すれば良いだろう。
そう思って、とりあえずハンスさんに話しかけられるまま会話を楽しむことにした。
「そういやミカヅキ、食べ物の好き嫌いはあるか?」
「いえ、特にないです」
「じゃあ甘い物は好きか?」
「はい、大好きです!」
「カインズとはいつからの付き合いなんだ?」
「えっと、1ヶ月ほど前から……―――――って、え?」
(ガタガタッ)
「聞いたか?野郎ども」
「あぁ、ハンス。しっかりと聞いたぜ」
「ふふっ、カインズにしては長続きしてるじゃない♪本気ってことかしら?」
「や、あのっ…あたしとカインズさんは一緒に暮らしてるだけで別に……」
「おぉっ!!もう一緒に暮らしてやがるのか?!相変わらずカインズは手が早いというか何というか」
「えっと、そうではなくてですね……」
反射的に答えてしまった内容で、何やら周りでどんどん話が進んでいる。
もしかしなくても、これはさらに誤解させてしまったのでは……??
(あれ?奥のテーブルではなぜか乾杯まで始まってないか??!!)
「ねぇ、カインズさん、どうしよう…なんかお店にいる人達、ものすごくあたし達のこと誤解してませんか?」
「ん~、ミカヅキってばまだ敬語使うの?なんならこの場にいる皆の前でお仕置きしちゃおうか?」
「や、だから違いま…違うからっ!!それにこんなところでやめて下さいっ!!」
「ふふっ、ここじゃなかったら良いってこと?」
「~~~~~~~~っ」
人間の姿になってから接するカインズさんは、あたしに対してなぜかすっごく意地悪だ。
女性慣れしてるからなのか、あたしが何を言っても言い負かされたりあしらわれてしまうからすごく悔しいっ!!
(ワンコ状態だったら、間違いなく噛みついてやるのにっ!!!!)
「(ポンポン)」
「ミムルちゃん……ありがと。うん、あたしミムルちゃんがいるからいろいろ頑張れそうな気がするよ!」
「(ぎゅう)」
「もう、ミムルちゃんってば慰めてくれるの?嬉しいっ、ぎゅう~~♡」
慰めてくれるの天使のようなミムルちゃんに癒され、食事がくるまであたしはしばらく幸せを噛み締めていた。
……周りは全然違うことを考えているなんて、これっぽっちも気づかないままに。
そして、あたしがそれを知ったのはお店を出てしばらく経ってからのことだった。
カインズさんの知り合いを含め、周囲に多大な誤解を招いてしまったので、とりあえずまずは訂正しなければ…と口を開いてみた。
「えっと、あのっ……」
「いつぞやは毎回違う女を取っ替え引っ替えしていたお前がなぁ……俺は嬉しいよ、うんうん。」
「え…女を取っ替え引っ替え……?」
「だぁぁぁっ!!!ちょっ、おっさん!!お前、こんなところでバラさなくたって……」
「「……」」
「いやいやいやっ、昔!昔のことだから!!若気の至りってヤツ!!!
ミムル、ミカヅキ、今はホントにそーゆーの一切ないからっ!
お願いだからそんな瞳で俺を見ないでぇぇぇぇ!!!!」
イケメンのカインズさんは思った通り、たくさんの女性といろんな経験があるお方のようだ。
予想通り……とはいえ、やっぱり聞いて気持ちの良い内容ではない。
「ふ~ん……別に気にしてないですよ。あたし達には関係ないもん。ね~、ミムルちゃん」
「(コクリ)」
「ミカヅキっ、ミムル~~~~っ」
「ははっ、あのやんちゃだったカインズが尻に敷かれる光景が見れるとはなぁ!
よし嬢ちゃん達、今日はカインズのおごりだ!!
ヤツにしっかり請求してやるからいっぱい食え!!」
「そこはおごれよっ、おっさん!そもそもはあんたのせいじゃねぇか!!」
「はんっ、オレは事実を言ってるだけだ!
それにな、がっつり稼いでる奴からはしっかり請求するって決めてんだよ、オレは。
こんなしょぼくれた飯処の金すら払えない奴なんて、すぐに捨てられちまうんじゃねぇか?」
「だぁぁぁっ、わかったよ!ってか、元よりミカヅキ達の分は全部俺が払うつもりだっての!!
いいからさっさといつもの飯持ってきやがれ!不味かったら払わねぇぞ!!」
ハンスさんとの遠慮ないやり取りを見る限り、気心の知れた昔からの知り合いなんだなと伺える。
カインズさんの女性遍歴はさておき、こういった知り合いはちょっぴり羨ましい。
お店の中にちらほらいたお客さんもカインズさんの知り合いみたいで、さっきからのやりとりについてたぶん弄られてるんだろう。
カインズさんが楽しそうに別テーブルで話している間に、ハンスさんがあたしに話しかけてきた。
「ミカヅキっていったな。さっきはアイツの昔のことで気を悪くさせちまったよな、すまない。
オレはハンス。アイツが子供の頃からの付き合いだ」
「あ、いえ、こちらこそちゃんとした挨拶もせずすみません。ミカヅキと申します。
カインズさんのことは思った通り…って感じだったので気にしないで下さい。
ハンスさんや今店内にいるお客さん達は、カインズさんと昔からの知り合いなんですね」
「あぁ。あいつの両親がよくカインズを連れてこの店に来てたからなぁ……その頃からの知り合いよ」
「カインズさんの、ご両親が……」
確かに他のテーブル席の方達も常連って感じで、年配の方を中心に皆でカインズさんを可愛がってるようだ。
カインズさんの屈託のない笑顔を見る限り、このお店は思い出が多く昔馴染みの安心できる仲間がいる、かけがえのない場所なんだろう。
そして、ハンスさんがミムルちゃんに「前より大きくなったな」と優しく頭を撫でている。
ミムルちゃんにとっても、このお店は大切で安心できる場所なんだろう。
(そんな大切な場所に連れて来てもらえたのはすごく嬉しい……)
多少の誤解はあるが、それはあとあと訂正すれば良いだろう。
そう思って、とりあえずハンスさんに話しかけられるまま会話を楽しむことにした。
「そういやミカヅキ、食べ物の好き嫌いはあるか?」
「いえ、特にないです」
「じゃあ甘い物は好きか?」
「はい、大好きです!」
「カインズとはいつからの付き合いなんだ?」
「えっと、1ヶ月ほど前から……―――――って、え?」
(ガタガタッ)
「聞いたか?野郎ども」
「あぁ、ハンス。しっかりと聞いたぜ」
「ふふっ、カインズにしては長続きしてるじゃない♪本気ってことかしら?」
「や、あのっ…あたしとカインズさんは一緒に暮らしてるだけで別に……」
「おぉっ!!もう一緒に暮らしてやがるのか?!相変わらずカインズは手が早いというか何というか」
「えっと、そうではなくてですね……」
反射的に答えてしまった内容で、何やら周りでどんどん話が進んでいる。
もしかしなくても、これはさらに誤解させてしまったのでは……??
(あれ?奥のテーブルではなぜか乾杯まで始まってないか??!!)
「ねぇ、カインズさん、どうしよう…なんかお店にいる人達、ものすごくあたし達のこと誤解してませんか?」
「ん~、ミカヅキってばまだ敬語使うの?なんならこの場にいる皆の前でお仕置きしちゃおうか?」
「や、だから違いま…違うからっ!!それにこんなところでやめて下さいっ!!」
「ふふっ、ここじゃなかったら良いってこと?」
「~~~~~~~~っ」
人間の姿になってから接するカインズさんは、あたしに対してなぜかすっごく意地悪だ。
女性慣れしてるからなのか、あたしが何を言っても言い負かされたりあしらわれてしまうからすごく悔しいっ!!
(ワンコ状態だったら、間違いなく噛みついてやるのにっ!!!!)
「(ポンポン)」
「ミムルちゃん……ありがと。うん、あたしミムルちゃんがいるからいろいろ頑張れそうな気がするよ!」
「(ぎゅう)」
「もう、ミムルちゃんってば慰めてくれるの?嬉しいっ、ぎゅう~~♡」
慰めてくれるの天使のようなミムルちゃんに癒され、食事がくるまであたしはしばらく幸せを噛み締めていた。
……周りは全然違うことを考えているなんて、これっぽっちも気づかないままに。
そして、あたしがそれを知ったのはお店を出てしばらく経ってからのことだった。
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