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2章 美幼女の秘密
12 悪女は忘れた頃にやって来る
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◇
テクニシャンなカインズさんにもふもふされつつ、喋れない天使な幼女・ミムルちゃんを愛でるという、白ふわワンコに転生した異世界生活を満喫し始めていた頃、この家に来客があった。
忘れもしない、あの女だ。
(いや、正直忘れかけていた。
むしろそのまま忘れていたかった女だ)
今日も今日とてカインズさんは日帰りクエストでいない。
(ホントにタイミングが悪いというかなんというか……
はっきり言って、カインズさんとは縁がないんじゃないの?)
いかにも飲み屋…この世界では酒場になるんだろうけど、“夜の女”って感じのあの女は、そういうお店で働いてるんだろう。
でも、カインズさんは基本的に仕事が終わるとまっすぐ帰ってくるので、酒場とかに行っている様子はない。
(少なくともあたしがこの家に来てからは行っていないと思う)
「カインズ~、いる~?」
(いね――――よっ!!!一昨日きやがれ!!!!)
心の中で本音という名の暴言を吐きつつ、あたしはミムルちゃんのそばにいる。
今日のミムルちゃんは家の中で拭き掃除をしていた。
女の声が聞こえて一瞬ビクっとしてたけど、このまま無視するわけにもいかないらしく、またため息を吐きながら女のいる玄関へと向かった。
「あ、カイン……って、なんだミムルか。ってことはカインズは家にいないってことね?」
「(コクン)」
「あ~あ、ここ最近はお店に全然来てくれなくなったし、遊びに連れて行ってもくれない。……ホントにこれもあんたっていうお荷物がいるせいだからよね」
「……っ」
(ホントにこの女は何様なんだろうか。お店にカインズさんが来ないのは、絶対あんたなんかに興味がないからだよってすごく言いたい)
プライドが高い女はそんなの認めないだろうけど…
だからって、ミムルちゃんをターゲットにするのはお門違いもいいところだ。
「そういえば、アタシ聞いちゃったんだけど~、あんたの両親って魔獣に襲われて死んだだって?」
「!!」
「?!」
ミムルちゃんの身体が一瞬強張ったあとガタガタと震え始め、両手を耳にあて首を横に振りながら、全身で“聞きたくない”と身体が拒否しているようだった。
(両親が魔獣に襲われた?でもこの怖がり方は尋常じゃない…
もしかして……―――――――――)
「両親はあんたを庇ったことで死んだみたいだけど……あんたもあのとき親と仲良く死んでれば良かったのにねぇ、あははっ」
「―――――――――っ!!!!!」
(……やっぱり。ミムルちゃんはその場にいて、両親の死を目の当たりにしちゃったんだ。
最悪っ!ホントに何なのよ、このクソ女……!!!!!)
その場で泣き崩れるミムルちゃんと、それをあざ笑う目の前の女。
さすがにあたしも怒りが頂点に達し、ミムルちゃんを守るために女の前に立ちふさがった。
「フ――――――ッ……グゥゥゥ―――……」
「は?何このちっさい犬。こいつを守ろうってわけ?……あははっ、こんな犬にしか守られないなんて、あんたも…――――――?!」
(…――――――許さない。なんの事情も知らないくせに、自分勝手な憶測や気持ちで罪もないミムルちゃんを傷つけて……これ以上傷つけることは許さないっ!!!)
「……っぐ、な、に、これっ…苦し……―――――がはっ」
良くわからないけど、目の前の女が苦しんでいる。
(苦しい?…でも、ミムルちゃんはもっと苦しかったはずだ。
何度も何度も傷つけられたはずだ)
(【……――――ダカラオ前モ、モット苦シメ……―――――】)
「ぁぐっ、ぁ……」
目の前の女が苦しそうに首を掻きむしっているのを、自分のような自分ではないような不思議な感覚で眺めていたら、後ろからぎゅっと抱きしめられて我に返った。
「……っ(フルフル)」
ミムルちゃんは泣きながら首を横に振っている。
“もうやめて!”と言っているようだ。
(……あれ?あの女を苦しめてたのってあたしだったの??)
ミムルちゃんの方へ気が逸れたことで、あの女は咳き込みながらも苦しみから解放されたようだ。
「……っ、けほっ、はぁっ、なんなのよ…今の……あんたの仕業なの?」
「……(フルフル)」
「…っざけんな!なめたまねしやがって!!このっ…………」
「!!」
動けるようになった女が逆上して、ミムルちゃんに手をあげようとしたのはわかったが、あたしはミムルちゃんにぎゅっと抱きしめられているため身動きが取れなかった。
(ダメっ!このままじゃミムルちゃんが……―――――――――!!!)
「何してるの!!やめなさいっ!!!」
聞こえてきたのは、知らない女の人の制止する声だった。
テクニシャンなカインズさんにもふもふされつつ、喋れない天使な幼女・ミムルちゃんを愛でるという、白ふわワンコに転生した異世界生活を満喫し始めていた頃、この家に来客があった。
忘れもしない、あの女だ。
(いや、正直忘れかけていた。
むしろそのまま忘れていたかった女だ)
今日も今日とてカインズさんは日帰りクエストでいない。
(ホントにタイミングが悪いというかなんというか……
はっきり言って、カインズさんとは縁がないんじゃないの?)
いかにも飲み屋…この世界では酒場になるんだろうけど、“夜の女”って感じのあの女は、そういうお店で働いてるんだろう。
でも、カインズさんは基本的に仕事が終わるとまっすぐ帰ってくるので、酒場とかに行っている様子はない。
(少なくともあたしがこの家に来てからは行っていないと思う)
「カインズ~、いる~?」
(いね――――よっ!!!一昨日きやがれ!!!!)
心の中で本音という名の暴言を吐きつつ、あたしはミムルちゃんのそばにいる。
今日のミムルちゃんは家の中で拭き掃除をしていた。
女の声が聞こえて一瞬ビクっとしてたけど、このまま無視するわけにもいかないらしく、またため息を吐きながら女のいる玄関へと向かった。
「あ、カイン……って、なんだミムルか。ってことはカインズは家にいないってことね?」
「(コクン)」
「あ~あ、ここ最近はお店に全然来てくれなくなったし、遊びに連れて行ってもくれない。……ホントにこれもあんたっていうお荷物がいるせいだからよね」
「……っ」
(ホントにこの女は何様なんだろうか。お店にカインズさんが来ないのは、絶対あんたなんかに興味がないからだよってすごく言いたい)
プライドが高い女はそんなの認めないだろうけど…
だからって、ミムルちゃんをターゲットにするのはお門違いもいいところだ。
「そういえば、アタシ聞いちゃったんだけど~、あんたの両親って魔獣に襲われて死んだだって?」
「!!」
「?!」
ミムルちゃんの身体が一瞬強張ったあとガタガタと震え始め、両手を耳にあて首を横に振りながら、全身で“聞きたくない”と身体が拒否しているようだった。
(両親が魔獣に襲われた?でもこの怖がり方は尋常じゃない…
もしかして……―――――――――)
「両親はあんたを庇ったことで死んだみたいだけど……あんたもあのとき親と仲良く死んでれば良かったのにねぇ、あははっ」
「―――――――――っ!!!!!」
(……やっぱり。ミムルちゃんはその場にいて、両親の死を目の当たりにしちゃったんだ。
最悪っ!ホントに何なのよ、このクソ女……!!!!!)
その場で泣き崩れるミムルちゃんと、それをあざ笑う目の前の女。
さすがにあたしも怒りが頂点に達し、ミムルちゃんを守るために女の前に立ちふさがった。
「フ――――――ッ……グゥゥゥ―――……」
「は?何このちっさい犬。こいつを守ろうってわけ?……あははっ、こんな犬にしか守られないなんて、あんたも…――――――?!」
(…――――――許さない。なんの事情も知らないくせに、自分勝手な憶測や気持ちで罪もないミムルちゃんを傷つけて……これ以上傷つけることは許さないっ!!!)
「……っぐ、な、に、これっ…苦し……―――――がはっ」
良くわからないけど、目の前の女が苦しんでいる。
(苦しい?…でも、ミムルちゃんはもっと苦しかったはずだ。
何度も何度も傷つけられたはずだ)
(【……――――ダカラオ前モ、モット苦シメ……―――――】)
「ぁぐっ、ぁ……」
目の前の女が苦しそうに首を掻きむしっているのを、自分のような自分ではないような不思議な感覚で眺めていたら、後ろからぎゅっと抱きしめられて我に返った。
「……っ(フルフル)」
ミムルちゃんは泣きながら首を横に振っている。
“もうやめて!”と言っているようだ。
(……あれ?あの女を苦しめてたのってあたしだったの??)
ミムルちゃんの方へ気が逸れたことで、あの女は咳き込みながらも苦しみから解放されたようだ。
「……っ、けほっ、はぁっ、なんなのよ…今の……あんたの仕業なの?」
「……(フルフル)」
「…っざけんな!なめたまねしやがって!!このっ…………」
「!!」
動けるようになった女が逆上して、ミムルちゃんに手をあげようとしたのはわかったが、あたしはミムルちゃんにぎゅっと抱きしめられているため身動きが取れなかった。
(ダメっ!このままじゃミムルちゃんが……―――――――――!!!)
「何してるの!!やめなさいっ!!!」
聞こえてきたのは、知らない女の人の制止する声だった。
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