【R18】先輩、食べても良いですか?

暁月

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【本編】

二人の初めて in小野side

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今日は朝からそわそわして落ち着かなかった。

“今夜はついに先輩と……!!!”なんて、盛りのついた学生みたいに落ち着かず、それでいていつもみたいに会社で出迎えてくれる先輩がすごく可愛く見えて、正直すぐにでも抱きついてキスしたい衝動に駆られた。
……もちろん会社なのでそんな事はしないけど。


いつものように取引先へ向かうため急いでいた僕達は、行き違いで通過したエレベーターを待つ時間すら惜しくて階段を駆け下りるも、途中で先輩が足を踏み外してしまった。
ギリギリで急いでたからと言って、反応が遅れてしまったのは本当に悔しかった。

そして、助けてくれた先輩の同期で“タケ”と呼ばれていた笹島さん。
誰とでも仲が良いみたいだけど、特定の彼女はいない社内でも人気のあるイケメンだ。
なんとなく、先輩に同期以上の気持ちがある気がする僕にとっての要注意人物だ。
……根拠はないけど。

助けてくれたお礼をしつつ、先輩を自分の方へと引き寄せ「急ぎましょう」と促しながら、思わず牽制するような態度を取ってしまった。
こういうトコロがまだまだ子供っぽいんだろうなと、後になって少し反省。
スマートな対応ができる大人の男というのは、なかなか難しいようだ。


それから何とか予定通りに仕事を終えたのが16時50分頃。
この後会社に戻って報告書作成とかになると、急いで終わらせても終わるのは18時半……いや、19時くらいだろうか?


やっぱり定時で退社というのは難しいらしい……――――――――


「……―――――――はい、無事に終わりました。……はい、そうです。…………わかりました、じゃああたし達はこのまま直帰で良いんですね?……はい、ありがとうございます。お疲れ様です」
「……先輩、今の連絡……もしかして」
「ふふ~ん♪このまま直帰しても良いって部長の許可をもらったので、今日はこのまま仕事終わりです!」
「やったぁ!」
「これも、報告書作成とか諸々を小野くんも残業して手伝ってくれたおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ、僕は先輩と一緒にいる口実ができて嬉しかったです」

驚くことに、先輩がこのまま直帰してもいいという了承を部長からもらってくれた!
ホントにこのまま帰って良いの?夢じゃないよね?!

先輩の根回しがあまりにも嬉しくて、もう仕事が終わりだと思うと先輩にどうしても触れたくて……そう思ったら自然に身体が動いていた。

「じゃあ、晩ご飯はどこかで食べてから帰る?ここからなら……―――――――」
「先輩、ちょっと……」

思わず周囲から見えないような建物の影に先輩を連れ込みキスをした。

「小野くん?いったいどうし……んんっ?!」
「んっ、ハァッ、ん、ちゅ……晩ご飯、今度美味しいモノご馳走するので、今日は簡単にテイクアウトで済ませても良いですか?」
「……え?」
「……少しでも早く、先輩をぎゅってしたいです……」
「!!!」

本当ならこのままお洒落なお店で食事と言いたかったけど、今日だけは少しでも早く先輩に触れたくて仕方がなかった。

下心丸出しで引かれないかなって心配だったけど、恥ずかしそうにうつむきながら同じ気持ちである事を打ち明けてくれた先輩はホントに可愛いくて、もうこのまま近くのホテルに行こうかなと本気で考えてしまった。

だけど、「初めては、小野くんの家が良い」と言っていた先輩にそんな事はできない。
だから僕は、お泊りセットが入っている先輩のセカンドバッグを奪って、少しでも早く家への道を急ぐ事にした。





最寄りの駅で晩ご飯にと牛丼を購入し、徒歩10分程の家路を普段なら絶対に使わないタクシーを使って自宅へ帰る。
緊張と欲望でいっぱいになった僕は、気の利いた言葉なんて何も言えず、ただただ先輩の手を離さず握っていた。


(ガチャッ、バタン、ドサッ)


鍵を開けて玄関に入った僕は、手に持っていた牛丼屋セカンドバッグを置き、飛びつくように先輩にキスをした。


「んっ、ぁ、ふ、んんっ」


まだ二人とも玄関に入ったばかりで靴も脱いでいない。
高いヒールを履いている先輩は僕よりも身長が高いので、僕が少しだけ背伸びして同じ高さになるという少しカッコつかない状態だけど、そんな事など気にする余裕もなく夢中になって先輩の口唇を貪る。

苦しいのか少し涙目になった先輩は、すごく可愛い顔で僕の加虐心を煽る。
先輩をいじめたいなんて思ってない…むしろ大事にしたいのに、僕がそんな顔をさせているのかと思うと堪らない。
……以前からちょっと思ってたけど、僕って意外とSなのかも。先輩限定だけど。

ムードもなく甘い言葉もない上に、欲望丸出しな僕の行動は正直最低だと思う。
だけど、先輩は嫌がるどころか“もっとちょうだい”と言わんばかりに僕に抱きつき、自分からも舌を絡めてくる。

もう何もかもが愛おしくて自然と行動がエスカレートしていき、シャツのボタンを数個解いてから胸にかぶりついて”僕の彼女なんだ”と所有印を付け始めた。

「僕のモノってシルシです」
「ん、見えるトコは、ダメ…なの……」
「……見えないトコロは?」
「良いよ。……小野くんのモノってシルシ、いっぱいつけて?」
「~~~~~~~っ、了解ですっ!先輩大好きっ!!」

ホントに先輩は、僕の理性を崩壊させる天才なんじゃないかと思う。
このままここで抱いても良いかな?
………いやいや、さすがにそれはダメだ。

だったらいっそこのまま寝室に行ってしまおうか……――――――――?

「ん、ちゅ……ぁ、はぁっ、小野、く……場所」
「ふふっ、すみません。嬉しくてつい……このまま、寝室でも良いですか?」
「え、あのっ、できれば先にシャワーを……」

やっぱりこのままはイヤだよね。わかってた。
でも、ちょっと我がまま言うくらいは許してくださいね。

「ん~…………じゃあ、一緒に入って良いですか?」
「ぅえ?!」
「だって……1分1秒でも先輩から離れたくない……」
「いや、あの、この後いくらでも……」
「先輩、ダメ……?」
「……」

先輩のめちゃくちゃ困った顔も可愛いなぁ……なんて、言ったら怒られるかな?
半分冗談だから断ってくれても良いんだけど、本気で考えてる先輩の姿も、コレはコレで可愛い。
……さっきから”可愛い”ばっかり考えてる僕は、先輩を好きすぎてだいぶおかしくなってるのかもしれない。

先輩を観察しながら期待しないで返答を待っていると、返ってきたのは予想外の言葉だった。

「……ワカリ、マシタ……」

一瞬耳を疑ったけど、先輩は顔を真っ赤にしながら言ったことを後悔してアワアワしてる感じだった。
「やっぱナシ!」と訂正するのは時間の問題かもしれないから、困惑してるうちに脱衣所へと誘導し、僕は荷物を置いてから二人分のバスタオルや着替えを用意する事にした。

「……まさか、一緒にシャワーまで入れるとは思わなかった……ふふっ、嬉しいなぁ」



意気揚々と鼻歌を歌いながら準備をしていたけど、思えば一緒にシャワーに入ってもまだ最後までしちゃいけないんだと気付いた瞬間、この時間が天国なのかある意味地獄なのかよくわからなくなった。
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