【R18】先輩、食べても良いですか?

暁月

文字の大きさ
上 下
2 / 35
【企画モノ・番外編】

【春宵一刻企画】花散る夜に、貴方と二人2

しおりを挟む



旅行当日。今日は待ちに待った小野くんとの2泊3日のお花見旅行だ。
天気は快晴、気温も上々、最高の旅行日和に気分は朝からハイテンション。

日帰りデートや1泊2日の出張には行ったことがあるけど、小野くんとプライベートでの旅行は実は初めてだから、楽しみすぎて実は昨日はあまり眠れませんでした。
……子供か?あたしは。


JRで最寄り駅まで移動し、そこからは宿の送迎バスに乗っての移動になる。
チェックインまで時間があるからと、普通列車でのんびりと駅弁を食べながら外の景色を堪能し、最寄り駅に着いてからバスで20~30分山の方へ走ると今回の目的である宿へと到着する。

場所が場所なので、駅周辺から離れると見渡す限り森や山などの自然ばかり。

お土産は、宿で買うか帰りの電車に乗る前に駅周辺のお店で買うしかない。
少し味気ないかもしれないけど、たまにはのんびり温泉で休日も良いよねと二人の意見が一致したので、今回は観光メインではなく温泉メインで楽しむつもりだ。
……どうせ宿の部屋から出ることないでしょとか思っちゃいけない。


昨夜あまり眠れなかったあたしは、駅弁でお腹いっぱいになってからうとうとしてしまい、気が付けば小野くんの肩を枕にぐっすりと眠ってしまったようだ。

「ご、ごめん。あたし、眠っちゃってた?」
「ふふっ、先輩の寝顔、可愛かったですよ」
「!!」

今回ばかりは、小野くんをドキドキさせてやるんだと意気込んでいたのに、宿に着く前に早速やらかして逆にドキドキさせられてしまった。


悔しいっ!でも、今日のあたしはいつもと一味違うんだからね!


そう心の中で意気込みながら、宿までの自然あふれる景色をバスの中から小野くんと楽しんでいた。





「先輩、この宿って歩いて2~3分の所にある本館の大浴場も利用できるみたいですよ」
「そうなの?」
「食事まで時間もあるし、せっかくだからそっちも楽しんでみましょうか」
「そうだね、そうしよう」

あたし達が泊るのは客室露天風呂付きの離れで、小野くんが言ったように近くにある本館には大浴場がある。
団体客や家族連れが多い本館の露天風呂も、なかなかの絶景だと人気があり今なら桜を堪能できるらしい。

チェックインを済ませ、必要な荷物を持ってから本館へ向かう前にある場所へと立ち寄った。

「僕が着る浴衣、先輩の好きなモノ選んでくださいね」
「あたしが選んで良いの?……じゃあ、あたしも小野くんが選んだ浴衣着たいから、選んでくれる?」
「もちろん♪でも、これだけたくさんあると、さすがに悩みますね」
「そうだね」

この宿の魅力の一つに、男女共に好きな浴衣を選んで着れるというオプションがある。
可愛い柄から渋い柄まで結構な数を取り揃えてあり、その中から好きな柄を1つ選べるのだ。

「じゃあ、先輩はコレで」
「じゃあ小野くんはコレを……」

小野くんが選んでくれたのは“よろけ花”と書かれた柄で、白地に黒の波のような模様が印象的な柄だった。
小さいモノトーンの花に混じって、赤い花と赤いラインが綺麗に入っていて、シンプルに見えるけどとても可愛い。

あたしが選んだのも比較的落ち着いた柄で、“灰しじら”と書かれたダークグレーの派手過ぎない縦のストライプが素敵な浴衣だった。

小野くんが選ぶ好き浴衣は色鮮やかな花柄かと思ってたから、どの色にでも合うように、そしてあたしが好きな感じのモノを……って選んだのに、結果的にお揃いみたいな感じで嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感じになってしまった。

「ふふっ、先輩とお揃いみたいになっちゃいましたね♪」
「……っ」
「じゃあ、浴衣も一緒に持ってさっそく行きましょう。着付けは宿の人も手伝ってくれるみたいですよ」
「う、うん……」

またしてもしてやられた気分だ。悔しい。

せめてもの仕返しにと、あたしは小野くんとつないだ手をぎゅうっと強く握ったのに、逆に小野くんから優しく握り返されてしまった。


ダメだ。ホントに小野くんには何をやっても勝てる気がしない。
あたしを喜ばせる天才か、むしろあたしがチョロすぎるのか……


あたし達は結局、本館に到着するまでの数分間、無言で互いの手をぎゅうぎゅうと握り合っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...