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【企画モノ・番外編】
【春宵一刻企画】花散る夜に、貴方と二人2
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◇
旅行当日。今日は待ちに待った小野くんとの2泊3日のお花見旅行だ。
天気は快晴、気温も上々、最高の旅行日和に気分は朝からハイテンション。
日帰りデートや1泊2日の出張には行ったことがあるけど、小野くんとプライベートでの旅行は実は初めてだから、楽しみすぎて実は昨日はあまり眠れませんでした。
……子供か?あたしは。
JRで最寄り駅まで移動し、そこからは宿の送迎バスに乗っての移動になる。
チェックインまで時間があるからと、普通列車でのんびりと駅弁を食べながら外の景色を堪能し、最寄り駅に着いてからバスで20~30分山の方へ走ると今回の目的である宿へと到着する。
場所が場所なので、駅周辺から離れると見渡す限り森や山などの自然ばかり。
お土産は、宿で買うか帰りの電車に乗る前に駅周辺のお店で買うしかない。
少し味気ないかもしれないけど、たまにはのんびり温泉で休日も良いよねと二人の意見が一致したので、今回は観光メインではなく温泉メインで楽しむつもりだ。
……どうせ宿の部屋から出ることないでしょとか思っちゃいけない。
昨夜あまり眠れなかったあたしは、駅弁でお腹いっぱいになってからうとうとしてしまい、気が付けば小野くんの肩を枕にぐっすりと眠ってしまったようだ。
「ご、ごめん。あたし、眠っちゃってた?」
「ふふっ、先輩の寝顔、可愛かったですよ」
「!!」
今回ばかりは、小野くんをドキドキさせてやるんだと意気込んでいたのに、宿に着く前に早速やらかして逆にドキドキさせられてしまった。
悔しいっ!でも、今日のあたしはいつもと一味違うんだからね!
そう心の中で意気込みながら、宿までの自然あふれる景色をバスの中から小野くんと楽しんでいた。
◇
「先輩、この宿って歩いて2~3分の所にある本館の大浴場も利用できるみたいですよ」
「そうなの?」
「食事まで時間もあるし、せっかくだからそっちも楽しんでみましょうか」
「そうだね、そうしよう」
あたし達が泊るのは客室露天風呂付きの離れで、小野くんが言ったように近くにある本館には大浴場がある。
団体客や家族連れが多い本館の露天風呂も、なかなかの絶景だと人気があり今なら桜を堪能できるらしい。
チェックインを済ませ、必要な荷物を持ってから本館へ向かう前にある場所へと立ち寄った。
「僕が着る浴衣、先輩の好きなモノ選んでくださいね」
「あたしが選んで良いの?……じゃあ、あたしも小野くんが選んだ浴衣着たいから、選んでくれる?」
「もちろん♪でも、これだけたくさんあると、さすがに悩みますね」
「そうだね」
この宿の魅力の一つに、男女共に好きな浴衣を選んで着れるというオプションがある。
可愛い柄から渋い柄まで結構な数を取り揃えてあり、その中から好きな柄を1つ選べるのだ。
「じゃあ、先輩はコレで」
「じゃあ小野くんはコレを……」
小野くんが選んでくれたのは“よろけ花”と書かれた柄で、白地に黒の波のような模様が印象的な柄だった。
小さいモノトーンの花に混じって、赤い花と赤いラインが綺麗に入っていて、シンプルに見えるけどとても可愛い。
あたしが選んだのも比較的落ち着いた柄で、“灰しじら”と書かれたダークグレーの派手過ぎない縦のストライプが素敵な浴衣だった。
小野くんが選ぶ好き浴衣は色鮮やかな花柄かと思ってたから、どの色にでも合うように、そしてあたしが好きな感じのモノを……って選んだのに、結果的にお揃いみたいな感じで嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感じになってしまった。
「ふふっ、先輩とお揃いみたいになっちゃいましたね♪」
「……っ」
「じゃあ、浴衣も一緒に持ってさっそく行きましょう。着付けは宿の人も手伝ってくれるみたいですよ」
「う、うん……」
またしてもしてやられた気分だ。悔しい。
せめてもの仕返しにと、あたしは小野くんとつないだ手をぎゅうっと強く握ったのに、逆に小野くんから優しく握り返されてしまった。
ダメだ。ホントに小野くんには何をやっても勝てる気がしない。
あたしを喜ばせる天才か、むしろあたしがチョロすぎるのか……
あたし達は結局、本館に到着するまでの数分間、無言で互いの手をぎゅうぎゅうと握り合っていた。
旅行当日。今日は待ちに待った小野くんとの2泊3日のお花見旅行だ。
天気は快晴、気温も上々、最高の旅行日和に気分は朝からハイテンション。
日帰りデートや1泊2日の出張には行ったことがあるけど、小野くんとプライベートでの旅行は実は初めてだから、楽しみすぎて実は昨日はあまり眠れませんでした。
……子供か?あたしは。
JRで最寄り駅まで移動し、そこからは宿の送迎バスに乗っての移動になる。
チェックインまで時間があるからと、普通列車でのんびりと駅弁を食べながら外の景色を堪能し、最寄り駅に着いてからバスで20~30分山の方へ走ると今回の目的である宿へと到着する。
場所が場所なので、駅周辺から離れると見渡す限り森や山などの自然ばかり。
お土産は、宿で買うか帰りの電車に乗る前に駅周辺のお店で買うしかない。
少し味気ないかもしれないけど、たまにはのんびり温泉で休日も良いよねと二人の意見が一致したので、今回は観光メインではなく温泉メインで楽しむつもりだ。
……どうせ宿の部屋から出ることないでしょとか思っちゃいけない。
昨夜あまり眠れなかったあたしは、駅弁でお腹いっぱいになってからうとうとしてしまい、気が付けば小野くんの肩を枕にぐっすりと眠ってしまったようだ。
「ご、ごめん。あたし、眠っちゃってた?」
「ふふっ、先輩の寝顔、可愛かったですよ」
「!!」
今回ばかりは、小野くんをドキドキさせてやるんだと意気込んでいたのに、宿に着く前に早速やらかして逆にドキドキさせられてしまった。
悔しいっ!でも、今日のあたしはいつもと一味違うんだからね!
そう心の中で意気込みながら、宿までの自然あふれる景色をバスの中から小野くんと楽しんでいた。
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「先輩、この宿って歩いて2~3分の所にある本館の大浴場も利用できるみたいですよ」
「そうなの?」
「食事まで時間もあるし、せっかくだからそっちも楽しんでみましょうか」
「そうだね、そうしよう」
あたし達が泊るのは客室露天風呂付きの離れで、小野くんが言ったように近くにある本館には大浴場がある。
団体客や家族連れが多い本館の露天風呂も、なかなかの絶景だと人気があり今なら桜を堪能できるらしい。
チェックインを済ませ、必要な荷物を持ってから本館へ向かう前にある場所へと立ち寄った。
「僕が着る浴衣、先輩の好きなモノ選んでくださいね」
「あたしが選んで良いの?……じゃあ、あたしも小野くんが選んだ浴衣着たいから、選んでくれる?」
「もちろん♪でも、これだけたくさんあると、さすがに悩みますね」
「そうだね」
この宿の魅力の一つに、男女共に好きな浴衣を選んで着れるというオプションがある。
可愛い柄から渋い柄まで結構な数を取り揃えてあり、その中から好きな柄を1つ選べるのだ。
「じゃあ、先輩はコレで」
「じゃあ小野くんはコレを……」
小野くんが選んでくれたのは“よろけ花”と書かれた柄で、白地に黒の波のような模様が印象的な柄だった。
小さいモノトーンの花に混じって、赤い花と赤いラインが綺麗に入っていて、シンプルに見えるけどとても可愛い。
あたしが選んだのも比較的落ち着いた柄で、“灰しじら”と書かれたダークグレーの派手過ぎない縦のストライプが素敵な浴衣だった。
小野くんが選ぶ好き浴衣は色鮮やかな花柄かと思ってたから、どの色にでも合うように、そしてあたしが好きな感じのモノを……って選んだのに、結果的にお揃いみたいな感じで嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感じになってしまった。
「ふふっ、先輩とお揃いみたいになっちゃいましたね♪」
「……っ」
「じゃあ、浴衣も一緒に持ってさっそく行きましょう。着付けは宿の人も手伝ってくれるみたいですよ」
「う、うん……」
またしてもしてやられた気分だ。悔しい。
せめてもの仕返しにと、あたしは小野くんとつないだ手をぎゅうっと強く握ったのに、逆に小野くんから優しく握り返されてしまった。
ダメだ。ホントに小野くんには何をやっても勝てる気がしない。
あたしを喜ばせる天才か、むしろあたしがチョロすぎるのか……
あたし達は結局、本館に到着するまでの数分間、無言で互いの手をぎゅうぎゅうと握り合っていた。
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