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【企画モノ・番外編】
【春宵一刻企画】花散る夜に、貴方と二人
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※Twitterで見かけた井笠令子様と森野きの子様の合同企画「春宵一刻」の短編モノで、5話くらいまでの予定。
※本編の設定を使ったIFのお話(こんな話もアリだよね)くらいに思っていただけたらありがたいです。
*****************************
◇
「先輩、一緒にお花見しませんか?」
そう言ってきたのは、去年大学新卒でうちの会社に入社した後輩であり、現在はあたしの彼氏でもある小野大樹くん。
そんな彼から素敵な誘いを受けたのは、少しずつ春の温かさを感じるようになった3月の初め頃。
いつものように週末を一緒に過ごすため、会社帰りにそのまま小野くんの家にお泊りにきたあたしは、ちょうど晩ご飯の支度をしている最中だった。
「お花見かぁ……良いね、小野くんと一緒にお花見したい」
「へへ♪先輩ならきっとそう言ってくれると思ってました。……実はこんな場所をもう予約済だったりします」
「え?もう予約してあるの??」
「はい。ちょっと人気がある場所なので、早めに予約しないとダメかなと思って……」
ご飯を待っている小野くんがあたしの元へ来て見せてくれたのは、お花見の名所・穴場を紹介した旅行雑誌のとあるページだった。
肉じゃがの味を調整しながらそれとなく覗き込むと、一度行ってみたいと思っていた人気の宿が目に入り思わず動きが止まる。
「え……ここって部屋にある露天風呂から桜が見れるっていう人気の宿じゃない?
毎年すごく人気があるのに部屋数が少ないから、予約取るの難しいって聞いたことがある」
「僕が見た時、たまたまキャンセルが出たのか予約できそうだったんで……それで、そのまま予約しちゃいました」
「すごいね、小野くん。一度行ってみたいなと思ってたから、すごく嬉しい!」
「ふふっ、喜んでもらえたみたいで良かったです」
5歳年下なのに、年下の弟妹が多い長男だからなのか世話焼きの気配り上手で、あたしがフォローされる事が多い。
その上、特に恋愛面に関してはエスコートがうまいというか……あたしの気持ちを察してくれるのがホントに上手で、不器用で口下手なあたしは助けられてばかりだ。
時々“エスパーか?!”とツッコみたくなる事もある。
「先輩、僕も味見して良いですか?」
「うん、いいよ。……はい、どうぞ」
「……ん、美味しい♪先輩の料理はホントに美味しいですね……もちろん、先輩自身も美味しいけど」
「!!……っぁ、ちょっと、小野くん?!」
「ご飯を食べる前に、前菜、食べても良いですか?」
「~~~~~~~~~~~っ」
だけど、小野くんはこの通りちょっとだけ……いや、かなりえっちな人だった。
去年の新入社員歓迎会で、部長との飲み比べで酔っ払ったあたしと、成り行きでホテルで一夜を共にした小野くん。
起きて真っ裸だったあたしは、間違いなく自分が小野くんを襲ってしまったと思ったけど、実際はそうじゃなくて。
当時は、あたしの同意なしに抱けないなんて紳士的な一面を見せていたのに、そんな紳士はどこへやら。
今は、二人きりになったとたん襲いかかってくる野獣そのものだ。
「……うぅ、草食動物に見える野獣め……」
「ふふっ、先輩って時々面白いコト言いますよね」
「え?!嘘っ、やだ、あたし声に出してた?!」
「リクエストにお答えして、今日は野獣っぽくシテみましょうか」
「やっ、待って、小野く……んんっ、ふぁ、んむっ」
後は煮込むだけとはいえ、ここは台所。
こんなトコロで襲われたら、毎回料理するたびに思い出して……――――――――じゃなくて!
ここはご飯を作る場所であってえっちする場所じゃない。
抗議しようにも、すっかり雄の顔つきになった小野くんにときめいてしまい、ダメだと拒否する理性とこのまま襲って欲しいという本能がせめぎ合う。
「……っ、ここじゃ、やだ……」
「ふふっ、ではこちらへどうぞ。エスコートさせていただきます♡」
結局断ることができず場所を変えるだけとなり、最終的にこうしていただかれてしまうのはもう何回目だろうか。
もちろんその日も、かなり遅めの晩ご飯になりました。
自分としては、そういった行為があんまり好きじゃなかったのに、不思議と小野くんに触れられるのは全く嫌じゃなく、むしろ嬉しいというかもっと欲しくなる……
一見無害なこの笑顔に、何度騙された事か……
毎回驚かされたり何かしてもらったりばかりなあたしは、今回の旅行で少しでも小野くんをあっと驚かせてやるんだと密かに決意したのでした。
※本編の設定を使ったIFのお話(こんな話もアリだよね)くらいに思っていただけたらありがたいです。
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「先輩、一緒にお花見しませんか?」
そう言ってきたのは、去年大学新卒でうちの会社に入社した後輩であり、現在はあたしの彼氏でもある小野大樹くん。
そんな彼から素敵な誘いを受けたのは、少しずつ春の温かさを感じるようになった3月の初め頃。
いつものように週末を一緒に過ごすため、会社帰りにそのまま小野くんの家にお泊りにきたあたしは、ちょうど晩ご飯の支度をしている最中だった。
「お花見かぁ……良いね、小野くんと一緒にお花見したい」
「へへ♪先輩ならきっとそう言ってくれると思ってました。……実はこんな場所をもう予約済だったりします」
「え?もう予約してあるの??」
「はい。ちょっと人気がある場所なので、早めに予約しないとダメかなと思って……」
ご飯を待っている小野くんがあたしの元へ来て見せてくれたのは、お花見の名所・穴場を紹介した旅行雑誌のとあるページだった。
肉じゃがの味を調整しながらそれとなく覗き込むと、一度行ってみたいと思っていた人気の宿が目に入り思わず動きが止まる。
「え……ここって部屋にある露天風呂から桜が見れるっていう人気の宿じゃない?
毎年すごく人気があるのに部屋数が少ないから、予約取るの難しいって聞いたことがある」
「僕が見た時、たまたまキャンセルが出たのか予約できそうだったんで……それで、そのまま予約しちゃいました」
「すごいね、小野くん。一度行ってみたいなと思ってたから、すごく嬉しい!」
「ふふっ、喜んでもらえたみたいで良かったです」
5歳年下なのに、年下の弟妹が多い長男だからなのか世話焼きの気配り上手で、あたしがフォローされる事が多い。
その上、特に恋愛面に関してはエスコートがうまいというか……あたしの気持ちを察してくれるのがホントに上手で、不器用で口下手なあたしは助けられてばかりだ。
時々“エスパーか?!”とツッコみたくなる事もある。
「先輩、僕も味見して良いですか?」
「うん、いいよ。……はい、どうぞ」
「……ん、美味しい♪先輩の料理はホントに美味しいですね……もちろん、先輩自身も美味しいけど」
「!!……っぁ、ちょっと、小野くん?!」
「ご飯を食べる前に、前菜、食べても良いですか?」
「~~~~~~~~~~~っ」
だけど、小野くんはこの通りちょっとだけ……いや、かなりえっちな人だった。
去年の新入社員歓迎会で、部長との飲み比べで酔っ払ったあたしと、成り行きでホテルで一夜を共にした小野くん。
起きて真っ裸だったあたしは、間違いなく自分が小野くんを襲ってしまったと思ったけど、実際はそうじゃなくて。
当時は、あたしの同意なしに抱けないなんて紳士的な一面を見せていたのに、そんな紳士はどこへやら。
今は、二人きりになったとたん襲いかかってくる野獣そのものだ。
「……うぅ、草食動物に見える野獣め……」
「ふふっ、先輩って時々面白いコト言いますよね」
「え?!嘘っ、やだ、あたし声に出してた?!」
「リクエストにお答えして、今日は野獣っぽくシテみましょうか」
「やっ、待って、小野く……んんっ、ふぁ、んむっ」
後は煮込むだけとはいえ、ここは台所。
こんなトコロで襲われたら、毎回料理するたびに思い出して……――――――――じゃなくて!
ここはご飯を作る場所であってえっちする場所じゃない。
抗議しようにも、すっかり雄の顔つきになった小野くんにときめいてしまい、ダメだと拒否する理性とこのまま襲って欲しいという本能がせめぎ合う。
「……っ、ここじゃ、やだ……」
「ふふっ、ではこちらへどうぞ。エスコートさせていただきます♡」
結局断ることができず場所を変えるだけとなり、最終的にこうしていただかれてしまうのはもう何回目だろうか。
もちろんその日も、かなり遅めの晩ご飯になりました。
自分としては、そういった行為があんまり好きじゃなかったのに、不思議と小野くんに触れられるのは全く嫌じゃなく、むしろ嬉しいというかもっと欲しくなる……
一見無害なこの笑顔に、何度騙された事か……
毎回驚かされたり何かしてもらったりばかりなあたしは、今回の旅行で少しでも小野くんをあっと驚かせてやるんだと密かに決意したのでした。
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