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【本編】
試される理性 in小野side
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◇
「……で、ご飯を食べに行っただけのはずなのに、どうして先輩はこんな状態なんですか?」
「別に……ちょこ~っと嗜むくらいにお酒を飲んだくらいだけど……」
「“嗜む”くらいでこんな風にはなりません。……強めのお酒飲ませて、色々先輩に聞こうとしましたね?」
「う……だって、もう少し突っつけば出てくると思ったんだもの……」
「はぁ……とりあえず、僕は先輩を連れて帰りますからね」
「レストランの会計は私が済ませたから……榎本には小野から謝っておいてくれる?」
「わかりました」
僕が支度を終えて先輩たちが食事をしている店に着いた時、先輩はテーブルに突っ伏して眠っていた。
食事をしてただけなのになぜか……なんて、羽柴さんの態度を見ればすぐに分かった。
ちょっとお洒落な食事とお酒が楽しめる、落ち着いた雰囲気のレストラン。
大人の女性二人にはピッタリのお店だなと思ったのが第一印象。
すでに普段着のパーカーというラフな格好をしていた僕は、ちょっと入るのに躊躇したほどだ。
店の人からも少し怪訝な顔をされたけど、羽柴さんがお店の人に伝えてくれていたらしく、「連れが中にいるので迎えに来ました」と言ったらすんなりと案内してくれた。
案の定羽柴さんは、先輩に強いお酒を飲ませたらしい。
先輩って、お酒が強いんじゃなくて顔に出ずらいだけなんだけど、羽柴さんもそれは知らないみたいだね。
……不謹慎だけど、僕しか知らないってのはちょっと嬉しいかも。
先輩は、声をかけると少し意識が戻ったけどとても一人で歩ける状態ではなかった。
なので、肩を組んだ状態そのまま店の外へと連れだし、通りかかったタクシーを拾い先輩と一緒に乗り込む。
「……あれ?榎本さん……と、小野、くん?」
平日とはいえ、ここは会社から少し歩いた繁華街のど真ん中。
この喧騒の中では、そんな呟きをされたとしても気付ける人はほとんどいないだろう。
僕も、そんな声にまったく気づかず、タクシーに乗って先輩の家へと向かった。
◇
タクシーから降りて先輩の家へと向かう。
「先輩、家に着きましたよ。鍵は出せますか?」
「ん……んぅ?」
「ダメだ……ちょっと失礼しますね」
申し訳ないと思いながらも、鞄の中に家の鍵らしきものがないか探す。
鞄のサイドポケットか、ポーチの中かなと思い探していると、ポーチの中から予想外のモノが出てきてビックリした。
「……っ、これって、“あの日”用のモノだよね……って事は先輩、もしかして……」
ポーチの中にあったのは、女性専用の……いわゆる生理用品ってやつだ。
妹達に「買ってきて」と頼まれた事があるので、見てすぐに分かった。
今先輩が持ち歩いているという事は、現在“そういうこと”なのだろう。
「はは……先輩を抱くのはしばらくおあずけだな。仕方ない」
妹達を見てると、生理中はホルモンバランスが崩れて体調を崩しやすかったり、感情も少し不安定になるみたいだ。
先輩が風邪を引いたのもその影響なのかもしれないな。
上着を脱がせた後も、先輩は起きる気配がない。
とりあえずソファに座らせたものの、スーツのままでベッドへ寝かせるわけにもいかないし……かと言って、さすがにクローゼットから着替えを勝手に探すのもよろしくない気がする。
「一応余分に着替えを持ってきておいて良かった。……着替えさせること自体は仕方がなかったと先輩に納得してもらおう」
今日は泊りになるかも……もしくは、何かあった時の着替えを……と思って、明日のスーツと部屋着用のスウェットを2着持ってきた。
先輩の家に置いてもらおうと思ったら、早速使うことになるなんてね。
さすがに今は、ホテルの時みたいに自分で服を脱いでたたむようなことはしなさそうだ。
……いや、されても困るんだけど。
「先輩、ちょっと失礼しますね」
一応声をかけながら、シャツのボタンを1つ1つ外す。
以前はパジャマを脱がせたけど、スーツのシャツとパジャマじゃだいぶ違うし、今先輩は眠っている状態だ。
ここで起きたらものすごく誤解されるだろうから、せめて着替え終わるまでは起きないでいて欲しい。
シャツを脱がせると、シルクのような上品なタンクトップからうっすらと下着が見えてドキッとする。
「……さすがに下着は脱がせられないんで、ホックだけ外しておきますね」
先輩からの反応はないけど、一応声をかける。
背中に手を回すために少し先輩に近づくと、ふんわりと香るいい匂いが理性を崩そうとしてくる。
ダメだダメだ。先輩はお酒に酔った上に眠ってるんだ。
しかも“あの日”で、体調だって悪いかもしれない。
いやいや、もう“彼女”なんだし、以前に「抱いても良いですか」って聞いたら頷いてくれたんだから、もうナニしてもOKでしょ?
頭の中で天使と悪魔が意見を言い合う。
悲しいことに、僕も男なので酔っていようが何してようが先輩に触れたい気持ちは少なからずあるのだ。
しかも、気持ちが通じ合ったばかりで、今日だって「迎えに行きますからね」って言った後の先輩の「はい」が可愛すぎて、その場にいたら絶対押し倒してたに違いない。
「……僕って、こんなに欲深い人間だったっけ?それとも先輩だからかな?」
目の前ですやすやと寝息を立てる先輩は、少しあどけなくて会社にいる時のクールな感じは一切ない。
時折触れる肌が、お酒のせいなのか体調のせいなのか少し熱くて、僕のスウェットを着たら熱いんじゃないかと少し心配になる。
「んっ」
「!!……すみませんっ、これはちょっとした出来心で……」
「……ん、もっと…」
「??!!」
一瞬先輩が起きたかと思ったら寝ぼけてるだけで、しかも寝ぼけた結果が「もっと」??!!
ちょっと何これ!!ホントに先輩何なの??!!可愛い過ぎなんですけど!!!
なんとか先輩を着替えさせるのに成功したけど、この間、何度も何度も理性を崩されかけた。
次第に、“これは試練だ。理性を保つための試練なんだ”と変に負けん気を起こした僕は、なんとか理性に打ち勝ったものの、達成感よりも脱力感の方が大きくてそのまま力尽きて先輩にもたれかかるように意識を失ってしまった。
「……で、ご飯を食べに行っただけのはずなのに、どうして先輩はこんな状態なんですか?」
「別に……ちょこ~っと嗜むくらいにお酒を飲んだくらいだけど……」
「“嗜む”くらいでこんな風にはなりません。……強めのお酒飲ませて、色々先輩に聞こうとしましたね?」
「う……だって、もう少し突っつけば出てくると思ったんだもの……」
「はぁ……とりあえず、僕は先輩を連れて帰りますからね」
「レストランの会計は私が済ませたから……榎本には小野から謝っておいてくれる?」
「わかりました」
僕が支度を終えて先輩たちが食事をしている店に着いた時、先輩はテーブルに突っ伏して眠っていた。
食事をしてただけなのになぜか……なんて、羽柴さんの態度を見ればすぐに分かった。
ちょっとお洒落な食事とお酒が楽しめる、落ち着いた雰囲気のレストラン。
大人の女性二人にはピッタリのお店だなと思ったのが第一印象。
すでに普段着のパーカーというラフな格好をしていた僕は、ちょっと入るのに躊躇したほどだ。
店の人からも少し怪訝な顔をされたけど、羽柴さんがお店の人に伝えてくれていたらしく、「連れが中にいるので迎えに来ました」と言ったらすんなりと案内してくれた。
案の定羽柴さんは、先輩に強いお酒を飲ませたらしい。
先輩って、お酒が強いんじゃなくて顔に出ずらいだけなんだけど、羽柴さんもそれは知らないみたいだね。
……不謹慎だけど、僕しか知らないってのはちょっと嬉しいかも。
先輩は、声をかけると少し意識が戻ったけどとても一人で歩ける状態ではなかった。
なので、肩を組んだ状態そのまま店の外へと連れだし、通りかかったタクシーを拾い先輩と一緒に乗り込む。
「……あれ?榎本さん……と、小野、くん?」
平日とはいえ、ここは会社から少し歩いた繁華街のど真ん中。
この喧騒の中では、そんな呟きをされたとしても気付ける人はほとんどいないだろう。
僕も、そんな声にまったく気づかず、タクシーに乗って先輩の家へと向かった。
◇
タクシーから降りて先輩の家へと向かう。
「先輩、家に着きましたよ。鍵は出せますか?」
「ん……んぅ?」
「ダメだ……ちょっと失礼しますね」
申し訳ないと思いながらも、鞄の中に家の鍵らしきものがないか探す。
鞄のサイドポケットか、ポーチの中かなと思い探していると、ポーチの中から予想外のモノが出てきてビックリした。
「……っ、これって、“あの日”用のモノだよね……って事は先輩、もしかして……」
ポーチの中にあったのは、女性専用の……いわゆる生理用品ってやつだ。
妹達に「買ってきて」と頼まれた事があるので、見てすぐに分かった。
今先輩が持ち歩いているという事は、現在“そういうこと”なのだろう。
「はは……先輩を抱くのはしばらくおあずけだな。仕方ない」
妹達を見てると、生理中はホルモンバランスが崩れて体調を崩しやすかったり、感情も少し不安定になるみたいだ。
先輩が風邪を引いたのもその影響なのかもしれないな。
上着を脱がせた後も、先輩は起きる気配がない。
とりあえずソファに座らせたものの、スーツのままでベッドへ寝かせるわけにもいかないし……かと言って、さすがにクローゼットから着替えを勝手に探すのもよろしくない気がする。
「一応余分に着替えを持ってきておいて良かった。……着替えさせること自体は仕方がなかったと先輩に納得してもらおう」
今日は泊りになるかも……もしくは、何かあった時の着替えを……と思って、明日のスーツと部屋着用のスウェットを2着持ってきた。
先輩の家に置いてもらおうと思ったら、早速使うことになるなんてね。
さすがに今は、ホテルの時みたいに自分で服を脱いでたたむようなことはしなさそうだ。
……いや、されても困るんだけど。
「先輩、ちょっと失礼しますね」
一応声をかけながら、シャツのボタンを1つ1つ外す。
以前はパジャマを脱がせたけど、スーツのシャツとパジャマじゃだいぶ違うし、今先輩は眠っている状態だ。
ここで起きたらものすごく誤解されるだろうから、せめて着替え終わるまでは起きないでいて欲しい。
シャツを脱がせると、シルクのような上品なタンクトップからうっすらと下着が見えてドキッとする。
「……さすがに下着は脱がせられないんで、ホックだけ外しておきますね」
先輩からの反応はないけど、一応声をかける。
背中に手を回すために少し先輩に近づくと、ふんわりと香るいい匂いが理性を崩そうとしてくる。
ダメだダメだ。先輩はお酒に酔った上に眠ってるんだ。
しかも“あの日”で、体調だって悪いかもしれない。
いやいや、もう“彼女”なんだし、以前に「抱いても良いですか」って聞いたら頷いてくれたんだから、もうナニしてもOKでしょ?
頭の中で天使と悪魔が意見を言い合う。
悲しいことに、僕も男なので酔っていようが何してようが先輩に触れたい気持ちは少なからずあるのだ。
しかも、気持ちが通じ合ったばかりで、今日だって「迎えに行きますからね」って言った後の先輩の「はい」が可愛すぎて、その場にいたら絶対押し倒してたに違いない。
「……僕って、こんなに欲深い人間だったっけ?それとも先輩だからかな?」
目の前ですやすやと寝息を立てる先輩は、少しあどけなくて会社にいる時のクールな感じは一切ない。
時折触れる肌が、お酒のせいなのか体調のせいなのか少し熱くて、僕のスウェットを着たら熱いんじゃないかと少し心配になる。
「んっ」
「!!……すみませんっ、これはちょっとした出来心で……」
「……ん、もっと…」
「??!!」
一瞬先輩が起きたかと思ったら寝ぼけてるだけで、しかも寝ぼけた結果が「もっと」??!!
ちょっと何これ!!ホントに先輩何なの??!!可愛い過ぎなんですけど!!!
なんとか先輩を着替えさせるのに成功したけど、この間、何度も何度も理性を崩されかけた。
次第に、“これは試練だ。理性を保つための試練なんだ”と変に負けん気を起こした僕は、なんとか理性に打ち勝ったものの、達成感よりも脱力感の方が大きくてそのまま力尽きて先輩にもたれかかるように意識を失ってしまった。
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