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【本編】
変化した二人の関係
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◇
結局小野くんの熱は、日曜の夜になってようやく微熱まで下がった。
まだ寒気がするということで、ぶり返す可能性があったからもちろん“あの時の続き”はしていない。
このままゆっくり休めば、明日の仕事は問題ない。
体調が悪くても、朝一で病院に行って薬をもらいに行くくらいの体力はあるだろうということで、小野くんは自宅へと帰る事にした。
家まで送ろうかと思ったけど拒否されたので、今度こそは……とタクシー代をあたしが払う。
「……すみません、先輩。この2日間、ベッド占領しちゃいました……」
「あたしはこのとおり、もう大丈夫だから気にしないで。それよりも、家に帰ったらゆっくり休んでね。明日体調悪かったら、無理せず病院行くなり休むなりして良いからね」
「はぁい」
お粥だけでは栄養が足りないだろうからと、小野くんが寝込んでる間に買い物して作っておいたおかずをタッパーに入れて持たせる。
マンションの前まで呼んだタクシーはそろそろ到着するらしく、小野くんの希望であたしは玄関での見送りとなった。
「じゃあ、帰りますね」
「うん。気を付けてね」
「……僕、先輩の“彼氏”になれたってことで良いんですよね?」
「!!!」
そう言えば、“好きだ”って告白もされたし、キスやそれ以上の事もすでにしてる仲ではあるけど、“お付き合いするかどうか”という話はしていなかった。
もちろん小野くんのことを好きだと自覚しているので、お付き合いしたいかしたくないかで言えば、もちろん“したい”である。
だけど・・・――――――
「僕、年下でまだまだ頼りないし嘘っぽく聞こえるかもしれないけど……一時だけじゃなくて、先輩とこれから先の将来も見据えた上で一緒にいたいって思ってます」
「小野くん……」
「だから先輩、僕が結婚相手として合格だったら僕と結婚してください」
「!!!」
「あ、ちょっと待って下さい!プロポーズはちゃんとするから、今のはなしで!!」
「ふふっ、わかったよ」
気にしてそうだから口にはしないけど、やっぱり小野くんは”可愛い人”だと思う。
「……風邪、絶対治します。だから、月曜の夜に”続き”しましょうね♡」
「!!!」
小野くんは去り際に、ちゅっとあたしのほっぺにキスをしてから「絶対ですよ~」と言って去って行った。
……前言撤回。見た目が可愛いくても、中身はしっかり”男の人”である。
嵐が去っていたように家の中が静まり返る。
一人暮らしには慣れたけど、この家で誰かと過ごすのは久しぶりだったから、一緒にいた時間が楽しければ楽しいほど、終わった時が寂しくなってしまう。
でも……―――――――
「小野くんの、“彼女”になっちゃったんだ……」
“一夜の過ち”的な関係から始まったのに、本当にお付き合いすることになるなんて……
しかも、“結婚”を見据えたお付き合いになるなんて、思いもしなかった。
「ふふっ、ちょっと……いや、だいぶ嬉しいかも」
先ほど食べた夕食の食器を洗いながら、先ほどの会話を思い出す。
思わずにやけてしまう程、あたしは嬉しいらしい。
ここが家で良かった。外だったら絶対今あたしは怪しい人に違いない。
食器を洗い終え、自分が眠るためにベッドを整える。
あたしや小野くんが風邪で寝込んでいた時のシーツやタオルは、洗濯しないといけないし水枕も片付けないといけない。
「ここに、さっきまで小野くんが寝てたんだよね……」
まだ少しだけ温もりの残るベッドに触れ、先ほどまでここにいた小野くんのことを想う。
年下ではあるけれど、意外としっかりしていて力もある。
5人兄弟の長男で、弟妹達がよく風邪を引くから看病は慣れてると言っていた。
空手で黒帯を持っていて、今でも時々身体を鍛えているんだとか……
ごつごつとした男らしい手に、空手特有の拳ダコもあって……本人は恥ずかしそうにしてたけど、それだけ頑張ってきた証なんだからカッコいいよって言ったら嬉しそうにしてたっけ。
あの指が、あたしの胸やナカを……
――――――って、ナニを思い出してんのよっ、あたしは!!
小野くんの熱が上がらなかったら、あのままあたしはこのベッドで抱かれていただろう。
気持ち良かった。熱くて恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだったけど、すごく気持ち良かった。
「……ホテルに行った時も、きっとすごく気持ち良かったんだろうな……記憶がなくてちょっと残念かも」
とりあえず、明日の夜に改めてと約束をしたのだから、自分も風邪をぶり返さないよう気を付けなければ。
汗で濡れてしまったシーツやタオルを交換し洗濯機を回しながら、寝る前に蜂蜜入りのホットミルクを飲もうと準備し始めた。
その時、ツキンと下腹部に鈍い痛みのようなモノを感じた。
……あれ?もしかしてコレって……―――――――
嫌な予感がしたので、すぐにあたしはトイレに駆けんだ。
「……マジですか。このタイミングで来ちゃいますか、生理……」
どうやら風邪を引いて寝込んでしまったのも、周期的に免疫力が低下して体調崩しやすかったかららしい。
あたしは明日の分も鎮痛剤を用意して、小野くんとの約束が果たせなくなったことをどうやって伝えるべきか考えながら眠りについた。
結局小野くんの熱は、日曜の夜になってようやく微熱まで下がった。
まだ寒気がするということで、ぶり返す可能性があったからもちろん“あの時の続き”はしていない。
このままゆっくり休めば、明日の仕事は問題ない。
体調が悪くても、朝一で病院に行って薬をもらいに行くくらいの体力はあるだろうということで、小野くんは自宅へと帰る事にした。
家まで送ろうかと思ったけど拒否されたので、今度こそは……とタクシー代をあたしが払う。
「……すみません、先輩。この2日間、ベッド占領しちゃいました……」
「あたしはこのとおり、もう大丈夫だから気にしないで。それよりも、家に帰ったらゆっくり休んでね。明日体調悪かったら、無理せず病院行くなり休むなりして良いからね」
「はぁい」
お粥だけでは栄養が足りないだろうからと、小野くんが寝込んでる間に買い物して作っておいたおかずをタッパーに入れて持たせる。
マンションの前まで呼んだタクシーはそろそろ到着するらしく、小野くんの希望であたしは玄関での見送りとなった。
「じゃあ、帰りますね」
「うん。気を付けてね」
「……僕、先輩の“彼氏”になれたってことで良いんですよね?」
「!!!」
そう言えば、“好きだ”って告白もされたし、キスやそれ以上の事もすでにしてる仲ではあるけど、“お付き合いするかどうか”という話はしていなかった。
もちろん小野くんのことを好きだと自覚しているので、お付き合いしたいかしたくないかで言えば、もちろん“したい”である。
だけど・・・――――――
「僕、年下でまだまだ頼りないし嘘っぽく聞こえるかもしれないけど……一時だけじゃなくて、先輩とこれから先の将来も見据えた上で一緒にいたいって思ってます」
「小野くん……」
「だから先輩、僕が結婚相手として合格だったら僕と結婚してください」
「!!!」
「あ、ちょっと待って下さい!プロポーズはちゃんとするから、今のはなしで!!」
「ふふっ、わかったよ」
気にしてそうだから口にはしないけど、やっぱり小野くんは”可愛い人”だと思う。
「……風邪、絶対治します。だから、月曜の夜に”続き”しましょうね♡」
「!!!」
小野くんは去り際に、ちゅっとあたしのほっぺにキスをしてから「絶対ですよ~」と言って去って行った。
……前言撤回。見た目が可愛いくても、中身はしっかり”男の人”である。
嵐が去っていたように家の中が静まり返る。
一人暮らしには慣れたけど、この家で誰かと過ごすのは久しぶりだったから、一緒にいた時間が楽しければ楽しいほど、終わった時が寂しくなってしまう。
でも……―――――――
「小野くんの、“彼女”になっちゃったんだ……」
“一夜の過ち”的な関係から始まったのに、本当にお付き合いすることになるなんて……
しかも、“結婚”を見据えたお付き合いになるなんて、思いもしなかった。
「ふふっ、ちょっと……いや、だいぶ嬉しいかも」
先ほど食べた夕食の食器を洗いながら、先ほどの会話を思い出す。
思わずにやけてしまう程、あたしは嬉しいらしい。
ここが家で良かった。外だったら絶対今あたしは怪しい人に違いない。
食器を洗い終え、自分が眠るためにベッドを整える。
あたしや小野くんが風邪で寝込んでいた時のシーツやタオルは、洗濯しないといけないし水枕も片付けないといけない。
「ここに、さっきまで小野くんが寝てたんだよね……」
まだ少しだけ温もりの残るベッドに触れ、先ほどまでここにいた小野くんのことを想う。
年下ではあるけれど、意外としっかりしていて力もある。
5人兄弟の長男で、弟妹達がよく風邪を引くから看病は慣れてると言っていた。
空手で黒帯を持っていて、今でも時々身体を鍛えているんだとか……
ごつごつとした男らしい手に、空手特有の拳ダコもあって……本人は恥ずかしそうにしてたけど、それだけ頑張ってきた証なんだからカッコいいよって言ったら嬉しそうにしてたっけ。
あの指が、あたしの胸やナカを……
――――――って、ナニを思い出してんのよっ、あたしは!!
小野くんの熱が上がらなかったら、あのままあたしはこのベッドで抱かれていただろう。
気持ち良かった。熱くて恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだったけど、すごく気持ち良かった。
「……ホテルに行った時も、きっとすごく気持ち良かったんだろうな……記憶がなくてちょっと残念かも」
とりあえず、明日の夜に改めてと約束をしたのだから、自分も風邪をぶり返さないよう気を付けなければ。
汗で濡れてしまったシーツやタオルを交換し洗濯機を回しながら、寝る前に蜂蜜入りのホットミルクを飲もうと準備し始めた。
その時、ツキンと下腹部に鈍い痛みのようなモノを感じた。
……あれ?もしかしてコレって……―――――――
嫌な予感がしたので、すぐにあたしはトイレに駆けんだ。
「……マジですか。このタイミングで来ちゃいますか、生理……」
どうやら風邪を引いて寝込んでしまったのも、周期的に免疫力が低下して体調崩しやすかったかららしい。
あたしは明日の分も鎮痛剤を用意して、小野くんとの約束が果たせなくなったことをどうやって伝えるべきか考えながら眠りについた。
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