【R18】先輩、食べても良いですか?

暁月

文字の大きさ
上 下
18 / 35
【本編】

風邪を引きました2

しおりを挟む


「どうぞ。卵粥です。生姜も入れたから、身体も温まると思いますよ」
「あ、ありがとう」

お粥の味もさることながら、生姜まで入れてくれるなんてホントに女子力高すぎじゃなかろうか。
しかもアツアツではなく、食べやすい温度まで冷ましてくれている。
こんなの絶対……

「お嫁さんに欲しい……」
「……ぶっ、ケホッ、ケホッ……せ、先輩??」
「へ?」
「僕、男なので……お嫁さんはちょっと…」
「!!!!」

嘘っ!声に出してた?!
恥ずかしすぎるっ!!!

「いや、あの…言葉の綾というか、その……」
「ふふっ、わかってますよ。お粥、お気に召したようで良かったです。
 ……ちょっと失礼しますね」

小野くんはそう言って、あたしのおでこに優しく触れる。
熱を測ってくれてるんだけど、思いの外顔が近いのと触れる手の大きさに男性であることを意識してしまい、ドキドキしてしまう。

「ん~……まだ熱が高そうですね。食べ終わったら買ってきた薬飲みましょう。
 あと、プリンとかゼリーも買ってきたので食欲があるなら食べて下さい」
「……」

薬だけじゃなく、プリンやゼリーまで?!
どこまで至れり尽くせりなの??!!

「ありがと……なんか、いろいろごめんなさい…」
「良いんですよ。僕がしたくてしてる事なんですから☆
 ……もし僕が寝込んだら看病してくれますか?」
「うん。あたしで良ければ……」
「やった!約束ですよ、先輩☆」

なんだか乗せられた気がしなくもないけど、別に看病くらいなら問題ないよね。

食べ終わった後の食器を、手慣れた手つきで鼻歌まで歌いながら片付ける小野くん。
なんでこんなに優しく……―――――――


『僕、先輩のことが好きです』


……っ、そうでした!告白されてたんでした、あたしっ!!
そもそも風邪ひいたのだって、小野くんのことでいっぱいいっぱいでやらかした結果じゃないかっ!!

「先輩、片付け終わりましたよ。何かして欲しいコトありますか?」
「……っ!!!」
「??……先輩?」

なんだか急に恥ずかしくなってきて、小野くんの顔が見れない。

「…あっ、あたしっ、そろそろベッドで寝るから、小野くんもそろそろ……ぁ…」

早々に寝てしまおうと、慌てて立ち上がったのがダメだった。
熱と急に立ち上がったことによる眩暈でふらつき、そのままゆっくりと身体が傾く。

「先輩っ!!」

倒れる衝撃を覚悟した直後、何かにぶつかる鈍い音がしたけど、あたしは痛みを一切感じない。
その代わりに、温かい温もりに包まれる感じた。

「……っ~~~~~~」
「!!…小野くんっ??!!」
「ははっ、さすがに転ぶのは避けられなかったみたいです。
 ……先輩、痛くないですか?」

目を開くと、あたしは小野くんを下敷きにした状態だった。
当の小野くんは壁に頭をぶつけたみたいで、少し痛そうにしてる。


「バカっ!何で庇ったりなんか……」
「言ったでしょ?“先輩が好きだ”って。年下は頼りないって思われたくないのに……ははっ、現実はなかなかうまくいきませんね」
「小野、くん……」


そつなく何でもこなすデキ過ぎた男の子だと思ってたけど、実際は努力していた結果だったなんて……
しかも、あたしに“頼りない”と思われたくないからって……


「……頼り、なくなんかない……」
「…え?」
「小野くんは、可愛いけどしっかりしてるし、仕事だって真面目で頑張ってる。
 むしろ年上のあたしの方が、全然頼りないしダメな人間だよ……」
「ふふっ、そんなことないですよ」

小野くんはあたしの下敷きになったまま、慰めるように背中をぽんぽんとしてくれる。
ホントに小野くんは、どこまでもあたしを甘やかす。

「そんなことあるのっ!だって……風邪ひいたのだって、昨日、小野くんに…こ、告白されたの、動揺しすぎて……シャワーで水とお湯間違えて身体冷やすわ、お茶飲もうとしてたのにお湯沸かし忘れるわで……」
「へ……?先輩が??」
「それで……お湯沸くの待ってる間に、髪乾かさないままうたた寝しちゃって……
 うぅ、こんなんで風邪ひいて会社休んじゃうなんて、最悪だよぉ……」

言ってるうちに情けなくなって、小野くんの胸に顔を埋める。
だけど、小野くんは予想に反して声を出して笑い始め、あたしをぎゅうっと抱きしめた。

「ぷっ、あはははっ、も、先輩ってばホントに可愛すぎですっ!僕を悶え殺すつもりですか?」
「……へ?」
「だって、それって僕の告白に動揺し過ぎて風邪ひいたって事ですよね?」
「あ……」
「先輩が風邪で辛そうなのにこんなこと言うのは申し訳ないですけど、僕、“お見舞い”っていう大義名分で堂々と先輩の家に来れたこと、すごく感謝してるんです。今だってもう幸せ過ぎてに顔がにやけそう」
「??」
「先輩の胸、柔らかくて超気持ちい♡」
「!!!!!!」

熱なんかじゃなく、恥ずかしさで一気に顔が熱くなる。

小野くんって、こんな子だったっけ??

「ふふっ、僕、年下の兄妹が多いから世話をするのは慣れてるんです。
 それに、こういう役得なことがあったら良いなって下心を持ってここに来てるので、決して聖人君子ではないですよ?」
「!!」


BARであたしにキスした時のような、少しだけ意地悪な笑みを浮かべる小野くん。
さしずめ、小悪魔のような小野くんはさらにトンデモ発言をしてきた。


「……風邪を引いたのが僕のせいなら、ちゃんと責任取らなきゃですね……」
「え……んっ?!」



気付いた時には口唇は重なっていて、小野くんは何度も何度も角度を変えながらキスをした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...