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【本編】
いつもと同じようで、やっぱり違う彼
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◇
「先輩!ここのお店にしませんか?」
「うん、そうだね」
小野くんと滞りなく営業先を回り終え、そのまま直帰となりそろそろ解散かなと思った時、小野くんから「良かったら晩ご飯食べに行きませんか?」とお誘いがあった。
以前から、二人だったり会社の人も交えて仕事帰りにご飯を食べに行く事はあったし、今日は特に予定もないから断る理由も特にない。
若干昨日のコトは気にかかるけど、今日一日小野くんは不自然な態度を一切とることなく平然としていた。
だから、あたしとホテルで一緒に過ごした事なんてまったく気にしてないんだろうし、あたしもさすがに夜にもなると平静さを保ってたから、「いいよ」と小野くんに返事をした。
小野くんが選んだお店は、大通りから少し中道に入った場所にあるパスタ屋さんだった。
さすが若者なだけあって、お洒落で人気のありそうなお店である。
「このお店、実は前から来てみたいと思って目を付けてたんです♪」
「そうなんだ」
「このお店、生パスタが美味しいみたいです」
「生パスタ?ホント?!」
「ふふっ、先輩、ホントにパスタが好きなんですね」
「あ、うん…」
“生パスタ”という言葉に思わず反応してしまう。
パスタは元々好きで家でもたまに作るけど、さすがに生パスタはお店でしか味わえないから、良い店がないかなと最近ちょうど思っていた。
写真付きのメニューはどれを見ても美味しそうでとても迷う。
最終的にカルボナーラとジェノベーゼのどちらかにしようと思ったけど、今は小野くんと一緒にいるからなんとなくニンニク入りのジェノベーゼよりカルボナーラを選んだ。
……別に深い意味はない。
注文したカルボナーラは、たっぷりの厚切りベーコンとほんのり甘みのあるホワイトソース、中央にある卵黄を崩すと生パスタと絶妙に絡む上、黒コショウがピリっと味を引き締めている素晴らしく美味しいパスタだった。
「ん~~~~~♪」
「ふふっ、食べてる時の先輩、ものすごく幸せそうですね」
「!!……そ、そうかな?普通だと思うけど……」
料理がそこまで得意ではないあたしは、晩ご飯は外食で済ませるか、ご飯だけ炊いて出来合いのおかずを買って帰ることが多い。
今は仕事帰りの晩ご飯ということで、美味しいものを目の前にいつもの癖でつい反応してしまったが、今日は目の前に小野くんがいたんだと気付き、慌てて平静を装う。
このお店のパスタはホントに美味しいから、リピート決定だね。
今度は一人で来て、ジェノベーゼを注文しよう。
あ、この海老クリームも捨てがたいなぁ……
「先輩、ここのパスタ本当に美味しいですね」
「うん。カルボナーラも美味しいけど、他のメニューも気になる」
「あ、僕もです!じゃあ、また今度一緒にこのお店に来ましょうね!」
「え?…あ、うん」
「絶対ですよ?あと、先輩がオススメのお店があったらそのお店も連れて行ってくださいね」
「へ?」
「……ダメ、ですか?」
「いや、えっと……わかった、よ」
あれ?なんか勢いで返事したけど、これってまた小野くんとこのお店や、あたしのオススメのお店に小野くんと行くってこと?
社交辞令……とはちょっと違うような?
いつもと同じ雰囲気なのに、なんとなく違う感じもする小野くんは、その後あたしがお手洗いに行ってる間に会計を済ませてしまっていた。
そういうことは彼女にしてあげれば良いのに……
「小野くん、あたしの分いくらだった?払うよ?」
「いえいえ、僕だって社会人なんですから、これくらいさせて下さい」
「いや、でもこういうことは小野くんの彼女にしてあげた方が……」
「え?」
小野くんがものすごく驚いた顔をしてる。
あれ?あたし、変なコト言っちゃった?
「(ボソッ)……やっぱり先輩、昨日言ったコト憶えてないんだ…」
「え?小野くん、何か言った?」
「いえ、何でもないですよ。先輩」
さっきとは違った意味で少し雰囲気の変わった気がする小野くん。
だけど、何がどう変わったのかもわからないから特に聞けないままお店を出る。
さっきご飯食べに行く約束しちゃったし、次はあたしがご馳走したらそれで良いかな?
そんなことを考えてたら、小野くんからちょっとした提案をされた。
「先輩、さっき僕が奢ったことを気にしてるなら、ちょっとだけ飲みに行きませんか?」
「飲みに?」
「はい。近くに知り合いが働いているBARがあるんです、そこでお酒をご馳走してください。それでチャラにしませんか?」
時刻はまだ20時。
明日も仕事ではあるけど、今すぐ帰らなければいけないという時間でもない。
軽く1~2杯飲む程度なら大丈夫だろうと思ったあたしは、「じゃあ、今度はご馳走させてもらうからね」とあらかじめ伝えて、小野くんと飲みに行く事にした。
「先輩!ここのお店にしませんか?」
「うん、そうだね」
小野くんと滞りなく営業先を回り終え、そのまま直帰となりそろそろ解散かなと思った時、小野くんから「良かったら晩ご飯食べに行きませんか?」とお誘いがあった。
以前から、二人だったり会社の人も交えて仕事帰りにご飯を食べに行く事はあったし、今日は特に予定もないから断る理由も特にない。
若干昨日のコトは気にかかるけど、今日一日小野くんは不自然な態度を一切とることなく平然としていた。
だから、あたしとホテルで一緒に過ごした事なんてまったく気にしてないんだろうし、あたしもさすがに夜にもなると平静さを保ってたから、「いいよ」と小野くんに返事をした。
小野くんが選んだお店は、大通りから少し中道に入った場所にあるパスタ屋さんだった。
さすが若者なだけあって、お洒落で人気のありそうなお店である。
「このお店、実は前から来てみたいと思って目を付けてたんです♪」
「そうなんだ」
「このお店、生パスタが美味しいみたいです」
「生パスタ?ホント?!」
「ふふっ、先輩、ホントにパスタが好きなんですね」
「あ、うん…」
“生パスタ”という言葉に思わず反応してしまう。
パスタは元々好きで家でもたまに作るけど、さすがに生パスタはお店でしか味わえないから、良い店がないかなと最近ちょうど思っていた。
写真付きのメニューはどれを見ても美味しそうでとても迷う。
最終的にカルボナーラとジェノベーゼのどちらかにしようと思ったけど、今は小野くんと一緒にいるからなんとなくニンニク入りのジェノベーゼよりカルボナーラを選んだ。
……別に深い意味はない。
注文したカルボナーラは、たっぷりの厚切りベーコンとほんのり甘みのあるホワイトソース、中央にある卵黄を崩すと生パスタと絶妙に絡む上、黒コショウがピリっと味を引き締めている素晴らしく美味しいパスタだった。
「ん~~~~~♪」
「ふふっ、食べてる時の先輩、ものすごく幸せそうですね」
「!!……そ、そうかな?普通だと思うけど……」
料理がそこまで得意ではないあたしは、晩ご飯は外食で済ませるか、ご飯だけ炊いて出来合いのおかずを買って帰ることが多い。
今は仕事帰りの晩ご飯ということで、美味しいものを目の前にいつもの癖でつい反応してしまったが、今日は目の前に小野くんがいたんだと気付き、慌てて平静を装う。
このお店のパスタはホントに美味しいから、リピート決定だね。
今度は一人で来て、ジェノベーゼを注文しよう。
あ、この海老クリームも捨てがたいなぁ……
「先輩、ここのパスタ本当に美味しいですね」
「うん。カルボナーラも美味しいけど、他のメニューも気になる」
「あ、僕もです!じゃあ、また今度一緒にこのお店に来ましょうね!」
「え?…あ、うん」
「絶対ですよ?あと、先輩がオススメのお店があったらそのお店も連れて行ってくださいね」
「へ?」
「……ダメ、ですか?」
「いや、えっと……わかった、よ」
あれ?なんか勢いで返事したけど、これってまた小野くんとこのお店や、あたしのオススメのお店に小野くんと行くってこと?
社交辞令……とはちょっと違うような?
いつもと同じ雰囲気なのに、なんとなく違う感じもする小野くんは、その後あたしがお手洗いに行ってる間に会計を済ませてしまっていた。
そういうことは彼女にしてあげれば良いのに……
「小野くん、あたしの分いくらだった?払うよ?」
「いえいえ、僕だって社会人なんですから、これくらいさせて下さい」
「いや、でもこういうことは小野くんの彼女にしてあげた方が……」
「え?」
小野くんがものすごく驚いた顔をしてる。
あれ?あたし、変なコト言っちゃった?
「(ボソッ)……やっぱり先輩、昨日言ったコト憶えてないんだ…」
「え?小野くん、何か言った?」
「いえ、何でもないですよ。先輩」
さっきとは違った意味で少し雰囲気の変わった気がする小野くん。
だけど、何がどう変わったのかもわからないから特に聞けないままお店を出る。
さっきご飯食べに行く約束しちゃったし、次はあたしがご馳走したらそれで良いかな?
そんなことを考えてたら、小野くんからちょっとした提案をされた。
「先輩、さっき僕が奢ったことを気にしてるなら、ちょっとだけ飲みに行きませんか?」
「飲みに?」
「はい。近くに知り合いが働いているBARがあるんです、そこでお酒をご馳走してください。それでチャラにしませんか?」
時刻はまだ20時。
明日も仕事ではあるけど、今すぐ帰らなければいけないという時間でもない。
軽く1~2杯飲む程度なら大丈夫だろうと思ったあたしは、「じゃあ、今度はご馳走させてもらうからね」とあらかじめ伝えて、小野くんと飲みに行く事にした。
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