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【本編】
よくデキ過ぎた後輩くん
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◇
【後悔先に立たず】
すでに終わったことを、いくら後で悔やんでも取り返しがつかないことをいう。
いつの間にか眠っていたらしく、気がつくと時計は朝の6時を指していた。
心なしか二日酔いの頭痛が少し和らぎ、眠る前のあれこれの記憶もしっかりはっきり残っていた。
そして、起きぬけにまず思い浮かんだのが冒頭の言葉だ。
だって、そうでしょう?
後輩をホテルに連れ込んで、襲ってしまった……いや、結果的に組み敷かれたのはあたしかもしれないけど。
経緯はどうであれ、ヤってしまったことに変わりはない。
別に処女なわけでもない。
……しばらくご無沙汰ではあったけど。
それに小野くんだって、さすがに童貞ではないはずだ。
うん、きっと童貞じゃない……よね???
「あ、先輩起きたんですね。おはようございます。
へへ、先にシャワーいただいちゃいました」
少し恥じらいを見せながらも、笑顔が眩しい小野くん。
なんだか反応が、初々しい女の子みたいで可愛く見えるのは気のせいだろうか?
ホントは処女…いやいや、童貞だったとか言わないよね?
お願い。童貞じゃなかったと言ってっ!!聞けないけどっ!!!
「じゃあ先輩もシャワーどうぞ。先輩の着替えは中に置いてありますよ」
「あ、ありがとう」
自然とシャワーを促され脱衣所に入ると、バスタオルと一緒に綺麗にたたまれたあたしの着替えがあった。
「下着まで綺麗にたたまれてる……」
ちょっとちょっと、可愛い上に気配りできて服まで綺麗にたたむとか、女子力高すぎ!
小野くんすごくない??
熱めのシャワーを浴びながらこの後のことを考える。
今日は平日で、これから仕事だ。
一度家に帰る時間はあるから、着替えは問題ない。
朝ご飯……時間があったら食べるで良いか。
小野くんとのことは……―――――――
シャワーを止めつつふと考える。
こればっかりは、あたしがどうこう考えて決めることじゃない。
「そんなつもりなかった」とか、「無理矢理ホテルに連れてこられて……」の可能性だってある。
一夜限りの関係と言われたらそれに従うまでだ。
でも、そうじゃなかったら……??
「いやいや、ない。ないでしょ、普通に考えても……ねぇ」
だって、あたしはもうすぐ30歳のアラサー。
小野くんは今年大学を卒業したばかりの社会人1年生。
付き合うなら結婚前提で…という年齢のあたしと、まだまだ遊びたい盛りの20代では、たとえ付き合ったとしてもうまくいくはずがない。
「うん……期待しちゃいけない。むしろ彼は被害者かもしれないしね」
少しだけチクリとした胸の痛みに気付かぬフリをしながら、あたしはシャワーを後にした。
「ん~!こんな朝早くに日の光を浴びるなんて、朝稽古の時以来です」
「朝、稽古……?」
「あ、僕、子供の頃から空手を嗜んでまして」
「空手?だからあんなに……」
「?」
「いやいやっ、何でもない何でもない!気にしないで!!」
あの綺麗な背中や、抱きしめられた時の厚い胸板は、空手をやってたからなのか……と納得する。
そして、その鍛えられた身体に抱かれたのだと思うと、顔がどんどん熱くなってきた。
「先輩?」
「ひゃいっ!」
「ふふっ、どうしたんですか?急に黙っちゃって……」
「あ、ぅ…えっと、その……」
貴方に抱かれた事を思い出してました。
なんて、もちろん言えるはずもなく……ってか、シテる時の記憶は一切ないんですけどねっ!!
あたしの態度に何かを察した小野くんは、ニッコリと微笑みながらあたしの両手を掴んで、チュっと手にキスをした。
「??!!」
「先輩…昨日のコト、憶えてます?」
あたしより身長の低い小野くんから上目遣いで見上げられる。
男の子なのにまつ毛が長くて羨ましい……って、そうじゃなかった。
「えっと…そうね、昨日のコトは……」
正直に「憶えてません」と言うべきなのかわからなくてうまく答えられない。
「ふふっ……先輩、昨日はとても可愛かったですよ♡」
「!!!」
「また二人で、気持ちイイこと、しましょうね♡」
「!!!!」
完全に言葉を失ったあたしを、小野くんはいつの間にか呼んでいたタクシーに乗せた。
そして、「桂木方面へ」とあたしの家の方向を運転手に伝えた後、「じゃ、また後で会社で♪遅刻しちゃダメですよ☆」と言って、にこやかに見送ってくれた。
会社では教育係としていろいろ教えてたのに、さっきからダメダメなトコロしか見せていない。
家に着く頃にはようやく落ち着き、会社に行ったら頑張ろうと気持ちを切り替えてタクシー代を払おうとしたのに「もう頂いてます」と言われた。
え、小野くんっていったい何者……??
【後悔先に立たず】
すでに終わったことを、いくら後で悔やんでも取り返しがつかないことをいう。
いつの間にか眠っていたらしく、気がつくと時計は朝の6時を指していた。
心なしか二日酔いの頭痛が少し和らぎ、眠る前のあれこれの記憶もしっかりはっきり残っていた。
そして、起きぬけにまず思い浮かんだのが冒頭の言葉だ。
だって、そうでしょう?
後輩をホテルに連れ込んで、襲ってしまった……いや、結果的に組み敷かれたのはあたしかもしれないけど。
経緯はどうであれ、ヤってしまったことに変わりはない。
別に処女なわけでもない。
……しばらくご無沙汰ではあったけど。
それに小野くんだって、さすがに童貞ではないはずだ。
うん、きっと童貞じゃない……よね???
「あ、先輩起きたんですね。おはようございます。
へへ、先にシャワーいただいちゃいました」
少し恥じらいを見せながらも、笑顔が眩しい小野くん。
なんだか反応が、初々しい女の子みたいで可愛く見えるのは気のせいだろうか?
ホントは処女…いやいや、童貞だったとか言わないよね?
お願い。童貞じゃなかったと言ってっ!!聞けないけどっ!!!
「じゃあ先輩もシャワーどうぞ。先輩の着替えは中に置いてありますよ」
「あ、ありがとう」
自然とシャワーを促され脱衣所に入ると、バスタオルと一緒に綺麗にたたまれたあたしの着替えがあった。
「下着まで綺麗にたたまれてる……」
ちょっとちょっと、可愛い上に気配りできて服まで綺麗にたたむとか、女子力高すぎ!
小野くんすごくない??
熱めのシャワーを浴びながらこの後のことを考える。
今日は平日で、これから仕事だ。
一度家に帰る時間はあるから、着替えは問題ない。
朝ご飯……時間があったら食べるで良いか。
小野くんとのことは……―――――――
シャワーを止めつつふと考える。
こればっかりは、あたしがどうこう考えて決めることじゃない。
「そんなつもりなかった」とか、「無理矢理ホテルに連れてこられて……」の可能性だってある。
一夜限りの関係と言われたらそれに従うまでだ。
でも、そうじゃなかったら……??
「いやいや、ない。ないでしょ、普通に考えても……ねぇ」
だって、あたしはもうすぐ30歳のアラサー。
小野くんは今年大学を卒業したばかりの社会人1年生。
付き合うなら結婚前提で…という年齢のあたしと、まだまだ遊びたい盛りの20代では、たとえ付き合ったとしてもうまくいくはずがない。
「うん……期待しちゃいけない。むしろ彼は被害者かもしれないしね」
少しだけチクリとした胸の痛みに気付かぬフリをしながら、あたしはシャワーを後にした。
「ん~!こんな朝早くに日の光を浴びるなんて、朝稽古の時以来です」
「朝、稽古……?」
「あ、僕、子供の頃から空手を嗜んでまして」
「空手?だからあんなに……」
「?」
「いやいやっ、何でもない何でもない!気にしないで!!」
あの綺麗な背中や、抱きしめられた時の厚い胸板は、空手をやってたからなのか……と納得する。
そして、その鍛えられた身体に抱かれたのだと思うと、顔がどんどん熱くなってきた。
「先輩?」
「ひゃいっ!」
「ふふっ、どうしたんですか?急に黙っちゃって……」
「あ、ぅ…えっと、その……」
貴方に抱かれた事を思い出してました。
なんて、もちろん言えるはずもなく……ってか、シテる時の記憶は一切ないんですけどねっ!!
あたしの態度に何かを察した小野くんは、ニッコリと微笑みながらあたしの両手を掴んで、チュっと手にキスをした。
「??!!」
「先輩…昨日のコト、憶えてます?」
あたしより身長の低い小野くんから上目遣いで見上げられる。
男の子なのにまつ毛が長くて羨ましい……って、そうじゃなかった。
「えっと…そうね、昨日のコトは……」
正直に「憶えてません」と言うべきなのかわからなくてうまく答えられない。
「ふふっ……先輩、昨日はとても可愛かったですよ♡」
「!!!」
「また二人で、気持ちイイこと、しましょうね♡」
「!!!!」
完全に言葉を失ったあたしを、小野くんはいつの間にか呼んでいたタクシーに乗せた。
そして、「桂木方面へ」とあたしの家の方向を運転手に伝えた後、「じゃ、また後で会社で♪遅刻しちゃダメですよ☆」と言って、にこやかに見送ってくれた。
会社では教育係としていろいろ教えてたのに、さっきからダメダメなトコロしか見せていない。
家に着く頃にはようやく落ち着き、会社に行ったら頑張ろうと気持ちを切り替えてタクシー代を払おうとしたのに「もう頂いてます」と言われた。
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