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2章 学園生活は波乱万丈?!
噂の彼女はアタシのライバル(?) in聖女side
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◆
寮に到着し、諸々の手続きと部屋の片づけを終わった頃、タイミングよくシグルーンがやってきて美味しい紅茶で一息つく事にした。
だけど、モヤモヤしたモノが溜まっていたあたしは、教わった礼儀作法などまるで無視して紅茶を一気飲みしてからシグルーンにぶちまけた。
(ダンッ、ガチャンッ)
『一体どういうことなのよ!!』
『もぅ、いきなりテーブル叩くのやめてくれる?せっかく淹れた紅茶が少しこぼれちゃったじゃない』
侍従の格好をしながらも、一緒に座りティータイムを満喫しているシグルーン。
加護をくれたものの、相変わらずアタシにはこんな辛辣な態度ばかりである。
加護者って大切にされるモノなんじゃないの?
『そんな事より!シグルーンだって見たでしょ?!あの黒髪の女!!!』
『黒髪の女……あぁ!アイリよりも噂されてた『黒薔薇の姫君』の黒髪エルフの娘だっけ?王太子と仲良さそうだったよね』
『うるさいうるさ――――いっ!そういう事を聞いてるんじゃないのよ!!あの場所にいるのは、本来アタシだったって言ってるの!!!』
『あぁ、“おとめげーむ”の出逢いイベントってヤツだっけ?』
テーブルを綺麗に拭いたシグルーンは、興味なさそうな顔をしながら優雅に紅茶を飲み直す。
シグルーンにはすでにゲームの登場人物や出逢いイベントや好感度アップイベントなど、憶えてる限り書きだしたものを説明済みだ。
最初は物珍しさから興味津々に聞いてくれたのに、今ではこんな感じでため息つきながらやる気のない感じで聞き流そうとするんだから、ホントに冷たい人だ。……人じゃなくて精霊だけど。
本来ならば、今日は噴水前にいたアタシ見かけた王太子が不吉の象徴と言われながらも珍しい”黒髪”に惹かれ、馬車から降りて声をかけてくる……という出逢いイベントが起こるはずだった。
なのに、そのイベントは黒髪のエルフ女に奪われてしまったのだ。
いくら同じ黒髪だからって、ヒロインのポジションを奪うなんて酷すぎるっ!
もしかして、あの女もアタシと同じく現代からトリップしてきた転生者だとでもいうわけ??
そんなの冗談じゃない!!
『とりあえず学園にはたくさんの人間がいるんだし、同じクラスになるとも限らないでしょ?これから極力関わらないで、アイリはアイリでその“いべんと”とやらを進めれば良いんじゃないの?』
『!!……そっ、そうよね!在校生を含めたって莫大な人数がいる大きな学園なんだから、今後関わらなきゃいいんだ!』
そうだよ!これ以上邪魔をしてくるなら何かしら考えるべきだけど、アタシはただこの乙女ゲームの世界を堪能したいだけだもん。
関係ないモブとは仲良くなる気もないし関わりたくもないから、これから接触しなきゃ良いだけの話だよね!
シグルーンの言葉に自分を納得させ、紅茶のおかわりをお願いしてから今度はじっくりと紅茶の味を堪能する。
アールグレイのミルクティ、甘さもアタシの好みピッタリに入れてくれるシグルーンは、こういうトコロは完璧で素晴らしい。
『……ホント、単純で扱いやすいんだから』
『ん?シグルーン、今何か言った?』
『ううん。明日は早めにクラス発表見に行くんでしょ?これ飲んだら早く寝なね?』
『はーい』
侍従として付いてきたシグルーンは、一応男子寮にも部屋を借りてるらしいけど基本的にこうしてアタシのそばにいてくれる。加護者というより保護者に近いかも。
でも、こんな口うるさい保護者は正直イヤだ。
(ぶにっ)
『いひゃい…(痛い……)』
『今、何か失礼なこと考えなかった?』
『ひょ、ひょんなほほ……(そ、そんなこと……)』
実はアタシの心の声って丸聞こえなんじゃ?って思うけど、そうではないらしい。
ものすごく腑に落ちないけど、口論で勝てる気がしないのでここは大人しく年長者に勝ちを譲る。
見た目は同い年くらいだけど、精霊とはどの世界でも何百年、何千年と生きてるモノだ。
シグルーンだって、きっとものすごく高齢に違いな……―――――
(ぶにっ、ぶにっ)
『ひっ、ひひゃいっ!!ひゃんへ??!!(いっ、痛いっ!!なんで??!!)』
『ふふっ♪アイリ、余計なことは考えないでさっさと寝なさい。いいね?』
『……ひゃい(……はい)』
こうして、記念すべき学園初日は予定外過ぎる状態で終わり、アタシは学園生活が始まってから軌道修正を頑張ろうと決意し、その日は眠りについた。
◆◇
『……ふふふ、やっぱり神はアタシを見放さなかった!!』
『アイリ、気持ち悪いからその笑い方やめてくれる?』
いつもなら、こんなシグルーンの憎まれ口に“ムキ―――――っ”ってなる事が多いけど、今のあたしは超機嫌が良いのでそんなの気にしないのだ。
『ほら、早く教室行くよ!シグルーン!』
『はいはい。……はぁ、王太子と同じクラスだからってあんなにはしゃいじゃって……』
そう!アタシは、激推しの王太子サマと同じクラスになれたのだ!
同じクラスということは、授業でもそれ以外の学校行事関係でも関わる事が多いに決まってる!
出逢いは予定通りじゃなくても、やっぱりゲームのイベントは強制的に始まるってことだよね!!
そんな、テンション高めで早めに向かった教室では、案の定『『黒薔薇の姫君』の……――――』とか『黒髪エルフ様の……――――』と声をかけられ続けたが、全部にこやかに対応してやった!
誰か、そんなアタシを褒めて!!
そして、何人目かわからないけど”黒髪エルフ様の娘”ではなく”黒髪の聖女”だと訂正し続けている時に、教室が急にざわつき始める。
もしかして、愛しの王太子サマが教室にやって来たの??って一瞬喜んだのに、やってきたのは今一番会いたくないヤツだった。
「――――――!!!」
漆黒のように黒く艶やかな髪に、深紅のルビーのような瞳をした耳がエルフ独特の形をしている美少女。
そしてその女の隣には、キラキラと輝くようなシルバーブロンドに澄んだ海のような蒼い瞳をした美少年。
……え?こんなイケメン、攻略キャラにいたっけ?
とりあえず、誰に聞かれるでもなくさすがのアタシにもわかった。
この美少女は『黒薔薇の姫君』の主人公達の娘であり、昨日アタシから王太子との出逢いイベントを奪った張本人である、と。
……―――って、見惚れてる場合じゃなった!
思い出せ。あの女のせいで、アタシは激推しの王太子サマと出逢いイベントが叶わなかったんだ。
あんな、顔だけの……っぐ、可愛いだけじゃなく胸まで大きいとかチートすぎじゃない??
いやいやいや、この乙女ゲームのヒロインはアタシなんだ。
『黒薔薇の姫君』だか『黒百合の物語』だか知らないけど、主人公はアタシなの!!
胸だって大きけりゃ良いってモノじゃない!大事なのは形よ!!
……――――決めた。
あんたはアタシのライバルだ!
可愛かろうが胸が大きかろうが、アタシの邪魔をするなら容赦しない!!
あんたなんかにヒロインの座は譲らないんだからねっ!!!
こうして決意を固めたアタシは、黒髪女(胸)をギロッと一瞬睨みつけ、何ごともなかったかのようにクラスの女の子達と会話を続けることにした。
-----------------------------
すっかり更新が遅くなってしまいました。
GW中に書き溜めてペースを取り戻したいなとは思ってます…
あと、番外編のいちゃいちゃ書きたくてうずうず……←
寮に到着し、諸々の手続きと部屋の片づけを終わった頃、タイミングよくシグルーンがやってきて美味しい紅茶で一息つく事にした。
だけど、モヤモヤしたモノが溜まっていたあたしは、教わった礼儀作法などまるで無視して紅茶を一気飲みしてからシグルーンにぶちまけた。
(ダンッ、ガチャンッ)
『一体どういうことなのよ!!』
『もぅ、いきなりテーブル叩くのやめてくれる?せっかく淹れた紅茶が少しこぼれちゃったじゃない』
侍従の格好をしながらも、一緒に座りティータイムを満喫しているシグルーン。
加護をくれたものの、相変わらずアタシにはこんな辛辣な態度ばかりである。
加護者って大切にされるモノなんじゃないの?
『そんな事より!シグルーンだって見たでしょ?!あの黒髪の女!!!』
『黒髪の女……あぁ!アイリよりも噂されてた『黒薔薇の姫君』の黒髪エルフの娘だっけ?王太子と仲良さそうだったよね』
『うるさいうるさ――――いっ!そういう事を聞いてるんじゃないのよ!!あの場所にいるのは、本来アタシだったって言ってるの!!!』
『あぁ、“おとめげーむ”の出逢いイベントってヤツだっけ?』
テーブルを綺麗に拭いたシグルーンは、興味なさそうな顔をしながら優雅に紅茶を飲み直す。
シグルーンにはすでにゲームの登場人物や出逢いイベントや好感度アップイベントなど、憶えてる限り書きだしたものを説明済みだ。
最初は物珍しさから興味津々に聞いてくれたのに、今ではこんな感じでため息つきながらやる気のない感じで聞き流そうとするんだから、ホントに冷たい人だ。……人じゃなくて精霊だけど。
本来ならば、今日は噴水前にいたアタシ見かけた王太子が不吉の象徴と言われながらも珍しい”黒髪”に惹かれ、馬車から降りて声をかけてくる……という出逢いイベントが起こるはずだった。
なのに、そのイベントは黒髪のエルフ女に奪われてしまったのだ。
いくら同じ黒髪だからって、ヒロインのポジションを奪うなんて酷すぎるっ!
もしかして、あの女もアタシと同じく現代からトリップしてきた転生者だとでもいうわけ??
そんなの冗談じゃない!!
『とりあえず学園にはたくさんの人間がいるんだし、同じクラスになるとも限らないでしょ?これから極力関わらないで、アイリはアイリでその“いべんと”とやらを進めれば良いんじゃないの?』
『!!……そっ、そうよね!在校生を含めたって莫大な人数がいる大きな学園なんだから、今後関わらなきゃいいんだ!』
そうだよ!これ以上邪魔をしてくるなら何かしら考えるべきだけど、アタシはただこの乙女ゲームの世界を堪能したいだけだもん。
関係ないモブとは仲良くなる気もないし関わりたくもないから、これから接触しなきゃ良いだけの話だよね!
シグルーンの言葉に自分を納得させ、紅茶のおかわりをお願いしてから今度はじっくりと紅茶の味を堪能する。
アールグレイのミルクティ、甘さもアタシの好みピッタリに入れてくれるシグルーンは、こういうトコロは完璧で素晴らしい。
『……ホント、単純で扱いやすいんだから』
『ん?シグルーン、今何か言った?』
『ううん。明日は早めにクラス発表見に行くんでしょ?これ飲んだら早く寝なね?』
『はーい』
侍従として付いてきたシグルーンは、一応男子寮にも部屋を借りてるらしいけど基本的にこうしてアタシのそばにいてくれる。加護者というより保護者に近いかも。
でも、こんな口うるさい保護者は正直イヤだ。
(ぶにっ)
『いひゃい…(痛い……)』
『今、何か失礼なこと考えなかった?』
『ひょ、ひょんなほほ……(そ、そんなこと……)』
実はアタシの心の声って丸聞こえなんじゃ?って思うけど、そうではないらしい。
ものすごく腑に落ちないけど、口論で勝てる気がしないのでここは大人しく年長者に勝ちを譲る。
見た目は同い年くらいだけど、精霊とはどの世界でも何百年、何千年と生きてるモノだ。
シグルーンだって、きっとものすごく高齢に違いな……―――――
(ぶにっ、ぶにっ)
『ひっ、ひひゃいっ!!ひゃんへ??!!(いっ、痛いっ!!なんで??!!)』
『ふふっ♪アイリ、余計なことは考えないでさっさと寝なさい。いいね?』
『……ひゃい(……はい)』
こうして、記念すべき学園初日は予定外過ぎる状態で終わり、アタシは学園生活が始まってから軌道修正を頑張ろうと決意し、その日は眠りについた。
◆◇
『……ふふふ、やっぱり神はアタシを見放さなかった!!』
『アイリ、気持ち悪いからその笑い方やめてくれる?』
いつもなら、こんなシグルーンの憎まれ口に“ムキ―――――っ”ってなる事が多いけど、今のあたしは超機嫌が良いのでそんなの気にしないのだ。
『ほら、早く教室行くよ!シグルーン!』
『はいはい。……はぁ、王太子と同じクラスだからってあんなにはしゃいじゃって……』
そう!アタシは、激推しの王太子サマと同じクラスになれたのだ!
同じクラスということは、授業でもそれ以外の学校行事関係でも関わる事が多いに決まってる!
出逢いは予定通りじゃなくても、やっぱりゲームのイベントは強制的に始まるってことだよね!!
そんな、テンション高めで早めに向かった教室では、案の定『『黒薔薇の姫君』の……――――』とか『黒髪エルフ様の……――――』と声をかけられ続けたが、全部にこやかに対応してやった!
誰か、そんなアタシを褒めて!!
そして、何人目かわからないけど”黒髪エルフ様の娘”ではなく”黒髪の聖女”だと訂正し続けている時に、教室が急にざわつき始める。
もしかして、愛しの王太子サマが教室にやって来たの??って一瞬喜んだのに、やってきたのは今一番会いたくないヤツだった。
「――――――!!!」
漆黒のように黒く艶やかな髪に、深紅のルビーのような瞳をした耳がエルフ独特の形をしている美少女。
そしてその女の隣には、キラキラと輝くようなシルバーブロンドに澄んだ海のような蒼い瞳をした美少年。
……え?こんなイケメン、攻略キャラにいたっけ?
とりあえず、誰に聞かれるでもなくさすがのアタシにもわかった。
この美少女は『黒薔薇の姫君』の主人公達の娘であり、昨日アタシから王太子との出逢いイベントを奪った張本人である、と。
……―――って、見惚れてる場合じゃなった!
思い出せ。あの女のせいで、アタシは激推しの王太子サマと出逢いイベントが叶わなかったんだ。
あんな、顔だけの……っぐ、可愛いだけじゃなく胸まで大きいとかチートすぎじゃない??
いやいやいや、この乙女ゲームのヒロインはアタシなんだ。
『黒薔薇の姫君』だか『黒百合の物語』だか知らないけど、主人公はアタシなの!!
胸だって大きけりゃ良いってモノじゃない!大事なのは形よ!!
……――――決めた。
あんたはアタシのライバルだ!
可愛かろうが胸が大きかろうが、アタシの邪魔をするなら容赦しない!!
あんたなんかにヒロインの座は譲らないんだからねっ!!!
こうして決意を固めたアタシは、黒髪女(胸)をギロッと一瞬睨みつけ、何ごともなかったかのようにクラスの女の子達と会話を続けることにした。
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