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2章 学園生活は波乱万丈?!

起こるはずだった出逢いイベント in聖女side

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この世界に来てからいろいろ、本当にいろいろあったけど、アタシはようやく念願の場所へと辿り着いた。




――――ここは、アタシが異世界トリップしたフェイフォンの隣にあるガルドニアという国。




そのガルドニアには貴族平民関係なく、義務教育を始めとして魔法や剣術、薬草学など様々なことを学び、将来の人脈作りにも多大な影響を与える王立魔術学園という大きな学園があり、国外からの留学生も積極的に受け入れている。




アタシの目的は何かって?
魔法……確かにシグルーンの加護のおかげで、光属性の魔法が使えるみたいなので学んでみたいとは思ってる。

だけど、アタシの目的はそれがメインではない。





もちろんこの学園に来た目的は、これから大好きだったゲームをこの身を持って体験すること!!
ぜひとも実物の攻略対象と出逢い、あわよくば結ばれたい。

さらに欲を言うと、結ばれるならばやはり推しキャラがいい!!!



乙女ゲームのヒロインに転生したら、誰もがそんな夢を見るのは当たり前だと思う。








……だけど、学園でもアタシの予想だにしない展開は続くのであった。


◆◇


『……ねぇ、シグルーン』
『ん?なんだい?アイリ』
『“黒髪の聖女”ってこのガルドニアでも有名なんだよね?』
『そうみたいだけど?』


アタシとシグルーンがいるのは、ガルドニアの王都にある王立魔術学園の大きな広場。

目の前にはちょっとしたお城くらいに大きな学園の本校舎があり、今いる広場には入学するためにやって来た生徒や付き添いの大人達、寮へと向かって走る馬車などたくさんの人達が行き交っている。

アタシは乗ってきた馬車を停め、濃紺のジャケットワンピースにトレードマークであるツインテールをなびかせながら、シグルーンと共に広場の中心にある噴水を眺めていた。

ちなみに、シグルーンは鳥ではなくちゃんと人型になって、アタシの侍従としてそばにいる。

人型になったシグルーンは、グリーンの瞳に肩より少し少し長めの金髪を後ろで1つに束ねた超絶イケメンな美青年に扮しており、先ほどから数名の女生徒が頬を染めながら見つめている。
確かに初めて見たとき正直ドキッとしたけど、所詮は口を開けば憎まれ口ばかりの性格悪男である。

『皆さん!見た目に騙されちゃダメですよ!!』と声を大にして言いたいけど、アタシまで変な目で見られる可能性があるため、そこは我慢だ。

『……ねぇ、ちょっと失礼なこと考えてない?』
『ふぇ?!そ、そんなことないけど?』
『ふ~ん……』

意外に鋭いシグルーンをごまかしながら、目的の人の訪れを待つ。

この場所にいるのには、もちろん理由があるのだ。
この広場では、明日の入学式前にちょっとした出逢いイベントがある。
しかも、何を隠そうアタシが激推しのキャラなんだよね☆


周囲の人が、アタシを見てヒソヒソと何か話しているのも想定内。


理由は簡単。元々この世界では“黒”が不吉、不幸を呼ぶと嫌悪されているため、アタシの黒髪はとにかく超目立つ。
アタシも、“聖女”という肩書がなければ、もしかすると酷い扱いを受けていたかもしれない。



……――――だけど、正直これは想定外だった。


『あのっ、素敵な黒髪ですね!』
『へ?あ、ありがとうございます!』
『もしかして、『黒薔薇の姫君』の黒髪エルフ様のご息女様ですか?』
『は?……くろばらの、ひめぎみ?』


さっきから男女問わず羨望の眼差しで声をかけてくると思ったら、二言目に出てくるのは決まって『黒薔薇の姫君』。

聞くところによると今この国で一番人気の小説らしく、子供向けの絵本にもなっていたり、舞台として昔から何度も再演を繰り返しては満員御礼を繰り返すほど人気作らしい。


聖女よりも小説が有名で人気があるって、この国の文化は一体どうなってるわけ??


『いやぁ、アタシはフェイフォンから留学生としてやって来たばかりなので……あはは~』
『あら!フェイフォンと言えば先日聖女が現れたって聞いたけど、もしかして……』
『あ、はい。“黒髪の聖女”とも呼ばれてます』
『ぷっ、自分で自分の事を“聖女”だって……痛っ』

茶々を入れてくるシグルーンに肘鉄を入れながら、声をかけてきた親子と当たり障りのない会話をして別れると、次に話しかけてきた女の子達も、その後の男の子やおばさまも皆が皆、二言目には『黒薔薇の姫君』だの『黒髪エルフ様のご息女』だの言ってきて、誰も『黒髪の聖女』のことに触れてくれない。

あまりにも触れてこないため、勢い余って『黒髪の聖女様ですか?』ってことまで否定してしまったが、そこは慌てて訂正した。


さすがにちょっと休憩をしたくて木陰へ移動したアタシ達。
そして状況を察したシグルーンが指をパチンと鳴らし、遮音の結界が貼られたのを確認すると、アタシは思うさま叫んだ。



『も~~~~~~~っ、一体なんなのよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』



こう叫びたくなる気持ちをどうか理解して欲しい。
だって、こんなの叫ばないとやってられないでしょ??


『一体さっきから何なの?『黒薔薇の姫君』だか何だか知らないけど、アタシは聖女!魔獣の氾濫から村を救ったとされる、“黒髪の聖女”なのよ?!なんで本なんかに“聖女”が負けてるわけ??』
『実際にその魔獣達を一掃したのはボクだけどね』
『だぁぁぁぁっ!何と言われようと、国王様がそれを公認してるんだから良いのよ!!アタシが言いたいのは、知名度や人気なら、普通”聖女”の方があるはずだって事よ!!』
『単純にぽっと出の”黒髪の聖女”より、昔から根強い人気がある『黒薔薇の姫君』が圧勝してるだけなんだろうね』
『きぃぃぃぃぃっ!だまらっしゃいっ!!!』


ホントになんなの?
どうしてこの世界に来てから想定外の事ばかり起こわけ??
この世界は『ブルームーンに抱かれて』の世界なんだよね?


アタシ、ヒロインなんだよね??


途方に暮れかけていると、周囲がいきなりザワザワし始めた。
もしかして……

『どうやら、王太子御一行が向こうにいるみたいだよ』
『えぇぇ?!アタシが木陰ココにいるのに??!!』

本来なら噴水の前で出逢いイベントが始まるのに、当のアタシは少し離れた木陰にいる。



慌てて人並みをかき分け、なんとか激推しのキャラこと王太子が見える場所まで辿り着いた時、アタシはそこで信じられない光景を目の当たりにした。


『……え?あの黒髪の女って、誰??』




アタシが目にしたのは、貴族が乗るような真っ白で品のある馬車から王太子に手を引かれて降りてきた、同い年くらいの黒髪の女だった。





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聖女のお話、もう少しだけ続きます。
だんだん黒髪の聖女が不憫になってゆく……

|ω・`)(でもきっと、最後にはハッピーになる……はず)

次回の更新は4/26予定です。
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