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2章 学園生活は波乱万丈?!

勤務初日にやってきた嵐 inサーヤSide 

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「あの、エル……」
「ん?どうした、サーヤ」
「今あたし、備品の整理してるんだけど……」
「そうだな。それがどうした?」
「いやいやいや、おかしいから!“どうした?”って言いたいのはこっちだからね??!!」


入学式が開けた翌日、今日から授業開始ということで、保健室での仕事も本格的に稼働。
昨日はエルと保健室に到着後、簡単な荷物整理と必要なモノの発注だけ行い、その後は学院内を散策しつつきたくしたため、今は物の場所を把握しつつ整理しようとあたしはファイル片手に天井程の高さがある棚の前にいる。
そして、あたしの真後ろから両手であたしを閉じこめるように壁ドン状態で手をついている。

あれ?さっき薬品関係のチェックするとか言ってなかったっけ?

「薬品関係のチェックならもう終わった。学園の保健室にある薬品などたかが知れているからな」

相変わらず何も言わなくてもあたしの考えている事などお見通しらしい。
さすがは万能な愛しい旦那様である。

「まずはココで、お前と“保健室ぷれい”とやらを愉しもうかと思ってな」

前言撤回!
あたしの考えがお見通しなのではなく、以前あたしが暴露した前の世界での様々なプレイを学園で愉しむ気が満々なだけだった!!

「待って待って!今日はお仕事の初日なんだよ?今日くらいは……」
「だからだろうが。こんな初っ端から生徒が来るわけもあるまい」
「いやいや、そうかもしれないけど……ゃ、バカっ、服、脱がせちゃダメ……んっ」
「ん?脱がせなければ良いのか?」
「違っ、そーゆーんじゃ……っ」



心とは裏腹にエルの指に敏感に身体が反応し始めたとき、嵐は突然やって来た。



(バッタ――――――――ン!ミシミシッ)



「「???!!!」」


壁に追い込まれながら服を脱がされかけていたところで、保健室のドアが勢いよく開けられた。
勢い良すぎてちょっとめり込んでる気がするけど……大丈夫?壊れてない??

「……っ、サーヤままぁぁぁぁぁぁぁっ」

そして、勢いよくドアを開けて入ってきたのは学園の生徒……ではなく、あたしの大切な可愛い天使の1人であるミナトちゃんだった。


◇◆


「はい、どうぞ」
「ありがとなの」

保健室のドアを壊す勢いでやってきたミナトちゃんを落ち着かせ、応接用のソファに隣り合って座る。
向かい合わせではなく隣にいて欲しいと天使に言われたら、そりゃ聞くしかないだろう。

もじもじしながらあたしにぴとっとくっつくミナトちゃんは超可愛いんだけど、見た目も中身もレオンやサクラ同様に17~18歳位になってからはこんな感じで甘えてくる事がなくなったので、ある意味異常事態だ。

エルは気を利かせてめり込んだドアを直してくれている。
でもきっと話は聞いてるんだろうね。

「今朝、皆と一緒に来なかったから気になってたんだけど……どうしたの?何かあった?」
「……」

毎朝皆で朝ご飯を食べているのに、今日はミナトちゃんは来なかった。
まだ寝てるという話を聞いて、“今日の天使はお寝坊さんなんだね”なんて思ってたけど、これは結構深刻な問題なのかもしれない。

慎重に話を聞こうと、あたしはミナトちゃんが話してくれるまで頭を撫でながら待つ事にした。


「……あの、ね、サーヤままに、聞きたい事があるの……」
「ん?聞きたい事??」
「えっとね……――――――――」



(バッタ――――――――ン!!バキバキィィッ)



「ママぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「????!!!!」」」



ようやく落ち着いたミナトちゃんから話を聞こうと思ったら、今度は勢いよくドアを開けてサクラが入ってきた。


……え、待って?
あたしとエル、ここに赴任する事一言も言ってないし、一応変装してるんですけど??!!


ミナトちゃんに続いてやって来たサクラは、間違いなく母親であるあたしに会いに保健室へとやって来た。
そして、先ほどミナトちゃんの来訪で壊れかけていた保健室のドアは、サクラの来訪により完全に壊れてしまった。

……どうしよう。どこからツッコめばいい??


「ママっ、ママぁぁぁぁ……」
「サーヤ、俺は伝達魔法でアレクにドアの件を伝えるから、お前はサクラとミナトの話を聞いてやれ」
「う、うん!わかった」


とりあえずあたしは、ミナトちゃんに続きサクラを落ち着かせるため、ソファに座らせつつ温かいミルクティを入れてあげた。もちろん、サクラが大好きな蜂蜜入りで甘めのヤツだ。
ちなみに、認識阻害の魔法がかかった眼鏡は、もう付けてる意味がないかなと思って先ほど外しました。


「サクラ、ちょっとは落ち着いた?」
「(コクリ)」
「落ち着いたら、何があったのか、ママに話してくれる?」
「(コクリ)」

ミナトちゃんも、さっきまでは自分の事でいっぱいいっぱいだったろうに、今ではあたしと一緒にサクラを挟むように座り心配そうに背中をぽんぽんとしている。
天使ではなく慈愛に満ちた女神になる日は、きっとそう遠くないだろう。

エルはアレク兄様への連絡が終わったのか、完全に外れてしまった入り口をどうしようか考えるそぶりをしながらこちらの話に聞き耳を立てているようだ。
娘のことが心配で仕方がないんだろう。
近くで一緒に聞けばいいのに、意外と照れ屋で可愛い旦那様である。

そんな事を考えていたら、意を決したサクラがポツポツと話し始めた。

「ねぇママ。“おとなのきす”ってなぁに?」
「「?????!!!!!」」

(バキィィッ)

え?ちょっと待って。今の聞き間違いじゃないよね??

“おとなのきす”って、もしかしなくても“大人のキス”ってこと??!!
……ってか、今ナニカが壊れるような音がしたんだけど、保健室のドアは大丈夫なの??!!

「サクたん、“おとなのきす”ってなぁに?」

破壊音など気にもしない猛者がここにいた。
ミナトちゃんはサクラの言葉に敏感に反応し、質問を重ねている。

「えっと、昨日ね、ベルが寮のお部屋に来たの。その時にね、ベルってばいつもと違うちゅーをしてきたのよ」

(バキバキッ)

“おとなのきす”に興味津々なミナトちゃんと、入り口の方から聞こえてくる破壊音。
あたしは誰をどのようにフォローするなりツッコむなりすればいいのかわからなくなってきた。

そして、猛者こと純粋な天使の質問は尚も続く。

「いつもと違うって、どう違うの?」
「ぁ、うぅ……ちゅーの時にね、ベルがその、舌を絡めてきて……」

(バキバキッ、ゴォォォォォォォッ)

もはやあたしは、ベルナートさんがサクラに舌を絡めるようなべろちゅーをした事に驚くよりも、背後の入り口から聞こえる破壊音と殺気の様なモノが怖くて、会話を止めることも振り向くことができない。
今絶対ドア完全に壊れたよね?!ってか燃えてるよね??!!

そんな背後の状況などお構いなしに、今度は天使が大きな爆弾を投下してきた。

「あれ、“おとなのきす”っていうの?それなら昨日、レオたんもあたしに同じのしてきたのよ」

(ガシャンッ)

今度は窓際でガラスが割れる音と、ただならぬ気配がした。
でも、猛者達の会話は終わらない。むしろヒートアップしているようだ。

「え、ミナたんも“おとなのきす”したの?どんな感じだったの??」
「んと、なんかね、くすぐったいような気持ち良いような、変な感じがしたのよ。でもレオたん、その後あたしのお胸にも触れてきたの」

(バリバリッ、ガッシャ―――――ン)

「えぇぇ?!レオたん、ミナたんのお胸も触ったの??!!」
「うん……あたし、ビックリして……思わずお水ざっぱーんってして逃げてきちゃったのよ」
「あ!もしかして男子寮であった洪水ってミナたんの魔法だったの??」
「(コクリ)」


目の前には頬を赤らめながら、互いのコイバナに可憐な花を咲かせる可愛い天使が二人。
そして、背後にある入り口と少し離れた窓から感じる破壊されたドアや窓とただならぬ気配が2つ……



「駄犬……そろそろ死にたいらしいな」
「ふふっ、盛りのついたワンコには、ちょ~~っとお仕置きが必要かな☆」




完全にお怒りモードになった過保護なエルとおかんなセイルは、物騒なことを呟いた後それぞれ転移魔法でいなくなってしまった。



ベルナートさんとレオン、大丈夫かな……?







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初日から保健室がとんでもない惨状に(笑)

次回はようやく黒髪の聖女のエピソードです。
(4/18更新予定)
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