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1章 そうだ、学園へ行こう!

いざ、学園へ出発だ! inサーヤside

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今日はついに二人が学園へと旅立つ日。
入学祝いのプレゼント騒動(というか、あたしが倒れて大騒ぎになっただけだけど)から、あっという間にこの日が来てしまった。

「二人共、忘れ物はない?」
「うん。ないと思う」
「何度も確認したもの。大丈夫なのよ!」

本来なら魔法袋にすべて入ってしまうんだけど、さすがに手ぶらで行くと悪目立ちしてしまうだろうということで、昨日から王都にある宿に宿泊したあたし達家族。
現在、手配しておいた馬車に荷物を積み、学園へと向かうレオンやサクラを宿の入り口で見送っている最中である。

もちろん諸々の手配や学園までの引率などは、アレク兄様が一緒について行きサポートする手筈だ。
親であり保護者であるあたしは、一切役割を果たしてない……悲しい。

「忘れ物があったとしても、後で共有の魔法袋に入れるなり誰かが転移魔法で届ければ済む話だろう。これから入寮や手続き、片付けで忙しいのだ。早く二人を解放してやれ、サーヤ」
「そうなのよ、まま」
「レオにぃーにや、サクねぇーねのじゃましちゃ、めっだよ!」

そして、今日から二人は寝食を学園の寮でするため、夏休みや冬休みなどまとまった休みにならない限り、家に帰ってこない。
通信用の魔道具で話したり、転移魔法で会いに行けるのはわかってるし、そもそもあたし達も学園に潜入してるんだから会おうと思えば会えるんだけど、やっぱり生活が別々になっちゃうのは少なからず寂しい。
皆はどうしてこうも平気なんだろうか?

「ママ」
「母さん」
「レオン、サクラ……」

レオンとサクラが優しくあたしの手をきゅっと握る。
やっぱり二人共、あたしと同じで少しは寂しがって……――――――――

「あたし達がいなくても、パパのいう事しっかり聞かないとダメなのよ?」
「あと、家以外の場所では絶対に一人で行動しないで、必ず父さんかセイル、ノルンさん達と一緒に行動してね」
「……へ?」

周囲を見ると、皆がうんうんと頷きながら同意している。

おかしい。あたしは親で、レオンやサクラは子供なのに。
皆の中では、二人の心配より二人が離れて生活することであたしのフォローが減るという心配の方が大きいわけ??!!

「皆して酷い!!あたしは子供じゃな……ひゃぁっ?!」
「……っと、確かに子供ではないが、お前はある意味子供よりも目が離せないのだ。いい加減認めろ」
「ソウデスネ。モウシワケゴザイマセン……」

抗議しようと振り向いたら、入り口の階段になっているスロープで足を踏み外し、倒れそうになった所をエルに支えてもらう。
こうなるともうぐうの音すら出ません。ごめんなさい。


こうして馬車に乗って学園へと向かうレオンとサクラ、アレク兄様を見送った後、今度はあたしやエルも学園へと向かう準備を開始した。
荷物はあらかじめ魔法袋に準備してあるので、髪や瞳の色を変えるだけなんだけどね。

今回あたしは、一般的に多いライトブラウンの髪色にライトグリーンの瞳、エルはブルーと紫が混ざったようなクールな髪色に瞳は以前の変装時同様琥珀色という出で立ちだ。
そして、念には念を……ということで二人共認識阻害の魔法が付与された眼鏡を装着した。

これで、レオンやサクラが保健室に来てもすぐにバレる事はないだろう。
……たぶん。

眼鏡をかけている者同士には認識阻害の魔法は通用しないらしいので、あたしやエルがお互いを認識できなくなるというのはないらしい。
原理はわからないけど、それを聞いてちょっと安心した。

ちなみに、アレク兄様やリンダや、カルステッドさんは教師や職員としてレオンやサクラの学園生活をサポートすると先日レオンやサクラに打ち明けたので変装などは不要だ。
むしろ、レオンやサクラはそれを聞いて安心していたので、やはり少なからず学園生活に不安を抱えていたんだろう。


よし!あたしもこれから、可愛い子供達のために学園生活をフォローするぞ!!


「まま、ぱぱのおしごとのじゃましちゃダメなのよ」
「レオにぃーにもいってたけど、パパからはなれちゃ、めっだからね」
「……え?」

リリアやムサシの言葉に、またしても周囲が同意している。

言い返したい気持ちは山のようにあるけど、さっきのことや過去にやらかした諸々の出来事もあり、あたしは何も言い返すことができないまま「はい……」と静かに頷いた。

そして、先ほどまで人から見えないよう姿を隠していたセイル達にムサシやリリアをお願いした後、あたしとエルは学園へと向かったのだった。
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