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1章 そうだ、学園へ行こう!

入学祝いのプレゼント inサーヤside

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レオンやサクラの入学を許可して間もなく、アレク兄様は学園入学や入寮するための手続きを滞りなく完了してくれたおかげで、あたしやエル、そして当のレオンやサクラは、着替えや日用品など最低限のモノを用意するのみにとなった。
でもその最低限の準備すらも、スルト村のいつものお店ですぐに準備が終わってしまった上に、あたしは付き添っただけなので、果たして準備を手伝ったと言えるのか微妙なトコロである。

もちろん最初は、入学の手続きだって親であるあたしが行こうとした。
だけど……

「お前が母親に見えると思うか?どう見たって姉にしか見えぬだろうが」
「そうだよ☆それに、サーヤが行ったら手続きだけで済むわけないじゃない♪」
「サーヤまま、“適材適所”なのよ」
「そうだよ、おねーさん。そういうのはアレクおにーさんに任せておけば安心だよ」
「そうそう!サーヤは俺と同じで迷子になりやすいからね」
「サーヤ、おやつはまだか?我はぜんざいを所望する」

こんな感じで満場一致で反対されました。

一応心配してくれてるんだろうけど、皆の言葉に嬉しさよりも悲しさやグサグサと刺さるモノがあるのは気のせいだろうか?
ってか、ライムントさんは何でうちに来るたびボケたおじいちゃんみたいな発言ばっかりするわけ??

とりあえず、何か二人に入学祝いをあげたいとエルに相談したら、伝達魔法でやり取りができる魔道具…いわゆる携帯電話的なモノを作ろうとしていたらしい。ホントに何でも作れちゃうんだね!
ただ、どんな形状にするか決めかねていたようなので、それをあたしが考えるという事になった。

正直作るのはエルだから、共同作と言えるのかは微妙だ。
でも、せっかく晴れて学生になる二人が持つモノなんだから、不自然なく持てて、且つ使えるモノにしたいなとあたしなりに一生懸命考えた。


そして入学まで約一週間となった頃、いくつかの試作品を経てようやく完成品が出来上がった。
どうやら皆も二人の入学祝いを用意したみたいなので、今日の鍛錬は軽めにしてもらいティータイムを楽しみながらレオンやサクラにプレゼントを渡そうという事になった。



「レオン、サクラ、入学おめでとう。これはあたしとエルからの入学祝いだよ」
「わぁ~、パパ、ママ、ありがとなの!」
「これは……ペン?」
「あぁ。専用のインクを注入して使うタイプだから、普段使っているペンよりも使いやすいだろう。インクも魔法袋にたくさんストックがあるから、減ったら教えてくれ」
「すごいの!これならインクの瓶を倒す心配がないのよ!」

いろいろ考えた結果、あたしとエルの共同作は学生らしく、そして制服の胸ポケットに入りそうなペンにした。
勉強する時にも使えるし、この世界でペンは基本的にインクを付けるのが主流なので、よくインクの小瓶を倒してしまうサクラにとっては打ってつけのプレゼントだろう。

レオンは水色をベースに金で縁取りがされた男の子っぽい色味に、サクラは名前の通り淡いピンク色をベースに金で縁取りされ、キャップにはキラキラと輝く黒と虹色の石もついた可愛らしくも上品なペンである。
エルの言う通り、インクを補充したらずっと使えるのでぜひとも長く使って欲しい。

ちなみに、二人が注目されすぎないように市販用のペンも用意しているので、その辺も抜かりはない。
もちろんレオンやサクラのペンは特別製だけどね☆

「キャップにある虹色の魔鉱石に少量の魔力を送ると同じペンに呼応し伝達魔法が発動するようになっている。お前達だけでなく、俺とサーヤも同じペンを持っているから、離れていても会話が可能だ」
「「離れてても会話ができるの??!!すごい!!!!」」

んふふ、驚いてる驚いてる。
せっかくだから親子でお揃いにしようと、エルは濃紺ベース、あたしは深紅ベースの同じペンを持っているのだ。
ペンだけでも便利なのに、離れていても会話ができるなんてホントに画期的すぎるよね!

携帯電話ってよりは小型の通信機みたいで、ちょっと探偵っぽい。
これでカメラとか音声録音までできたらホントに探偵の秘密道具みたい……―――――

「後、黒い石の方は黒曜石だから、何かあれば見たモノをそのまま記憶することも可能だ」

んん?黒曜石まで仕込んだの?初めて聞いたんですけど??
あたしの知らないトコロで、ホントに探偵の秘密道具みたいなペンになっちゃった!!!

「学園では自分達の問題は自分達で解決することになる。どんなことがあっても、証拠だけはしっかりと残し、有無を言わせず相手を叩きのめすくらいの策を講じろ。相談ならいくらでも受けてやる」
「「うん、わかった(の)!!!!」」

待って待って!
学園で共同生活するのはほとんど同年代の子供達なんだから、証拠を残すとか相手を叩きのめすくらいの策とか考える必要ないと思うの!!
ってか、エルはホントに学園を何だと思ってるわけ??!!

エルの説明と激励で、すっかりやる気……もとい、殺る気に満ち溢れてしまったレオンとサクラ。
そして、周囲はツッコむどころか「頑張れ!」「負けちゃダメだよ!!」と応援モードだ。
悲しいくらいにあたしと同意見の人がいない。

訂正しなければとあたしが口を開こうとしたら、同じタイミングでこの二人がへプレゼントを渡そうと立ち上がった。

「レオン、サクラ、私達も入学祝いのプレゼントを用意したのよん♡」
「二人共、学園生活を楽しんで来てちょうだいね」

マデリーヌさんとノルンさんだ。

マデリーヌさんのプレゼントは、左右で深紅と蒼の色違いの石が一粒ずつ埋め込まれたシンプルなリング状のピアス。二人共すぐに気に入ったみたいで、嬉しそうにしている。

「綺麗!あれ?パパとママの瞳と同じ色……?」
「そうよん♡レオンやサクラも同じ色を引き継いでいるでしょ?離れ離れの生活は初めてだもの。寂しい時もあるでしょうけれど、いつでもそばに感じられるかなと思ってねん♡♡」
「リーたん……ありがとなの!すっごく嬉しい!!」
「うん、俺もすごく嬉しい。ありがとう」
「じゃあ、私のプレゼントも空けてちょうだいな」
「「うんっ!」」

マデリーヌさんの心遣いと双子のやり取りにすっかり心を打たれ、先ほどまで言おうとした言葉がすっかり引っ込み、むしろ感動の涙が出そうになった。
なんとか堪えながら見守っていると、ノルンさんが森の一部を切り取ったようなみずみずしい観葉植物を二人にプレゼントしていた。
これを部屋に置いたら、癒しの空間になること間違いなしだね!

「ふわぁ~、綺麗なの♪」
「こういうモノが部屋にあると落ち着くでしょう?寮の部屋にでも置いてちょうだい。本物の植物だけれど、水を与えなくても大丈夫よ」
「うん!ありがとなの!!」
「ノルンさんの優しい魔力を感じる……地の精霊が宿ってるのかな?」

え?そうなの??
地の精霊さんが宿ってる植物だなんて、さすがはノルンさんである。


……と思ったのも束の間。やっぱり皆が用意したプレゼントは普通のモノじゃなかった。


「ふふっ、鋭いわねレオン。その通りよ、何か困ったことがあれば宿っている地の精霊に伝えてちょうだい。すぐに私に伝わるわ」
「え?この植物に地の精霊さんがいるの??すご――――いっ!!」
「え?待って。それって、地の精霊に常に見られてるってこと??」
「えぇぇ??!!」

素直に喜んだサクラと、あたしと同じことに気付いたレオン。
ホントだよ、それじゃ観葉植物じゃなくて監視用植物じゃないですか?ノルンさん!! 

「ふふっ、誤解を招いたようでごめんなさいね。常に地の精霊がいるわけではなくて、一粒だけある赤い実に魔力を込めると、学園内にいる地の精霊が気付くという仕組みなの」
「そうなの?」
「あくまで、何か困ったことがあった時や、誰かに会いたくなったらそれで知らせてちょうだい。あと、サーヤ達が取り込み中で連絡がつかない時とかね」
「あ、なるほどなの!」
「うん、そうだね。誤解してごめんなさい、ノルンさん」

待って待って!そこっ、納得しないで!!
あたしやエルに連絡がつかない時って……いや、確かにあるかもしれないけどさ。
でも、さすがに我が子にまでそういう気を遣われるのは恥ずかしいんですけど!!!

あたしが一人で顔を真っ赤にしながらあぅあぅしていると、“気にするな”という感じで頭をポンっとエルが撫でてくれた。
エルは親としてそういうの恥ずかしくないわけ?!

皆の顔を見ると、優しく微笑みながら「呼ばれたらいつでも行くからね」とか「嫌なことがあったら必ず言うのよ!」と声をかけている。


皆の優しさやプレゼントに二人は喜び、サクラは嬉しさからか若干瞳を潤ませているのに対し、あたしはまた別の意味で泣きそうになった。
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