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1巻
1-3
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「クラウディア。今日は兄さんも私もいるのです。身の安全は保証しますから、あなたが動き回る必要はないですよ。マルツ家ご子息とのお話に専念なさい。それが本日の最重要任務です」
ともすれば動き回ろうとするクラウディアをアルストロメリアが制した。
ウルズスとアルストロメリア。このふたりがいる席に乱入する勇気ある不審者がいるとすれば、そちらのほうが危険である。
クロウリー伯爵家は現在、王都のどこよりも安全な場所とも言えた。
「だって叔母様、どうしたのかしら、わたしなんだか落ち着かないのです……! 今からでも鍛錬をする時間はあるでしょうか? 少し心を整えてまいります」
「ありません。鍛錬は昨晩しっかりしたでしょう。まもなく到着されますから、あなたは笑顔でお迎えするのです。それが淑女の鉄則ですよ……ほら、馬車の音が聞こえてきました」
クラウディアの申し出をピシャリと断じて、アルストロメリアは窓の外に視線を移した。
ほんの僅かに、馬の蹄が石畳を叩く音が遠くから聞こえる。常人であれば聞き漏らしてしまうほどの、かなり小さな音だ。
「まあ……!」
その音を聞き取ったクラウディアの顔がぱっと明るくなり、頬が色づく。
ジルヴェスターに会うのはあの夜会以来だ。
あの日は自己紹介をして、お互いの呼び名を決めた。それから少しだけ話をして、別れの時間が来たのだ。
あんなに名残惜しい瞬間は、今までに感じたことがない。
「叔母様、どうしましょう……! 熊さんと対峙した時のように心臓が痛いですわ」
「あら、おほほ。それはとてもよきことね、クラウディア」
ばくばくと騒がしい心臓。血沸き肉躍るような興奮。気分が高揚すると同時に、神経が研ぎ澄まされていくような感覚をも覚える。
まさに戦いの前の状況だ。
(どうしましょう、とってもドキドキしますわ。ジルヴェスター様はあれから息災だったでしょうか。少しお疲れのご様子でしたけれど、休むことはできたでしょうか)
考えだせば、キリがない。すぐにでも会いたい気持ちと、落ち着かない気持ちとがせめぎ合っていて心が大きく乱れているのを自分でも感じる。
(いけません、こんなことでは。気合を入れ直しましょう)
クラウディアは一度大きく深呼吸をする。それから精神統一をするようにまぶたを閉じて、呼吸がいつも通り落ち着くまで待った。
馬車を引く音が大きくなり、すぐそこまで聞こえてくる。もうすぐ到着だ。
「クラウディア。さあ、行きましょう」
「はい、メリア叔母様!」
その桃色の瞳にたしかな闘志を燃やして、クラウディアはいざ決戦の舞台に降り立ったのだった。
ほどなくしてクロウリー伯爵家に、宰相マルツ侯爵とジルヴェスターを乗せた馬車が到着した。
「マルツ卿、ジルヴェスター殿。ようこそいらっしゃいました」
「マルツ殿、久しいですな! ご子息殿におかれましては初めてお会いする!」
馬車から降りたふたりを、クロウリー伯爵夫妻とシェーンハイト辺境伯父娘がエントランスに並び立って迎える。
クラウディアは父ウルズスの半歩うしろに控えながら、その様子を見ていた。
(ジルヴェスター様だわ)
マルツ侯爵のうしろに、柔らかな茶髪の青年を見つけ、クラウディアは自然とその笑みを深くする。
「こんにちは、クラウディア嬢」
若草色の瞳と目が合い、ゆるりと目尻を下げて挨拶をされると、クラウディアはどうしようもなく飛び跳ねたい気持ちになる。
(ダメよ、クラウディア。淑女でいないと)
そう自分に言い聞かせ、そっとドレスの裾を手に取った。
「ごきげんよう、ジルヴェスター様。またお会いできて、大変うれしく思います」
しなやかに腰を折り、お辞儀をする。
「私もお会いしたかったです。あれから王都にしては肌寒い日が続きましたが、体調は崩していませんか?」
ジルヴェスターにそう問われ、クラウディアは元気いっぱいに答える。
「ええ、それはもう! 毎日しっかりと鍛錬していますし、わたしは元気でしたわ」
「そう、ならばよかったです」
本当に安心したように微笑まれ、クラウディアはくすぐったい気持ちになった。
言うほど肌寒かったかしら……? と思わないでもないが、そんなささやかなことで心配してもらえて不思議な心地だ。
「……」
「……」
ぽわぽわとした空気が間に流れるジルヴェスターとクラウディアのことを、周りの大人たちも穏やかに見つめている。
「こほん。ええっと、マルツ卿、義兄さんもどうぞこちらに~。ほらほら、君たちも早くお部屋に入ってねぇ」
ラスティンの声かけに、エントランスで止まっていた一同はようやくサロンへ向かおうとする。
「クラウディア嬢、行きましょうか」
ジルヴェスターがクラウディアに手を差し伸べる。彼の周りにキラキラと光が舞っているように見え、クラウディアは何度か瞬きを繰り返す。
「はい、ジルヴェスター様」
心からの笑顔でそれに応じて、クラウディアはジルヴェスターに並んでサロンへと入った。
そしてこの日、クラウディア・シェーンハイトとジルヴェスター・マルツの縁談について、両家の間で驚くほど円満に話が進んだ。
「……ではふたりの婚約はこのまま進めさせていただきますね。国王のことは私に任せてください。近いうちに臨時の円卓会議がありますので、そこで必ず今回の件の落とし前をつけさせます」
そうきっぱりと宣言したのは、宰相のマルツ侯爵だ。
「おお! ではこのウルズスも参加して、愛娘に対する態度について申し上げよう!」
そしてウルズスが力強く同意する。
「ウルズス様に参加していただければ百人力……いえ、百万人力ほどありますね」
「ガッハッハ! おもしろいことを言いなさる!」
円卓会議には王家と限られた上級貴族が召集され、この国における政治の方針などの重要事項が論じられる。
四半期に一度定期的に開催されるものではあるが、今回は緊急的な召集がかけられた。それだけ特別なことが起きたのだ。
この国の頭脳と言われているマルツ侯爵と、伝説の武人である熊男ウルズスが集う円卓会議。
結果は火を見るより明らかだ。
「お父様、頑張ってくださいませ」
愛娘にそんなお願いをされれば、ウルズスはますます気合が入るものだ。
「クラウディア、未来の婿殿、安心して待っておれ!」
ウルズスがどんと胸を叩く。
そのあまりにも頼もしすぎる姿に、安心感しかない。
クラウディアがジルヴェスターのほうを見ると、彼もこちらを見ていた。お互いに笑みを浮かべたままゆっくりとうなずき合う。
(お父様と宰相様がいらっしゃるから、絶対に大丈夫そうです)
クラウディアは心からそう思った。
❖閑話・円卓会議❖
クラウディアとジルヴェスターの出発前日。
王宮では緊急の臨時会議が開かれていた。
「この度の騒動、陛下におかれてはどう考えておられるのかな?」
静まり返っていた室内に、シェーンハイト辺境伯ウルズスの大声が響く。愛娘に約束したからには、先手必勝の先制攻撃を仕掛ける。
会議室の中央に位置する楕円形の卓に座るのは、この国の有力な貴族たちだ。
国王から向かって左側に宰相が座り、その横には派閥の貴族が並んで座る。対する、右側には顔色の悪い貴族たちが居心地悪そうに座っていた。
そして卓を挟んで、北の辺境伯領シェーンハイトと南の辺境伯領ザウアーラントのムキムキの両当主がギッチギチに並んでいる。
なぜかザウアーラント辺境伯の上着は肩口がビリビリに破れて、筋骨隆々の上腕二頭筋がのぞいていた。
両辺境伯家はこうした会議の際、欠席が多く、ふたりが揃うということがこれまでになかったため、スペースを考慮していなかった。
あそこだけやけに密だ。
部屋の端に控える書記官は、議事内容を記録するべくペンを走らせつつ、ひっそりとそんな感想を抱いた。
「……第一王女が騒ぎを起こしたことは、事実として認めよう」
どこかぐったりとした様子の国王が、掠れた声を出す。
「熊女でしたかな、我が愛娘に対して王女殿下が言われた言葉は!? だがあれはうれしそうにしておったであろう! がははは」
ウルズスの発言に国王がちらりと味方の派閥に目をやるが、彼らは一斉に目を逸らした。彼らが絶対に成功させると言っていた企みであるのに、その態度だ。
「その件については……その……まあ子どもの言葉遊びのようなものだろう。令嬢が喜んでいたのであれば、それはそれは……」
国王は冷や汗をかきながら言葉を濁す。
「本日の議題でもありますが……陛下」
ひんやりとした空気の会議室に、宰相の穏やかな声が落ちる。銀縁の眼鏡のツルを一度撫で、それから鋭い眼差しを国王に向けた。
「先般の財務局での横領事件について、第一王女殿下は宰相であるこの私が先導したと言っていたようですね。そしてその諸々の咎を含め、ジルヴェスターを断罪し婚約破棄したと」
あやうく罪を擦りつけられるところだったが、本気になった息子ジルヴェスターの行動は早かった。あっという間に冤罪の証拠を見つけだし、真犯人を追及した。
国王派が並ぶ円卓の一席が空席になっているのも、その人物が現在取り調べを受けているからだ。
「それは……」
「私は知りませんでしたが、この婚約破棄の件についてアデーレ王女は王も認めているという趣旨の発言をされたと。さらにシェーンハイト辺境伯への婿入りも命じられたそうで。クラウディア嬢をひどく嘲っておられたとか」
「……」
宰相の追及に国王は黙り込んだ。ぎょろぎょろと忙しなく動く青い瞳は、ここをどう切り抜けようかと思案しているように見える。
幼い頃に王家からの打診でアデーレ王女との婚約が決まったジルヴェスターは、長子でありながらマルツ侯爵家の跡取りとして育てられることはなかった。
優秀な子だった。だから立派な王配になるべく厳しい教育を課してきた。
それをここにきて梯子を外される形になり、さらには結果的に良縁ではあるにしても、次の婿入り先までも指定されるなどあまりにも横暴がすぎる。
息子ジルヴェスターとマルツ侯爵家の尊厳を踏み躙るあまりにも勝手な采配に、宰相自身も易々と納得できるはずがない。
「それは……アデーレが勝手に言ったことだ。私は関知していない」
しばらくの沈黙のあと、国王はそう言い放った。
いつものことだ、と宰相は虚しさから肩をすくめる。この人のその場しのぎの発言の尻拭いをどれだけしてきたことか。
分が悪いとわかっているのか、いつもは姦しい国王派の貴族たちも静かにしている。圧倒的な存在感を放っている両辺境伯に睨まれて気圧されているとも言えるだろう。
「その話が事実であれば、我がザウアーラントはアデーレ王女殿下の王太子としての資質を認めかねますな」
静寂が下りる室内で最初に声を上げたのは、ウルズスの隣に座るザウアーラント辺境伯だった。南部の国境を守る海の男の言葉に、会議室がビリビリとした緊張感に包まれる。
さらに、ばあん、と卓を叩く大きな音がする。
「我がシェーンハイトとしても、存在を軽んじられたことには落とし前をつけてもらわねばなりませんなあ!」
「ひっっ」
胸元に金色の熊バッジを十連にした大男がそう言えば、中央の軟弱な貴族たちが縮み上がる。それは自然の摂理と言えるだろう。
そもそもシェーンハイト辺境伯領までは往復でひと月ほどかかる行程のはずなのに、夜会の日からわずか五日でこうして王都に馳せ参じていること自体が異次元だ。
(我が息子とシェーンハイトの縁。アデーレ殿下には申し訳ないが、ありがたい申し出でしたね)
宰相がそう心の中で考えていると、国王がゆっくりと口を開いた。
「この度のことは、アデーレの独断である。我は何も知らぬ」
「我がマルツ侯爵家としては、この婚約破棄についてはそのまま受理したいと考えております。そして、シェーンハイト家との婚約を正式に認めていただきたい」
婚約破棄の夜会以降、ジルヴェスターが素早く行動したのもすべてこのためだ。
王女の発した言葉を国王に有耶無耶にされてしまわないよう、迅速に冤罪の証拠を揃えて真相解明に尽力した。もうすでに城での身辺整理を済ませ、出立の準備も万全だ。
今さらあの婚約破棄を白紙に戻させはしない。それがこれまで我慢を強いてきたジルヴェスターへのせめてものはなむけである
「うむ! 宰相殿の意見に賛成する!」
「私も」
シェーンハイトとザウアーラントの両当主が畳みかけるようにそう言えば、保守派はたじろぐ。蛇に睨まれた蛙のようだ。
「……認めよう」
「では、今後 王女殿下をどうなされるおつもりですか」
「廃太子とする」
追及に対し、国王はあっさりとアデーレ王女を切り捨てた。すでに心を決めたのか、顔色も変えずに淡々と答える。
天秤にかけた結果、自身の王位が脅かされるよりも王女を廃することのほうが有益だと思い至ったのだろう。加えて、謝罪する気などさらさらないようだ。
「アデーレには、王都から出て西方の離宮にて過ごすよう命じよう。あの胡散臭い商人は叙爵などはもってのほか、王都から追放せよ。宰相殿が望むならば、処刑しても構わん」
「……承知しました」
国王の言葉を受けた宰相が周囲を見遣ると、流石に保守派の貴族たちも目を丸くしていた。それもそうだ、溺愛していたはずの王女なのに。
彼女が失敗をしても王が庇ってくれるとタカを括っていたのだが、そうはならなかった。
(アデーレ王女のほかに、正統な王女はひとり。これまで見向きもしなかった第二王女ビアンカ殿下のみだ)
例の夜会のあとに、宰相は急いで兵を走らせたが、寂れた離宮に第二王女の姿はなかった。
代わりに第二王女の離宮周辺をさまよっていた怪しい騎士たちを捕縛した。
尋問によれば、騎士たちは国王派の貴族から命を受け、第二王女を連れ去りに行ったのだと言う。
彼女を丸め込み、第一王女に何かあった時の保険として自分たちの派閥から適当な子息と婚約させ、王配に充てようとしていたのだろう。実に杜撰でくだらない計画だ。
「ああそうだ、話は変わりますが」
そう切り出したのは、鮫の牙がジャラジャラとついた首飾りをつけたザウアーラント辺境伯だ。
南の海には鮫が出没する。ザウアーラントでは、その鮫を倒してこそ本物の『海の漢』なのだとか。
南北に長いこの国において、北のシェーンハイトに並んで護りの要である。
「実は先日、偶然ビアンカ殿下が何者かに襲われているところを我が領民が発見しましてな。現在私のほうで保護しております」
腕組みをしていたザウアーラント辺境伯の言葉に、国王派貴族たちは顔を見合わせた。
「なんだと?」
そのうちのひとり、ユーザイン伯爵が訝しげな声を上げる。騎士たちが吐いた首謀者の名でもあった。
「何やら第二王女がお住まいの離宮に粗暴な騎士が現れたようで。まったく、警護体制はどうなっているのか……。殿下の身の安全のため、しばらくは我が家にて静養させたい」
「か、勝手なのではないか!?」
「我がザウアーラントはビアンカ殿下の後見に立つことにしたのでな。主の保護は当然のことでしょう。ろくな使用人もいないあんな場所に閉じ込めてはおけぬと判断した次第」
「なっ……!」
ザウアーラント辺境伯とユーザイン伯爵のやり取りに円卓がにわかにざわつく。その中で、宰相は納得したようにうなずいた。
(なるほど。ビアンカ殿下を保護したのはザウアーラント卿だったか)
どうやら王都はこれから、まだ一波乱も二波乱もありそうだ。
――だがそれはもう、宰相の与り知らぬところである。
「本日の議案外なのですがよろしいでしょうか」
宰相は挙手をして、ざわつく円卓会議の中で改めて発言した。
「息子の婚約解消と新たな婚約が整いましたので、私は宰相の座を辞そうと思います。これまで私が肩代わりしておりました執務について、陛下にお返しします」
息子が王配とならないのであれば、もうこれ以上自身も我慢する必要などないのだ。
「なっ……! 待て!」
宰相が告げると、これまで彼を毛嫌いしていたはずの国王が縋ってくる。
「散々私のことは不要だとおっしゃっていたではありませんか。お望みどおりにいたします。あらぬ疑いをかけられてまで、しがみつきたい椅子ではございません」
「であれば、マルツ卿と奥方も、婿殿と共にシェーンハイトに来てはいかがかな!? いろいろと教えを請いたい!!」
「ああ、それはいいですねぇ。ちょうど妻とのんびり旅行でもしたいと思っていました」
「うちの領地で獲れるとびきり美味い鮭をご馳走しよう!! がははは!!」
シェーンハイト辺境伯の誘いに、宰相は自然と頬がゆるむ。
「それは楽しみです。では、会議はこれにて終了としましょう」
元宰相となった男は、波乱に満ちた円卓会議の幕を引く。
引退後の楽しそうな暮らしに思いを馳せ、妻に旅行の日程を相談しなければと意気揚々と城を発ったのだった。
第三章 城塞都市にて
「……」
ガタガタと揺れる馬車の中で、クラウディアは向かいの席で仮眠を取っているジルヴェスターをじっと見つめていた。
伏せられたまつ毛に、すっとした鼻筋。夜会で見かけた時よりも、顔色がいいように思える。
先日行われた円卓会議では、ジルヴェスターとアデーレ王女の正式な婚約破棄と王女の廃太子、それからクラウディアとジルヴェスターの正式な婚約が認められた。
辺境の地シェーンハイトまでの道のりは、馬車で休憩を挟みながら二週間ほど。不眠不休で馬を走らせれば三日だが、流石にそういうわけにはいかない。
早朝に王都を出て、街道沿いの街に夕方に着くように進んでいる。
(この方が、わたしのお婿さん……)
馬車の振動と共に、ジルヴェスターの柔らかな茶色の髪が揺れる。
ふわふわとしていて、とても温かな色をしている。
これから向かうシェーンハイトは北の要所でもある。険しい山道のうえ、春でも雪が残る寒い地域だ。
初めて過ごした王都は、とても穏やかな気候だった。天気が急変して吹雪になることもなければ、熊や狼といった獣が押し寄せることもない。
(本当に……よかったのでしょうか)
クラウディアはジルヴェスターの寝顔を眺めながら、そんな心配をする。
ともすれば動き回ろうとするクラウディアをアルストロメリアが制した。
ウルズスとアルストロメリア。このふたりがいる席に乱入する勇気ある不審者がいるとすれば、そちらのほうが危険である。
クロウリー伯爵家は現在、王都のどこよりも安全な場所とも言えた。
「だって叔母様、どうしたのかしら、わたしなんだか落ち着かないのです……! 今からでも鍛錬をする時間はあるでしょうか? 少し心を整えてまいります」
「ありません。鍛錬は昨晩しっかりしたでしょう。まもなく到着されますから、あなたは笑顔でお迎えするのです。それが淑女の鉄則ですよ……ほら、馬車の音が聞こえてきました」
クラウディアの申し出をピシャリと断じて、アルストロメリアは窓の外に視線を移した。
ほんの僅かに、馬の蹄が石畳を叩く音が遠くから聞こえる。常人であれば聞き漏らしてしまうほどの、かなり小さな音だ。
「まあ……!」
その音を聞き取ったクラウディアの顔がぱっと明るくなり、頬が色づく。
ジルヴェスターに会うのはあの夜会以来だ。
あの日は自己紹介をして、お互いの呼び名を決めた。それから少しだけ話をして、別れの時間が来たのだ。
あんなに名残惜しい瞬間は、今までに感じたことがない。
「叔母様、どうしましょう……! 熊さんと対峙した時のように心臓が痛いですわ」
「あら、おほほ。それはとてもよきことね、クラウディア」
ばくばくと騒がしい心臓。血沸き肉躍るような興奮。気分が高揚すると同時に、神経が研ぎ澄まされていくような感覚をも覚える。
まさに戦いの前の状況だ。
(どうしましょう、とってもドキドキしますわ。ジルヴェスター様はあれから息災だったでしょうか。少しお疲れのご様子でしたけれど、休むことはできたでしょうか)
考えだせば、キリがない。すぐにでも会いたい気持ちと、落ち着かない気持ちとがせめぎ合っていて心が大きく乱れているのを自分でも感じる。
(いけません、こんなことでは。気合を入れ直しましょう)
クラウディアは一度大きく深呼吸をする。それから精神統一をするようにまぶたを閉じて、呼吸がいつも通り落ち着くまで待った。
馬車を引く音が大きくなり、すぐそこまで聞こえてくる。もうすぐ到着だ。
「クラウディア。さあ、行きましょう」
「はい、メリア叔母様!」
その桃色の瞳にたしかな闘志を燃やして、クラウディアはいざ決戦の舞台に降り立ったのだった。
ほどなくしてクロウリー伯爵家に、宰相マルツ侯爵とジルヴェスターを乗せた馬車が到着した。
「マルツ卿、ジルヴェスター殿。ようこそいらっしゃいました」
「マルツ殿、久しいですな! ご子息殿におかれましては初めてお会いする!」
馬車から降りたふたりを、クロウリー伯爵夫妻とシェーンハイト辺境伯父娘がエントランスに並び立って迎える。
クラウディアは父ウルズスの半歩うしろに控えながら、その様子を見ていた。
(ジルヴェスター様だわ)
マルツ侯爵のうしろに、柔らかな茶髪の青年を見つけ、クラウディアは自然とその笑みを深くする。
「こんにちは、クラウディア嬢」
若草色の瞳と目が合い、ゆるりと目尻を下げて挨拶をされると、クラウディアはどうしようもなく飛び跳ねたい気持ちになる。
(ダメよ、クラウディア。淑女でいないと)
そう自分に言い聞かせ、そっとドレスの裾を手に取った。
「ごきげんよう、ジルヴェスター様。またお会いできて、大変うれしく思います」
しなやかに腰を折り、お辞儀をする。
「私もお会いしたかったです。あれから王都にしては肌寒い日が続きましたが、体調は崩していませんか?」
ジルヴェスターにそう問われ、クラウディアは元気いっぱいに答える。
「ええ、それはもう! 毎日しっかりと鍛錬していますし、わたしは元気でしたわ」
「そう、ならばよかったです」
本当に安心したように微笑まれ、クラウディアはくすぐったい気持ちになった。
言うほど肌寒かったかしら……? と思わないでもないが、そんなささやかなことで心配してもらえて不思議な心地だ。
「……」
「……」
ぽわぽわとした空気が間に流れるジルヴェスターとクラウディアのことを、周りの大人たちも穏やかに見つめている。
「こほん。ええっと、マルツ卿、義兄さんもどうぞこちらに~。ほらほら、君たちも早くお部屋に入ってねぇ」
ラスティンの声かけに、エントランスで止まっていた一同はようやくサロンへ向かおうとする。
「クラウディア嬢、行きましょうか」
ジルヴェスターがクラウディアに手を差し伸べる。彼の周りにキラキラと光が舞っているように見え、クラウディアは何度か瞬きを繰り返す。
「はい、ジルヴェスター様」
心からの笑顔でそれに応じて、クラウディアはジルヴェスターに並んでサロンへと入った。
そしてこの日、クラウディア・シェーンハイトとジルヴェスター・マルツの縁談について、両家の間で驚くほど円満に話が進んだ。
「……ではふたりの婚約はこのまま進めさせていただきますね。国王のことは私に任せてください。近いうちに臨時の円卓会議がありますので、そこで必ず今回の件の落とし前をつけさせます」
そうきっぱりと宣言したのは、宰相のマルツ侯爵だ。
「おお! ではこのウルズスも参加して、愛娘に対する態度について申し上げよう!」
そしてウルズスが力強く同意する。
「ウルズス様に参加していただければ百人力……いえ、百万人力ほどありますね」
「ガッハッハ! おもしろいことを言いなさる!」
円卓会議には王家と限られた上級貴族が召集され、この国における政治の方針などの重要事項が論じられる。
四半期に一度定期的に開催されるものではあるが、今回は緊急的な召集がかけられた。それだけ特別なことが起きたのだ。
この国の頭脳と言われているマルツ侯爵と、伝説の武人である熊男ウルズスが集う円卓会議。
結果は火を見るより明らかだ。
「お父様、頑張ってくださいませ」
愛娘にそんなお願いをされれば、ウルズスはますます気合が入るものだ。
「クラウディア、未来の婿殿、安心して待っておれ!」
ウルズスがどんと胸を叩く。
そのあまりにも頼もしすぎる姿に、安心感しかない。
クラウディアがジルヴェスターのほうを見ると、彼もこちらを見ていた。お互いに笑みを浮かべたままゆっくりとうなずき合う。
(お父様と宰相様がいらっしゃるから、絶対に大丈夫そうです)
クラウディアは心からそう思った。
❖閑話・円卓会議❖
クラウディアとジルヴェスターの出発前日。
王宮では緊急の臨時会議が開かれていた。
「この度の騒動、陛下におかれてはどう考えておられるのかな?」
静まり返っていた室内に、シェーンハイト辺境伯ウルズスの大声が響く。愛娘に約束したからには、先手必勝の先制攻撃を仕掛ける。
会議室の中央に位置する楕円形の卓に座るのは、この国の有力な貴族たちだ。
国王から向かって左側に宰相が座り、その横には派閥の貴族が並んで座る。対する、右側には顔色の悪い貴族たちが居心地悪そうに座っていた。
そして卓を挟んで、北の辺境伯領シェーンハイトと南の辺境伯領ザウアーラントのムキムキの両当主がギッチギチに並んでいる。
なぜかザウアーラント辺境伯の上着は肩口がビリビリに破れて、筋骨隆々の上腕二頭筋がのぞいていた。
両辺境伯家はこうした会議の際、欠席が多く、ふたりが揃うということがこれまでになかったため、スペースを考慮していなかった。
あそこだけやけに密だ。
部屋の端に控える書記官は、議事内容を記録するべくペンを走らせつつ、ひっそりとそんな感想を抱いた。
「……第一王女が騒ぎを起こしたことは、事実として認めよう」
どこかぐったりとした様子の国王が、掠れた声を出す。
「熊女でしたかな、我が愛娘に対して王女殿下が言われた言葉は!? だがあれはうれしそうにしておったであろう! がははは」
ウルズスの発言に国王がちらりと味方の派閥に目をやるが、彼らは一斉に目を逸らした。彼らが絶対に成功させると言っていた企みであるのに、その態度だ。
「その件については……その……まあ子どもの言葉遊びのようなものだろう。令嬢が喜んでいたのであれば、それはそれは……」
国王は冷や汗をかきながら言葉を濁す。
「本日の議題でもありますが……陛下」
ひんやりとした空気の会議室に、宰相の穏やかな声が落ちる。銀縁の眼鏡のツルを一度撫で、それから鋭い眼差しを国王に向けた。
「先般の財務局での横領事件について、第一王女殿下は宰相であるこの私が先導したと言っていたようですね。そしてその諸々の咎を含め、ジルヴェスターを断罪し婚約破棄したと」
あやうく罪を擦りつけられるところだったが、本気になった息子ジルヴェスターの行動は早かった。あっという間に冤罪の証拠を見つけだし、真犯人を追及した。
国王派が並ぶ円卓の一席が空席になっているのも、その人物が現在取り調べを受けているからだ。
「それは……」
「私は知りませんでしたが、この婚約破棄の件についてアデーレ王女は王も認めているという趣旨の発言をされたと。さらにシェーンハイト辺境伯への婿入りも命じられたそうで。クラウディア嬢をひどく嘲っておられたとか」
「……」
宰相の追及に国王は黙り込んだ。ぎょろぎょろと忙しなく動く青い瞳は、ここをどう切り抜けようかと思案しているように見える。
幼い頃に王家からの打診でアデーレ王女との婚約が決まったジルヴェスターは、長子でありながらマルツ侯爵家の跡取りとして育てられることはなかった。
優秀な子だった。だから立派な王配になるべく厳しい教育を課してきた。
それをここにきて梯子を外される形になり、さらには結果的に良縁ではあるにしても、次の婿入り先までも指定されるなどあまりにも横暴がすぎる。
息子ジルヴェスターとマルツ侯爵家の尊厳を踏み躙るあまりにも勝手な采配に、宰相自身も易々と納得できるはずがない。
「それは……アデーレが勝手に言ったことだ。私は関知していない」
しばらくの沈黙のあと、国王はそう言い放った。
いつものことだ、と宰相は虚しさから肩をすくめる。この人のその場しのぎの発言の尻拭いをどれだけしてきたことか。
分が悪いとわかっているのか、いつもは姦しい国王派の貴族たちも静かにしている。圧倒的な存在感を放っている両辺境伯に睨まれて気圧されているとも言えるだろう。
「その話が事実であれば、我がザウアーラントはアデーレ王女殿下の王太子としての資質を認めかねますな」
静寂が下りる室内で最初に声を上げたのは、ウルズスの隣に座るザウアーラント辺境伯だった。南部の国境を守る海の男の言葉に、会議室がビリビリとした緊張感に包まれる。
さらに、ばあん、と卓を叩く大きな音がする。
「我がシェーンハイトとしても、存在を軽んじられたことには落とし前をつけてもらわねばなりませんなあ!」
「ひっっ」
胸元に金色の熊バッジを十連にした大男がそう言えば、中央の軟弱な貴族たちが縮み上がる。それは自然の摂理と言えるだろう。
そもそもシェーンハイト辺境伯領までは往復でひと月ほどかかる行程のはずなのに、夜会の日からわずか五日でこうして王都に馳せ参じていること自体が異次元だ。
(我が息子とシェーンハイトの縁。アデーレ殿下には申し訳ないが、ありがたい申し出でしたね)
宰相がそう心の中で考えていると、国王がゆっくりと口を開いた。
「この度のことは、アデーレの独断である。我は何も知らぬ」
「我がマルツ侯爵家としては、この婚約破棄についてはそのまま受理したいと考えております。そして、シェーンハイト家との婚約を正式に認めていただきたい」
婚約破棄の夜会以降、ジルヴェスターが素早く行動したのもすべてこのためだ。
王女の発した言葉を国王に有耶無耶にされてしまわないよう、迅速に冤罪の証拠を揃えて真相解明に尽力した。もうすでに城での身辺整理を済ませ、出立の準備も万全だ。
今さらあの婚約破棄を白紙に戻させはしない。それがこれまで我慢を強いてきたジルヴェスターへのせめてものはなむけである
「うむ! 宰相殿の意見に賛成する!」
「私も」
シェーンハイトとザウアーラントの両当主が畳みかけるようにそう言えば、保守派はたじろぐ。蛇に睨まれた蛙のようだ。
「……認めよう」
「では、今後 王女殿下をどうなされるおつもりですか」
「廃太子とする」
追及に対し、国王はあっさりとアデーレ王女を切り捨てた。すでに心を決めたのか、顔色も変えずに淡々と答える。
天秤にかけた結果、自身の王位が脅かされるよりも王女を廃することのほうが有益だと思い至ったのだろう。加えて、謝罪する気などさらさらないようだ。
「アデーレには、王都から出て西方の離宮にて過ごすよう命じよう。あの胡散臭い商人は叙爵などはもってのほか、王都から追放せよ。宰相殿が望むならば、処刑しても構わん」
「……承知しました」
国王の言葉を受けた宰相が周囲を見遣ると、流石に保守派の貴族たちも目を丸くしていた。それもそうだ、溺愛していたはずの王女なのに。
彼女が失敗をしても王が庇ってくれるとタカを括っていたのだが、そうはならなかった。
(アデーレ王女のほかに、正統な王女はひとり。これまで見向きもしなかった第二王女ビアンカ殿下のみだ)
例の夜会のあとに、宰相は急いで兵を走らせたが、寂れた離宮に第二王女の姿はなかった。
代わりに第二王女の離宮周辺をさまよっていた怪しい騎士たちを捕縛した。
尋問によれば、騎士たちは国王派の貴族から命を受け、第二王女を連れ去りに行ったのだと言う。
彼女を丸め込み、第一王女に何かあった時の保険として自分たちの派閥から適当な子息と婚約させ、王配に充てようとしていたのだろう。実に杜撰でくだらない計画だ。
「ああそうだ、話は変わりますが」
そう切り出したのは、鮫の牙がジャラジャラとついた首飾りをつけたザウアーラント辺境伯だ。
南の海には鮫が出没する。ザウアーラントでは、その鮫を倒してこそ本物の『海の漢』なのだとか。
南北に長いこの国において、北のシェーンハイトに並んで護りの要である。
「実は先日、偶然ビアンカ殿下が何者かに襲われているところを我が領民が発見しましてな。現在私のほうで保護しております」
腕組みをしていたザウアーラント辺境伯の言葉に、国王派貴族たちは顔を見合わせた。
「なんだと?」
そのうちのひとり、ユーザイン伯爵が訝しげな声を上げる。騎士たちが吐いた首謀者の名でもあった。
「何やら第二王女がお住まいの離宮に粗暴な騎士が現れたようで。まったく、警護体制はどうなっているのか……。殿下の身の安全のため、しばらくは我が家にて静養させたい」
「か、勝手なのではないか!?」
「我がザウアーラントはビアンカ殿下の後見に立つことにしたのでな。主の保護は当然のことでしょう。ろくな使用人もいないあんな場所に閉じ込めてはおけぬと判断した次第」
「なっ……!」
ザウアーラント辺境伯とユーザイン伯爵のやり取りに円卓がにわかにざわつく。その中で、宰相は納得したようにうなずいた。
(なるほど。ビアンカ殿下を保護したのはザウアーラント卿だったか)
どうやら王都はこれから、まだ一波乱も二波乱もありそうだ。
――だがそれはもう、宰相の与り知らぬところである。
「本日の議案外なのですがよろしいでしょうか」
宰相は挙手をして、ざわつく円卓会議の中で改めて発言した。
「息子の婚約解消と新たな婚約が整いましたので、私は宰相の座を辞そうと思います。これまで私が肩代わりしておりました執務について、陛下にお返しします」
息子が王配とならないのであれば、もうこれ以上自身も我慢する必要などないのだ。
「なっ……! 待て!」
宰相が告げると、これまで彼を毛嫌いしていたはずの国王が縋ってくる。
「散々私のことは不要だとおっしゃっていたではありませんか。お望みどおりにいたします。あらぬ疑いをかけられてまで、しがみつきたい椅子ではございません」
「であれば、マルツ卿と奥方も、婿殿と共にシェーンハイトに来てはいかがかな!? いろいろと教えを請いたい!!」
「ああ、それはいいですねぇ。ちょうど妻とのんびり旅行でもしたいと思っていました」
「うちの領地で獲れるとびきり美味い鮭をご馳走しよう!! がははは!!」
シェーンハイト辺境伯の誘いに、宰相は自然と頬がゆるむ。
「それは楽しみです。では、会議はこれにて終了としましょう」
元宰相となった男は、波乱に満ちた円卓会議の幕を引く。
引退後の楽しそうな暮らしに思いを馳せ、妻に旅行の日程を相談しなければと意気揚々と城を発ったのだった。
第三章 城塞都市にて
「……」
ガタガタと揺れる馬車の中で、クラウディアは向かいの席で仮眠を取っているジルヴェスターをじっと見つめていた。
伏せられたまつ毛に、すっとした鼻筋。夜会で見かけた時よりも、顔色がいいように思える。
先日行われた円卓会議では、ジルヴェスターとアデーレ王女の正式な婚約破棄と王女の廃太子、それからクラウディアとジルヴェスターの正式な婚約が認められた。
辺境の地シェーンハイトまでの道のりは、馬車で休憩を挟みながら二週間ほど。不眠不休で馬を走らせれば三日だが、流石にそういうわけにはいかない。
早朝に王都を出て、街道沿いの街に夕方に着くように進んでいる。
(この方が、わたしのお婿さん……)
馬車の振動と共に、ジルヴェスターの柔らかな茶色の髪が揺れる。
ふわふわとしていて、とても温かな色をしている。
これから向かうシェーンハイトは北の要所でもある。険しい山道のうえ、春でも雪が残る寒い地域だ。
初めて過ごした王都は、とても穏やかな気候だった。天気が急変して吹雪になることもなければ、熊や狼といった獣が押し寄せることもない。
(本当に……よかったのでしょうか)
クラウディアはジルヴェスターの寝顔を眺めながら、そんな心配をする。
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