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どうなる王都編

ザウアーラント諜報部隊・その1

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 アルバンはザウアーラント辺境伯の第二子としてこの世に生を受けた。

 ちなみに兄弟は六人いるため、とても賑やかな毎日だった。

『アルバン。王都に用務があるが、今回はお前がついてくるか』

 十歳の頃。父にそう問いかけられ、アルバンは即座に首を縦に振る。

『行きたい! いいの!? 父上』
頭領ドンと呼べ』

 ザウアーラント辺境伯領は、海に面した温暖多雨な地域である。港町としての機能も果たしつつ、領民たちは漁業や貿易で生計を立てている。

 ……のは仮の姿で、ザウアーラントは情報収集を主とする隠密集団である。

 険しい山脈と寒冷な気候により周囲と隔たりがある北のシェーンハイトと異なり、国境に面し、海を隔てて諸国とも交流があるこの領地は戦火にいの一番に巻き込まれる。

 そのため、そうならないための情報を集めることは領地を守るために最重要事項ともいえた。

『おれ、アルバン! 君の名前は?』

『わ、わたし、ビアンカ……』

 もしかしたらこの時、アルバンが王都の寂れた離宮で第二王女ビアンカに出会ったのは、偶然などではなかったのかもしれない。

 父の智略には遠く及ばない。

 たとえそれが練られた策だとしても、アルバンは確かにビアンカが好きで、ずっと救い出したいと思っていた。


◇◇◇◇◇◇


「……お前、何してんの」

 鎧を脱いだアルバンが王都の隠れ家に戻ると、リビングでは見覚えのある人物が寛いでいた。

「あ、アルバン、おかえりなさい」

「……ただいま」

 困ったように眉を下げながら出迎えてくれたビアンカに心臓のあたりをギュッと鷲掴みされたような感覚を覚えながら、アルバンは険しい表情を崩さない。

 ちょっと新婚さんぽかったなとか邪念が生まれたが、首を振ってその考えを今は追いやる。

 問題は、ビアンカの前にいる別の人物にあるのだから。

「アルバンってば、いま『新婚さんっぽいな』とか思っただろ? 全くお前は昔っから下手くそだよなぁ~」

 アルバンよりいくつか歳上の褐色肌の美青年は、アルバンに向けてそう言うとカラカラと笑う。

(だめだ、怒ったらコイツのペースに呑まれる)

 そう思うものの、隠れ家にいるビアンカと勝手に会って、お茶まで振る舞われていることに怒りがフツフツと沸いてくる。

「ア、アルバン?」

 声を出さないようにと気がけていたら、無意識にビアンカに近付いてギュッと抱きしめていた。俺のだ。

「そんな威嚇しなくてもいいのに」

 カラカラと陽気に笑うこの男は、自らが置かれた状況を分かっているのだろうか。
 派手に立ち回り過ぎたせいで、王都から追放される羽目になっている。

「ダニエル、お前こんなところで何してる」

 第一王女の情夫と噂される、商人ダニエルがまさにアルバンの目の前にいた。
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