その結末はお断りします! -嫌われ転生聖女が推しの悪役王弟殿下に溺愛されるまで-

ミズメ

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03 嫌われ聖女と騎士

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 ――その時だった。

 先生のお母さんに対する感謝と謝罪の気持ちがごちゃごちゃになって、涙が止まらない私からいつものように光が溢れた。

「まあ、貴女は――」

 始めは自身を包むだけだったその光は、やがて先生のお母さんの身体ごと大きく包み込む。

「なんだ、この光は……?」

 戸惑いの声を上げるニーチラングさんも、そのまま光の住人となった。

(何、これ……)

 私を根源とした光はそのままどんどん大きくなり、ついには救護院の建物ごと包み込んでしまった。

 辺り一面が白光りし、私でさえ眩しくて目を細めてしまう。

 先生のことを想って何度か光ったときでも、これほどの凄まじい光では無かった。

 私だけが発光して、しばらくすれば治まるくらいのものだったが、今回は違っている。

(……あ、どうしよう。なんか、やばいかも)

 光が強くなるにつれて、私は身体の異変に気が付いていた。
 心臓は強く熱く打っているが、手足の感覚はどんどんと薄くなってゆく。
 何かに吸い取られるように力が抜けてゆくのだ。地面に立っているかどうかの判断も危うい。

 今何が起きているのか。
 近くにいた先生のお母さんたちは無事なのか。

 視界もなくなり、意識も朦朧としてきて、周囲の光に溶け込んだような気持ちになってくる。

(どうしよう、どうしよう……)

 辛くなって瞳を閉じると、そこは暗黒だ。
 だけどもう、瞼を持ち上げる力すらもない。
 踏ん張ろうとしていたけれど、どうやらそれももう無理そうだ。

「――セシリア!」

 限界を迎えた身体がゆらりと倒れてゆくのを感じた。全てが感覚の世界で、それでも私の身体は衝撃を受けることもない。

 それどころか、温かく心地のよいものに包まれているような気もする。

(痛くない……よかった。さっき、私の名前を呼んだのはだれだろう)

――先生のお母さんと、先生のお手伝いをしていたあの頑固な騎士様が無事でありますように。



 それだけを祈りながら、私は意識を手放した。




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