その結末はお断りします! -嫌われ転生聖女が推しの悪役王弟殿下に溺愛されるまで-

ミズメ

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01 ヒロインで聖女なのに嫌われ中

光ってます

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「ジェニングさん、これは……どうしたら……?」

 目を丸くした先生が、私の心配をしてくれている。

(ど、どうしよう。昨日はそのまま寝ちゃってて、そのままおさまったけど、どうしよう。えーとえーと)

 発光する当の私はというと、なんとかして心を鎮めようと必死で別のことを考えていた。

「多分、時間が経てば大丈夫です……!」

 発光の原因は私の興奮によるもので、それを引き起こすのはまさに面前にいる先生。
 そんなことを先生に伝えられるはずもなく、しかも眉を下げての困り顔もとても素敵であるため、全然大丈夫ではない。愛が留まることを知らない。

 このままここにいたら、食堂を一生照らしてしまう自信がある。光熱費が浮く。

――あれが、聖女の……?
――桁違いの力だ。

 発光で死ぬほど目立っている私に、周囲からの視線も降り注ぐ。ざわざわとした声が聞こえてきて、私も居た堪れない。

「困ったな……どうしよう。痛かったりはしませんか?」

(うっ優しい、うわべだと分かっていてもキュンキュンしてしまう……!)

 慌てた様子の先生(いい人モード)が、私のことを気がけてくれる。それにさらに悶えてしまうので、一層光が収まるはずもない。

「っ!」

 おそるおそる私に触れようとしたヴァンス先生の右手が、光に阻まれてバシリと弾かれた。
 そしてその右手は、淡く光ってしまっている。
 
 驚愕の表情を浮かべる先生の姿に、私の焦りは最高潮に達した。自分が光るだけでは飽き足らず、推しを光らせるとは何事なのか。推しになんたる迷惑を……!

「ごめんなさい、ヴァンス先生」
「少し驚いただけです。僕は大丈夫。それよりジェニングさんは……」
「わ、私も痛みなどは全くありませんので……あの、しばらくしたら落ち着きます。前もそうだったので。なので、えっと、お先に失礼します!」

 言うが早いか、私は残りのコロッケとフライを急いで頬に詰め込んで、慌てて食堂を出ることにした。
 せっかくの先生との対話だったけれど、このままでは私が落ち着いていられるはずもない。


 その日、ようやく光がおさまったのは、食堂を出てアテもなく走り回ってしばらくしてからだった。
 某少年漫画のヒーローのような、とんでもない光りぶりだ。聖女って何?こわい。

 少なくとも、ファンタジー小説の中ではセシリアはこんなに光っていなかった。光ったのは最後の最後、ラストシーン付近だったというのに。

(一緒に食事をしていたら急に発光して、触ったら発光が伝染うつるって……これ普通に嫌われる案件なのでは……?)

 私がその事実に気が付いたのは、なんとか間に合った午後の授業を放心状態で受けたあと、自室に戻ってからだ。


 ちょっと泣いた。
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