突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第四章 おおきな一歩

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 学校について靴箱が近づくと、やっぱりどうしても指がふるえた。
 また上履きの上に手紙があっらどうしようと考えてしまう。
 一瞬足が止まったわたしの横を蒼太くんが進んでいく。
「……なにもないから、安心していい」
 自分の上履きを取るときに、わたしの分も覗いてくれたみたいだ。
 緊張が解けたわたしは上履きを手に取る。
 前向きにがんばるとは決めたけど、やっぱりどうしても周りの目が気になってしまう。
 深呼吸をして、教室までの道を進む。
 少し前を蒼太くんが歩いてくれているおかげで、心強い。
「なにか変わったことがあったらすぐに教えて。いい?」
「う、うん……でも」
「でもは禁止。な?」
「うん」
 わたしが頷いたのを確認すると、蒼太くんは笑顔で教室へと入っていった。
 よし、次はわたしだ。
 一旦心を落着けて、それから教室に足を踏み入れる。
 誰かに見られている気がして、妙に緊張してしまう。
「あっ、ひなちゃん! おはよーっ!」
 今日はゆるく結んだ三つ編みの結愛ちゃんが、わたしの席へと駆け寄ってくる。
 その顔を見て、またホッとした。
「結愛ちゃん、おはよう。あの……お手紙ありがとう」
 わたしはもじもじしながら、ランドセルから黄色の便箋を取り出した。
 お返事を書いたんだ、昨日。
「えっ、えーっ……あ、ありがとっ」
「結愛ちゃんからのお手紙、本当に嬉しかったから……えへへ。この前、ボーッとしててごめんね」
「や、それは全然だし! もう風邪はいいの? 今日さっそく体育あるけど体動かすのとか大丈夫そ?」
 結愛ちゃんの言葉に、わたしはこくりと頷いた。
 そうだ、今日はさっそく運動会の練習がある。
 今日は別の競技練習みたいだから、ちょっとだけ安心する。
「あ、ねえ、結愛ちゃん……聞いてもいい?」
「なになに?」
「結愛ちゃんがくれたお手紙、すごく可愛かったけど……あれって、今流行ってたりするのかな……?」
 わたしは結愛ちゃんにこっそりと聞いてみる。
 なんとなく声をひそめてしまった。
 結愛ちゃんはアゴに手を当てて、「ん~」と可愛く悩んでいる。
「便箋とか大好きだからいっぱい集めてるけど、あれを買ったのは四年生の時かなあ~。毎日ランドセルには何種類か入れてるよ!」
「そうなんだ。ありがとう」
 そっか、あの便箋は去年買ったものなんだ。
 だったら、偶然同じものを買って同じ時期に使うなんてこと、なかなかないかもしれない……?
「え、何、ひなちゃんもああいう系のが好きなの? 意外!」
「あっ、うん……」
 結愛ちゃんは口に手を当てて、驚いた顔をしている。
 そうだ、結愛ちゃんだからあんなピンクで可愛らしい便箋が似合うけど、いつも男の子みたいな格好でいるわたしがそんなこと言うのはおかしかったかも……!
 でも、本当は大好きなんだ。
 可愛い色も、可愛いものも。
 なんと答えたらいいかわからずにいると、結愛ちゃんはその大きな目をキラキラとさせた。
「えっホント~に⁉︎ えっ嬉しいな。ちょっと待ってて、私のお気に入りのやつ他にもあるから見てほし~!」
 そう言うと、ビュンと走り去り、自分のランドセルをゴソゴソさせるとまたすぐに戻ってきた。
 その手には、あのピンクのものの他にも淡い花柄のものやかわいいネコ柄の便せんセットが握られている。
「見てみて、こっちがウチで飼ってるネコのきなこにそっくりのイラストで可愛くて~あとね、この花柄はピンクがいっぱいで大好きなんだあ~」
「結愛ちゃんのお家、ネコちゃんがいるんだね。このお花も可愛い!」
「えへへ~~! ……きなこ、今度見に来てもいいけど?」
「いいの⁉︎ ありがとう、うちはお母さんが動物アレルギーで近寄れなくて。見せてもらえるの嬉しいな」
「ふ、ふん、ひなちゃんならいつ来てもいいけどお⁉︎」
「ありがとう。えへへ」
 胸を張った結愛ちゃんが家に誘ってくれて、私は嬉しい気持ちでいっぱいだ。
 てっきり、わたしが可愛いものが好きだって言ったら、否定されるかと思ったのに。
 どうか結愛ちゃんではありませんように。
 わたしは祈るような気持ちで、楽しそうに話す結愛ちゃんを見つめた。
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