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第二章 ブラストのみんな
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「正解~~!!!! 君がひなちゃんかぁ! 話はかねがね聞いてる~。あっ自分の名前はカネガエだけどっ」
「あ、はい……」
「ちょっとカネち、寒いギャグでひなちゃん困らせるの止めてくんない?」
「厳しっ」
カネちさんは、動画のアカネくんと同じハイテンションな人だ。
紫音くんにすっぱりとツッコまれて、ケラケラと笑っている。
まさか、アカネくんと会えるなんて……!?
近くに誰かいるかも、とは思っていたけれど、まさか本当にこうして会えると思っていなかった。
しかもブラストのリーダー。
最初の頃の動画は、アカネくんとシオンくん二人でやっていて、そこから徐々にメンバーが増えて今の形になっている。
まさにブラストを作った人だ。
「あのっ、ブラストの動画いつも見てます……! ありがとうございます」
わたしは推しに最大限の尊い気持ちを伝えるためにまたお辞儀をした。
紫音くんが引き合わせてくれたのは、カネちさんがアカネくんだったからなのか。
「わっ……そうかそうか、ひなちゃんリスナーなん! こっちこそ、いつも見てくれてありがとうな~~」
優しい声がして、頭をぽふぽふと撫でられる。
紫音くんとカネちさんは中学生なだけあって、わたしより身長が高い。
そのことにちょっとだけ嬉しくなってしまう自分が、本当に嫌だ。
なにかにつけて身長のことばかり考えてしまって……。
「あっちょっとカネち。ひなちゃんに触らないでくれる?」
「あっごめん! 妹にする感覚だった」
紫音くんの発言で、カネちさんの手がパッと離れる。
なるほど、妹さんがいるんだなぁ。
「ひなちゃん。こんなやつなんだけど、一応うちのリーダーで。ブラストでは動画編集作業となんとイラストやってるんだよ」
「そうなんだ……!」
あのかわいいイラストを書いているのがこのカネちさん……!
わたしはカネちさんを盗み見る。
制服姿ではあるけれど、体格は紫音くんよりもよくて、筋肉質に感じる。
あのちびキャラを書いているのがアカネくんだったなんて、知らなかったことだ。
「だからたまにカネちがうちに来て打ち合わせとかやったりするんだよ。蒼太がいたら、その後は大体二人でずっとゲームしてるけどね」
紫音くんがそう教えてくれる。
「だってさ……紫音とやっても激弱だからつまんないんだもん」
「それを言うなよ」
「レースゲームやっても、俺がアイテム使うまでもなく勝手に沼に落ちるは崖からは落ちるは水たまりがあれば直進するし」
「それは……そうだけど」
「大体、敵に当てるためのボールを投げたあと、確実にそれが壁に当たって紫音に絶対戻ってきてクラッシュするのどうかしてる」
「俺も真面目にやってるんだけどな……?」
カネちさんの言葉に、紫音くんがシュンとしょげている。
耳が垂れた犬みたいで、なんだか愛らしい。
――確かに紫音くん、とっても弱かったかも。
ここに来た翌日、蒼太と三人でゲームをしたことを思い出す。
あまりゲームをやり慣れていないわたしでさえ、紫音くんにはあっさり勝ってしまったんだった。
完璧超人の紫音くんにも苦手なことがあるんだなぁ。
「蒼太ってもうすぐ帰ってくる?」
カネちさんの言葉に、紫音くんが頷く。
「うん。あと少しかな。きっと今日はダッシュで帰ってくるだろうし」
「あ~……理解」
二人がわたしの方を見る。
な、なんだろう。
わたしのお世話があるから、とか……?
「じゃあ俺は筋トレでもしとくか……ひなちゃんもどう?」
言うが早いか、カネちさんはその場で唐突にスクワットを始めた。
「わ、わたしですか?」
「うん。一緒に筋肉つけようぜ!」
「ひなちゃん、カネちの言うことは半分くらい無視していいからね」
「半分!!! そのちょっとの優しさ何!?」
「ふふ……っ」
カネちさんと紫音くんのやり取りが楽しくて、わたしは思わず笑ってしまう。
筋トレも好きみたいだ。さっきは腹筋もしていたし。
でもこれから蒼太くんが帰ってきて、打ち合わせまであるとしたら、わたしの存在はお邪魔じゃないだろうか。
紫音くんはきっと、カネちさんにわたしが事情を知ってしまったことを伝えようとしただけだろう。
もう用事は済んだだろうから、部屋にもどろうかな……?
「あっそうだ、今度紫音含めみんなでゲームやろうぜ! 紫音のレースゲーにおける神業をリスナーにも見てもらいたい」
部屋から出るタイミングをうかがっていたわたしの前で、カネちさんはそんな事を言う。
「普通にいやだけど」
「くくくっ、いつもはお兄さんキャラの紫音が爆裂にダメなところをみんなに見せたい! アイサバよりもレースゲーのほうが強烈だからな! そしてあわよくばファンを減らしてやる」
「なんだよそれ」
「よーし、今から練習しよう。ひなちゃんも付き合ってくれる? 一般目線で俺らを見てくれっ!」
「は、はい」
「嫌すぎる……」
「ゴーゴー!!!」
そうして明るく仕切るカネちさんに押し切られ、わたしと紫音くんは一緒にゲームをすることになった。
「あ、はい……」
「ちょっとカネち、寒いギャグでひなちゃん困らせるの止めてくんない?」
「厳しっ」
カネちさんは、動画のアカネくんと同じハイテンションな人だ。
紫音くんにすっぱりとツッコまれて、ケラケラと笑っている。
まさか、アカネくんと会えるなんて……!?
近くに誰かいるかも、とは思っていたけれど、まさか本当にこうして会えると思っていなかった。
しかもブラストのリーダー。
最初の頃の動画は、アカネくんとシオンくん二人でやっていて、そこから徐々にメンバーが増えて今の形になっている。
まさにブラストを作った人だ。
「あのっ、ブラストの動画いつも見てます……! ありがとうございます」
わたしは推しに最大限の尊い気持ちを伝えるためにまたお辞儀をした。
紫音くんが引き合わせてくれたのは、カネちさんがアカネくんだったからなのか。
「わっ……そうかそうか、ひなちゃんリスナーなん! こっちこそ、いつも見てくれてありがとうな~~」
優しい声がして、頭をぽふぽふと撫でられる。
紫音くんとカネちさんは中学生なだけあって、わたしより身長が高い。
そのことにちょっとだけ嬉しくなってしまう自分が、本当に嫌だ。
なにかにつけて身長のことばかり考えてしまって……。
「あっちょっとカネち。ひなちゃんに触らないでくれる?」
「あっごめん! 妹にする感覚だった」
紫音くんの発言で、カネちさんの手がパッと離れる。
なるほど、妹さんがいるんだなぁ。
「ひなちゃん。こんなやつなんだけど、一応うちのリーダーで。ブラストでは動画編集作業となんとイラストやってるんだよ」
「そうなんだ……!」
あのかわいいイラストを書いているのがこのカネちさん……!
わたしはカネちさんを盗み見る。
制服姿ではあるけれど、体格は紫音くんよりもよくて、筋肉質に感じる。
あのちびキャラを書いているのがアカネくんだったなんて、知らなかったことだ。
「だからたまにカネちがうちに来て打ち合わせとかやったりするんだよ。蒼太がいたら、その後は大体二人でずっとゲームしてるけどね」
紫音くんがそう教えてくれる。
「だってさ……紫音とやっても激弱だからつまんないんだもん」
「それを言うなよ」
「レースゲームやっても、俺がアイテム使うまでもなく勝手に沼に落ちるは崖からは落ちるは水たまりがあれば直進するし」
「それは……そうだけど」
「大体、敵に当てるためのボールを投げたあと、確実にそれが壁に当たって紫音に絶対戻ってきてクラッシュするのどうかしてる」
「俺も真面目にやってるんだけどな……?」
カネちさんの言葉に、紫音くんがシュンとしょげている。
耳が垂れた犬みたいで、なんだか愛らしい。
――確かに紫音くん、とっても弱かったかも。
ここに来た翌日、蒼太と三人でゲームをしたことを思い出す。
あまりゲームをやり慣れていないわたしでさえ、紫音くんにはあっさり勝ってしまったんだった。
完璧超人の紫音くんにも苦手なことがあるんだなぁ。
「蒼太ってもうすぐ帰ってくる?」
カネちさんの言葉に、紫音くんが頷く。
「うん。あと少しかな。きっと今日はダッシュで帰ってくるだろうし」
「あ~……理解」
二人がわたしの方を見る。
な、なんだろう。
わたしのお世話があるから、とか……?
「じゃあ俺は筋トレでもしとくか……ひなちゃんもどう?」
言うが早いか、カネちさんはその場で唐突にスクワットを始めた。
「わ、わたしですか?」
「うん。一緒に筋肉つけようぜ!」
「ひなちゃん、カネちの言うことは半分くらい無視していいからね」
「半分!!! そのちょっとの優しさ何!?」
「ふふ……っ」
カネちさんと紫音くんのやり取りが楽しくて、わたしは思わず笑ってしまう。
筋トレも好きみたいだ。さっきは腹筋もしていたし。
でもこれから蒼太くんが帰ってきて、打ち合わせまであるとしたら、わたしの存在はお邪魔じゃないだろうか。
紫音くんはきっと、カネちさんにわたしが事情を知ってしまったことを伝えようとしただけだろう。
もう用事は済んだだろうから、部屋にもどろうかな……?
「あっそうだ、今度紫音含めみんなでゲームやろうぜ! 紫音のレースゲーにおける神業をリスナーにも見てもらいたい」
部屋から出るタイミングをうかがっていたわたしの前で、カネちさんはそんな事を言う。
「普通にいやだけど」
「くくくっ、いつもはお兄さんキャラの紫音が爆裂にダメなところをみんなに見せたい! アイサバよりもレースゲーのほうが強烈だからな! そしてあわよくばファンを減らしてやる」
「なんだよそれ」
「よーし、今から練習しよう。ひなちゃんも付き合ってくれる? 一般目線で俺らを見てくれっ!」
「は、はい」
「嫌すぎる……」
「ゴーゴー!!!」
そうして明るく仕切るカネちさんに押し切られ、わたしと紫音くんは一緒にゲームをすることになった。
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