突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第一章 お隣さんと同居生活

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 それから、予定通りにお昼はピザパーティーをした。
 午前中のうちにみんなで近くのスーパーににアイスやお菓子を買いに行って、なんだかとってもワクワクする!


「わ、わわわ……!」

 そして今は、蒼太くんと紫音くんと三人でテレビゲームをしている。

「ちょ、ひなちゃん、それ絶対俺に当てないでね~」
 
 蒼太くんのうちにはたくさんゲームカードがあって、わたしは驚いてしまった。

 蒼太くんがゲームを好きなのは知っていたけど、こんなに……!
 今やっているゲームは、数ある中からわたしがやったことがあるものをということで蒼太くんが選んでくれたレースゲームだ。

 それぞれキャラクターとマシンを選んで、みんなで競争する。
 コースの途中にある虹色のボックスに触れたらアイテムを手に入れることができるのだ。


「え、えっと、どれを押したらいいの? ボタンがよくわからなくてっ」

「わ~~~~!」

 無我夢中でコントローラーのボタンを押すと、発射されたボールが見事に紫音くんが操作するキャラクターにぶつかってしまった。

 くるくるとスピンしてしまった葉っぱのようなキャラクターの横を、他のキャラたちもビュンビュンと追い抜いてゆく。

 そしてわたしが操作するお姫様のキャラクターは、そのままゴールのゲートをくぐった。

「ご、ごめんね、紫音くん」

「ううん……いいんだよ、ひなちゃん」

「兄ちゃんはこのゲームだけ異常に弱いからな」

 あきれた顔をしている蒼太くんは随分早くにゴールをしてしまっていて、もちろん一位だ。
 もう最初から独走ですごかった。

「蒼太くん、相変わらずゲームが上手なんだね」

 変わらないことがうれしくて、わたしは蒼太くんにそう言った。

 紫音くんが考えてくれたこのパーティーのおかげで、ふたりとも少しだけ打ち解けられた気がする。
 少なくとも、昨日この家に来る前に感じていた緊張がすっかりほどけている。


「……ありがとう。市山も結構すげーじゃん」

「え、でもわたしなんて五位だし」

「兄ちゃんなんて七位より上になったことないんだからな」

「ええっ! それは……本当に?」

 ついつい疑いの目を紫音くんにむけてしまう。
 勉強もスポーツもなんでもできるイメージがあるのに、とても意外だ。

「謎解きゲームなら自信あるんだけどな……」

「まあ、言っても兄ちゃんはパーティゲームとかも反応鈍いけどな」

「わ! 蒼太、それ言うなよ~」

 紫音くんが蒼太くんにそう言ってすがりつくような仕草を見せる。
 それに対して蒼太くんはどこか冷ややかで……

――あれ?
 なんだかこの光景を目にしたことがあるような。
 いや、聞いたことがあるような。

 蒼太くんと紫音くんのやりとりを見ていたら不思議な気持ちになった。

 ああでも、二人のやりとりを懐かしく思うのは当たり前かも。だって幼なじみだもの。

「市山。次は何やる?」

「あっ、えっと!」

 考え事をしていたわたしは、急に話しかけられてワタワタとしてしまった。

 ゲームが好きだからか、蒼太くんの声はいつもよりもずっと楽しそうにしている。

「よし、ひなちゃん。次はチーム戦で、蒼太をボコボコにしてやろう!」

 紫音くんがいつもの笑顔でそう言う。

「……ふーん、受けて立つ」

「えっ、ええっ」

「よーし! じゃあこの風船バトルにしよう。俺たちは赤にするから、蒼太は青チームな」

「わかった」

 紫音くんと蒼太くんの勢いに乗り、二回戦はカートに取り付けられた風船をより多く割ったチームが勝ちになる……というモードで遊ぶことになった。

 その結果。

「なんで⁉︎ 蒼太ほんとに強すぎだろ」

「蒼太くん、すごいね……!」


 ひとりでとんでもない数の風船を破壊した蒼太くんは、見事にぶっちぎりで勝利した。

 そんな蒼太くんに風船を壊されてばかりだったらしい紫音くんは悔しそうにしている。

 わたしも他のキャラクターの風船を偶然壊すことができたけど、蒼太くんは本当にすごい。


「なあなあ、蒼太。今度このゲームみんなでやってみない? 新しいゲームじゃないけど、逆に新鮮でおもしろそう」

「別にいいけど……四人プレイで?」

「蒼太と俺と……あとはカネちとモモがいればいいんじゃない?」

「わかった」

 紫音くんと蒼太くんが何かの話をしている。
 お友達ともこのゲームをやるのかな?

 確かに、みんなでやると盛り上がって楽しいだろうな。わたしでもできるくらいだもの。


 常に冷静でどんどん点数を稼いでいく蒼太くんと、風船が一個壊れる度に「うわあああ」「やられた」「ひどすぎー!」と大騒ぎしながら実況する紫音くんの対比がおもしろくて。


 わたしもプレイ中についクスクスと笑ってしまったんだ。

「はー。さんざん騒いだらすごく喉渇いたな……」


 立ち上がった紫音くんが飲み物を取ろうとすると、あいにく全員のグラスが空だった。

 よいしょ、と立ち上がった紫音くんは冷蔵庫の方へと向かう。

「ひなちゃんは何飲む~? 蒼太は牛乳でいいよな」
「あっ、わたしが自分で……」

「いいよいいよ。うわ、母さん牛乳めちゃくちゃ買ってる……ちょ、もう全員牛乳でいくねー」


 考えるのが面倒になったのか、紫音くんは一度洗った全員のグラスにコポコポと牛乳を注いだ。
喧嘩
 う……牛乳……!

 魅惑の真っ白の飲み物が目の前に置かれる。
 蒼太くんはさっとそれを取って、またしてもあっという間に飲み干した。
 本当は大好きな牛乳。
 よく冷えていてとっても美味しそうだ。


「はーーーー! 牛乳うまい」

 紫音くんが本当に美味しそうな声を出すものだから、わたしは誘惑に負けてグラスを手に取った。
 そして、ひと口飲む。

 美味しい。甘くて冷たくて、柔らかい味。
 もうひと口、もうひと口……とやっている内に、わたしのグラスもすっかり空っぽになってしまっていた。


 うっ……本当は大好きだったから、我慢できなかった……


「いい飲みっぷり! 蒼太もひなちゃんもおかわりいる?」

「いる」

「わたしは大丈夫、です」

 即答した蒼太くんは、また牛乳を一瞬で飲み干すと、口元を拭いながらわたしの方を見た。
 なんだろう?
 何か言われるのかなとドキドキしていたら、しばらく無言だった蒼太くんはゲームカードを取り出した。
めん
「……市山。ほかにやりたいやつある?」

「えっ、ええっと……知ってるやつあるかなあ」

「前これもやってなかったっけ?」

「あ! 覚えてる。ふふ、わたし下手くそだったから、蒼太くんが手伝ってくれてたねえ」

 このゲームは二人で敵を倒しながら進むアクションゲームなんだけど、わたしが何度も失敗してしまったのを蒼太くんに助けてもらったんだった。


 幼稚園時代の楽しい思い出だ。

 まだわたしが、他の子よりちょっと大きいことなんかまるで気にしていなかった頃だよねえ。

 あの頃は良かったな……
 なんだかちょっと切ない気持ちになりながら、その日は三人でずっと楽しくゲームをした。
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