お見合い結婚しました―しばらくはセックスレスという約束で!

登夢

文字の大きさ
上 下
25 / 30

25.ゆっくり夜を過ごした! ようやくセックスレスが解消した!

しおりを挟む
(12月第1日曜日)
理奈は二日酔いもなかった。まあ、グラス1杯のワインで二日酔いはないだろうと思っていた。今日は二人のんびり公園を散歩してから、家で過ごした。今が一番いい時だ、そう思えた。

「今日の夕食は早めに作ります」といって理奈が料理を始めた。6時には二人でテーブルに着いていた。

夕食はオムライスだった。大井町のレストランで食べたオムライスが美味しかったので、工夫してみたと言っていた。理奈の味つけはいい。休日はビールを飲まないことにしている。

理奈が後片付けをしている間に僕がコーヒーを入れる準備をする。お湯を沸かして豆を二人分ミルで挽く。

テレビを見ながら待っていると理奈がソファーに来て僕のそばに座ったので、コーヒーを入れ始める。理奈は黙ってそれを見ている。

「確かに茶道に通じるところがありますね」

2杯分できると1杯を理奈の前に置く。理奈はゆっくり一口飲んでみている。

「おいしい!」

「よかった。今のこの時間が好きだ。いつも今が一番いい時に思える」

「このまえもそう言っていましたね。これまでもそうだったのですか?」

「もちろん。理奈さんが僕の入れたコーヒーを喜んで飲んでくれていた。そしておいしいといってくれた」

「そんなことで一番いい時に思えるんですか?」

「それ以上に何がある?」

「私を抱き締めるとかは、したくなかったのですか?」

「それはあとの楽しみにしておけばいい。その時はそれでベストだった。欲張らないで現状で満足する。そうすると今が一番と思えてくる。いつでもすべてが自分の都合のよいことばかりではないだろう。いつでも良いことと面白くないことがモザイクになっている。そうは思ないか?」

「確かにそうです。すべてうまくいっている時なんかないですよね。そしていつも移り変わっている。うまくいっていなかったことがうまくいき、順調だったことが不調になる。いつも入れ替わっています」

「それでも、きっと今が一番なんだ。そして今日の今は今しかない。昨日の今は昨日しかなかった」

「確かに今日の今は今しかないですね」

「それに、幸せなんて心の持ちようだ。幸せと思うと幸せなんだ。不満があって不幸だと思えば不幸なんだ。人間なんて欲望のかたまりで、ひとつ不満が解消するとまた別の不満が生まれてくる。人間の欲望には限りがない」

「私はずっと不幸だと思っていました。いつも何か不満があったのかもしれません」

「はたから見ると随分幸せそうに見えるけどね」

「そんなものなんですね」

「今は?」

「亮さんが私の不満を取り除いてくれました」

「それで幸せを感じている? 新たな不満が生まれていない?」

「不満じゃないですけど、してほしいことができてきました」

「ええ、何?」

「へへ・・・今晩も可愛がってほしいです」

「もちろん」

理奈が抱きついて来るので抱きしめてやる。

「今夜は私の部屋で寝てください」

「お布団を持っていく?」

「私のお布団で一緒に寝てください」

「そうしよう」

今日は理奈が先にお風呂に入った。僕はお風呂から上がって、理奈の部屋のドアをノックする。どうぞの声がしたので中へ入る。

理奈の部屋に入るのはこれで3回目ぐらいか? 昨晩に続いてだが、昨日は寝かしつけてすぐに出てきた。その前は理奈が熱を出したときのドサクサで入って一晩を過ごした。

明かりが落とされている。理奈の匂いがする。いい匂いだ。この匂いが好きだ。僕をほっとさせたり、時に刺激して興奮させる匂いだ。

理奈は布団の上にネグリジェ姿で正座していた。パジャマより色っぽい。僕を見上げると頭を下げて言った。

「不束者ですがよろしくお願いします」

「どうしたの、改まって、新妻の初夜の挨拶みたいだね」

「入籍して初めてですから、言ってみたくなっただけです」

「こちらこそよろしくお願いします」

でもそういわれるとなんかムラムラしてくる。すぐに理奈を抱き寄せる。理奈はもう自然に抱きついて来る。

僕はゆっくり理奈を愛し始める。理奈は下着をつけていなかった。脱がされるのが恥ずかしいと思ったのだろうか? 可愛い奴だ。

やはり理奈は痛がった。右手を掴んでいると、手を握ってそれを伝えて来る。今日はほどほどで身体を離した。でも理奈は僕に抱きついたままだ。

後ろを向かせて後ろから抱き締めてやる。どうも布団の中で面と向かうと照れくさいし話し辛い。しかも身体を密着できない。

「辛そうなので、やはり最後までできなかった」

「ごめんなさい。我慢したのに」

「初めてだと普通にできるようになるまで1週間くらいはかかると同期の友達が言っていた」

「そんなこと聞いたのですか?」

「いや、自慢げに話していたから」

「その意味が僕にも分かった。可愛くて愛しくて、可哀そうでとても無理になんてできなかったんだと」

「私は初めてではありません」

「初めてと同じだ。その証拠に未だにうまくできていない。それに」

「それに?」

「シーツに出血の跡があった」

「そうなんですか?」

「想像するに、理奈が話してくれたその時のことだけど、女の子が嫌がっている時に力ずくでしようとしてもできるものじゃないと思う。せいぜい入口までで、彼は興奮してもらしてしまったのだと思う」

「そういわれればそうかもしれません。あの時と痛みが違います」

「だから、理奈さんはバージンだった。直感的に分かる。間違いない」

「嬉しいような、恥ずかしいような複雑な気持ちです」

「僕は嬉しい。自分が初めての男だと思うとそれは嬉しい」

「でも1週間もかかるのですか?」

「分からないけど、同期はそれくらいかかったそうだ」

「我慢して頑張ります」

「頑張らなくてもいい、我慢もしなくていい、自然でいいから。僕は気が長いほうだから、1か月かかっても良いと思っている。ここまで来るのにさえ随分時間がかったから」

「分かりました」

「少しずつできるようになればいい。その方が長く楽しめる」

「楽しむんですか?」

「少しずつ絆が強くなっていくのを楽しみたい。こんな素敵で楽しいことはほかにないと思わないか?」

「ちょっと苦痛です」

「そのうち絶対に良くなるから。でも同期が注意するように言っていた」

「なんて?」

「良さを覚えさせると後が大変だと」

「どういう意味ですか?」

「言ったとおりだけど」

「そうなればいいんですけど」

「楽しみにしていればいいよ」

僕は理奈を後ろから強く抱きしめる。理奈が腕を掴んでいる。

「目覚ましをかけるのを忘れていました」

枕元の目覚ましをセットしてまたもとのように背を向けた。いつものように後ろから抱き締める。

「こうして抱いてもらうとぐっすり眠れます。おやすみなさい」

「おやすみ」

やれやれ今日も一日終わった。今日と言う日は今日しかない。やっぱり今日も一番いい日だった。長くて短い週末が終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

春の雨に濡れて―オッサンが訳あり家出JKを嫁にするお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。なお、本作品はヒロイン目線の裏ストーリー「春の雨はあたたかい」のオリジナルストーリーです。 春の雨の日の夜、主人公(圭)は、駅前にいた家出JK(美香)に頼まれて家に連れて帰る。家出の訳を聞いた圭は、自分と同じに境遇に同情して同居することを認める。同居を始めるに当たり、美香は家事を引き受けることを承諾する一方、同居の代償に身体を差し出すが、圭はかたくなに受け入れず、18歳になったら考えると答える。3か月間の同居生活で気心が通い合って、圭は18歳になった美香にプロポーズする。

ヤクザのせいで結婚できない!

山吹
恋愛
【毎週月・木更新】 「俺ァ、あと三か月の命らしい。だから志麻――お前ェ、三か月以内に嫁に行け」 雲竜志麻は極道・雲竜組の組長を祖父に持つ女子高生。 家柄のせいで彼氏も友達もろくにいない人生を送っていた。 ある日、祖父・雲竜銀蔵が倒れる。 「死ぬ前に花嫁姿が見たい」という祖父の願いをかなえるため、見合いをすることになった志麻だが 「ヤクザの家の娘」との見合い相手は、一癖も二癖もある相手ばかりで…… はたして雲竜志麻は、三か月以内に運命に相手に巡り合えるのか!?

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

1/365

Ririsu◡̈*♡.°⑅
恋愛
恋愛未経験の高校2年生の笹塚明里は、お小遣いアップの為に父親の手伝いをすることに。 そのお手伝いとは、父親が経営する芸能事務所のタレントたちのマンションに同居し、家事をすることで…。そこで個性的な5人との同居生活が始まっていく。 ※イラストはいつも依頼している、しぃの様の素敵なイラストです。

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

地味子ちゃんと恋がしたい―そんなに可愛いなんて気付かなかった!

登夢
恋愛
愛人と月1回の逢瀬で癒しあう怠惰な関係を続けていた主人公は、彼を慕う10年後輩の地味子の良き相談相手だった。愛人から突然別れを告げられた主人公は、自暴自虐になり身体を壊して入院してしまうが、見舞いに来て優しく癒してくれた地味子の良さに気付いて、交際を申し込むことになる。これは愛人と二組のカップルが絡み合う大人のラブストーリーです。

お見合い相手は大嫌いな同級生だった!

桜川椿
恋愛
「雪乃、明後日の日曜日にお見合い決定やから!」と突然母に言われ 付き合っている相手もいなく 三十路手前の私、羽山雪乃27歳には断る理由もすべもなく仕方なくお見合いを受けるはめになった・・・。 そしてお見合いの席で私は中学の時の同級生、横山丈一郎と再会した・・・。 「雪乃久しぶりやなぁ」と大嫌いな奴が爽やかな笑顔で私に微笑み立っていた・・・。 お見合いの相手が、まさかの同級生・・・その頃の奴の一言のせいで私はトラウマになったんや!!! 誰がアンタなんかと結婚するか!! 絶対に断ったるからな!! カクヨム、エブリスタにも投稿しています! 表紙はPicrewの「現代和装女子」で作りました☺https://picrew.me/share?cd=uu2X4Fht5t #Picrew

処理中です...