地味子ちゃんと恋がしたい―そんなに可愛いなんて気付かなかった!

登夢

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4.凜の店にもう一度行ってみた!

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凜と偶然に再会して一夜を過ごしてから3週間以上経っている。今日は週末の金曜日だ。あの時に「気が向いたらまた寄ってください」と言われていたが、まだ本心か、確信が持てなかった。でも別れ際にお礼を渡した時の悲しそうな表情も気になっていた。

また彼女を抱きたくなった。電話をして感触を確かめてみようという気になっていた。6時開店と聞いていたので、少し前に電話をかけてみよう。まだ店にはお客は来ていないだろう。

「スナック、凜です」

「磯村です。今日、店へ行ってもいいですか?」

「いいですよ、是非いらしてください」

「何時ごろに行けば良い?」

「何時でもいいですが、遅いほどいいです。店を閉めるまで待ってもらわないといけないから」

「それなら、11時過ぎに寄らせてもらいます」

「待っています」

彼女に都合の良い時間を率直に聞いた。これで僕の気持ちは分かると思った。凜はすぐに僕の気持ちを察してくれた。本当に来てほしいと確信できた。あの答え方をしてくれたら、店へ行っても余計なことを考えなくて待っていられる。

金曜日の夜はスナックのお客が多い。グループでのお客も多い。僕たちも金曜日に飲み会をすることがほとんどだ。大概2次会は9時ごろから11時ごろまでのことが多い。

店の前で凜が4~5名のグループを送り出して挨拶をしている。近づくと僕に気が付いてくれた。目が合ったので挨拶を交わす。

「いらっしゃい、また来ていただいてありがとうございます」

「混んでいるの?」

「今のグループが帰られたので二人ぐらいです」

「じゃあ、一杯飲ませてもらいます」

止まり木で二人連れが話している。凜はすぐに水割りを作ってくれた。僕はそれをゆっくり飲んでいる。

初めてここへ来た時に凜はなぜ僕を受け入れてくれたのだろう。彼女たちは個人的な付き合いは避けてきたはずだ。客商売をしていても安易にお客さんと特別な関係にはならないはずだ。

ひとりで寂しかったのかもしれない。それに僕は彼女を追って3軒目まで通っていたし、お互いに気心は知れている。当然、二人の関係も秘密にしておいてくれる。だから安心してHができる都合の良い相手と思ったのかもしれない。

それで凜の方から進んで一夜を共にしてくれたように思う。それに僕が帰り際にお金を渡そうとしたときには悲しそうな表情が見えた。本当に好意だけで一夜を過ごしてくれたのだと思った。

でも彼女はあえて拒否しないでお礼を受け取ってくれた。そのあとよく考えてみたけど、それでよかったと思うようになった。

セフレといってよいのか、いや愛人関係といった方がよいのかもしれない。こういう関係だと、お互いに自由でいられるし、割り切ってHができる。それでお互いが癒されればこの方が良いのかもしれない。

これじゃあ昔と同じだけれど、今の僕には望むときにHをしてくれる特定の女性がいる安心感はある。彼女にも同じようなことが言えるのかもしれない。

ただ、お礼を払うことを考えると月1くらいしか来られない。できれば月2くらいは来たいところだ。

「ママ、静かになったのは良いけど、俺たちもそろそろ帰るよ」

「せっかく静かになったのにゆっくりしていってください」

「もう、終電が近いから」

二人は会計を済ませて帰って行った。凜はすぐに看板の明かりを消して、ドアをロックする。

「お待たせしました。また来ていただいて嬉しいです。もう来てくれるころかなとは思っていました」

「長年の付き合いだから分かるんだ」

「大体分かります。部屋に上がりましょう」

部屋に上がるとすぐに凜を抱き締める。

「凜、また君に会えて嬉しい」

「私もです。シャワーを浴びて下さい」

僕がバスルームに入るとすぐに入って来て身体を洗ってくれる。僕も凜を洗ってあげる。凜が髪を洗っている。バスタブに浸かっている僕は後ろから悪戯をする。

「止めて下さい」

「ごめん、つい手が出た」

「先に上がっていて下さい。すぐに上がりますから」

バスルームから出てベッドに座って待っている。凜がようやく出てきた。バスタオルで髪を拭きながらベッドへ歩いてくる。僕は待ちかねたといわんばかりに凜を抱き締めて押し倒す。それから愛し合う。

1回目は僕が積極的だが、2回目は凜が積極的になっている。二人とも心地よい疲労の中で眠りにつく。

僕は泊っていけて嬉しい。あのころはけだるい中で必ず帰らなければならなかった。今は違う。凜の柔らかい身体を抱いて眠れる。言いようのない満足感がある。

明け方、僕は眠っている凜を揺り起こす。凜は僕に応えてまた愛し合ってくれる。しばらくは会えないから思いを込めて愛し合う。そしてまた二人は眠りに落ちる。

目が覚めたら10時少し前になっていた。物音で目が覚めた。凜はもう起きていてベッドにいなかった。朝食の準備を始めた音だった。

「シャワーを浴びて下さい。朝食の準備がすぐにできます」

「ありがとう、よく眠れた?」

「お陰さまで疲れてぐっすり眠れました」

「僕もだ、ありがとう」

それから二人で朝食を食べる。僕はここへきた時の服装に戻っている。トーストとホットミルクとチーズとサラダの朝食を平らげると、帰り支度をしてこの前のようにお礼を凜に手渡す。

「ありがとう、気持ちだけだけど」

「ありがとう、また来て下さい」

「ああ、また来るから」

僕は階段を下りていく。凜が後からついて来て店の前で見送ってくれる。大通りに出る曲がり角で振り向くと手を振ってくれた。来てよかった。凜も喜んでくれたみたいだ。満ち足りた気持ちで駅まで歩いた。次に来るのが楽しみになる。
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