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32.後ろから抱いて寝て下さい!―再開はしたけれど
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もうそろそろかなと思っていたら「生理終わった」と嬉しそうに部屋に入ってきて、布団に潜り込んできた。久恵ちゃんのいい匂いは久しぶりだ。
「久恵ちゃんは生理の時には、布団に入ってこなかったけどどうして? 少し寂しかったけど」
「ごめんね。生理の匂いが気になるから」
「そうじゃないかと思っていた。生理の匂い、分かるよ。昔、一緒に研究していた女性のにおいで気が付いた」
「あまりいい匂いではないと思うけど、どう?」
「男にとっては良いにおいではないと思う。いつもの久恵ちゃんの匂いとは全然違う。やっぱり、嗅ぎたくないにおいかな」
「自分でもそう思うから、生理の時は遠慮していたの」
「生理中は、妊娠しないけど、やはり、血とかにおいでする気がしないし、できないかな。妊娠しない時には、接触を避けるための自然の摂理なのかもしれないね」
「狭い部屋の方が落ち着くね」
そう言って、身体を寄せてくるので抱き締めるともう我慢ができないし、我慢する必要もない。すぐに愛し合う。
久恵ちゃんの「痛い痛い」が始まったので頃合いを見計らって、また「おしまい」ということにした。可哀そうで続ける気にならないし、無理はしない。
「ごめんなさい」と謝る久恵ちゃんの耳元でそっと囁いてやる。
「昔、同期の友人が得意げに結婚した時のことを話していたけど、初めてなので痛がって、まともにできるようになるまで1週間かかったと言っていたよ」
「ええ、1週間もかかるの? でもまた明日頑張る。初めての夜にしてくれたように、後ろから抱いて寝て下さい」
「ああ、そうしてあげる」
「あの最初の夜に、後ろから抱いて寝てくれたけど、温かくて、包まれているようで、安心して眠れたから」
「お互いに前向きに抱き合って寝ようとすると、身体を真っ直ぐにしないと、密着できない」
「確かにそうね」
「どうしても前向きにしようとすると久恵ちゃんが足を曲げて丸くならないと抱え込んで抱き締められないだろう」
「それでも、しっかり抱かれているという感じがしないと思う。それに前向きだと、顔も近づくので、眠りにくいかもしれない」
「その時は顔を胸にうずめるしかないと思うけどね」
「ちょっと息苦しいかも」
「人間は母胎の中で丸まって育ってきたから、眠る時は大体、丸まって眠る。後ろから抱いて眠ると、自然な形で二人が密着できる。抱いている方は、身体全体で包み込めるので、しっかりと密着して抱くことができるし、身体の中、腕の中にあるという満足感がある」
「だから抱かれている方は包まれて守られているようで安心して眠られるのね。でも後ろ髪が顔に当たらない?」
「髪の匂いもいいけどね。それに冬は湯たんぽみたいに温かいと思う」
「やっぱり、後ろから抱いて寝てもらうのが一番いい」
「でも、これにも欠点がある」
「なに?」
「寝顔を見られない」
「私、時々よだれを垂らして寝ているみたいで、そんな寝顔みられたくない」
「久恵ちゃんの寝顔はとても可愛い。新幹線で僕の肩にもたれて眠っていたとき、それをずっと見ていた。この腕の中に抱き締めて寝てそれをみてみたい。そんな衝動に駆られた」
「それなら遠慮なく見て下さい」
「そのうち見せてもらう。楽しみにしている。おやすみ」
「おやすみなさい」
それはすぐに実現した。夜中に久恵ちゃんが寝返りを打ったので目が覚めた。僕の方に向きを変えていた。薄明りの中で寝顔が見えた。あのときの安らかな寝顔だった。今僕の腕の中で安らかに眠っている。いつまでもじっと見ていた。
「おはよう」
久恵ちゃんに起こされた。あの時と同じだった。
「久恵ちゃんは生理の時には、布団に入ってこなかったけどどうして? 少し寂しかったけど」
「ごめんね。生理の匂いが気になるから」
「そうじゃないかと思っていた。生理の匂い、分かるよ。昔、一緒に研究していた女性のにおいで気が付いた」
「あまりいい匂いではないと思うけど、どう?」
「男にとっては良いにおいではないと思う。いつもの久恵ちゃんの匂いとは全然違う。やっぱり、嗅ぎたくないにおいかな」
「自分でもそう思うから、生理の時は遠慮していたの」
「生理中は、妊娠しないけど、やはり、血とかにおいでする気がしないし、できないかな。妊娠しない時には、接触を避けるための自然の摂理なのかもしれないね」
「狭い部屋の方が落ち着くね」
そう言って、身体を寄せてくるので抱き締めるともう我慢ができないし、我慢する必要もない。すぐに愛し合う。
久恵ちゃんの「痛い痛い」が始まったので頃合いを見計らって、また「おしまい」ということにした。可哀そうで続ける気にならないし、無理はしない。
「ごめんなさい」と謝る久恵ちゃんの耳元でそっと囁いてやる。
「昔、同期の友人が得意げに結婚した時のことを話していたけど、初めてなので痛がって、まともにできるようになるまで1週間かかったと言っていたよ」
「ええ、1週間もかかるの? でもまた明日頑張る。初めての夜にしてくれたように、後ろから抱いて寝て下さい」
「ああ、そうしてあげる」
「あの最初の夜に、後ろから抱いて寝てくれたけど、温かくて、包まれているようで、安心して眠れたから」
「お互いに前向きに抱き合って寝ようとすると、身体を真っ直ぐにしないと、密着できない」
「確かにそうね」
「どうしても前向きにしようとすると久恵ちゃんが足を曲げて丸くならないと抱え込んで抱き締められないだろう」
「それでも、しっかり抱かれているという感じがしないと思う。それに前向きだと、顔も近づくので、眠りにくいかもしれない」
「その時は顔を胸にうずめるしかないと思うけどね」
「ちょっと息苦しいかも」
「人間は母胎の中で丸まって育ってきたから、眠る時は大体、丸まって眠る。後ろから抱いて眠ると、自然な形で二人が密着できる。抱いている方は、身体全体で包み込めるので、しっかりと密着して抱くことができるし、身体の中、腕の中にあるという満足感がある」
「だから抱かれている方は包まれて守られているようで安心して眠られるのね。でも後ろ髪が顔に当たらない?」
「髪の匂いもいいけどね。それに冬は湯たんぽみたいに温かいと思う」
「やっぱり、後ろから抱いて寝てもらうのが一番いい」
「でも、これにも欠点がある」
「なに?」
「寝顔を見られない」
「私、時々よだれを垂らして寝ているみたいで、そんな寝顔みられたくない」
「久恵ちゃんの寝顔はとても可愛い。新幹線で僕の肩にもたれて眠っていたとき、それをずっと見ていた。この腕の中に抱き締めて寝てそれをみてみたい。そんな衝動に駆られた」
「それなら遠慮なく見て下さい」
「そのうち見せてもらう。楽しみにしている。おやすみ」
「おやすみなさい」
それはすぐに実現した。夜中に久恵ちゃんが寝返りを打ったので目が覚めた。僕の方に向きを変えていた。薄明りの中で寝顔が見えた。あのときの安らかな寝顔だった。今僕の腕の中で安らかに眠っている。いつまでもじっと見ていた。
「おはよう」
久恵ちゃんに起こされた。あの時と同じだった。
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