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28.ガス異臭事件―何のにおい?
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久恵ちゃんはこのごろ仕事にもなれて心のゆとりができてきたのか、時々非番の休日に友人と食べ歩きをするようになった。色々食べ歩くこともコックには必要なことだと言われているようだ。
一緒に食べ回っているのは専門学校の同期の女友達で、あのベッドを一緒に買いに行ってくれた娘だという。職場は違うが気が合って今は時々食べ歩きを一緒にしているという。
でも二人はいわゆるB級グルメで高級レストランを回っているわけではない。まあ、そんな贅沢はできないし、腕を磨くためと言っても限度がある。
時々美味しかったからと、お土産に買ってきてくれる。確かに美味しいけど、ガーリックが効いて、癖になりそうな料理が多い。これは友達の趣味のようだ。
久恵ちゃんがB級グルメの食べ歩きをした後はトイレで異臭がすることがある。ここへ来た時は、そのにおいには人一倍神経質になっていたが、このごろは僕との生活にもすっかり慣れたので、それほど気を使わないようになっている。過度の遠慮がなくなったのは良いことかもしれない。
昨日は早番だったので、友達とB級グルメの探索をしたみたいだ。僕はにおいに敏感だから、なんとなく分かる。今日の土曜日、久恵ちゃんは非番で休日だ。二人の休日が重なる日は貴重だ。
久恵ちゃんはベランダへ出てガラス戸を拭いて、それからベランダを履き掃除してくれている。僕はソファーに寝転んでそれを見ている。戸口から心地よい風が時折入ってくる。
異臭がする。どこかで何かのガスが漏れているような異臭だ。どうも外から入ってきているようだった。ここはオール電化でガスなんか使っていない。すぐベランダにいる久恵ちゃんに声をかける。
「なんか異臭がする。外から風に乗って入ってきているみたいだから、中に入った方がいいよ」
「ベランダでは臭わないけど、どんなにおい?」
久恵ちゃんが中へ入ってきて鼻をクンクンする。
「何も臭わないけど」
そういうとまたベランダへ出た。しばらくするとまた異臭がした。久恵ちゃんに注意を喚起する。
「やっぱり異臭がする。とりあえず中に入っていた方がいい」
また、中に入ってくんくんする。今度は臭いが分かったみたいだった。「へへ」と薄ら笑いを浮かべて「大丈夫だと思う」と言った。
「どんな臭いか分かった? すごい臭いだろう。命の危険を感じない?」
「命の危険? これくらいの臭い大丈夫じゃない。それも微量だし」
久恵ちゃんの顔を見ると目が笑っている。じっとそれを伺う。
「へへ、ごめんなさい。我慢できなくて、ベランダだから大丈夫だと思った」
「ええ、勘弁してよ、風上でするのは」
久恵ちゃんの顔が見る見る赤くなった。
「昨日、お友達とガーリックが効いた美味しい料理を食べたの。それで今朝、お布団の中で漏らしたら、この臭いがした。ごめんなさい」
「確信犯だ!」
「これからは気を付けます」
それから久恵ちゃんのB級グルメめぐりは控えめになった。僕は嫌われるといけないから絶対に久恵ちゃんの前ではしない。これはまだ遠慮があるということかもしれない。
でも久恵ちゃんは分からないだろうと思って漏らした。僕に対する過度な気配りや遠慮がなくなり、気を許していると理解しよう。
でもお互い目の前でするようになれば夫婦も本物だという話を聞いたことがある。久恵ちゃんと、こきっこをするなんて、想像するだけでも興ざめだ。
久恵ちゃんには僕の前では絶対にしてほしくない。でも思わずもらしてしまったらそれはそれで可愛いかもしれない。ただし、無臭で音だけでお願いします。ムシューダ!
でも、そうだったのならば胸いっぱいに吸い込んでおいてもよかったかもしない。いやいやあの臭いはやはりやめておいて良かった。もっと嗅ぎたい良い匂いがいっぱいある。
一緒に食べ回っているのは専門学校の同期の女友達で、あのベッドを一緒に買いに行ってくれた娘だという。職場は違うが気が合って今は時々食べ歩きを一緒にしているという。
でも二人はいわゆるB級グルメで高級レストランを回っているわけではない。まあ、そんな贅沢はできないし、腕を磨くためと言っても限度がある。
時々美味しかったからと、お土産に買ってきてくれる。確かに美味しいけど、ガーリックが効いて、癖になりそうな料理が多い。これは友達の趣味のようだ。
久恵ちゃんがB級グルメの食べ歩きをした後はトイレで異臭がすることがある。ここへ来た時は、そのにおいには人一倍神経質になっていたが、このごろは僕との生活にもすっかり慣れたので、それほど気を使わないようになっている。過度の遠慮がなくなったのは良いことかもしれない。
昨日は早番だったので、友達とB級グルメの探索をしたみたいだ。僕はにおいに敏感だから、なんとなく分かる。今日の土曜日、久恵ちゃんは非番で休日だ。二人の休日が重なる日は貴重だ。
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異臭がする。どこかで何かのガスが漏れているような異臭だ。どうも外から入ってきているようだった。ここはオール電化でガスなんか使っていない。すぐベランダにいる久恵ちゃんに声をかける。
「なんか異臭がする。外から風に乗って入ってきているみたいだから、中に入った方がいいよ」
「ベランダでは臭わないけど、どんなにおい?」
久恵ちゃんが中へ入ってきて鼻をクンクンする。
「何も臭わないけど」
そういうとまたベランダへ出た。しばらくするとまた異臭がした。久恵ちゃんに注意を喚起する。
「やっぱり異臭がする。とりあえず中に入っていた方がいい」
また、中に入ってくんくんする。今度は臭いが分かったみたいだった。「へへ」と薄ら笑いを浮かべて「大丈夫だと思う」と言った。
「どんな臭いか分かった? すごい臭いだろう。命の危険を感じない?」
「命の危険? これくらいの臭い大丈夫じゃない。それも微量だし」
久恵ちゃんの顔を見ると目が笑っている。じっとそれを伺う。
「へへ、ごめんなさい。我慢できなくて、ベランダだから大丈夫だと思った」
「ええ、勘弁してよ、風上でするのは」
久恵ちゃんの顔が見る見る赤くなった。
「昨日、お友達とガーリックが効いた美味しい料理を食べたの。それで今朝、お布団の中で漏らしたら、この臭いがした。ごめんなさい」
「確信犯だ!」
「これからは気を付けます」
それから久恵ちゃんのB級グルメめぐりは控えめになった。僕は嫌われるといけないから絶対に久恵ちゃんの前ではしない。これはまだ遠慮があるということかもしれない。
でも久恵ちゃんは分からないだろうと思って漏らした。僕に対する過度な気配りや遠慮がなくなり、気を許していると理解しよう。
でもお互い目の前でするようになれば夫婦も本物だという話を聞いたことがある。久恵ちゃんと、こきっこをするなんて、想像するだけでも興ざめだ。
久恵ちゃんには僕の前では絶対にしてほしくない。でも思わずもらしてしまったらそれはそれで可愛いかもしれない。ただし、無臭で音だけでお願いします。ムシューダ!
でも、そうだったのならば胸いっぱいに吸い込んでおいてもよかったかもしない。いやいやあの臭いはやはりやめておいて良かった。もっと嗅ぎたい良い匂いがいっぱいある。
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