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本編
第三十四話 ヴァンパイアのお食事事情
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「兄上、これはなんでしょう?」
王太子ジュリアンの執務室に呼び出された第二王子ランドールが不満の声を上げる。ランドールが手にしている紙には、彼の異動先が書かれていた。異動命令書である。
「ん? 左遷だ。ちょっと辺境の地で頑張ってくるといい」
ジュリアンが真顔でそう伝えた。
左遷……ランドールは手にした紙を手にぷるぷる震える。
「ど、どどどどどどどういうことですかぁ! 兄上! 何故私が!」
「あの騒動の元になった狂戦士の腕輪、持ち出したのは、おぬしであろう?」
ジュリアンの指摘に、ランドールはぎくりとなる。
「さぁ? なんのことでしょう?」
ランドールはすっとぼけた。すっとぼけることに決めた。
「まさか、兄上は、どこの馬の骨ともわからない平民の言うことを、鵜呑みにしたのではないでしょうね? デタラメに決まってます」
ジュリアンが言う。
「……夜会会場で狂戦士となった者が、何故平民と分かった?」
ジュリアンの追求に、ランドールはぎくりとなるも、すかさず平静を装った。
「ははは、クリフ・ハントは有名ですよ、兄上? なにせ、勇者の肖像画に瓜二つで、勇者の生まれ変わりだと騒がれていましたから」
「姿は別人のようになっていたが、あれでも分かったと?」
「面影はありましたから」
「ふむ、ま、一応筋は通っておるが……神殿の最奥に出入りした者の記録と神官達の証言から、おぬしが狂戦士の腕輪を持ち出したのは明々白々。流石に平民の証言だけでこんな真似はせんよ。証拠がそろっている。観念せい」
ランドールが目を剥いた。
「そ、そんな、兄上! でっち上げです! もっとよく調べて……」
「おぬしの標的は我が友、ブラッドか?」
ジュリアンがそう指摘する。既に彼の中では、ブラッド・フォークスは友らしい。
「クリフ・ハントの証言から、そう推測した。彼を焚き付けるような言動を繰り返したそうだな? レイチェル嬢に結婚の申し込みをしたが、撥ね付けられたとか……今もまだ彼女を狙っているのか? 止めた方がいい。相思相愛の仲に茶々を入れるでない」
「……なにもしていませんよ、兄上」
ランドールがふてくされたように言う。
ジュリアンがしげしげとランドールの蜂蜜色の髪を見た。
「だといいがな? でないと誓約の力でハゲるぞ?」
「……は?」
ランドールが素っ頓狂な声を上げる。完全な間抜け顔だ。
「大魔法士アウグストが我ら王族に課した誓約だ。四大英雄であるブラッドの望みを一つ叶えること。これに意を唱える王族がいた場合、どんどん毛が抜けるらしい。私はまぁ、そんなものがなくても誓約を破る気などないが、良かったな? なんにもしていなくて。もし、どこかで二人の仲を妨害していたら、間違いなくハゲているところだ。アウグストの呪いなんぞ、誰も解けないと思うから、何をしても治らない」
ジュリアンが退出するよう促し、ランドールは自分の頭に手をやった。ぱらりと蜂蜜色の毛が抜けて……ひぃっと心の声が漏れる。
猛然と鏡の前まで走った。ランドールは二人の仲を裂く為に、ブラッドのところへ美女三人を送り込んでいた。美女三人とねんごろになれば、聖女があのヴァンパイアを見限るかも知れないとそう考え、ブラッドに気がありそうな美女達をけしかけたのだ。
まさかまさかまさか! い、いや、あれは失敗している。確か、そうだ! 何にもなかったはずだ! あのヴァンパイアが吸血する前に貧血を起こして、気が付いた朝だったそうだからな! だから、大丈夫! 私が誓約を破ったことにはならない!
鏡の中の自分を見て、ランドールは悲鳴を上げた。ぱらりぱらりと毛が抜けて、円形はげになっている自分がいる。てっぺんが見事につるっつるだ。
「ひいいいいいいいいいいい!」
――アウグストの呪いなんぞ、誰も解けないと思うから、何をしても治らない。
「アウグストォ! どこだぁ! どこにいるぅ!」
目を血走らせ、ランドールは彼の元に走ったが、まぁ、呪いが解けることはないだろう。
ブラッドと僕のダブル天誅喰らいたい?
にっこり笑って、アウグストにこう言われるだけである。
◇◇◇
レイチェルは目を見張った。
神殿の廊下の前方から歩いてくる美女の一人に見覚えがあったからだ。そう、ブラッドに血を吸われたいと部屋までやって来て、その望みを叶えた女性だ。
どきんどきんと、レイチェルの心臓が早鐘を打つ。もう一度、ブラッドに迫られたらどうしよう、そんな思いだ。あの出来事を覚えていられるだけでも嫌なのに、もう一度なんて耐えられない。自分のせいなのだけれど……
「あ、あのう……」
例の美女に、すれ違い様に声をかけられ、レイチェルは飛び上がりそうになる。彼女が声をかけた相手はもちろんブラッドで、つい、彼の服をぎゅっと握ってしまった。駄目、行かないで、そんな気持ちである。ブロンド美女が勢いよく頭を下げた。
「そ、その、この間は申し訳ありませんでした! 血を提供しに行ったのに、その前に貧血を起こして倒れてしまって。役に立たなくて、本当に……」
え? 血の提供の前に貧血? どういうこと?
レイチェルはぽかんとなり、今一度、目の前の美女を見た。本当に申し訳なさそうである。
「あ、あの、改めて今夜、もう一度どうでしょう?」
おずおずとブロンド美女がそう言うも、ブラッドはそっけない。
「いや、いらない。血の提供なら以前言ったように献血パックにしてくれ」
そう言ってレイチェルの肩を引き寄せ、素通りだ。レイチェルは混乱する。
「あのう……血の提供の前に、貧血を起こして倒れたって?」
自分の記憶と違う。
「ん? ああ、吸血の時の記憶を消しておいたから、そう思い込んだらしいな?」
え……ブラッドの台詞に、レイチェルが目を丸くする。
「そ、そんなこと出来、あ……」
そうだ、ヴァンパイアは催眠派で、獲物となった相手と接触した記憶を消す場合がある。そうやって、自分の正体を隠すんだった。ハンターに狙われないように……吸血痕が残っているのに、どうしてこうなったのか分からない場合がこれだ。
「もう一度やってこられても困るし……」
レイチェルの視線を避けるように、ブラッドがそう口にする。なんとなく決まり悪げだ。
「最初っからそのつもりで……」
「そりゃ、俺が好きなのは君だから」
ぐいっと引き寄せられて、ちょっと嬉しい。
レイチェルはブラッドの横顔をそろりと見上げた。女性のように柔らかい顔立ちだけれど表情が精悍である。唇もまた血のように赤い。笑えば、そう、牙がある。
ヴァンパイア、だものね?
「お腹、すいてません?」
そろりとレイチェルが尋ねると、彼の口角が上がった。
「……煽ってる?」
ブラッドの指摘に、レイチェルの顔に朱が上る。
「いえ、あの、そーいうわけでは!」
「なんだ、違うのか……」
がっかりしたようにため息をつかれて、焦った。ああ、もう、どうすれば!
「いえ、ですから、純粋に心配してるんですよぅ! 以前みたいになったらどうしようって! ヴァンパイアのお食事事情ってどうなってるんですか? 教えてください!」
ぴたりと足が止まり、ブラッドに見下ろされてしまう。
血のように赤い瞳に見つめられて、レイチェルの心臓が跳ね上がった。本当に、なんていうか……好きなんだなぁって自覚してしまって、どうしようもない。見つめられるだけでこんなにドキドキする自分がいる。
「血が欲しいって言ったらくれるのか?」
「それは、ええ、まぁ……」
どうしても言葉が尻つぼみだ。気が付けば赤い瞳が目の前にあって、唇を奪われていた。舌先に熱いものが絡みついてくる。かなり濃厚だ。ちゅっちゅっという水音が恥ずかしくて、身を引こうとしたけれど、ぐっと腰を掴まれて、逃げられない。
甘い吐息を漏らす自分を見下ろした赤い瞳が、笑んだような気がした。ふわりと夢心地になった耳に、なら、今夜、という言葉が滑り込んでくる。今夜……
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ジュリアンが真顔でそう伝えた。
左遷……ランドールは手にした紙を手にぷるぷる震える。
「ど、どどどどどどどういうことですかぁ! 兄上! 何故私が!」
「あの騒動の元になった狂戦士の腕輪、持ち出したのは、おぬしであろう?」
ジュリアンの指摘に、ランドールはぎくりとなる。
「さぁ? なんのことでしょう?」
ランドールはすっとぼけた。すっとぼけることに決めた。
「まさか、兄上は、どこの馬の骨ともわからない平民の言うことを、鵜呑みにしたのではないでしょうね? デタラメに決まってます」
ジュリアンが言う。
「……夜会会場で狂戦士となった者が、何故平民と分かった?」
ジュリアンの追求に、ランドールはぎくりとなるも、すかさず平静を装った。
「ははは、クリフ・ハントは有名ですよ、兄上? なにせ、勇者の肖像画に瓜二つで、勇者の生まれ変わりだと騒がれていましたから」
「姿は別人のようになっていたが、あれでも分かったと?」
「面影はありましたから」
「ふむ、ま、一応筋は通っておるが……神殿の最奥に出入りした者の記録と神官達の証言から、おぬしが狂戦士の腕輪を持ち出したのは明々白々。流石に平民の証言だけでこんな真似はせんよ。証拠がそろっている。観念せい」
ランドールが目を剥いた。
「そ、そんな、兄上! でっち上げです! もっとよく調べて……」
「おぬしの標的は我が友、ブラッドか?」
ジュリアンがそう指摘する。既に彼の中では、ブラッド・フォークスは友らしい。
「クリフ・ハントの証言から、そう推測した。彼を焚き付けるような言動を繰り返したそうだな? レイチェル嬢に結婚の申し込みをしたが、撥ね付けられたとか……今もまだ彼女を狙っているのか? 止めた方がいい。相思相愛の仲に茶々を入れるでない」
「……なにもしていませんよ、兄上」
ランドールがふてくされたように言う。
ジュリアンがしげしげとランドールの蜂蜜色の髪を見た。
「だといいがな? でないと誓約の力でハゲるぞ?」
「……は?」
ランドールが素っ頓狂な声を上げる。完全な間抜け顔だ。
「大魔法士アウグストが我ら王族に課した誓約だ。四大英雄であるブラッドの望みを一つ叶えること。これに意を唱える王族がいた場合、どんどん毛が抜けるらしい。私はまぁ、そんなものがなくても誓約を破る気などないが、良かったな? なんにもしていなくて。もし、どこかで二人の仲を妨害していたら、間違いなくハゲているところだ。アウグストの呪いなんぞ、誰も解けないと思うから、何をしても治らない」
ジュリアンが退出するよう促し、ランドールは自分の頭に手をやった。ぱらりと蜂蜜色の毛が抜けて……ひぃっと心の声が漏れる。
猛然と鏡の前まで走った。ランドールは二人の仲を裂く為に、ブラッドのところへ美女三人を送り込んでいた。美女三人とねんごろになれば、聖女があのヴァンパイアを見限るかも知れないとそう考え、ブラッドに気がありそうな美女達をけしかけたのだ。
まさかまさかまさか! い、いや、あれは失敗している。確か、そうだ! 何にもなかったはずだ! あのヴァンパイアが吸血する前に貧血を起こして、気が付いた朝だったそうだからな! だから、大丈夫! 私が誓約を破ったことにはならない!
鏡の中の自分を見て、ランドールは悲鳴を上げた。ぱらりぱらりと毛が抜けて、円形はげになっている自分がいる。てっぺんが見事につるっつるだ。
「ひいいいいいいいいいいい!」
――アウグストの呪いなんぞ、誰も解けないと思うから、何をしても治らない。
「アウグストォ! どこだぁ! どこにいるぅ!」
目を血走らせ、ランドールは彼の元に走ったが、まぁ、呪いが解けることはないだろう。
ブラッドと僕のダブル天誅喰らいたい?
にっこり笑って、アウグストにこう言われるだけである。
◇◇◇
レイチェルは目を見張った。
神殿の廊下の前方から歩いてくる美女の一人に見覚えがあったからだ。そう、ブラッドに血を吸われたいと部屋までやって来て、その望みを叶えた女性だ。
どきんどきんと、レイチェルの心臓が早鐘を打つ。もう一度、ブラッドに迫られたらどうしよう、そんな思いだ。あの出来事を覚えていられるだけでも嫌なのに、もう一度なんて耐えられない。自分のせいなのだけれど……
「あ、あのう……」
例の美女に、すれ違い様に声をかけられ、レイチェルは飛び上がりそうになる。彼女が声をかけた相手はもちろんブラッドで、つい、彼の服をぎゅっと握ってしまった。駄目、行かないで、そんな気持ちである。ブロンド美女が勢いよく頭を下げた。
「そ、その、この間は申し訳ありませんでした! 血を提供しに行ったのに、その前に貧血を起こして倒れてしまって。役に立たなくて、本当に……」
え? 血の提供の前に貧血? どういうこと?
レイチェルはぽかんとなり、今一度、目の前の美女を見た。本当に申し訳なさそうである。
「あ、あの、改めて今夜、もう一度どうでしょう?」
おずおずとブロンド美女がそう言うも、ブラッドはそっけない。
「いや、いらない。血の提供なら以前言ったように献血パックにしてくれ」
そう言ってレイチェルの肩を引き寄せ、素通りだ。レイチェルは混乱する。
「あのう……血の提供の前に、貧血を起こして倒れたって?」
自分の記憶と違う。
「ん? ああ、吸血の時の記憶を消しておいたから、そう思い込んだらしいな?」
え……ブラッドの台詞に、レイチェルが目を丸くする。
「そ、そんなこと出来、あ……」
そうだ、ヴァンパイアは催眠派で、獲物となった相手と接触した記憶を消す場合がある。そうやって、自分の正体を隠すんだった。ハンターに狙われないように……吸血痕が残っているのに、どうしてこうなったのか分からない場合がこれだ。
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そろりとレイチェルが尋ねると、彼の口角が上がった。
「……煽ってる?」
ブラッドの指摘に、レイチェルの顔に朱が上る。
「いえ、あの、そーいうわけでは!」
「なんだ、違うのか……」
がっかりしたようにため息をつかれて、焦った。ああ、もう、どうすれば!
「いえ、ですから、純粋に心配してるんですよぅ! 以前みたいになったらどうしようって! ヴァンパイアのお食事事情ってどうなってるんですか? 教えてください!」
ぴたりと足が止まり、ブラッドに見下ろされてしまう。
血のように赤い瞳に見つめられて、レイチェルの心臓が跳ね上がった。本当に、なんていうか……好きなんだなぁって自覚してしまって、どうしようもない。見つめられるだけでこんなにドキドキする自分がいる。
「血が欲しいって言ったらくれるのか?」
「それは、ええ、まぁ……」
どうしても言葉が尻つぼみだ。気が付けば赤い瞳が目の前にあって、唇を奪われていた。舌先に熱いものが絡みついてくる。かなり濃厚だ。ちゅっちゅっという水音が恥ずかしくて、身を引こうとしたけれど、ぐっと腰を掴まれて、逃げられない。
甘い吐息を漏らす自分を見下ろした赤い瞳が、笑んだような気がした。ふわりと夢心地になった耳に、なら、今夜、という言葉が滑り込んでくる。今夜……
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