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第一章 戦女神降臨
第十二話 酔っ払いにご用心
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朝になって目が覚めたら雑魚寝してた。
自分の部屋じゃない場所で。
背に当たるふかふかの感触は絨毯か……。酒瓶がごろごろ転がっている? どれだけ飲んだんだ? えーっと……。途中から記憶が無い。ぶっ飛んでる。もしかしたら今世は酒に弱い? 前世はどんだけ飲んでも二日酔いになんて滅多にならなかったのに、あちゃー……。
ガンガン痛む頭をさすりつつ身を起こせば、
「起きたか?」
むっつりと不機嫌そうなゼノスの声。元々鋭いゼノスの視線がもっと鋭くなってる。おおう、朝っぱらから不機嫌全開って……。ここ、そうか、こいつの部屋だ。
「あー、途中から記憶が無いんだけど、お前は覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。きっちりな。最初から最後まで全部。いっそ忘れたい」
ぴりぴりした雰囲気だ。何があった?
「エラって面白いねぇ」
同じように起き出してきたロイにケラケラと笑われてしまう。
「私、何かやったか?」
うー、頭が痛い。
「うん、やった。最初はさぁ、歌を歌ったり、冗談言ったり? ま、そこは良いんだよね。楽しかった。で、途中からエラが愚痴りだしたんよね。あれ、からみ上戸っていうのかな? 大好きな人に会えなくて寂しいって話になって、延々愚痴って、そんでもってね、ゼノスにからんだの」
「え?」
「お前は恋人いるのかーから始まって、もっと笑うと持てるぞーってエラが言い始めて、良い男なんだから絶対可愛い恋人出来る、ほら笑う練習しろってからんで、いい加減にしろってゼノスが切れてー……で、エラが泣いたんだよね。お前まで冷たああああいって言って泣いて泣いて、ふ、ふふ……ゼノスのあの顔、困ったんだろうねぇ、されるがままになってた。エラに髪わしゃわしゃされて、ぎゅうぎゅうされて、ポンポンされて? ゼノスってば、完全にマスコット扱いされてたよ? いや、抱き枕かな? ま、いいけどぉ。最後、くまちゃん人形よろしくゼノスを抱っこして寝てたよー?」
ひいぃ! 何それ! 引き離せ! サイラスにやってたこと、そのまんまやったのか、私! サイラス成分足りてないせいか? っていうか、ほんっとゴメン!
「ごめん、悪かった! 酒、注意する! 後、何かして欲しい事あったら言ってくれ! 何でもするからぁあああ!」
ゼノスの顔を見ること出来ずに、土下座だ土下座。
「……別にいい。忘れろ」
むすっとしたそんな声が返ってくる。
「いや、でも」
「わ、す、れ、ろ。覚えていられる方が恥ずかしい」
「僕は面白かった」
「ロイ、お前も忘れろ! あー、ったく……」
立ち上がり、窓に近寄ったかと思うと、ゼノスはそこからひょいっと外に出て……え? あれ? ここ十二階……ええええええぇ! 窓に急ぎ近寄れば、壁面を伝って下に降りていくあいつの背が見える。
「合成種って身軽なんだな」
私がそう言うと、
「ああ、あれできるのゼノスだけ」
「あいつだけ?」
「そ。あそこまで身軽なのゼノスだけなんだよね。ユリウスも僕も出来ないもん。どうしてだかは分からないけど、ゼノスはほんっと身が軽い。壁とか崖とか簡単に駆け上るし、木のてっぺんなんかにも立つ。あんな細い足場でどうやってって思うけど、やっちゃうんだよねぇ」
「ふうん?」
私はしばし考え、
「鳥みたいだな」
ぽつりとそう言うと、
「うん、そんな感じだね」
そう言って、ロイが笑った。
で、自室に戻れば侍女のアンナの雷が落ちた。
「どこへ行っていたんですかぁああああああ!」
まなじりがつり上がり、形相が鬼のよう。
「心配しました! 探し回りました! 何かったらわたくしどもの責任になるんです! お願いですから、あなた様は聖女候補だと自覚してくださいましぃ!」
「ごめん……」
素直に謝ると、少しだけ溜飲を下げてくれた。
「それで、どこで何をしていらっしゃたんですか?」
そのまんま言うとまた雷だな。
「えーっと……図書室で本に夢中になってたら朝になってた」
「読書ですか、仕方ないですねぇ……」
やれやれというようにアンナがため息を漏らす。
おう、これでだませるのか。アンナ、ちょろい?
「本当に図書室にいたんですか? あそこも探しましたが……」
護衛のエドガーが疑いの眼を向けてくる。
こっちは疑っているか。ま、普通はそうだろうな。
「隅っこにいたから分からなかったんだろ?」
すっとぼけた。
「なぁ、エドガー。国へ帰ってもいいんだぞ?」
私がそう言うと、
「帰りません。仕事です」
真顔のエドガーがそう答える。あ、そう。こいつも融通が利かないな。あ、でも、王命だから無理なのか。私みたいなのの護衛を引き受けた時点で災難だったな。流石に気の毒になったので、お茶に誘ってみたけれど、これまた融通が利かない。
「護衛ですので」
そう言ってエドガーが座らない。突っ立ったままだ。それじゃあ、休んでないだろ、お前。立ったまま寝るって、野生動物か? まぁ、前世では私、それやってたけどな。あれは普通じゃないから。参考にしたら駄目だ。
「いいから休め。疲れていると、いざって時に体が動かないだろ? 刺客に遅れを取る方が恥ずかしいぞ」
そう言うと、しぶしぶ椅子に座ってくれた。帯剣していた剣を外し、傍に立てかける。背筋がぴんと真っ直ぐで、やたらと行儀が良い。やっぱ騎士だよな。
髪と瞳は濃い茶色で、筋肉に覆われた体は可もなく不可もなく、整った顔立ちはちょっと面白みに欠ける。真面目な性格のせいかもしれない。
「……エドガーも合成種が嫌いなんだよな?」
私がそう言うと、
「好きも嫌いもありません。危険です」
真面目くさった調子でエドガーが答えた。
「危険、ねぇ……人間離れした身体能力を持っているからか?」
「それもありますが、あれらは突発的に人を殺します」
「狂気に走る瞬間の見分けがつかないって? よく見てないだけだろ? 兆候があるから分かるんだよ、ったく……」
「兆候?」
「そ。狂気の乱れが酷くなると、目の色にそれが出る。だから、そこに注意してりゃいい。危険だって感じたら、鳥かウサギを数羽締めさせりゃ、それで収まるよ」
何だか嫌な顔されたな。鶏肉お前も食うだろうに。
「ま、それも、ここにいりゃ、ほぼ出ないけどな」
「ここにいると?」
「ここには聖なる精霊がいるだろ? あれは合成種の狂気を和らげてくれるんだ。定期的な周期で殺戮衝動の沈静化をしていりゃ、突発的に人を殺すこともないよ。だから合成種は、ここ暁の塔で魔道士達と暮らすのが一番なんだ。ここにいれば、あいつらも人間らしく暮らせる。なのに、なんで追い出したりしたんだかな……」
「そんな話は初めて聞きましたが……」
「知ろうとしたか?」
「いえ」
「まぁ、魔道士達は合成種の話はしたがらないから、こういった話も広がらないんだろう。お前だけの責任じゃない。みんなそうなんだ。排除排除で知ろうとしない」
「エラ様は詳しいですね?」
「ん、まぁ……」
ナイフをクルクル回し、
「多分、心地よかったんだろうな」
過去の光景を思い出し、私はそう言った。
「は?」
「あいつらの雰囲気がさ……。どこか自分と似た部分があって、安心出来たんだと思う。昔の私は普通のお幸せな奴らが苦手ってところもあったしな。戸惑うんだよ、どうしても。自分が普通って奴と違いすぎて」
「はあ……」
エドガーは訳が分からないって顔をしているけれど、理解は求めない。前世の話だし、あんな殺伐とした場所を知らないこいつには、きっと私が感じた喜びなんて分からないだろうから。
「合成種は人間だって、せめてそう思ってくれればな……」
私がそう言うと、
「人間、ですか……」
「そそ。ちょっと変わった力を持った人間でいいじゃん?」
「ちょっとどころではないのですが」
「魔道士の力の方がしゃれにならないのに」
あれが凶暴化したらそれこそ被害甚大だ。
私がそう言うと、エドガーが顔をしかめた。
「魔道士は高潔です。邪悪な合成種とは比べものになりません」
邪悪、ねぇ。リアンはめっちゃ性悪だけどな。
魔道士だって人間なんだから、当然、良い奴悪い奴混在しているのに、魔道士はどんな奴でも敬われて、合成種というだけで蔑まれる……やっぱ偏見じゃん。
「合成種と普通の人間が仲良く暮らせる国が出来るといいのにな」
そうぼやけば、
「それを望む人間はいないでしょうね」
エドガーにはっきり言い切られてしまう。
まぁ、そうだろうな。でも、サイラスがあのまま国王になっていたら、そういった国が出来ていたんじゃないかと思うけれど……はあ、現実は厳しい。
「あるいは、合成種の狂気の消滅とか」
「それこそ夢物語でしょう」
うーん……。
「魔人達の国って一体どんな国なんだ?」
「魔人達の国?」
「こっちに戦争を仕掛けてくるくらいだから、当然向こうでは、国単位の魔人達が集団で暮らしているんだよな? けど、こっちにいる数少ない合成種達だって、あいつらからもらっちまった血の狂気の制御に四苦八苦しているって言うのに、どうしてあいつらは内部分裂しない? どうして国として成り立っているんだ? もしかして何か相争わない方法でもあるのか?」
「分かりません。というより考えたこともありませんでした」
あいつらの国は次元通路の向こう側……。覗くことも出来やしない。
「そんな方法があるんなら、是非とも教えて欲しいよ」
私はそうぼやいていた。
自分の部屋じゃない場所で。
背に当たるふかふかの感触は絨毯か……。酒瓶がごろごろ転がっている? どれだけ飲んだんだ? えーっと……。途中から記憶が無い。ぶっ飛んでる。もしかしたら今世は酒に弱い? 前世はどんだけ飲んでも二日酔いになんて滅多にならなかったのに、あちゃー……。
ガンガン痛む頭をさすりつつ身を起こせば、
「起きたか?」
むっつりと不機嫌そうなゼノスの声。元々鋭いゼノスの視線がもっと鋭くなってる。おおう、朝っぱらから不機嫌全開って……。ここ、そうか、こいつの部屋だ。
「あー、途中から記憶が無いんだけど、お前は覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。きっちりな。最初から最後まで全部。いっそ忘れたい」
ぴりぴりした雰囲気だ。何があった?
「エラって面白いねぇ」
同じように起き出してきたロイにケラケラと笑われてしまう。
「私、何かやったか?」
うー、頭が痛い。
「うん、やった。最初はさぁ、歌を歌ったり、冗談言ったり? ま、そこは良いんだよね。楽しかった。で、途中からエラが愚痴りだしたんよね。あれ、からみ上戸っていうのかな? 大好きな人に会えなくて寂しいって話になって、延々愚痴って、そんでもってね、ゼノスにからんだの」
「え?」
「お前は恋人いるのかーから始まって、もっと笑うと持てるぞーってエラが言い始めて、良い男なんだから絶対可愛い恋人出来る、ほら笑う練習しろってからんで、いい加減にしろってゼノスが切れてー……で、エラが泣いたんだよね。お前まで冷たああああいって言って泣いて泣いて、ふ、ふふ……ゼノスのあの顔、困ったんだろうねぇ、されるがままになってた。エラに髪わしゃわしゃされて、ぎゅうぎゅうされて、ポンポンされて? ゼノスってば、完全にマスコット扱いされてたよ? いや、抱き枕かな? ま、いいけどぉ。最後、くまちゃん人形よろしくゼノスを抱っこして寝てたよー?」
ひいぃ! 何それ! 引き離せ! サイラスにやってたこと、そのまんまやったのか、私! サイラス成分足りてないせいか? っていうか、ほんっとゴメン!
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「……別にいい。忘れろ」
むすっとしたそんな声が返ってくる。
「いや、でも」
「わ、す、れ、ろ。覚えていられる方が恥ずかしい」
「僕は面白かった」
「ロイ、お前も忘れろ! あー、ったく……」
立ち上がり、窓に近寄ったかと思うと、ゼノスはそこからひょいっと外に出て……え? あれ? ここ十二階……ええええええぇ! 窓に急ぎ近寄れば、壁面を伝って下に降りていくあいつの背が見える。
「合成種って身軽なんだな」
私がそう言うと、
「ああ、あれできるのゼノスだけ」
「あいつだけ?」
「そ。あそこまで身軽なのゼノスだけなんだよね。ユリウスも僕も出来ないもん。どうしてだかは分からないけど、ゼノスはほんっと身が軽い。壁とか崖とか簡単に駆け上るし、木のてっぺんなんかにも立つ。あんな細い足場でどうやってって思うけど、やっちゃうんだよねぇ」
「ふうん?」
私はしばし考え、
「鳥みたいだな」
ぽつりとそう言うと、
「うん、そんな感じだね」
そう言って、ロイが笑った。
で、自室に戻れば侍女のアンナの雷が落ちた。
「どこへ行っていたんですかぁああああああ!」
まなじりがつり上がり、形相が鬼のよう。
「心配しました! 探し回りました! 何かったらわたくしどもの責任になるんです! お願いですから、あなた様は聖女候補だと自覚してくださいましぃ!」
「ごめん……」
素直に謝ると、少しだけ溜飲を下げてくれた。
「それで、どこで何をしていらっしゃたんですか?」
そのまんま言うとまた雷だな。
「えーっと……図書室で本に夢中になってたら朝になってた」
「読書ですか、仕方ないですねぇ……」
やれやれというようにアンナがため息を漏らす。
おう、これでだませるのか。アンナ、ちょろい?
「本当に図書室にいたんですか? あそこも探しましたが……」
護衛のエドガーが疑いの眼を向けてくる。
こっちは疑っているか。ま、普通はそうだろうな。
「隅っこにいたから分からなかったんだろ?」
すっとぼけた。
「なぁ、エドガー。国へ帰ってもいいんだぞ?」
私がそう言うと、
「帰りません。仕事です」
真顔のエドガーがそう答える。あ、そう。こいつも融通が利かないな。あ、でも、王命だから無理なのか。私みたいなのの護衛を引き受けた時点で災難だったな。流石に気の毒になったので、お茶に誘ってみたけれど、これまた融通が利かない。
「護衛ですので」
そう言ってエドガーが座らない。突っ立ったままだ。それじゃあ、休んでないだろ、お前。立ったまま寝るって、野生動物か? まぁ、前世では私、それやってたけどな。あれは普通じゃないから。参考にしたら駄目だ。
「いいから休め。疲れていると、いざって時に体が動かないだろ? 刺客に遅れを取る方が恥ずかしいぞ」
そう言うと、しぶしぶ椅子に座ってくれた。帯剣していた剣を外し、傍に立てかける。背筋がぴんと真っ直ぐで、やたらと行儀が良い。やっぱ騎士だよな。
髪と瞳は濃い茶色で、筋肉に覆われた体は可もなく不可もなく、整った顔立ちはちょっと面白みに欠ける。真面目な性格のせいかもしれない。
「……エドガーも合成種が嫌いなんだよな?」
私がそう言うと、
「好きも嫌いもありません。危険です」
真面目くさった調子でエドガーが答えた。
「危険、ねぇ……人間離れした身体能力を持っているからか?」
「それもありますが、あれらは突発的に人を殺します」
「狂気に走る瞬間の見分けがつかないって? よく見てないだけだろ? 兆候があるから分かるんだよ、ったく……」
「兆候?」
「そ。狂気の乱れが酷くなると、目の色にそれが出る。だから、そこに注意してりゃいい。危険だって感じたら、鳥かウサギを数羽締めさせりゃ、それで収まるよ」
何だか嫌な顔されたな。鶏肉お前も食うだろうに。
「ま、それも、ここにいりゃ、ほぼ出ないけどな」
「ここにいると?」
「ここには聖なる精霊がいるだろ? あれは合成種の狂気を和らげてくれるんだ。定期的な周期で殺戮衝動の沈静化をしていりゃ、突発的に人を殺すこともないよ。だから合成種は、ここ暁の塔で魔道士達と暮らすのが一番なんだ。ここにいれば、あいつらも人間らしく暮らせる。なのに、なんで追い出したりしたんだかな……」
「そんな話は初めて聞きましたが……」
「知ろうとしたか?」
「いえ」
「まぁ、魔道士達は合成種の話はしたがらないから、こういった話も広がらないんだろう。お前だけの責任じゃない。みんなそうなんだ。排除排除で知ろうとしない」
「エラ様は詳しいですね?」
「ん、まぁ……」
ナイフをクルクル回し、
「多分、心地よかったんだろうな」
過去の光景を思い出し、私はそう言った。
「は?」
「あいつらの雰囲気がさ……。どこか自分と似た部分があって、安心出来たんだと思う。昔の私は普通のお幸せな奴らが苦手ってところもあったしな。戸惑うんだよ、どうしても。自分が普通って奴と違いすぎて」
「はあ……」
エドガーは訳が分からないって顔をしているけれど、理解は求めない。前世の話だし、あんな殺伐とした場所を知らないこいつには、きっと私が感じた喜びなんて分からないだろうから。
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私がそう言うと、
「人間、ですか……」
「そそ。ちょっと変わった力を持った人間でいいじゃん?」
「ちょっとどころではないのですが」
「魔道士の力の方がしゃれにならないのに」
あれが凶暴化したらそれこそ被害甚大だ。
私がそう言うと、エドガーが顔をしかめた。
「魔道士は高潔です。邪悪な合成種とは比べものになりません」
邪悪、ねぇ。リアンはめっちゃ性悪だけどな。
魔道士だって人間なんだから、当然、良い奴悪い奴混在しているのに、魔道士はどんな奴でも敬われて、合成種というだけで蔑まれる……やっぱ偏見じゃん。
「合成種と普通の人間が仲良く暮らせる国が出来るといいのにな」
そうぼやけば、
「それを望む人間はいないでしょうね」
エドガーにはっきり言い切られてしまう。
まぁ、そうだろうな。でも、サイラスがあのまま国王になっていたら、そういった国が出来ていたんじゃないかと思うけれど……はあ、現実は厳しい。
「あるいは、合成種の狂気の消滅とか」
「それこそ夢物語でしょう」
うーん……。
「魔人達の国って一体どんな国なんだ?」
「魔人達の国?」
「こっちに戦争を仕掛けてくるくらいだから、当然向こうでは、国単位の魔人達が集団で暮らしているんだよな? けど、こっちにいる数少ない合成種達だって、あいつらからもらっちまった血の狂気の制御に四苦八苦しているって言うのに、どうしてあいつらは内部分裂しない? どうして国として成り立っているんだ? もしかして何か相争わない方法でもあるのか?」
「分かりません。というより考えたこともありませんでした」
あいつらの国は次元通路の向こう側……。覗くことも出来やしない。
「そんな方法があるんなら、是非とも教えて欲しいよ」
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