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仮面卿外伝【第一章 太陽と月が出会う時】
第七話 負の連鎖の結末は
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オーギュストとブリュンヒルデの挙式は、ここから約一年後の事だ。オーギュストが二十才の時で、ブリュンヒルデが十七才の時である。
「結婚おめでとう、ブリュンヒルデ皇女殿下」
花嫁の控え室までやってきたのは、エクトルの妹であるエヴリンだ。背がすらりと高く、凜とした顔つきの女性である。いつもは白衣姿だが、今日は挙式に参列するとあって、ブリュネットの髪をアップにし、綺麗に着飾っている。
リンドルンの王城にあるハーブ園が、ブリュンヒルデとエヴリンの二人のお気に入りの場所で、子供の頃はそこでよくハーブティーを作って、お茶会を開いたものだ。
――将来、わたくしは薬師になって、自分専用の研究室を持ちたいわ。
そう言ったのは十四才のエヴリンだ。大人になりかけの少女が瞳をキラキラさせる。
――わたくしは通訳者がいいわ。たくさんの国と交流を深めるの。
微笑んだのは十三才のブリュンヒルデである。彼女が口にしている言葉は、もちろんリンドルン語だ。笑う顔は相変わらず可愛らしい。
――ね、ブリュンヒルデ皇女殿下は好きな人、いる?
そう、エヴリンがおずおずと聞く。
――もちろん、オーギュが好き!
くったくなくブリュンヒルデが答えた。
――ギデオンお兄様も、ヨルグお兄様も、お父様も、お母様も大好きよ! あ、エブリン嬢も!
――いえ、あの、そういう好き、ではなくて。その、お嫁さんになりたい人っていう意味、よ……
上目遣いのエヴリンのその瞳は、何かを探るよう。
――お嫁さん……
ぽつんとブリュンヒルデが繰り返す。そこへひょっこり顔を出したのがオーギュストだ。
――やあ、楽しそうだね。私も混ぜてもらってもいいかな?
黒髪に緑の瞳の、見惚れるほど美しい顔が自分を見下ろしている。ブリュンヒルデの顔に朱が上る。何とも間が悪い。ブリュンヒルデは、わたわたと大慌てだ。今思えば、あの時に恋心を自覚したのかもしれない。
「ありがとう、エヴリン嬢」
エヴリンのお祝いの言葉に、ブリュンヒルデは微笑んだ。
彼女は子供の頃に語った夢を実現させ、こうして薬師となった。結婚式用に綺麗に着飾っているけれど、ぷんっと薬品の香りがするのはなんとも彼女らしい。
真っ白なウェディングドレスを身にまとったブリュンヒルデが微笑んだ。
「エヴリン嬢は研究熱心よね。まるで兄のヨルグのよう。でも、少し顔色が悪いわ? あまり根を詰めないで?」
エヴリンは知的な顔をほころばせた。
「ええ、大丈夫よ。無理はしていないわ。むしろ楽しくて仕方がないの。だからついつい寝食を忘れてしまうだけ」
「あら? どんな研究を?」
ブリュンヒルデが問うと、エヴリンが悪戯っぽく笑い、口元に指を一本当てた。
「内緒よ。口外しては駄目ってハインツに言われているの。でも、出来上がったら、そうね……きっと夢のような一時を味わえるわ。ええ、絶対に完成させたい……」
エヴリンが夢見るように言う。胸元を飾る赤い薔薇を手に取り、そこに口付けた。ブリュンヒルデが笑った。
「たくさんの人を幸福にする研究なのね? がんばって? ふふ、そうそう、エヴリン嬢はハインリヒ殿下と婚約したのよね? おめでとう」
エヴリンが複雑そうな顔をした。
「ありがとう。本当はまだ少し迷っているのだけれど……」
「マリッジブルー?」
「いえ、好きな人がいたから、吹っ切れていないだけよ」
寂しそうに微笑むエヴリンの顔を、ブリュンヒルデが見上げる。
好きな人……赤い薔薇の人ね。
エヴリンに好きな人はいないのか、そう問うた時に返ってきた答えが、赤い薔薇の人、である。結局、名前は教えてもらえなかった。
「告白は……」
「しないわ。彼を困らせるだけよ。心配しないで? 大丈夫よ。ハインツはね、私の才を応援したいって言ってくれたの。必要な資金は全部用意するから、好きなだけ研究に没頭していいって。こんな好条件ないわ。わたくしは幸運よ」
エヴリンがそう言って笑った。
国を挙げての結婚式は、色鮮やかなステンドグラスで飾られた大聖堂で行われ、厳かで華々しく、盛大だった。各国から呼ばれた代表者が列席し、二人を祝福する。
美しい花嫁から流れ出た喜びの涙は、多くの者達の口の端に上り、世界一幸せな花嫁だと誰もが褒めそやした。ここから二年後に忍び寄る悪夢など、この時は誰も予想だにしなかったに違いない。輝かしい未来があると、賢王に支えられ、リンドルン王国は益々栄えると、この時は誰もがそう信じて疑わなかった。
儀式用の礼服に身を包んだ司祭が二人に誓いを促す。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
ブリュンヒルデが微笑んで答える。
オーギュストがそっと花嫁のベールを上げれば、ブリュンヒルデの輝くような笑顔が待っていた。彼女のこの笑顔を彼は生涯忘れまい。
オーギュストが目を細め、花嫁にそっと口づけた。
死が二人を分かつまで……。この誓いの言葉が、死が二人を分かってもなお……オーギュストにそう誓いなおされる時が来ることを彼女は知らない。
運命の歯車が回り始めたのは、これより半年前だ。コトリコトリと歯車が緩やかに悪夢を描き出す。じわりじわりと忍び寄る影のように。
「ヨルグ殿下、あなたは不死に興味があるんですよね?」
そう言ってにっこり笑ったのは、プロトワ王国のオレール王子だ。女性のようなたおやかな顔はいつものように柔らかな微笑みを浮かべている。
宮殿にある薬草園で、いつものように薬草の手入れをしていたヨルグは、ぴたりとその手を止める。ヨルグの金色の目が、真っ白い神官服に身を包んだオレール王子を捉えた。サラサラと揺れる髪の色も白に近いブロンドだ。
慈愛を模したオレールの微笑みは、まるで壁画に描かれた天使のよう。迷える者を優しく導こうとしているように見える。真実はどうであれ……
「今日は、ほら、とっておきの物をお持ちしました。これは滅びの魔女の手記です。不死者を生み出せるそうですよ」
「滅びの魔女の手記!」
ヨルグが驚く。大災厄の象徴として、彼女の名を知らない者はほとんどいない。
「ええ、彼女が残した手記の写本です。かの魔女を殺そうと、多くの戦士が剣を手に取ったが敗れた……不死だったという噂もあるくらいです。どうです? 信憑性があると思いませんか?」
ヨルグは急ぎ、オレールから差し出された写本を手に取るも、所々抜け落ちたそれは、完全に誤解を与える内容となっていた。不死者となれる秘薬……あたかもそれが目的であると錯覚してしまうほどに。
オレールが笑う。
「残念ながら重要な部分が欠落しているようです。ああ、心配はいりません。これのオリジナルがリンドルン王国に残っているようですよ。見せてくれるよう交渉してみたら如何ですか? 協力してくれそうな者、たとえば、そう……ハインリヒ殿下は如何でしょう?」
ヨルグは眉をひそめた。
「ハインリヒ殿下に? だったら、オーギュスト殿下の方がいいのでは?」
そうヨルグが提案したのは、至極もっともと言えた。恐らく両者の能力を天秤に掛けた結果だろう。オレールが笑って首を横に振る。
「いえ、止めた方がいいですよ? 断られましたから」
「断られた?」
「ええ、協力する気はないと、オーギュスト殿下にはっきりそう言われました。こんなものを二度と持ち込むなと、怒鳴られましてね……。まぁ、彼は死をも恐れない戦士ですから、そう、不死になりたいというあなたのような考えを、馬鹿馬鹿しいと感じるのかもしれませんね?」
ふっとヨルグの顔に、不快な色が浮かんだのをオレールは見逃さなかった。オレールはひっそりとほくそ笑む。
「その点、ハインリヒ殿下は打算的なところがあります。自分に利があると思えば、協力してくれるのでは? 交渉してみたら如何でしょう? ああ、オーギュスト殿下には内密にしたほうがいいですよ? 先程言ったように邪魔をされる可能性が大きいですからね」
「……見返りは?」
何を望む? ヨルグがそう口にする。
「そうですね……まぁ、それはおいおい。成功報酬で結構ですよ? 実験結果の恩恵をほんのちょっぴり分けてもらえれば嬉しいです」
オレールはそう答え、聖人のようににっこり笑った。
彼が投げた波紋は、ほんの小さな悪意……
そう、魔女などいない時代である。
たとえ手記が本物だとしても、効果があるなどと、どうして知ることが出来ようか……。実際に作ってみればいいと考えたところで、再現そのものが困難だ。だからこそ、オレールはヨルグを焚き付けた。あわよくば、そんな気持ちである。
あわよくば……そう、写本の内容が本物で、手記を再現出来れば、オーギュストを追い落とせるはず。ヨルグなら手記を必死で再現しようとするはず。そして、滅びの魔女の秘薬の本当の効果を知れば、ハインリヒが動くはず……
全てが憶測だ。上手く行くかどうかも分からない、完全な賭けに近い。
けれど、驚くべきことに、オレールの思惑は予想以上の効果を発揮する事となる。それはあたかも、遙かな過去に葬られた滅びの魔女の執念が、再び狙い定めた獲物を捉えたかのようであった。
********
第一章はここで終了です。次話から第二章に入ります。転落這い上がり人生なのでちょっときつい、かも?
「結婚おめでとう、ブリュンヒルデ皇女殿下」
花嫁の控え室までやってきたのは、エクトルの妹であるエヴリンだ。背がすらりと高く、凜とした顔つきの女性である。いつもは白衣姿だが、今日は挙式に参列するとあって、ブリュネットの髪をアップにし、綺麗に着飾っている。
リンドルンの王城にあるハーブ園が、ブリュンヒルデとエヴリンの二人のお気に入りの場所で、子供の頃はそこでよくハーブティーを作って、お茶会を開いたものだ。
――将来、わたくしは薬師になって、自分専用の研究室を持ちたいわ。
そう言ったのは十四才のエヴリンだ。大人になりかけの少女が瞳をキラキラさせる。
――わたくしは通訳者がいいわ。たくさんの国と交流を深めるの。
微笑んだのは十三才のブリュンヒルデである。彼女が口にしている言葉は、もちろんリンドルン語だ。笑う顔は相変わらず可愛らしい。
――ね、ブリュンヒルデ皇女殿下は好きな人、いる?
そう、エヴリンがおずおずと聞く。
――もちろん、オーギュが好き!
くったくなくブリュンヒルデが答えた。
――ギデオンお兄様も、ヨルグお兄様も、お父様も、お母様も大好きよ! あ、エブリン嬢も!
――いえ、あの、そういう好き、ではなくて。その、お嫁さんになりたい人っていう意味、よ……
上目遣いのエヴリンのその瞳は、何かを探るよう。
――お嫁さん……
ぽつんとブリュンヒルデが繰り返す。そこへひょっこり顔を出したのがオーギュストだ。
――やあ、楽しそうだね。私も混ぜてもらってもいいかな?
黒髪に緑の瞳の、見惚れるほど美しい顔が自分を見下ろしている。ブリュンヒルデの顔に朱が上る。何とも間が悪い。ブリュンヒルデは、わたわたと大慌てだ。今思えば、あの時に恋心を自覚したのかもしれない。
「ありがとう、エヴリン嬢」
エヴリンのお祝いの言葉に、ブリュンヒルデは微笑んだ。
彼女は子供の頃に語った夢を実現させ、こうして薬師となった。結婚式用に綺麗に着飾っているけれど、ぷんっと薬品の香りがするのはなんとも彼女らしい。
真っ白なウェディングドレスを身にまとったブリュンヒルデが微笑んだ。
「エヴリン嬢は研究熱心よね。まるで兄のヨルグのよう。でも、少し顔色が悪いわ? あまり根を詰めないで?」
エヴリンは知的な顔をほころばせた。
「ええ、大丈夫よ。無理はしていないわ。むしろ楽しくて仕方がないの。だからついつい寝食を忘れてしまうだけ」
「あら? どんな研究を?」
ブリュンヒルデが問うと、エヴリンが悪戯っぽく笑い、口元に指を一本当てた。
「内緒よ。口外しては駄目ってハインツに言われているの。でも、出来上がったら、そうね……きっと夢のような一時を味わえるわ。ええ、絶対に完成させたい……」
エヴリンが夢見るように言う。胸元を飾る赤い薔薇を手に取り、そこに口付けた。ブリュンヒルデが笑った。
「たくさんの人を幸福にする研究なのね? がんばって? ふふ、そうそう、エヴリン嬢はハインリヒ殿下と婚約したのよね? おめでとう」
エヴリンが複雑そうな顔をした。
「ありがとう。本当はまだ少し迷っているのだけれど……」
「マリッジブルー?」
「いえ、好きな人がいたから、吹っ切れていないだけよ」
寂しそうに微笑むエヴリンの顔を、ブリュンヒルデが見上げる。
好きな人……赤い薔薇の人ね。
エヴリンに好きな人はいないのか、そう問うた時に返ってきた答えが、赤い薔薇の人、である。結局、名前は教えてもらえなかった。
「告白は……」
「しないわ。彼を困らせるだけよ。心配しないで? 大丈夫よ。ハインツはね、私の才を応援したいって言ってくれたの。必要な資金は全部用意するから、好きなだけ研究に没頭していいって。こんな好条件ないわ。わたくしは幸運よ」
エヴリンがそう言って笑った。
国を挙げての結婚式は、色鮮やかなステンドグラスで飾られた大聖堂で行われ、厳かで華々しく、盛大だった。各国から呼ばれた代表者が列席し、二人を祝福する。
美しい花嫁から流れ出た喜びの涙は、多くの者達の口の端に上り、世界一幸せな花嫁だと誰もが褒めそやした。ここから二年後に忍び寄る悪夢など、この時は誰も予想だにしなかったに違いない。輝かしい未来があると、賢王に支えられ、リンドルン王国は益々栄えると、この時は誰もがそう信じて疑わなかった。
儀式用の礼服に身を包んだ司祭が二人に誓いを促す。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
ブリュンヒルデが微笑んで答える。
オーギュストがそっと花嫁のベールを上げれば、ブリュンヒルデの輝くような笑顔が待っていた。彼女のこの笑顔を彼は生涯忘れまい。
オーギュストが目を細め、花嫁にそっと口づけた。
死が二人を分かつまで……。この誓いの言葉が、死が二人を分かってもなお……オーギュストにそう誓いなおされる時が来ることを彼女は知らない。
運命の歯車が回り始めたのは、これより半年前だ。コトリコトリと歯車が緩やかに悪夢を描き出す。じわりじわりと忍び寄る影のように。
「ヨルグ殿下、あなたは不死に興味があるんですよね?」
そう言ってにっこり笑ったのは、プロトワ王国のオレール王子だ。女性のようなたおやかな顔はいつものように柔らかな微笑みを浮かべている。
宮殿にある薬草園で、いつものように薬草の手入れをしていたヨルグは、ぴたりとその手を止める。ヨルグの金色の目が、真っ白い神官服に身を包んだオレール王子を捉えた。サラサラと揺れる髪の色も白に近いブロンドだ。
慈愛を模したオレールの微笑みは、まるで壁画に描かれた天使のよう。迷える者を優しく導こうとしているように見える。真実はどうであれ……
「今日は、ほら、とっておきの物をお持ちしました。これは滅びの魔女の手記です。不死者を生み出せるそうですよ」
「滅びの魔女の手記!」
ヨルグが驚く。大災厄の象徴として、彼女の名を知らない者はほとんどいない。
「ええ、彼女が残した手記の写本です。かの魔女を殺そうと、多くの戦士が剣を手に取ったが敗れた……不死だったという噂もあるくらいです。どうです? 信憑性があると思いませんか?」
ヨルグは急ぎ、オレールから差し出された写本を手に取るも、所々抜け落ちたそれは、完全に誤解を与える内容となっていた。不死者となれる秘薬……あたかもそれが目的であると錯覚してしまうほどに。
オレールが笑う。
「残念ながら重要な部分が欠落しているようです。ああ、心配はいりません。これのオリジナルがリンドルン王国に残っているようですよ。見せてくれるよう交渉してみたら如何ですか? 協力してくれそうな者、たとえば、そう……ハインリヒ殿下は如何でしょう?」
ヨルグは眉をひそめた。
「ハインリヒ殿下に? だったら、オーギュスト殿下の方がいいのでは?」
そうヨルグが提案したのは、至極もっともと言えた。恐らく両者の能力を天秤に掛けた結果だろう。オレールが笑って首を横に振る。
「いえ、止めた方がいいですよ? 断られましたから」
「断られた?」
「ええ、協力する気はないと、オーギュスト殿下にはっきりそう言われました。こんなものを二度と持ち込むなと、怒鳴られましてね……。まぁ、彼は死をも恐れない戦士ですから、そう、不死になりたいというあなたのような考えを、馬鹿馬鹿しいと感じるのかもしれませんね?」
ふっとヨルグの顔に、不快な色が浮かんだのをオレールは見逃さなかった。オレールはひっそりとほくそ笑む。
「その点、ハインリヒ殿下は打算的なところがあります。自分に利があると思えば、協力してくれるのでは? 交渉してみたら如何でしょう? ああ、オーギュスト殿下には内密にしたほうがいいですよ? 先程言ったように邪魔をされる可能性が大きいですからね」
「……見返りは?」
何を望む? ヨルグがそう口にする。
「そうですね……まぁ、それはおいおい。成功報酬で結構ですよ? 実験結果の恩恵をほんのちょっぴり分けてもらえれば嬉しいです」
オレールはそう答え、聖人のようににっこり笑った。
彼が投げた波紋は、ほんの小さな悪意……
そう、魔女などいない時代である。
たとえ手記が本物だとしても、効果があるなどと、どうして知ることが出来ようか……。実際に作ってみればいいと考えたところで、再現そのものが困難だ。だからこそ、オレールはヨルグを焚き付けた。あわよくば、そんな気持ちである。
あわよくば……そう、写本の内容が本物で、手記を再現出来れば、オーギュストを追い落とせるはず。ヨルグなら手記を必死で再現しようとするはず。そして、滅びの魔女の秘薬の本当の効果を知れば、ハインリヒが動くはず……
全てが憶測だ。上手く行くかどうかも分からない、完全な賭けに近い。
けれど、驚くべきことに、オレールの思惑は予想以上の効果を発揮する事となる。それはあたかも、遙かな過去に葬られた滅びの魔女の執念が、再び狙い定めた獲物を捉えたかのようであった。
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