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1 いつもの夢

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 あの事故が起きた翌日の朝刊で、犯人の名前を知った。

 …正直、僕は犯人が捕まっても捕まらなくてもどうでも良かった…。

 紙面に丸で囲まれた彼女の顔が微かに笑っていて、不思議な気分になった事を今でも覚えてる…。

 僕は決して忘れないよ。

 忘れちゃいけないんだ、きっと…。

 あの日何も出来なくて悔しくて悲しくて泣いた事を。

 僕は決して忘れないよ。

 君が好きだった桔梗の花を。

 君が最期に見せてくれたあの笑顔を…僕は忘れない。

     *      *      *

 これは夢だ… 分かってる。
 でも…。

 高3の帰り道、セーラー服を着た長い髪が良く似合う朝美あさみは恥ずかしげに頬を赤く染め、形の良い小さな唇が動き出す。
「あのね私…笑わないでよ…」
「何んだよ?」
「真っ白なウェディングドレス着て二十五歳までには結婚したいな…」
 僕は立ち止まり目を瞑った。
「何してるの?」
「想像してんの。朝美がドレス着てるトコ」
「で、どうだった?」



 にんまりとした顔を近づけて来る朝美にドキッとしながら「ん…微妙…」とふざけて言うと「ヒッドーイ…」と頬を膨らませムスッとした顔の朝美は「どうせ私は身長低いからドレス何て似合いませんよー!」と僕の肩をバシバシ叩き、僕は「悪かった。悪かった」と笑い合った。

 ふと振り返ると朝美は居なく「朝美、朝美…」と僕はもう一度振り返ると地面の真っ赤な血を見つけ…。

「ハァッハァッハァー…」
 いつもこんな夢で目が覚める…。

 涙で濡れた頬を僕は両手で覆った。
 後悔してんのかな…。
 本当はあの時、ちゃんと朝美のウェディング姿想像出来てたんだ。
 「絶対似合うよ」って言ってあげれば良かったな…。


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