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貴女が盗んだものは
善行
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放課後、学園長室に呼び出されたヒョウは、ソファーに座っていた。
学園長は、上座の席に座っている。机の前に両肘ついて、口元を隠していた。
額には油汗。今は四月でやや涼しい。更年期障害ってやつなのか、あるいは自分を恐れてなのか。
まあ後者と考えるのが自然か。
「で? 俺に用ってのは?」
「君は先日、マルコくんと問題を起こしたそうだね?」
「ああ。あいつが突然喧嘩売ってきたもんでな。振りかかる火の粉を、ちょいと払ったまでのことさ」
「話には聞いている。彼の問題行動はあれが初めてではない。故に、彼は停学処分とすることにした。次に問題を起こせば、退学だ」
「そうか。いい判断したと思うぜ、学園長さん」
「しかし、君にも何らかの処分は下さねばならない。それでこそ、上に立つものとしての、公平な判断というものだ」
「ふっ。まあ間違ってはないかもな。で? 俺に下る処分ってのは?」
「善行」
「善行?」
「そうだ。魔術師として、悪事を働いた分の善行をしてもらいたい。いわゆる、対価で返す、というやつだ」
「俺は清流派じゃないんだけどねー。まあいいや。つまり、俺に何か解決してほしい案件があるってことだな?」
「端的に言ってしまえばそうだ。――入りたまえ」
「失礼します!!」
気持ちのいい声がして、扉が開く。
ヒョウが目を向けた。
そこにいたのは、ピンク色の髪をした獣人《フェルナンテ》。こいつは――
『何だこりゃ』
あのときのマキビシを拾っていた女。そして――
『すげえよ、あのミーティアちゃんに勝っちゃったよ』
あの時、リンと最後まで競い合っていた、高跳びの時の女……か。
「……」
「ども―、リティシア=ヒョウさん」
跳ねるような口調で、女が言った。
「こいつがどうかしたのか?」
「詳しくは彼女から聞いてもらいたいが、彼女は今ちょっとした問題を抱えていてね」
フェルナンテの女を見る。
少女はニコニコと笑っていて、特に『被害者』という面はしていなかった。
「とりあえず、前座れよ。茶も出ないところだけどな」
横柄な口調と格好で、ヒョウは笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「でさー、今ボクが抱えている問題っていうのは――」
「ちょっと待った」
正面のソファーに腰掛けたミーティアの話を、ヒョウは早速へし折った。
「え?」
「お前、男なの?」
「えぇ!? 男の子に見えるかな? 身体つきはいいって、一部じゃ評判なんだけど……」
「いや、一人称」
「あー、この口調は、今のボクのマイブーム。可愛いでしょ?」
やめた方がいいんじゃない? と言おうと思ったが、やめた。
余計なお世話ってなものだし、一応この一人称でも形になるほど、容姿端麗だってのもある。
フェルナンテと魔族は、見目が綺麗なものが多いからな。
「で? どういう被害なんよ。言ってみ?」
「なんかねー、欲しいって言ったら、家にそれが贈られてくる」
「めっちゃいいじゃん」
「でしょうー」
「はぁ?」
「あーいや、何かさ、人に話したら、それ絶対危ないってみんな言うから、ちょっと相談してみようかなーって」
「ふーん。まあ確かに危ないだろうな。無償の好意なんてものはありえねえ。その物を贈ってきている奴は、今頃お前の恋人気分なんじゃねえか?」
「えぇ! それはちょっと困る」
「八方美人のツケが回ったな」
「普通に楽しく過ごしてるだけだよー」
「それが傷なんだよ。心当たりは?」
「なし」
「お前が○○が欲しいと言ったものが贈られてくるのなら、お前が○○が欲しいと告げた相手が犯人だ。何人に告げた?」
「数えきれないぐらい」
「迷宮入りだな。あきらめろ」
「うわああああああああああストップストップストップ!!」
ミーティアが困ったように手を上げた。
ヒョウは眉を少し持ち上げた。
そこまで事件解決に躍起になっているようには見えなかったが……。
ミーティアが指を一本立てる。
「告げた相手が犯人って言うけどさ、送られてくる物ほとんど今流行っているものなんだよ。ボクって流行に敏感だから」
「ふーん。いつから送られてきている?」
「え?」
「そこが起点なんだよ。知り合いじゃないなら、その日より少し前にお前と犯人は出会っている。そこに、犯人がお前に執着するだけの何かがあったんだよ」
「うーん。何かあったかなー」
「ないのであれば知り合いなのかもしれん。どっちにしろこの問題は早期には解決できない。なので罠を張ることをすすめる」
「え、どんなどんな?」
「例えば、お前が口をつけたビンをその辺に放置。それを捨てるでもなく、盗んでいく奴がいたらそいつが犯人である可能性が極めて高い」
「うわー気持ち悪い。しかも違う可能性あるのがマイナス五百点。他にはないの?」
「であれば、らしい人間を捕まえて、お前が〇〇がほしいと言う。この〇〇は、雑誌なんかに乗っていないものにする。他の人間には言わない。それを繰り返す。届いたとき、それを言った相手が犯人だ」
「うえー。気が遠くなるー。ボク待つの好きじゃないんだ。他にはないの?」
「一遍死んでこい」
ヒョウは告げて、そのままスタスタと出口に向かった。
「うわああああああああああストップストップストップ!! それにさ、こういうものもうちに届くようになったんだって!! 本当に一刻の猶予もないの、本当に!!」
振り返る。
ミーティアは、手に持った何かをピラピラと振っていた。
ヒョウはため息一つついて、踵を返し、今一度ソファーに腰かけた。
「見せてみろ」
ミーティアが紙を渡してくる。
ヒョウはそれを、見鬼を通して見据えた。
『そろそろお金がなくなりそうなので、いただきにまいろうと思います』
文章は新聞の文字を一文字ずつ切り抜いて作られている。
しかしヒョウが着目していたのは、文面ではなく、魔力痕。
魔力痕とは、魔術師が残した痕跡のことである。
魔術師がまとっている魔力は、死念半分思念半分で構成されている。
すなわち魔力の半分は術者の思念《かんじょう》で構成されており、一流の魔術師は、魔術師が残した痕跡から、その時魔術師がどういう感情であったかを読み解ける。
そして、その読み解く術のことを見鬼と呼ぶ。
――が、ヒョウの腕をもってしても、この手紙から痕跡を抜き取ることは叶わなかった。
要するにわからない。正確に言えば、その時魔術師が、どういう感情であったかがわからない。
同じではないか。普通の人間なら思うだろう。しかし、ヒョウは普通ではない。プロだ。
ヒョウは、合点がいったとばかりに、紙を叩いた。
「欲しいものが届くと言ったが、そのことを誰かに話したか?」
「話したよ」
「話した相手に同級生はいたか?」
「いた」
「家族は」
「多分知ってる」
「執事やメイドのようなものには」
「そっちから聞いたから知ってる」
「部外者には?」
「うーん。範囲が広いなー」
「他人。近所のおばちゃん。駄菓子屋のオヤジ。友人の身内。その辺に落書きしての自己主張」
「ない。ない。ない。ない。ない」
「なら、魔導師には?」
「え? あ、う、うーん、は、話したかなー?」
振り返る。学園長を見た。学園長は脂汗をたっぷり流し、両肘ついた手で口元を隠している。
やはりな。
ヒョウはこの段階で、この事件のオチ七割を読み切った。
しかし、問題なのは、残りの三割。
見鬼で見たところ、ミーティアは『嘘』をついていない。つまり、本当に贈り物は送られてきているのだ。
ただのストーカー犯罪《?》という可能性も十分に考えられる。
だが――
「おっさん。封筒持ってるか? この紙が入りそうなやつでいい」
脅迫状をヒラヒラと振って、ヒョウが言った。
「あ、ああ。あるにはあるが……」
引き出しを開いて、学園長が言った。
ヒョウは脅迫状を裏向きにし、指先で何やら綴った。
空筆。魔力で空間、あるいは物質に文章、あるいは模様などを綴る青魔術。綴られた文章は、同じく青魔術である、見鬼を用いないと、見ることはできない。
(絶対ではない。しかし、これが活きる時は必ずくる)
それを四つ折りにして、胸ポケットの中にしまった。鞄を持って、ヒョウが立ち上がる。
「お前、今日暇か?」
「あ、やってくれんの!? 助かるー」
「深読みしなけりゃ犯人はまずただのストーカーだ。よって、今日一日お前と行動を共にして、犯人を釣る」
話しながら、学園長の元に向かった。学園長は、額に汗をかきながら、封筒を机の上に置いている。
「サンキュ」
言って、ヒョウはそれを受け取る。
「ペンはあるか?」
「ここにありますが」
「借りるぜ」
封筒の裏に文を書く。それを見た学園長は、目を飛び出さんばかりに見開いていき、パンと口元を両手で押さえる。
そんな学園長を、ヒョウは細くした瞳で見据えた。
話したらお前を殺す。そう暗に訴えた。
その封筒に、脅迫状を入れることなく、別ポケットにしまう。
「釣るってつまり、どうするの?」
あごに指先を添えて、小首を傾げるミーティア。
そんなミーティアに、ヒョウがさも何でもないことのように、言った。
「要するに、擬似的に彼氏彼女の関係になるってことだ。ただし一日だけな」
「なるほどーって、ええええええええええええ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ガチャリ。
扉を開く。
扉の外で、リンが壁に背をつけ待っていた。
「兄様!!」
顔を上げてリンが言った。
「あのなあリン」
待っててもらって悪いなと、ヒョウが言おうとした時、手をとられた。
とった相手はミーティアである。その瞬間、リンが目を見開くのが見えた。
「ゴメンね、リンちゃん!!」
何しやがるとヒョウが口にするより早く、ミーティアが口を開く。
そして、続けた。
「ボクとヒョウさんは、本日をもって、付き合うことになってしまいました!!」
「え」
リンの目が点になる。
そして。
「ええええええええええええ!!」
リンの滅多に聞かない大音声が、響き渡った。
学園長は、上座の席に座っている。机の前に両肘ついて、口元を隠していた。
額には油汗。今は四月でやや涼しい。更年期障害ってやつなのか、あるいは自分を恐れてなのか。
まあ後者と考えるのが自然か。
「で? 俺に用ってのは?」
「君は先日、マルコくんと問題を起こしたそうだね?」
「ああ。あいつが突然喧嘩売ってきたもんでな。振りかかる火の粉を、ちょいと払ったまでのことさ」
「話には聞いている。彼の問題行動はあれが初めてではない。故に、彼は停学処分とすることにした。次に問題を起こせば、退学だ」
「そうか。いい判断したと思うぜ、学園長さん」
「しかし、君にも何らかの処分は下さねばならない。それでこそ、上に立つものとしての、公平な判断というものだ」
「ふっ。まあ間違ってはないかもな。で? 俺に下る処分ってのは?」
「善行」
「善行?」
「そうだ。魔術師として、悪事を働いた分の善行をしてもらいたい。いわゆる、対価で返す、というやつだ」
「俺は清流派じゃないんだけどねー。まあいいや。つまり、俺に何か解決してほしい案件があるってことだな?」
「端的に言ってしまえばそうだ。――入りたまえ」
「失礼します!!」
気持ちのいい声がして、扉が開く。
ヒョウが目を向けた。
そこにいたのは、ピンク色の髪をした獣人《フェルナンテ》。こいつは――
『何だこりゃ』
あのときのマキビシを拾っていた女。そして――
『すげえよ、あのミーティアちゃんに勝っちゃったよ』
あの時、リンと最後まで競い合っていた、高跳びの時の女……か。
「……」
「ども―、リティシア=ヒョウさん」
跳ねるような口調で、女が言った。
「こいつがどうかしたのか?」
「詳しくは彼女から聞いてもらいたいが、彼女は今ちょっとした問題を抱えていてね」
フェルナンテの女を見る。
少女はニコニコと笑っていて、特に『被害者』という面はしていなかった。
「とりあえず、前座れよ。茶も出ないところだけどな」
横柄な口調と格好で、ヒョウは笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「でさー、今ボクが抱えている問題っていうのは――」
「ちょっと待った」
正面のソファーに腰掛けたミーティアの話を、ヒョウは早速へし折った。
「え?」
「お前、男なの?」
「えぇ!? 男の子に見えるかな? 身体つきはいいって、一部じゃ評判なんだけど……」
「いや、一人称」
「あー、この口調は、今のボクのマイブーム。可愛いでしょ?」
やめた方がいいんじゃない? と言おうと思ったが、やめた。
余計なお世話ってなものだし、一応この一人称でも形になるほど、容姿端麗だってのもある。
フェルナンテと魔族は、見目が綺麗なものが多いからな。
「で? どういう被害なんよ。言ってみ?」
「なんかねー、欲しいって言ったら、家にそれが贈られてくる」
「めっちゃいいじゃん」
「でしょうー」
「はぁ?」
「あーいや、何かさ、人に話したら、それ絶対危ないってみんな言うから、ちょっと相談してみようかなーって」
「ふーん。まあ確かに危ないだろうな。無償の好意なんてものはありえねえ。その物を贈ってきている奴は、今頃お前の恋人気分なんじゃねえか?」
「えぇ! それはちょっと困る」
「八方美人のツケが回ったな」
「普通に楽しく過ごしてるだけだよー」
「それが傷なんだよ。心当たりは?」
「なし」
「お前が○○が欲しいと言ったものが贈られてくるのなら、お前が○○が欲しいと告げた相手が犯人だ。何人に告げた?」
「数えきれないぐらい」
「迷宮入りだな。あきらめろ」
「うわああああああああああストップストップストップ!!」
ミーティアが困ったように手を上げた。
ヒョウは眉を少し持ち上げた。
そこまで事件解決に躍起になっているようには見えなかったが……。
ミーティアが指を一本立てる。
「告げた相手が犯人って言うけどさ、送られてくる物ほとんど今流行っているものなんだよ。ボクって流行に敏感だから」
「ふーん。いつから送られてきている?」
「え?」
「そこが起点なんだよ。知り合いじゃないなら、その日より少し前にお前と犯人は出会っている。そこに、犯人がお前に執着するだけの何かがあったんだよ」
「うーん。何かあったかなー」
「ないのであれば知り合いなのかもしれん。どっちにしろこの問題は早期には解決できない。なので罠を張ることをすすめる」
「え、どんなどんな?」
「例えば、お前が口をつけたビンをその辺に放置。それを捨てるでもなく、盗んでいく奴がいたらそいつが犯人である可能性が極めて高い」
「うわー気持ち悪い。しかも違う可能性あるのがマイナス五百点。他にはないの?」
「であれば、らしい人間を捕まえて、お前が〇〇がほしいと言う。この〇〇は、雑誌なんかに乗っていないものにする。他の人間には言わない。それを繰り返す。届いたとき、それを言った相手が犯人だ」
「うえー。気が遠くなるー。ボク待つの好きじゃないんだ。他にはないの?」
「一遍死んでこい」
ヒョウは告げて、そのままスタスタと出口に向かった。
「うわああああああああああストップストップストップ!! それにさ、こういうものもうちに届くようになったんだって!! 本当に一刻の猶予もないの、本当に!!」
振り返る。
ミーティアは、手に持った何かをピラピラと振っていた。
ヒョウはため息一つついて、踵を返し、今一度ソファーに腰かけた。
「見せてみろ」
ミーティアが紙を渡してくる。
ヒョウはそれを、見鬼を通して見据えた。
『そろそろお金がなくなりそうなので、いただきにまいろうと思います』
文章は新聞の文字を一文字ずつ切り抜いて作られている。
しかしヒョウが着目していたのは、文面ではなく、魔力痕。
魔力痕とは、魔術師が残した痕跡のことである。
魔術師がまとっている魔力は、死念半分思念半分で構成されている。
すなわち魔力の半分は術者の思念《かんじょう》で構成されており、一流の魔術師は、魔術師が残した痕跡から、その時魔術師がどういう感情であったかを読み解ける。
そして、その読み解く術のことを見鬼と呼ぶ。
――が、ヒョウの腕をもってしても、この手紙から痕跡を抜き取ることは叶わなかった。
要するにわからない。正確に言えば、その時魔術師が、どういう感情であったかがわからない。
同じではないか。普通の人間なら思うだろう。しかし、ヒョウは普通ではない。プロだ。
ヒョウは、合点がいったとばかりに、紙を叩いた。
「欲しいものが届くと言ったが、そのことを誰かに話したか?」
「話したよ」
「話した相手に同級生はいたか?」
「いた」
「家族は」
「多分知ってる」
「執事やメイドのようなものには」
「そっちから聞いたから知ってる」
「部外者には?」
「うーん。範囲が広いなー」
「他人。近所のおばちゃん。駄菓子屋のオヤジ。友人の身内。その辺に落書きしての自己主張」
「ない。ない。ない。ない。ない」
「なら、魔導師には?」
「え? あ、う、うーん、は、話したかなー?」
振り返る。学園長を見た。学園長は脂汗をたっぷり流し、両肘ついた手で口元を隠している。
やはりな。
ヒョウはこの段階で、この事件のオチ七割を読み切った。
しかし、問題なのは、残りの三割。
見鬼で見たところ、ミーティアは『嘘』をついていない。つまり、本当に贈り物は送られてきているのだ。
ただのストーカー犯罪《?》という可能性も十分に考えられる。
だが――
「おっさん。封筒持ってるか? この紙が入りそうなやつでいい」
脅迫状をヒラヒラと振って、ヒョウが言った。
「あ、ああ。あるにはあるが……」
引き出しを開いて、学園長が言った。
ヒョウは脅迫状を裏向きにし、指先で何やら綴った。
空筆。魔力で空間、あるいは物質に文章、あるいは模様などを綴る青魔術。綴られた文章は、同じく青魔術である、見鬼を用いないと、見ることはできない。
(絶対ではない。しかし、これが活きる時は必ずくる)
それを四つ折りにして、胸ポケットの中にしまった。鞄を持って、ヒョウが立ち上がる。
「お前、今日暇か?」
「あ、やってくれんの!? 助かるー」
「深読みしなけりゃ犯人はまずただのストーカーだ。よって、今日一日お前と行動を共にして、犯人を釣る」
話しながら、学園長の元に向かった。学園長は、額に汗をかきながら、封筒を机の上に置いている。
「サンキュ」
言って、ヒョウはそれを受け取る。
「ペンはあるか?」
「ここにありますが」
「借りるぜ」
封筒の裏に文を書く。それを見た学園長は、目を飛び出さんばかりに見開いていき、パンと口元を両手で押さえる。
そんな学園長を、ヒョウは細くした瞳で見据えた。
話したらお前を殺す。そう暗に訴えた。
その封筒に、脅迫状を入れることなく、別ポケットにしまう。
「釣るってつまり、どうするの?」
あごに指先を添えて、小首を傾げるミーティア。
そんなミーティアに、ヒョウがさも何でもないことのように、言った。
「要するに、擬似的に彼氏彼女の関係になるってことだ。ただし一日だけな」
「なるほどーって、ええええええええええええ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ガチャリ。
扉を開く。
扉の外で、リンが壁に背をつけ待っていた。
「兄様!!」
顔を上げてリンが言った。
「あのなあリン」
待っててもらって悪いなと、ヒョウが言おうとした時、手をとられた。
とった相手はミーティアである。その瞬間、リンが目を見開くのが見えた。
「ゴメンね、リンちゃん!!」
何しやがるとヒョウが口にするより早く、ミーティアが口を開く。
そして、続けた。
「ボクとヒョウさんは、本日をもって、付き合うことになってしまいました!!」
「え」
リンの目が点になる。
そして。
「ええええええええええええ!!」
リンの滅多に聞かない大音声が、響き渡った。
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